Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

Skream! 公式X Skream! 公式YouTube Skream! 公式アプリ

DISC REVIEW

E

Do! Darling! Do!

Earls Court

Do! Darling! Do!

一番聴かせたいメロディが一番前に出るように、その他の要素をできるだけ削ったという4thミニ・アルバム。バンドの新境地を印象づけるファンキー且つダンサブルなリード・トラック「Do.Da.Di.」を始め、その試みが持ち前のポップな魅力をアピールする結果を生む一方で、音数を削ぎ落したことで、随所で耳に残る引っ掛かりを残すバンド・アンサンブルも際立たせたのは大きな収穫だ。80~90年代のUKロックの影響からスタートしながら、UKロックだけにとらわれずに独自のサウンドを追求する5人組。ミニマルなダンス・ナンバーからギター・ポップまで、多彩な全6曲を、ファルセットも交えた伸びやかな歌声とともに聴かせながら、曲作り、演奏ともにひと皮剥けたバンドの姿を見事に打ち出している。

Resurrection

Earls Court

Resurrection

90'sのUKロックを感じさせるスケール感あるサウンドとメロディ。様々な表情をみせる豊かで伸びやかなキタコウジロウのヴォーカル。2006年に結成されたというEARLS COURTが放つ2ndミニ・アルバムはブリット・ポップにも通ずる多彩なメロと世界感を持ち、そこに日本語の歌詞が飛び込んでくる。ストレートでロックな歌詞の楽曲や、複雑な心の奥底に潜む思いを歌い上げる美しいナンバーも、歌詞がしっかりとメロディに馴染んでいる。6曲それぞれバラエティ溢れたサウンドと様々な情景を思い起こさせる楽曲からは、彼らのキラキラとしたポテンシャルを感じる事ことが出来る。とても充実したアルバムだ。

Lilac

THE EARLY NOVEMBER

Lilac

THE EARLY NOVEMBERと言えば、90~00年代に多くのポップ・パンク/エモ・バンドを輩出したDrive-Thru Records全盛期のバンド(そのシーンの衰退と共に活動を休止)というイメージが大きいが、実は2011年に復活を果たしている。Rise Recordsと契約し、復活3作目となる今作は、彼らの持ち味であるエモーショナルなメロディはそのままに、しっとりとした大人の魅力も加わり、バンドの成長と成熟が感じられる。厚みを増してスケール感のアップしたサウンドも、バンドの実力を表しているだけでなく、今っぽさがあっていい。また、女性受けのいいAce Endersの爽やかで甘い歌声も、表現力がアップし、リスナーの心をグッと掴む強力な武器となっている。

Answer

EARNIE FROGs

Answer

まさにEARNIE FROGsの"答え"と呼ぶに相応しいアルバムが完成した。ハイカロリーなギター・ロックからエレクトロなダンス・ロック、ブラック・ミュージックのエッセンスを取り入れたナンバーまで、あらゆるジャンルを貪欲に吸収してきた彼らのポテンシャルが全開放された全11曲だ。コンセプトは春夏秋冬。新しい命が芽吹く季節の瑞々しさを捉えた「アルナイル」や、清涼感に満ちたサウンドに軽やかな音階が駆け上がる「ラムネサイダー」、秋の寂寥感を吐露するバラード「リコリス」など、変幻自在の男女ツイン・ヴォーカルが移りゆく四季の景色を鮮やかに歌い上げる。意義深いのはラスト・ソング「夜明け前」。青い衝動をストレートに込めた原点回帰の楽曲に、バンド10周年の新たな決意も感じた。

Orange glitter

EARNIE FROGs

Orange glitter

作品をリリースするごとに、バンドの嗜好を貪欲に取り込んだ新しいアプローチに挑戦し続けているEARNIE FROGs。アダルトで都会的な前作ミニ・アルバム『イエロウ・イン・ザ・シティ』から6ヶ月ぶりとなる今作は、再びバンドの原点にあるロックなアプローチになった。生きる意味はなんなのかという答えのない葛藤に自問自答する「36.7℃」にはじまり、「バタフライ」や「Ring Tone」という自分らしさの在り処を模索するナンバーのあと、ダイナミックなロック・サウンドに乗せて、"美しいと思う日々が続きますように"と歌い上げる「Rock Radio」へ辿り着く。人間の内面へと深く潜り込んでいくような歌詞をはじめ、絶妙な男女コーラス・ワークなど、アーニーの個性が強く打ち出された1枚。

