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DISC REVIEW

P

ベリーハートビート E.P.

the paddles

ベリーハートビート E.P.

大阪寝屋川発の3ピース・ロック・バンド、the paddlesがキャリア初のEP作品となる『ベリーハートビート E.P.』をリリース。粒立ちのいいクリアなサウンドを鳴らすラヴ・ソング「プロポーズ」を筆頭に、ストレートな四つ打ちのロック・チューン「WARNING!」、忘れられない終わった恋の記憶を揺り戻す先行シングル「ブルーベリーデイズ」、温かい音像とグッド・メロディで聴かせる「デイドリームビリーバー」、再レコーディングを行った「幸せ (2023 ver.)」という全5曲が並んだ。EPというコンパクトさゆえに、すべての作詞を手掛ける柄須賀皇司(Vo/Gt)が歌う飾らない言葉と、洗練されたバンドのアンサンブルが、高い純度ですっと身体に入り込んでくる。

efforts

the paddles

efforts

大阪寝屋川発3ピース・バンドの3rdミニ・アルバム。ポジティヴ且つストレートなサウンドに乗せ、どうしようもない日々の感情を吐露する。自身と世界を冷静に見つめているからか、言葉は胸に迫るものがあり、柄須賀皇司の爽やかで耳心地のよい歌声がそれをまた助長するかのようだ。どんな状況でも、それがたとえ"不幸せ"な状況であったとしても、望みを求めさえすれば必ず希望へと繋がる。いつの間にか見つけづらくなってしまった大切なことをそっと教えてくれるかのような「不幸せ」から始まり、不安、焦燥、迷い、苛立ち、矛盾への葛藤は続く。そんな彼らが最後"君が思う幸せが僕の幸せ"(「好きな気持ち」)と歌うからこそ、それはとてもリアルで、美しく響く。小細工なしのど直球な1枚。

THE ERA

the paddles

THE ERA

大阪 寝屋川発の3ピースの2ndミニ・アルバム。感情を爆発させたサウンドに"根拠など どこにもない"、"それでも唸り続ける/魂と愛の歌"と乗せエネルギーを迸らせる「原動力」で始まる。突き進んでいく道にためらい、不安が滲んでも、そのたびに自分の原点的な衝動感やきらめきをもう一度握りしめてまた歩んでいく。そんな決意表明的な曲を筆頭にまっすぐな目線で綴られた曲が並ぶ。ステイホーム期間中に書かれただろう、コミュニケーションの気づきを歌う「シュークリーム」や、大人になったからこそ、目線の温かさが沁みる「カーネーション」など、いずれも些細な日常の有り様かもしれないが、その小さな結びつきが大きなものを生み出していることをてらいなく歌にする。今に刺さる真摯なギター・ロックだ。

EVERGREEN

the paddles

EVERGREEN

大阪は寝屋川発の3ピース・バンドによる初の全国流通盤。高校時代に作ったバンドの最初期曲「ファンファーレ」、ライヴで着実に育っていった「花」は再録バージョンで、その他は今回が初収録の新曲だ。現時点でのベスト的な内容であり、様々なタイプの曲が揃っている。欲しいときにバシッとキマるキメは聴いていて昂るし、中音域で芯のしっかりしたヴォーカルが歌い上げる大らかなメロディもグッとくる。戦隊モノで言うと、レッドのようなロック・バンドとしての王道のカッコ良さをすでに漂わせている彼らだが、陽性のバンド・サウンドと、柄須賀皇司(Vo/Gt)による歌詞とのコントラストにも注目。全7曲は過去にとらわれ、しかし、それでも前を向こうとする人間の姿そのもののようで力強く美しい。

Yours

PAELLAS

Yours

ロック、R&B、ハウス、ニュー・ウェーヴ、AORを飲み込み、進化を続ける4人組が、前作『D.R.E.A.M.』から半年ぶりにミニ・アルバムをリリース。どこまでも淡い音の風景が全然物足りなくないのは、その中で唯一無二とも言える、儚げな歌声で存在感をアピールするMATTONをはじめ、メンバーそれぞれが絶妙なさじ加減で主張しながら、PAELLASというバンドの姿を描き出しているからだ。ラストを飾る「Over The Night」は、そんな彼らの真骨頂。ゴスペルの影響を取り入れながら、6分を超える演奏をじっくりと聴かせたところに確かな成長を実感しているバンドの矜持が感じられる。バンドはこの作品を、"第2章の幕開け"と位置づけているらしい。最後に示した、ほのかな明かりがさらなる飛躍を期待させる。

D.R.E.A.M.

