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DISC REVIEW

Overseas

The Classic

JOAN AS POLICE WOMAN

The Classic

90年代からNYの音楽シーンで活動し、Lou ReedやNick Caveの作品にも参加してきたシンガー・ソングライター、JOAN AS POLICE WOMANことJohn Wasser。3年ぶりとなる今作は、馴染みのバンド・メンバーと共に、街のさまざまなスタジオを転々をしながら、街の空気やインスピレーションを封じ込めた。ヒューマン・ビートボックスによるビートとコーラス、そして彼女の歌で聴かせる肉体的な曲から、バンド・グルーヴとサウンドの一部と化し、またリズムや曲のエンジンとして機能するコーラスが活きた曲など、濃密に練り込まれた構成によるサウンドで、荘厳な響きをも持っている。同時に、いずれもの曲は生々しく官能的に、五感に訴えかける。彼女がクラシックな曲を作りたかったと語る、そのソウルを肌で感じてほしい作品。

We May Yet Stand A Chance

THE HEARTBREAKS

We May Yet Stand A Chance

UKの4ピース・バンド、THE HEARTBREAKSの2ndアルバム。一昨年リリースの1st『Funtimes』は、THE SMITHSやORANGE JUICE直系の、清廉としてドラマティックなメロディと情熱的でアクの強いヴォーカルが冴え渡るギター・ポップの快作だった。しかし本作において、そんなギター・ポップ路線はあくまでも数ある音楽性の内のひとつに落ち着いている。むしろ本作で耳を引くのは、フォークやカントリー、果ては躍動感のあるストリングスを全面的にフィーチャーしたオーケストラ・ポップなど、アメリカン・ルーツ・ミュージックからの多大な影響を感じさせる楽曲群だ。そもそも1stの時点で一介のインディー・バンドに収まらないスケールのデカさは感じさせていたが、本作ではより饒舌になった楽曲とアレンジでもって、ネクスト・ステージへと歩を進めている。

Goldrushed

THE ROYAL CONCEPT

Goldrushed

2014年を代表するポップ・アクトは彼らでキマリだ。昨年、SUMMER SONICに出演。大観衆を躍らせたというスウェーデンの4人組がデビュー・アルバムをリリースする。ギター、ベース、ドラムスというトラディショナルなロック・コンボ編成で演奏するエレポップ・サウンド。そのキャッチーな魅力が彼らの身上だが、80年代調あり、EDMあり、インディー・ロック風ありとデビュー・アルバムにして、ウェルメイドなポップ・ソング作りが光るバラエティに富んだレパートリーを持っているところが頼もしい。高揚感と哀愁が入り混じるところなどは、もろに日本人好みだろう。これはハズせない。ちなみに日本盤は彼らが注目されるきっかけになった「Gimme Twice」他4曲をボーナス・トラックとして追加。

About Last Night

SLEEPER AGENT

About Last Night

前作をパーティの喧騒と考えるなら、SLEEPER AGENTが2年半ぶりにリリースするこの新作はタイトルが物語るとおり、どんちゃん騒ぎの翌朝、感じるほろ苦さとなるのだろう。2011年、シーンに突如現れ、ロックの救世主と注目されたケンタッキー出身の6人組。ニュー・ウェイヴ風味もあるガレージ・ロックという意味では前作の延長だが、1年かけて作っただけあって、曲作りには思慮深さが感じられる。男女ツイン・ヴォーカルを改め、大半の曲を紅一点メンバーが歌っている。賑やかさは減ったものの、むしろそこが今回の聴きどころ。近年のインディー・フォーク・ブームに共鳴するTrack.5「Lorena」やせつなすぎるバラードのTrack.8「Shut」他、バンドの成長を物語るメロウネスをじっくりと味わいたい。

Love Letters

METRONOMY

Love Letters

素晴らしい。前々作『Nights Out』では脱臼エレポップで一晩の夜遊びを描き、続く『The English Riviera』では70年代AORをも消化し、優雅な箱庭ポップを展開。そんな己が道を突き進むMETRONOMYの新作は、『Nights Out』や『The English Riviera』にあった煌びやかさは薄れ、全体的にメランコリックな印象を聴き手に与える、今までで最もパーソナルな質感を持った作品に仕上がっている。アルバム全体を、まるでアンビエント・テクノのように繊細なアトモスフィアが覆っている上に、単音で奏でられるメロディはどれも切なく、曲によっては爪弾かれるギターの音色が哀愁を誘う。『Love Letters』というタイトル通り、まるで古い友人から1通の手紙を受け取ったかのような親密さを感じさせるアルバム。誰もが抱える心の孤独にそっと寄り添う傑作だ。