イエロウ・イン・ザ・シティ

EARNIE FROGs

イエロウ・イン・ザ・シティ

これまで王道ロックからシティ・ポップ、ダンス・ミュージック、レゲエなど、様々な作風を自分たちの血肉として取り込んできたEARNIE FROGs。前作『キャラクター』から1年ぶりに完成させた『イエロウ・イン・ザ・シティ』は、メンバーのルーツにもあるアダルトなポップ・ミュージックの手法を取り入れ、歌詞やアートワークに一貫性を持たせたコンセプチュアルな1枚になった。やるせなさを呑み込みながら"それでも"立ち上がってゆく「stand up crowd」や、内に秘めた孤独をひたすら吐き出す「SHELTER」など、収録されるのは悲喜こもごもの人間賛歌。皮肉ではなく、日本人の生き様を誇る意味合いで"イエロウ"をタイトルに掲げたところに、このバンドが今作に懸ける本気を見た。

キャラクター

EARNIE FROGs

キャラクター

昨年、地元愛知のAPOLLO BASEでのワンマン・ライヴを成功させた名古屋発の男女混声ツイン・ヴォーカル・バンド、EARNIE FROGsが約1年ぶりにリリースするフル・アルバム。先行配信されている「キャッチボール」や「シネマティック」の開放感溢れるサウンドや歌詞からバンドの伸び伸びとしたムードが伝わってきていたが、アルバム全体もまた解き放たれたような自由に満ちている。三木正明(Gt/Vo)が手掛けたダーク・ファンタジーのような様相の「歯車と少女」をはじめ、おがた(Ba/Vo)による郷愁のポップ・ソング「swimmy」や陽気なレゲエ・テイストの「Jelly Fish」など個性豊かな全9曲が並び、そのすべてがEARNIE FROGsであると言える強さからも、いまのバンドの充実ぶりが伝わってくる。

ノンフィクション

EARNIE FROGs

ノンフィクション

"これまでの自分たちの枠を壊したい"という強い意志で完成させた、EARNIE FROGsの初となるフル・アルバム『ノンフィクション』。疾走感のある緻密なバンド・サウンドに、男女ツイン・ヴォーカルが美しく絡み合う真骨頂の「新しい言葉」を始め、サカナクションを思わせる電子音をフィーチャーしたロック・ナンバー「Ordinary」や、朗らかなムードが漂う軽妙なポップ・ソング「Step Sound」など、曲ごとに表情を変える楽曲は、このバンドの地力の強さを改めて感じさせる。素晴らしいのはミディアム~スロー・テンポな曲調が中心となったラスト3曲。アルバム・タイトルにも表れているように、メンバーそれぞれの"いま"を刻んだ偽りのない物語には、どれも不器用ながら健気に生きる人間の温もりが詰まっていた。

リアリティ

EARNIE FROGs

リアリティ

どんなときも悩みが尽きない。そんな自分は嫌いだけど、捨てることもできない。そうやって心に抱く悲しみと向き合いながら、独自のポップ・ミュージックを模索する名古屋の男女4人組バンド EARNIE FROGs。今年4月にリリースした1stミニ・アルバム『SURVIVE』の次の一手として、約半年ぶりにリリースする7thシングル『リアリティ』は、尾形悠妃(Ba/Vo)が優柔不断な自分と向き合って綴った強力なライヴ・チューン「リアリティ」と、三木正明(Gt/Vo)が声が出なかったときのもどかしさの中で生み落としたミディアム・ナンバー「FLY」の2曲を収録。男女のソングライター、闇と光、密度の高いサウンドメイキングとシンプルな音、即興性と計画性。あらゆる二面性によって完成されたシングルにはバンドの"これから"に込めた可能性が詰まっている。

SURVIVE

EARNIE FROGs

SURVIVE

地元愛知を拠点に活動中の男女混合4ピース・ロック・バンドの、活動再開後にリリースしたシングル表題曲3曲と新曲3曲を収めた6曲入りミニ・アルバム。彼らの強みは楽曲の持つストーリー性を最大限に活かすアレンジである。緩急の効いた色鮮やかなドラムとギターを筆頭に、男女ツイン・ヴォーカルも楽曲によって声の質感を変えるなど、歌詞とシンクロする音像はドラマ性が高い。歌詞は含みのある表現が多く、不安や孤独などダークな部分を綴ってはいるが、それらを抱えている人間だからこそ感じることができる感傷や光、前へと進む力を表現する。2000年代前半の日本のギター・ロックが持っていた精神性や味わいを、ダンサブルな2010年代的解釈に昇華しているので、幅広い層の心を射止めるのでは。