PAELLAS

D.R.E.A.M.

never young beachでも活躍するSatoshi Anan(Gt)が在籍し、今年SPACE SHOWER MUSICとマネジメント契約をしたPAELLAS(読み:パエリアズ)が最新作『D.R.E.A.M.』をリリース。同作品のリード曲「ShootingStar」は、セクシュアルで艶っぽいMATTON(Vo)の声、シンセサイザーの軽やかで洗練された音、そしてモダンな雰囲気を醸し出すエッジの効いたギターの3つが合わさり、煌めく都会の夜を彷彿させる。さらに今作には、Track.5「Fade」のように穏やかさを内包する曲調で聴く人にそっと寄り添う1曲も。活気のある明るい曲が溢れるなか、じっくり自分自身と向き合わせてくれる1枚でもあり、少し大人な過ごし方をさせてくれる色気のある1枚とも言えるだろう。

Pressure

PAELLAS

Pressure

今年元旦リリースのミニ・アルバム『Remember』以来となる新作。チルウェイヴやインディーR&Bを通過したミニマル・メロウという意味では前作の延長線上にあるが、Track.3はシンセ・ポップ寄り、Track.4や11はエコーがかった空間で鳴るプラスチックなファンクといった趣だし、Track.8では80s風のシンセ・ポップからバンドで表現するBPMを落としたハウスのニュアンスまである。いずれにしても、そのミニマルさは楽器の音を吟味した結果なのだろう。MATTONのセンシュアルなヴォーカルとANAN(never young beachも兼任するギタリスト)の時にサイケデリックですらあるフレージングが匿名的なサウンドの中で点滅する光のように瞬く。極めて"薄い"音像だが、ボリュームを上げると1音の生感や色気が立ち上がるのが面白い。

Forever

PAINTED PALMS

Forever

いとこ同士であるReeseとChristopherによって結成された、サンフランシスコ発のサイケ・ポップ・プロジェクトPAINTED PALMSのデビュー・アルバム。エレクトロ色の強いインディー・ポップで、ドリーミーな雰囲気は漂わせつつも抑揚を効かせながら次々とファニーな音を投げ込んでくる。例に出せばタイトル・トラック「Forever」。どことなくTHE BEATLESのコーラス・ワークを彷彿させつつもヒップホップ的なトラック・アプローチをかまし、チルウェイヴというカテゴリや既成概念に囚われない。とても奔放で、演奏者の笑顔が自然と頭に浮かぶような幸福感。朝日がもたらす爽やかな目覚めの感覚に近い、清涼感のあるエネルギーは、聴く者の背中をそっと押すようなポジティヴィティに溢れる。

さようならパイオニア

paionia

さようならパイオニア

東京で活動する高橋勇成(Vo&Gt)、菅野岳大(Ba)、尾瀬松島(Dr)からなる3ピース・バンドのファースト・ミニ・アルバム。繊細な心象風景をポエティックに綴り、叙情的に歌い上げるロックも良いだろう、心に秘めた熱いものをロックンロールのダイナミズムを通して高らかに歌うも良いだろう。paioniaのロックは無垢だ。生まれたままのという意味ではなく、むき出しの純粋な人間臭さが常に宿り、危ういまでに実直さを感じさせる。例えば、このアルバムのリード曲の1つ「素直」では気になる対象への焦燥感を、文字通り“素直”に吐き出し、「何もできない」では包み隠さず自分の弱さを歌い上げる。彼らの物語は始まったばかりだ。是非この音源を聴いていただきたいし、ライヴにも足を運んでいただきたい。そこにあるのは確実に“真実”だから。