Helios

THE FRAY

Helios

デビュー10年を迎えた、コロラド州デンバー出身のTHE FRAY。こと日本に関してはグッド・メロディで大きなスケール感を持った、物語のある歌を響かせるアメリカン・ロックという印象が強いが、最新作ではその"イメージ"を壊している。全曲、外部ソングライターを迎え共作しており、ONEREPUBLICの Ryanや、RELIENT Kの Mattなどのバンドマンのほか、異ジャンルのトラックメイカーと組むことで、THE FRAYの新しい切り口を見せている。長い時間をかけ築いたものをどこまで裸にし、どこまでTHE FRAYとするか。作り手としては簡単なことじゃないはずだが、全曲新タッグとなると、ある種手放しで楽しんでしまっているのではないだろうか。その潔い開放感が鳴っている。

Mess

LIARS

Mess

2012年の『WIXIW』以来となる通算7作目のオリジナル・アルバム。どこか聴いていてイヤな汗をかく不穏な音の配置も含め、現代最強のエクスペリメンタル・ロック・バンドと称された近年の作品に比べると、強迫観念めいたビートやサウンド・デザインは後退。最初に思い浮かべるのはKRAFTWERKなど、テクノの先人たちのセンス。しかもダーク・テクノ、ブリープ・テクノなどからダンスするための機能を抜き取ったような印象で、しかも彼らの場合、投げやりなヴォーカルが乗った瞬間、登場当時からの不埒なポスト・パンク感も同時に呼び起こすのが独特だ。それでいて音像はハイファイ、コードがマイナーでもポップさが漂うのが面白い。カラフルなコードがこんがらがったアートワークはアルバムの中身を"言い得て妙"。

Reset

ATARI TEENAGE RIOT

Reset

パンクとテクノを荒々しく引っ掴んでフロアに投下、爆発させ、ミニマムだが凶暴性抜群のサウンドを背負い、鬼の形相で世相を斬り、時に実力行使のゲリラ・パフォーマンスを繰り広げ90年代を疾走したATR。2011年に復活を遂げた彼らが、この『Reset』でさらなる進化を遂げている。Alec Empire、Nic Endoに、ロンドン出身のRowdy Superstarが加わった新体制で、掲げた拳をますます高く振るっている。丸くなんてなりゃしない。やっぱり怒っている。"お前の人生を生きてるか"とエネルギー過多にぶちあげて、目を見開かせるようなパンチあるサウンドで耳をつんざき、激しいビートで体を突き動かす。Alecは言う、音楽は憎しみよりも早く広まる。それをここまで直球で音にするバンドは、やっぱり他にいない。

World Of Joy

HOWLER

World Of Joy

Rough Tradeが発掘し、日本でもFUJI ROCK出演や、THE VACCINESのサポート・アクト、単独公演を行うなど、世界中のガレージ、インディー・ロック・ファンの心を掴んだミネアポリス発のHOWLERが、2年ぶりとなる2ndアルバムを完成。10代の破天荒なパワーと、10代ながら妙に肝の据わった姿勢で、切れ味鋭いガレージ・サウンドを刀に辻斬りしていく面白さがあった彼らだが、今回はパワーのみならずバンドの引き出しの豊富さを再発見。擦り切れるほど聴いたロック・レジェンドからアンダーグラウンド・ヒーローたちのレコード、滴るほど体に染み込ませたその曲のエナジーに火をつけて、鮮烈な炎にし、ぶんぶん放り投げてくる。極限までソリッドなサウンドにしながら、ひねりたっぷりのポップ変化球でいろんなツボを突いてくるのが、ニクい。

Between Places

YOUNG DREAMS

Between Places

KINGS OF CONVENIENCEのErlend Øyeとスタジオを建設したり、日本でもRAZIKAらのプロデュースを手掛けているノルウェーの天才、Matias Tellez率いるドリーム・ポップ・バンド、YOUNG DREAMSの傑作がついに日本でもリリース。ドリーム・ポップと言えど、USやUKのそれとはまた違った、美しいハーモニーとフレッシュで透明感のあるサウンドは北欧ミュージックならではと言えるだろう。シンフォニックかと思いきやダンサブルになったりと、その表情は幼い子どもの様にコロコロと変化し、まるで映画のサウンドトラックの様。ノルウェーの冷たく澄んだ空気が、あたかも自分の肌に触れている感覚さえ覚える。ボーナス・トラックとして収録される5曲も楽しみである。