SONGentoJIYU

eastern youth

SONGentoJIYU

スポーツや芸術には"続けていく美学"がある。長く続ければ続けるほど、身体は衰え、想像することすら苦痛になっていくだろうと筆者は思っていた。来年結成30年を迎えるeastern youthの新作は、約20年以上に渡って活動を共にしてきた二宮友和(Ba)脱退後、新たに村岡ゆか(Ba)を迎えた新体制で制作され、さらに骨太な身体で、より想像力を蓄えた楽曲しか収録されていないことに心底驚かされた。2017年の彼らのアンセム・ソング「ソンゲントジユウ」、抑圧に抗う者の心境を叫んだ「同調回路」など社会的な側面にも触れた前半から、3ピースのアンサンブルに聴き惚れる「黄昏の駅前には何かある」や「旅の空」といった後半まですべてが、継続してきた29年間分の"歌"で築き上げられた"自由"で形成されている。

叙景ゼロ番地

eastern youth

叙景ゼロ番地

このアルバムのレビューとして何を書くべきか非常に悩んだ。今作を聴いて震えるほど素晴らしい作品だと感じたし、それと同時にこの作品がeastern youthにしか描きえない情景を描ききった作品であると言える、それだけだからだ。Track.1の「グッドバイ」からTrack.10の「ゼロから全てが始まる」まで、全身から滴り落ちる汗の匂いと、触れれば火傷するかの如き熱と、生きている人間の血の匂いに満ちている。「目眩の街」「空に三日月帰り道」など、ここ数作の中で1番シンプルに感情を表現したと感じるほどにメロディが際立った楽曲が多い。生きていることが素晴らしいと感じることは少ないかもしれないが、生きている中にしか見出せない光を感じさせてくれる魂の1枚。

歩幅と太陽

eastern youth

歩幅と太陽

21年目に突入したeastern youth が放つ、力強くも暖かさに満ちた『歩幅と太陽』。男気に溢れたエモーショナルなロックを放つ真摯な姿勢に揺るぎはない。その歌はこれまで以上に、どこか優しく温かさを感じさせる。年月を重ね、経験を重ねてきた彼らが今、歌うべきこと、伝えたいことを真っ直ぐな視線で歌っている。「壊れて消えそうな明日が/消えそうで消えない炎が/ 壊れたって良いんだぜ/消えたって良いんだぜ」(歩く速度の風景)。3ピースという最小ユニットが発する圧倒的な熱量をバックに、吉野がこんなことを歌うと、恐ろしいほどに熱く、説得力のある名曲になる。そして、その言葉にはこれまで以上に、優しさが滲み出ている。最前線に立ち続けている彼らの志、眼差しはまだまだ高いところを向いている。

Forbidden Fruit -2nd piece-

East Of Eden

Forbidden Fruit -2nd piece-

昨年デビューした5人組、East Of Edenの2枚目となるミニ・アルバム。シンガー・ソングライターの草野華余子とタッグを組んだ「Judgement Syndrome」、1stワンマン・ライヴでも披露された「Chasing The Moon」を含む全5曲は、メンバーそれぞれのテクニカルな演奏はもちろんのこと、そこに込められたエネルギーが凄まじく、まるで目の前でパフォーマンスされているかの如く圧倒される。こんなにも凄まじい音の中でも、軸になっているのはどの曲もメロディとヴォーカルで、歌に焦点を合わせ、歌を大切にするバンドの意思が伝わった。この5人でしか放つことができないエネルギー。"このバンド、世界基準。"――この言葉が決して大袈裟でないことは、このアルバムを聴けば、そしてライヴを観ればすぐにわかるだろう。

Forbidden Fruit -1st piece-

East Of Eden

Forbidden Fruit -1st piece-

ヴァイオリニスト Ayasaが共演を熱望し、集結した湊 あかね(Vo)、Yuki(Gt)、わかざえもん(Ba)、MIZUKI(Dr)によるロック・バンド East Of Edenのメジャー1stミニ・アルバム。経験豊かなプレイヤーによるテクニカルな演奏と歌唱力抜群の迫力あるヴォーカルは圧倒的で、さらにはバラエティに富んだ楽曲群も秀逸、聴けば聴くほどバンド・アンサンブルの美しさと楽しさに惹き込まれる。8月8日に配信したデビュー曲「Evolve」から、バンドの姿をそのまま表したかのような潔さが爽快な「花美」まで、とても全5曲とは思えないほどの充実感に驚かされるが、この密度の濃さも彼女たちの武器のひとつ。王道ロックからキャッチーなナンバーまでライヴ感溢れる1枚だ。それぞれの持つ力を惜しみなく出し切り、勝負に挑む姿が頼もしい。