Old Goodbye

PAJARO SUNRISE

Old Goodbye

最近こういう心を癒すジェントリィな音楽を聴くとウルッと来て仕方ない。歳のせいかな(苦笑)。それはともかく、スペイン・マドリードを拠点に活動するPAJARO SUNRISEの3rdアルバムが完成!“PAJARO”は、スペイン語で“鳥”の意。一羽の鳥が、穏やかな空気で包まれるサンライズ(朝焼け)の空を往く……。彼らの楽曲は、まさにそんなユニット名どおりの場面に響くのが似合う音楽だと思う。ゆったりしたテンポのアコースティック・ギター、オルガン、弦楽器を始めとする音色は、せわしなく過ぎる時間の流れをしばし忘れさせてくれる。そして、どの曲も“歌心”が素晴らしい。音にも声にも人肌の温かさを感じさせるこんな音楽こそ、本物の“オーガニック”と言うのだろう。KINGS OF CONVENIENCEやIRON&WINEなど、フォーキーで感動的な音楽が好きな人に激推薦!

Fever Dream

PALAYE ROYALE

Fever Dream

3兄弟からなるロサンゼルスのトリオ・バンド PALAYE ROYALE。2022年夏にはKORN、EVANESCENCEとの北米ツアーも実施し勢いに乗る彼らが発表した4thアルバムは、これまで彼らの中核を成していた、グラム・ロックの枠外へとポジティヴに1歩を踏み出した革新的な作品になっている。個性的なRemington Leithの歌声を中心に、オルタナやブリット・ポップなどをより色濃く反映したアレンジ、重厚なコーラスや豪勢なオーケストレーション、そしてモダンな質感を加えた楽曲は、着実なスケールアップを感じさせる。オールド・ロックから近年のラウドロックのファンまで虜にする魅力を持った作品だと言えるし、まずは壮大なロック・オペラを奏でる表題曲からでもチェックしていただきたい。

Boom Boom Room (Side B)

PALAYE ROYALE

Boom Boom Room (Side B)

2008年に結成したラスベガスを拠点とする3ピース PALAYE ROYALEが、約2年ぶりとなる2ndアルバムをリリース。"Fashion-Art Rock"を自称するとおりの派手な出で立ちや、メタル・バンドが名を連ねるSumerianからのリリースということで敬遠される向きもあるかもしれないが、意外にも彼らが鳴らすのは、グラム・ロック/ガレージ・ロックをMY CHEMICAL ROMANCE以降の感性でアップデートしたような力強いロック・サウンド。ざらついたセクシーなヴォーカルは風格たっぷりで、ポルカ調のイントロからパワフルなサビに突入する「You'll Be Fine」など凝った構成も面白い。前作の"Side A"も併せて聴けば、彼らの魅力を堪能できるだろう。

Smitten

PALE WAVES

Smitten

個性的なファッションでも人気のHeather Baron-Gracie(Vo/Gt)率いるPALE WAVESが、4thアルバム『Smitten』をリリース。前作『Unwanted』(2022年)は、BLINK-182等を手掛けたZakk Cerviniによるプロデュースもあって2000年代ポップ・パンクからの影響を感じさせる、盛り上がることを意識した勢いのある楽曲が印象的だったが、今作は方向性をガラリと変え、より自然体に。全体的にブリットポップを現代版にアップデートしたような曲調と、エモーショナル且つロマンチックでありながら、しなやかな力強さを感じるトーンで統一されており、作品のテーマである"クィアの恋愛"がナチュラルでポジティヴに描かれている。

Danger In The Club

PALMA VIOLETS

Danger In The Club

PALMA VIOLETSほど、リスナーの世代によって"懐かしいけどいいもの""まったく新鮮なもの"と印象が二分するバンドも珍しいと思う。目新しい要素の切り貼りより、ロックンロールの奇跡を今の自分の身体と精神を通して具現化する彼らは、真価を問われるこの2ndアルバムでも基本的に不変のスタンスをとっている。Chilli Jesson(Ba/Vo)は本作制作にあたってパンク前夜のレコードを聴き漁っていたと発言している通り、1stにあった、どこか所属レーベルの先輩THE SMITHSにも似た儚さや厭世観は影を潜め、THE RAMONESやJohnny Thundersにも通じる、放蕩者の自由やいい意味でのいい加減さを、ミディアム~スローな楽曲で堂々と鳴らしているのがいい。特にタイトル曲の"締めくくらない"物語性は今どき、稀少だ。