Present Tense

WILD BEASTS

Present Tense

2009年『Two Dancers』はマーキュリー・プライズにノミネートされ、前作『Smother』も全英17位と好セールスを記録した英国の4人組による4作目のアルバム。今作ではBjorkやBrian Enoを手掛けたプロデューサーを迎えており、独特の音像が広がりと深みを増し、メロディがぐっと際立つ仕上がりとなっている。3拍子のリズムがループされ、ポストパンク/ニューウエーブ的なアプローチのシングル「Wonderlust」、単音のシンセのメロディが印象に残る「Sweet Spot」はアルバムの中でもポップな部類で、全体のトーンはひたすら暗いのだが、美しさと恐ろしさを孕み、ファルセットで歌い上げられるソウルフルなヴォーカルに惹き込まれる。

The Runaway Club

THE RUNAWAY CLUB

The Runaway Club

2014年3月、突如YouTube上に「By Your Side」をアップし、素性を明かさぬまま活動を開始したTHE RUNAWAY CLUB。実はカナダのパワー・ポップ・バンドTHESE KIDS WEAR CROWNSのAlan Poettcker(Ba/Vo)によるソロ・プロジェクトなのだという。80'sよろしくなポップなシンセ・サウンドが全開な今作には、"RUNAWAY CLUB"というその名の通り逃避願望的なエモーションが感じ取れる。しかしその耳当たりのよいポップなサウンドは、PASSION PITやCHVRCHESらのようなシンセ・ポップという括りよりも、"ポップ"というもっと大雑把な括りでとらえたほうがよいのかもしれない。ヒップなイケイケ男子やお洒落女子、根暗が自慢のナードたちもまとめて踊らせる懐の深い1枚。

Manhattan

SKATERS

Manhattan

NYブルックリン出身の4ピース・バンドで、既に海外メディアではTHE STROKESの名前と比較されて紹介されているらしいが、それもまぁ納得の、00年代ロックンロールと70年代パンクのエッセンスを吸収したガレージ・ロック。ただ、デビュー時のTHE STROKESほどスタイリッシュで完璧なわけじゃない。ギタリストはTHE PADDINGTONSやDIRTY PRETTY THINGSのようなUKバンドでプレイしていた経歴を持っているようだが、むしろそんなバンドたちのラッディズムを継承した、パワフルで、でも情けなくて、笑えて、最後はそのメロディに涙してしまいそうな、そんなロマンティシズムに満ちたデビュー・アルバムだ。曲によってはエレクトロやレゲエにも手を出していて、こういう雑食性にバンドの無邪気さと生真面目さが表れている。

St.Vincent

ST. VINCENT

St.Vincent

ブルックリンを拠点に活動し、2012年にはTALKING HEADSのDavid Byrneとのコラボレーション作品もリリース。USインディー界隈で常に注目を浴び、高い評価を得ているST.VINCENTの4thアルバム。妖艶かつ透明感のある歌声は、甘さと刺々しさがうねるように入り混じり、決して聴き心地が良いだけではない。ポスト・ロック特有のヒリヒリした緊迫感と浮遊感、幾重にも重ねられたエレクトリックなトラック作りは相変わらず情報量が多く、1フレーズひとつをとってもここまでヒネるか!とうならされるのだが、アルバムを通して聴くと、アート性だけではなく、ストレートなロックンロール感があるという不思議な作品。WARPAINTの新作と一緒に手に取っていただきたい。

Blood Red Shoes

BLOOD RED SHOES

Blood Red Shoes

ブライトン出身の男女2ピース・バンドによる4thアルバム。マグマが噴き出すというジャケットからもイメージ出来る通り、このアルバムには爆発したエモーションが詰まっている。ノイジーにも程があるディストーション・ギターは初期のJSBXのようでもあり、これぞガレージ・パンクのひとつの究極系と言ってもいいのではないか。相変わらず雄弁に奏でられているヘヴィなギターとドラムに対比するように、ヴォーカルには感情が抑制されている部分があり、そのバランスがロックンロールに必要不可欠な"隙間"を生んでいる。ポップな要素は殆どなく、負の感情を炸裂させ、打算というものを一切感じさせない直球勝負のヘヴィなグルーヴにノックアウトされること間違いなし。