EASTOKLAB

EASTOKLAB

EASTOKLAB

エレクトロやミニマル・ミュージックの表現方法を持ちつつ、EASTOKLAB(読み:イーストオーケーラボ)が独特なのは、アフリカン・リズムを熱くない音色として鳴らすバランス感覚。そのサウンドと寒い国の音楽を想起させるどこまでも澄み切ったシンセやギターのディレイが作るレイヤーが、ただ雰囲気のいい音楽であることをどこか拒むように伝えていると思えてならない。日置逸人による、ジェンダーを感じさせず、ファルセットが特徴的なヴォーカルは、明確に意味が成立する日本語詞で主に過ぎ去っていった事柄や、それを思う心象を描く。かつてギター・ポップやオルタナティヴ・ロックが描いたものの芯にある思いを、選び抜いた少ない音数で構築する、意識的且つ音楽的なバンドのデビュー・ミニ・アルバム。

レイドバック

Easycome

レイドバック

昨年開催した初の東京/大阪でのワンマン・ライヴがソールド・アウトするなど、注目を集めているバンド、EasycomeがEP『レイドバック』をリリース。本作には、タイトルの通り、ゆったりとしたオールドスクールな極上ポップスが凝縮されている。ナイアガラ・サウンドを彷彿とさせるグッド・メロディ、バラエティ豊かなサウンド・アプローチ、それらをちーかまの伸びやかな歌声がグッとひとつにまとめ上げ、一曲一曲がきらめきを放つ。包み込むような優しさを有するちーかまの存在感ある歌声は、バンドの軸となっている。歌詞にもある"柔らかい風"が吹くような「スピーチ」から、再レコーディングされた「crispy crispy」まで全5曲。このさらりとした心地よい音楽にぜひ触れていただきたい。

Bone of My Bones

EBONY BONES

Bone of My Bones

M.I.AやSANTOGOLDといった、新世代の歌姫を引き合いに出されるだろう、注目のニュー・カマーEBONY BONES。前者2人が、あらゆる音楽の影響を貪欲に取り込みながらも、洗練されたフォルムに昇華しているのに対し、このデビュー・アルバムで聴くことができるのは、未整理な頭の中をそのまま再現したような、まさに「ごった煮」の楽曲群だ。SWITCHやDIPLOといった希代のプロデューサーが手を加えていない、ほぼ完全にD.I.Y仕様な音作りが、この「ごった煮」感にかなりの影響を及ぼしていて、それが何よりの魅力となっている。ジャンルなんか無視して、とびっきりクレイジーでパワフルな曲だけを、iTunesのプレイ・リストにぶち込んで再生する時のような爽快感に満ちている。

Ten Years After

ECD

Ten Years After

先日、三上寛のライヴを観たのですが、ステージで一人掻き鳴らすギターから、三上寛という人間が鳴りまくっておりました。とぐろを巻いておりました。さて、昨年の傑作『天国よりマシなパンの耳』に続くECDの新作。ここでもやはりECDという人間が鳴りまくっております。年齢を重ねることによる成熟なんてものとは全く無縁の凄絶な私小説。ダークでヘヴィなトラックの上で生活のしがらみをラップし、あらゆる苛立ちと煩悩をはき出すECD。諦念も絶望も孤独も弱さも曝け出すその苛立ちの深さは、10代のそれと何も変わらないどころか、それ以上なのです。ECDは、自分にも他人にも愚直に苛立ち続けるのです。あまりにも生々しいECDという人間の自画像の前では、ただ息を呑んで立ち尽くすしかありません。

Era

ECHO LAKE

Era

デビュー・アルバム『Wild Peace』で注目を集めた、ロンドンのシューゲイズ/ドリーム・ポップ・バンド、ECHO LAKEが3年間の沈黙を破り遂に2ndアルバムをリリース。制作に2年もの歳月をかけ、レコーディングには初めて正式なスタジオを使用した。全7曲とはいえ計45分、半分以上が6分超え(Track.7は10分超え)。ゆるやかに音の渦の中へと引きずり込んでゆく。シューゲイズの内向感をLinda Jarvisのヴォーカルとキーボードによるドリーム・ポップの要素が中和させ、その抽象的な世界はまさしく夢の中のよう。だが時折耳に飛び込むギター・フレーズには肌を刺す寒さのようなリアリティがあり、心地よさだけではない音像で我々を翻弄する。これが毒か蜜かはわからない。だが、ただただこの音に身を任せたい。