180

PALMA VIOLETS

180

英老舗レーベル、ラフ・トレードの共同経営者が1曲を聴いただけで即契約、デビュー前からNMEの表紙に抜擢など話題の、今UKで最もブレイクが期待されているロンドン出身の4人組バンドのデビュー・アルバムが到着。NMEの昨年の年間ベスト・トラックに選出された冒頭の「Best Of Friends」からラストまで、一気に駆け抜けていくような若さ溢れるエネルギッシュ且つとても英国的なロック・ナンバーが満載。オルガンの音が印象的でポップな彩りを添えているのも魅力的だ。楽曲に見合うようにライヴも相当エネルギッシュとの噂で、初来日となるHostess Club Weekenderでのライヴも大いに盛り上がったのではないだろうか。今後のロック・シーンの活性化のためにもビッグになってほしいバンドだ。

U:II

Pampas Fields Noise Found art

U:II

惜しまれながら2007年に解散した札幌のレベル・ロッカー PAMPAS FIELD ASS KICKERSが、フロントマン サイトウトキヤ(Vo/Gt)のソロ活動を経て心機一転、バンド名もPampas Fields Noise Found artに改め再始動。前身バンドおよびソロ時代のリメイクも含め、1年かけてじっくり作り上げたというこのフル・アルバムを聴けば、SUBLIMEに例えられた前身バンド時代のミクスチャー・ロック・サウンドがもはや、現在の多彩な曲のひとつでしかないことがわかるだろう。UKロック、エレクトロニカ/アンビエント、ダンスの要素に加え、フォークの郷愁も消化した曲の数々が印象づけるのは、このバンドのポテンシャルだ。ここからのさらなる進化に期待。時代の空気を肌で感じながら発したメッセージにも耳を傾けたい。

ベスト盤°2

PAN

ベスト盤°2

新体制となったPANが、結成25周年を記念しリリースする『ベスト盤°2』。初回盤には廃盤となった作品から、再録8曲も含め計10曲収録の"廃盤ベスト"も付属する。PANと言えば20周年のタイミングでもベスト・アルバムをリリースしたが、もちろん今回は名曲「想像だけで素晴らしいんだ」や、今やライヴに欠かせない「ギョウザ食べチャイナ」などの前回ベスト以降に生まれた曲や、過去作からチョイスされた楽曲も再録されてパッケージ(なんと新ドラマーのタツヤいわく1日で13曲レコーディングしたとのこと!)され、7割以上別モノとなっているので、どちらもコレクトしておきたい。ジャケットも1枚目と比べてパンの山が増えているという遊び心もあり、単純明快にリスナーを楽しませる彼ららしい。

ムムムム

PAN

ムムムム

冒頭を飾る「初日ファイナル精神」がこの7thフル・アルバムを象徴しているようだ。事実、今作はこれが最後のつもりで制作したらしく......念のために断っておくが、彼らは解散するわけではない。その心意気で取り組むことが大事なんじゃないかと気づいたそうだ。その意味ではPANの生き様を刻みつけた作品と言ってもいい。よりストレートな演奏で攻め、深みを増したメッセージ性のある歌詞も素晴らしく、1曲1曲個性に溢れた楽曲が並んでいる。10月29日に実施されたファンクラブ限定イベントでは、新曲全曲お披露目会が行われたが(メンバーの曲解説は爆笑の嵐)、どの楽曲も一度聴けば忘れないパンチ力がありつつ、ライヴでよりいっそう映えそうなナンバーばかりであった。ぜひ、今作のツアーでそれを確かめてほしい。

我ニBET

PAN

我ニBET

今年のPANは攻めまくっている。3月にシングル『ザ・マジックアワー』。5月に四星球と中国語で歌い上げたスプリット『包』。そして届いたニュー・シングルは、夏のライヴを掻き回すイメージで作ったそうで、全3曲がアッパーな曲調になっている。表題曲は"自分に賭けろ! 運命に抗え!"という内容の歌詞も熱く、ヘヴィな演奏と疾走感がうまく溶け合い、身も心も焚きつけられるナンバー。「ラジオ体操 第百」は川さん(Vo)がライヴ前にやるストレッチをモチーフに、つい口ずさみたくなるワードがたくさん並ぶユニークな仕上がりだ。「スイカの種」は合唱コーラスを盛り込み、心の中に潜む少年の心が呼び覚まされる明るい音色が最高。3曲通して、テーマ性と"繋がり"を感じさせる流れもよくできている。