So Long, See You Tomorrow

BOMBAY BICYCLE CLUB

So Long, See You Tomorrow

UKの天才バンドによる4枚目。デビュー時より何よりも特徴的であった、ヒップホップやR&Bからの影響を色濃く反映したビート感は、エレクトロニクスとバンド・サウンドの融合を見事に果たした前作『A Different Kind Of Fix』を経て、よりヴァリエーション豊かな表情を見せている。シンセやサンプリングを多用した上音も、時に静謐に、時にパワフルに、鮮やかな色彩を描く。とにかく細かな音作りをしているが、すべての音がナチュラルに、グラデーションを描くように重なり合っていく様は、耳にとって最高の快楽。肉体感と浮遊感を同時に鳴らすバランス感覚も絶妙。音の隙間から滴り落ちるメランコリーもたまらない。もう、すべてが圧倒的。THE HORRORSやFRIENDLY FIRESと並んで、今のUKになくてはならないバンドに成長したと思う。大傑作。

Forever

PAINTED PALMS

Forever

いとこ同士であるReeseとChristopherによって結成された、サンフランシスコ発のサイケ・ポップ・プロジェクトPAINTED PALMSのデビュー・アルバム。エレクトロ色の強いインディー・ポップで、ドリーミーな雰囲気は漂わせつつも抑揚を効かせながら次々とファニーな音を投げ込んでくる。例に出せばタイトル・トラック「Forever」。どことなくTHE BEATLESのコーラス・ワークを彷彿させつつもヒップホップ的なトラック・アプローチをかまし、チルウェイヴというカテゴリや既成概念に囚われない。とても奔放で、演奏者の笑顔が自然と頭に浮かぶような幸福感。朝日がもたらす爽やかな目覚めの感覚に近い、清涼感のあるエネルギーは、聴く者の背中をそっと押すようなポジティヴィティに溢れる。

Rave Tapes

MOGWAI

Rave Tapes

タイトルにある"Rave"という言葉から連想する熱狂、あるいは恍惚はここからは感じられない。今月、来日するグラスゴーの5人組、MOGWAIによる8作目のアルバム。かつてはハードコアとも謳われた彼らがここで描き出すのは、目の前に広がる荒涼とした心象景色。淡々とループするピアノ、不気味に唸るシンセを大々的に導入したサウンドはポスト・ロックと言うよりもむしろアンビエント。静寂の中にヒリヒリとした緊張感を作り出した前作、そしてゾンビをテーマにしたテレビ・ドラマのサントラを経て、彼らが辿りついたポスト・ロックの極北。John Carpenterの映画のサントラを思い出させるような曲が連続する中、ポスト・クラシカルなTrack.8「Blues Hour」の美しさが強烈な印象を焼きつける。

War Room Stories

BRETON

War Room Stories

ポスト・ダブステップの延長上でFOALSやFRIENDLY FIRESらに共鳴するダンサブルなインディー・ロックを奏で、一躍、UKアンダーグラウンド・シーンの最前線に躍り出た5人組、BRETON。その彼らが世界中から注目を集めるきっかけになった前作『Other People's Problems』から2年、2作目のアルバムをリリース。不穏な響きを湛えた前作のダークかつアンビエントな路線を受け継ぎながらも、冒頭を飾るエレポップなファンク・ナンバーの「Envy」以下、よりオープン・マインドにポップな歌を追求。巧妙なサウンド・プロダクションのおもしろさとともに、より幅広いリスナーにアピールできる作品に。メランコリックなバラードからディスコに変化するドラマチックなTrack.9「Brothers」はライヴで大歓迎されそうだ。

Island Intervals

DEATH VESSEL

Island Intervals

2005年のデビュー作にはフィラデルフィアのフリーク・フォーク・バンド、ESPERSのメンバーらが参加していたので、そちらの文脈で語られることが多かった印象のDEATH VESSEL。しかし、久々に届けられた本作では、Alex Sommersの幻想的なアレンジによって、Joel自身の透明なヴォーカルの魅力がより一層強調され、時代を超越した不思議な"根無し草ルーツ・ミュージック"へと帰結している。近年ではJulianna Barwickが同じくAlexの下で録音し、ONEOHTRIX POINT NEVERらがミックスを同地でおこなうなど、USインディー勢とアイスランドとの距離が縮まっている印象だが、本作はまさにそうした動き(北米と北欧の美意識の融合)を象徴するものといえるだろう。