アステリズム

EDDY

アステリズム

関西発、キャッチーでセンシティヴなメロディ、アンセミックでストレートなメッセージ、そして汗と涙の青春性を醸し出した、伝統的なメロコアの遺伝子を受け継ぐイケメン3人組EDDYの1stアルバム。衝動的なエモーショナルをそのまま打ち込んだかと思いきや、日本語に拘った文学的な叙情詩をしっとりと聴かせる場面もあり、“動と静”の絶妙な緩急は彼らのオリジナリティだろう。まるで、儚くも力強く、美しく乱れる花火のような世界観だ。昨今のシーンを見ると、始祖的な存在である難波章浩が“パンク復活宣言”をしたことや、9月にはかつてHi-STANDARDで主催した「AIR JAM」級のフェスを行うニュースもあり、90年代全盛期の熱を呼び起こすような動きがある。それに拍車をかけるように、新世代として新たな風を吹き込んでもらいたい。

In Dream

EDITORS

In Dream

EDITORS は、2000年代初頭から続くリヴァイバル・ムーヴメントにその出自を見出すことができる。ソリッド且つタイトで、UK的な叙情を含んだJOY DIVISION直系のバンド・サウンドでこれまでに2作品が全英1位を獲得。トップ・バンドとしての地位を築き上げる彼らの5作目のアルバムがこの『In Dream』だ。今作では、ARCTIC MONKEYSからMY BLOODY VALENTINEまでを手掛けるAlan Moulderをミックスに起用し、どこか陰りのあるダークな音像のモダンなエレクトロを聴かせる。PASSION PITらUSエレポップ・シーンとの共振を感じさせつつも、今作の肝となるのは80'sニュー・ウェイヴのメランコリアや美意識の概念であろう。エレクトロに軸足を移した彼らのサウンドが、どこかNEW ORDERを思わせるのもやはり興味深い点だ。

The Weight Of Your Love

EDITORS

The Weight Of Your Love

レッドブルをキメながら机に齧り付いて書き狂っているような、そんな呪われた職業を冠したバンド名とは裏腹(?)に、EDITORS、4枚目のアルバム『The Weight Of Your Love』は、ヘヴィで大きなスケール感をもつ作品だ。哀愁漂うフォーキーなメロディを主軸に据え、70~80年代のハード・ロックからの影響を感じさせるアレンジが、大仰なミュージカル風の歌唱やストリングス、ホーンなどの煌びやかなトッピングと相まって、アリーナ向きのビッグで重厚感のあるサウンドを生み出している。しかし、性急になりすぎず、あくまでも落ち着いたペースで物語を紡いで行くのが、EDITORSの流儀。夕方の高速道路を流しながら聴きたい、ロックを素直に鳴らした快作。

Autumn Variations

Ed Sheeran

Autumn Variations

秋をテーマに14人の物語を歌った14曲。恋に落ちる瞬間を描写しながらも哀愁漂うサウンドの「Magical」、小気味良いリズムとは裏腹に重く沈んだ心を映す歌詞が胸に迫る「Plastic Bag」、微笑ましいふたりの些細な幸せを切り取った「American Town」、別れを受け入れられず行き場を失った愛をエモーショナルに歌い上げる「Punchline」、ひとりで過ごす誕生日を切なくも軽やかなメロディに乗せ描いた「The Day I Was Born」など14のリアルなストーリーが、少し感傷的な秋の空気感を纏いパッケージされた。随所に深い悲しみを覗かせる歌詞は前作から通ずるところだが、綴られた美しい言葉たちはより文学的に。ぜひ歌詞カードを片手に聴いてほしい1枚だ。

-

Ed Sheeran

-

10年にわたりリリースしてきた"マスマティックス・プロジェクト"の最終作『-』。妊娠中の妻のガン発覚、親友の急逝、盗作疑惑による裁判と、世界的スターに襲い掛かった数々の苦難は、想像もできないほどの大きな不安や悲しみと同時に、かすかな希望を灯す温かな楽曲たちを生み出した。Aaron Dessner(THE NATIONAL/Gt/Key)とタッグを組み制作された本作は、切実な言葉たちを際立たせるように全体的にシンプルな仕上がりに。柔らかなコーラスやオーケストラによるアレンジは、聴く者の心を浄化するように染み入る。彼自身を救うために曲の中で打ち明けられた苦しみや葛藤。乗り越えようとするのではなく、マイナスな感情も包み込むように抱き共に生きていく、そんな様々な経験を経た彼が行き着いた答えが刻まれている。