包

PAN / 四星球

突如台湾進出を発表した、大阪の賑やかしバンド PANと、盟友である徳島のコミックバンド 四星球。台湾と日本の両国で開催する"台日爆音 BORDERLESS 2018"に彼らが引っ提げていくのが今作だ。両者共に新曲、代表曲、共作曲の全5曲を中国語で歌唱し気合十分。共作の「用小籠包都包起來吧(小籠包で包みましょう)」はPANらしい弾けるメロディック・ポップなサビに四星球お得意の言葉が跳ねるメロと、2組の十八番が融合した印象の、誰もが一発で盛り上がれる曲。中国語に挑戦した影響もあるのだろう、性急な初期衝動が詰まっている。そのうえ終わったかと思えばピアノが流れドラマチック(?)にメンバー全員が語り出し再び歌う展開に、"欲しがるなぁ~"とニヤニヤ。これは前代未聞の何かが起きるかも!?

ザ・マジックアワー

PAN

ザ・マジックアワー

「たまごのうた ~ドン・キホーテ情熱価格編~」であのドン・キホーテとコラボするなど、何かと話題を呼んでいる彼らの最新シングルが到着。今作は飛び道具や遊び心に溢れる楽曲というより、熱いメッセージとシリアスな曲調で真っ向勝負したナンバーが揃った。表題曲はポエトリー調の歌声が新鮮で、胸の奥底に滾る想いがまっすぐ伝わってくる。何かに夢中になったことや、懐かしい青春時代を思い起こさせ、忘れていたものに気づかせてくれる楽曲だ。ハーモニカを導入した「3年後の自分から来た手紙」はシンプルな曲調だが、今もがき苦しんでいる人や悩んでいる人がいたら、大きな勇気を与えられる応援ソングと言っていい。2曲とも温かい気持ちになる名曲だ。「想像だけで素晴らしいんだ」のライヴ音源も必聴!

PANJOY!!!

PAN

PANJOY!!!

4月12日"パンの日"にリリースされる約3年ぶり7枚目のフル・アルバム。シングル「想像だけで素晴らしいんだ」(Track.11)、餃子の王将公認の餃子愛ソング「ギョウザ食べチャイナ」(Track.4)など含む全11曲を収録。今回も「オリジナル」(Track.1)がアパレル・ショップ"SPINNS"と、「たまごのうた」(Track.7)が"JA全農たまご"とそれぞれコラボと話題性もあり聴く前から楽しさ保証済みといった感じで、冒頭から喜怒哀楽のうち"喜と楽"成分多めの楽曲が次々と飛び出してくる。22年のキャリアを積んでも"平凡じゃ物足りない 刺激が欲しくてたまらない"(Track.3「サヨナラオサラバ」)と歌えるバンドマンのかっちょよさと貪欲さに唸らされつつ最高に楽しめる1枚。

具GOODグー

PAN

具GOODグー

結成22年目を迎えたPANのミニ・アルバム、リード曲のテーマはズバリ"餃子"。Track.1「ギョウザ食べチャイナ」は"餃子の王将"公認ソングとして店内で撮影された寿司くん監督によるMVも制作。メンバーが楽器を置いてダンスを披露するなど、やるからにはとことんやるPANのエンターテイメントにかける情熱と遊び心には脱帽するしかない。もちろん楽曲のクオリティも高く、ラップ、スラップ・ベース、ワウ・ギターと、サウンドでこれまでにない試みを行っているのも聴きどころだ。音数が少なく、豪快な演奏で青空の広がりが表現されたTrack.3「短い夏休み」の清々しさも今の季節にピッタリ。Track.6「アフレダス生命」の歌詞には常に新しいアイディアで人を楽しませたいというバンドの姿勢が感じ取れる。