=

Ed Sheeran

"ポケモン GO"との異例のコラボも話題のEd Sheeran。そんな彼の最新作は、"="というタイトルの示す通り、デビュー・アルバム『+』(2011年)から連なるシンボル・アルバム・シリーズの集大成ともなる作品だ。今作は、父となったことをはじめ、この間にプライベートで彼に起こった様々な出来事をテーマとしており、ポジティヴなメッセージと共に人生の美しさを感じられる楽曲が詰まっている。また、喜怒哀楽を表すような、「Shivers」や「Bad Habits」といったダンサブルで艶っぽい魅力のある楽曲もあれば、「First Times」のような涙腺を刺激するアコースティック・ナンバー、「Sandman」のようなかわいらしいポップ・ソングもあるのが面白い。

No.6 Collaborations Project

Ed Sheeran

No.6 Collaborations Project

Ed Sheeranは時代の空気を読むのがうまい。というか彼自身がもはや時代の空気そのものなのかも。2011年の『No.5 Collaborations Project』リリース時は、ADELEなど歌唱力の高いSSWが台頭すると同時に、ヒップホップやEDM系の尖ったアーティストたちがヒットを飛ばしていたが、彼はそんなトレンドに片足引っ掛けながらも大衆に媚びすぎない音楽で支持された。そして今作。Justin BieberやBrunoMarsをはじめとしたスーパー・スターを迎えてはいるが、売れ線コテコテのいやらしさはなく、自然体な姿勢が見て取れる。この10年で音楽の消費のされ方は劇的に変化したが、そんななか気軽に消費される完璧なシングル曲を集めて、語り継がれるアルバムを作るというのは奇跡だ。

÷

Ed Sheeran

÷

前作『X』(2014年)で、世界で最も多くのセールスを記録した男性ソロ・アーティストの称号を獲得し、グラミー賞受賞したEd Sheeran。注目の高まるなかでの3rdアルバムだが、自分自身の経験や体験、半径1メートル内の、体温や鼓動も感じるようなソングライティングであることは変わらない。いつ、どんなときにプレイボタンを押しても、心や気分にそっと寄り添う、僕や私の歌を歌う人であることは1ミリもブレていない。そのうえで、歌心だけでなく、ヒップなサウンド・アプローチや新たな感触、モチーフにも恐れずに飛び込んでいく、ポップ・アーティストとしての好奇心や探究心が、アルバムごとに増している。耳馴染みの良さのみではない、やんちゃなこの姿勢もまた、彼がリスナーにもミュージシャンにも愛される所以だ。

Understated

Edwyn Collins

Understated

死の淵から生還した者だけが表現できる、喜びと憂いの甘さと苦味を併せ持った味わい深いヴォーカル、そして繊細で心地良いメロディ……穏やかな暖かさに抱きしめられるアルバムだ。音楽都市グラスゴーの名産といえばORANGE JUICEだが、そのフロントマンで知られるEdwyn Collinsが約2年半振りに通算8作目となるソロ・アルバムをリリースする。2005年に脳出血で倒れた以降は長いリハビリ生活を余儀なくされるが、2007年の『Home Again』での復活作からこうして新作がコンスタントに届けられるとは嬉しい報せだ。ゲストも豪華にLITTLE BARRIEのBarrie Cadogan、SEX PISTOLSのPaul Cookなど。世代を越えて愛される男である。

Wonderful, Glorious

EELS

Wonderful, Glorious

EELSが3部作以来、2年半ぶりの新作をリリース。先行公開されている「Peach Blossom」のようにどでかいドラム&ベースからスウィートなメロディに展開するような鮮烈なナンバーは全体の3割ほどで、他はEならではの内省的で美しいメロディが、ローファイなフィルターを通したグッド・アメリカン・ロックやブルースと融合する、聴くほどに味わい深い楽曲が大半を占める。もちろん、前作『Tomorrow Morning』でも聴けたエレクトロニックなエッセンスもより大胆に導入。今回はE以外のメンバーも曲作りに参加していることも手伝ってか、そうした組み合わせの妙も有機的かつダイナミック。心にしみる哀感と未知の音像がナチュラルに同居するなんてEELS以外、成し得ないだろう。

End Times

EELS

End Times

昨年アルバムをリリースしたばかりなのに、早速フル・アルバムが到着。前作がガレージ・ブルース・ロックとでも言うべき力強さが前面に出ていた反動なのか、今回は穏やかなアコースティック・ナンバーがほとんど。特徴的なのは、ほとんどがドラムレスで、ギター、ベースとうっすらとのるキーボードという編成での楽曲であること。「Gone Man」ではカホン(ペルー発祥の打楽器( 体鳴楽器) の一種)を使っているが、「Paradaise Blues」までドラムは出てこない。つまり、このアルバムはE の歌が剥き出しになったアルバムである。タイトルが『End Times』と冠された意味はまだ分からないが、しゃがれたEの声はいつも以上に生々しく、そして力強い。いくつもの悲しみをポジティヴな歌に変えてきたEという生身の人間の姿がそこにある。

Hombre Lobo

EELS

Hombre Lobo

BECKとともに、ローファイ・ロックを代表するバンドの一つであるEELS。いつの頃からか、僕はEELSという名前に無条件に反応してしまうようになったのだが、4年ぶりの新作となる本アルバムで、リーダーであるEはとんでもない顎鬚をたくわえたブルース親父になって帰ってきた。ひねくれた味わいを持つローファイ・ロックから、ドリーミーなポップ、そして人間臭いローファイ・ブルースまで、Eの奇才っぷりが全開だ。叫んだり、求愛したり、泣きそうになったりするEの男臭くて切ない声。時に優しく、時に荒々しい音からは、哀愁と孤独が滲み出ている。EELSという不器用な性格のひねくれもの集団がまたも届けてくれた愛すべき音楽。どうやら、EELSという名前に無条件に反応する癖は、まだまだ治りそうもない。

Piramida

EFTERKLANG

Piramida

エレクトロニックにオーケストレイションを融合、かつ洗練された歌メロで現在進行形のポップを前作『Magic Chairs』で作り上げた彼らの約2年ぶり4枚目のアルバム。ノルウェイと北極の間にある棄てられた集落での古びたピアノや木道を走る音、燃料タンク、通気口を通した声など1000以上に及ぶフィールド・レコーディングを素材の一部として用いているのがトピックだが、飽くまでそれらの音は楽器やシンセと限りなくシームレスに現れる。"かつてそこにあった世界"を想起しながら創作したアルバムだけに曲のテイストは儚さや切なさといった感情から民族的なビートや音など具体的なサウンドまで様々なもので溢れているが、個々の楽曲はシンプルな構成で、音のレイヤーそのものに浸りたくなる心地よさだ。

Beyond The Mountain

EGG TOP

Beyond The Mountain

2003年に結成されたエモーショナル・ギター・ロック・バンドの注目株であるEGG TOPが1stミニ・アルバムをリリース。平均年齢23歳と若い彼らが奏でるサウンドは初々しくそしてストレートに響く。今年7月にライブ会場のみで先行発表された「Kazaguruma」は疾走感溢れた小気味良いロック・チューンだ。今回のアルバムにも収録されているこの楽曲を足がかりに彼らは各地で注目を集めて行く。このアルバムの中で最も彼らの魅力が発揮されているのは、最後に収録された「Twiright」という楽曲だろう。四つ打ちのリズムに乗って放たれるコーラスはとても暖かい気持ちにさせられる。年末かけてのツアーも始まりさらに彼らの人気は加速していくだろう。

The World

EGNISH

The World

仙台発5人組メロディック・パンク・バンドEGNISHの1年8ヶ月ぶりとなる新作『The World』。ちょうど3.11東北大震災から1年後に発売される今作は、初の全編日本語歌詞で綴られた力強くも優しさに溢れた至極のメロディが詰まった力作である。昨年12月に鈴木志穂(Key&Cho)を正式メンバーとして迎えた事により、一段と表情豊かになったサウンドは、リード・トラックである「Peace Maker」の疾走感、シンセ音とコーラスが心地よい「Bitter End」等から明確に聴き取れるはず。彼らの震災で傷ついた人々と同じ目線に立ち、再び一緒に生きる力を掴もうとする真摯な姿勢と願い、それは間違いなく今作から"世界"へ向けて鳴り響いていくことだろう。

Good Don’t Sleep

EGYPTIAN HIP HOP

Good Don’t Sleep

2010年突如としてシーンに登場し、出身地であるマンチェスターの系譜を受け継ぎながら同世代のダンス・ミュージックを吸収し新たなシーンを担う才能として、当時DELPHIC等と共に注目を集めた彼ら。もうアルバムは出ないんじゃないかという不安もあった中、2年の沈黙を経て今作は届けられた。今作はJames Blake等を発掘したR&Sからのリリース。より洗練されたサウンドとTALKING HEADSを彷彿とさせる様な複雑なリズムとポップ感。リード・トラックである「Syh」は刺激的で今の彼らの魅力を詰め込んだような渾身のトラックだ。ヴォーカルもまた艶やかに魅力を増している。期待のさらりと上回りそしてまた新たな可能性を感じさせてくれる2012年を代表するアルバム。

Discipline

ELECTRIC ELECTRIC

Discipline

2005年に結成されたフランス出身の3ピース・インスト・ダンス・ロック・バンドELECTRIC ELECTRICの4年振りとなる2ndアルバム。ダンス・ミュージックをバンド・サウンドで表現するバンドは数多くいるが、彼らはよりダイナミックで疾走感のあるタイプ。力強くパーカッシヴなリズムのドラムと、テクニカルでサイケの入ったギター・サウンド。そこにミニマルでサイケデリックなシンセが加わる。BATTLES等の直系と言って良い圧倒的で肉体的なグルーヴに持っていかれる。そしてCANやNEU!を彷彿とさせる様なクラウト・ロックの要素が入っているのも魅力的だ。独自のセンスと確かな技術が凝縮された人力ダンス・ミュージック。ヘッドフォンで聴くのも良いけれどこれはライヴで体験してみたい。

Pick-Up, Lift-Off, Space, Time

ELECTRIC EYE

Pick-Up, Lift-Off, Space, Time

こいつはぶっ飛ぶ!ノルウェーはベルゲン出身の4ピース・バンド、ELECTRIC EYEの1stフル・アルバム。60年代サイケデリック・ロックの絡みつくようなアシッド感に、同時期のクラウト・ロックが持つ無邪気で大胆なエクスペリメンタルさ、さらに00年代以降のポスト・ロックが抱えた"意味"と"物語"を切断し虚無を暴くようなストイシズム――そんな古今東西様々な"ロックの向こう側"の音楽を昇華した、超絶ノイジーでスペーシーでハイボルテージなトリップ・ミュージック。ディープな音像を奏でるノイジーなギターの海の中にも、ブルージーな渋みとメランコリックなポップネスを強く残しているところが特にいい。もうなんとなくの逃避なんていらない。無理やりでもいいから、境界線の向こうのヤバい世界に引きずり込まれたい――そんなあなたにおススメ。

The Violent Blue

ELECTRIC PRESIDENT

The Violent Blue

2004年よりフロリダ州で活動を開始したエレクトロ・ユニットELECTRIC PRESIDENTの3rdアルバム。メンバーであるBen Cooperのソロ・ユニットRADICAL FACEで2008年の朝霧JAMに出演を果たした事も記憶に新しく、日本でもかなり人気が高い2人。フォークトロニカやあるいはフリー・フォークとも言われるサウンドの中にロック的ダイナミズムを足しまとめ上げられた楽曲の数々はとてもクオリティが高く心地いい。そして時折顔を見せる遊び心や、ポップなメロディも人気を支える要因の一つだろう。「海」をテーマとした今作はより親密になったサウンド・スケープと楽曲の一つ一つのクオリティの高さに驚かされる。エレクトロニカの新たな傑作。

Never Look Back

ELECTRIC TOUCH

Never Look Back

耳の早いリスナーはもう彼らのことを嗅ぎつけているのではないだろうか。まだ日本デビューこそしていないが、SXSWやCoachellaなど多数の有名フェスに出演し、現在アメリカやイギリスを中心に知名度を伸ばしているのがこのELECTRIC TOUCHだ。イギリス生まれのフロント・マンに、他のメンバーはアメリカはテキサス出身というユニークな構成の彼ら。今作がメジャー1stアルバムになるのだが“Never Look Back(後ろを振り返るな)”というアルバム・タイトル通り勢いのある作品だ。シンセが疾走感を生む骨太で華やかなサウンドはイギリスのパンク・ロックやアメリカのクラシック・ロックへのリスペクトを感じさせる。様々な表情を見せる情熱的なShane Lawlorのヴォーカルが強く胸を打つ。