想像だけで素晴らしいんだ

PAN

想像だけで素晴らしいんだ

バンド結成20周年というタイミングで投下された4曲入りニュー・シングルが素晴らしい。特に表題曲は、川さん(Vo)がゆっくり歌い上げるイントロ・パートからグッと胸を鷲掴みにされる。それを経て、アップテンポに加速し、サビの突き抜け具合にも感情移入せずにはいられない。20年という節目に彼らが本当に腹の底で思っていることを歌詞にしているからだろう。楽曲の説得力がズバ抜けている。曲を聴いていると、何でも夢が叶いそうな気がしてくる。いや、まず大きな夢や希望を描くことを大切なんだよ、と熱く語りかけてくるメッセージ・ソングだ。ヘヴィな疾走感がある「やったった感」も楽曲クオリティが高いし、他の2曲も今のPANが最高の状態にあることを伝えてくれるナンバー。傑作!

ベスト盤°(ベストパン)

PAN

ベスト盤°(ベストパン)

結成20周年を迎える大阪のPANから届いたベスト・アルバム。ジャケにもわかりやすく提示している通り、彼ら流に"ベストパン"と読ませる辺りが面白い。今作は2011年に新加入したドラマー・よこしん加入前の音源は再録され、全20曲を現4人編成でレコーディングした内容になっている。バンドの歴史を踏まえながら、最新型の自分たちを見せたい気持ちも強かったのだろう。川さんのヴォーカルは格段にうまくなっているし、演奏陣のプレイもクリアで非常に聴きやすい。ライヴのセットリストを作るような感覚で選曲や曲順も決めたようだが、名曲・珍曲(?)が違和感なく並び、通して聴いてもPANらしいエッセンスが猛烈に伝わってくる。改めて、愛すべきバンドだなと痛感する本気とユーモア・センスに脱帽。

谷口パン ~合言葉はFUNKY 802!!!~

PAN

谷口パン ~合言葉はFUNKY 802!!!~

大阪を拠点に活動するロック・バンドPANとDJ MARK'E(マーキー)こと谷口 雅之により結成された"神出鬼没のヒーローバンド"のデビュー・シングル。番組での共演をきっかけに意気投合したとのことで、とにかく明るくポジティヴに音楽を発信しようという意志は清々しくもある。表題曲はまさに特撮ヒーロー番組のテーマ曲そのままの、血沸き肉躍るドラマティック且つ笑える楽曲に仕上がっており、それぞれのヒーロー名も紹介されている(マーキーの名前は"カレー")。カップリングには「心のバッティングセンター with マーキー」も収録。来年結成20周年を迎えるバンドとFM802を代表する大ベテランDJのフットワークの軽さは大阪ならでは。

ヒズム ハズム リズム

PAN

ヒズム ハズム リズム

1995年結成以来、大阪を拠点に活動する4人組ロック・バンドの5枚目となるフル・アルバム。主催するフェスMASTER COLISEUMでは2日間で7000人の動員を記録するなど、ライヴ・バンドとして人を巻き込む魅力があることに納得させられる内容となっている。冒頭のリード曲「天国ミュージック」、「今日だけ祭り」をはじめ、とても"今日だけ"とは思えないパーティー・サウンドを立て続けに放りこんでくる様は、やはり大阪ならではのエネルギーなのだろうか。「金なんていらない」の後にすかさず「金くれ!」と歌うのは初期RCサクセションと同様の手法が伺えるが、シニカルさよりも能天気さが感じられるところが徹底していてさすが。心地よいレゲエ調の「夏の日のロッケンロール」、大阪・新世界を連想するような「my name is...」まで一気に聴けるエンターテイメントな1枚。

Tomboy

Panda Bear

Tomboy

上野動物園にパンダが復活した時同じくして、USインディのイノベーターANIMAL COLLECTIVEの創始者であるPANDA BEARも復活!ソロ作としては実に4年ぶりの新作が完成した。前作『Person Pitch』はPitchforkで07年のベスト・アルバムに選出され、さらにサンプラーを駆使し繰り広げた独創的な"揺らぎ"の高揚感は、現在のCHILLWAVEを示唆したものだったが、本作はサンプラーの厳しい制約にうんざりし、NIRVANAとTHE WHITE STRIPESを考えギターとリズムに重点を置いたという。大胆なサンプリング感覚は後退し、シンプルな構造ながらダビーなアレンジで陰影に富んだ音響構築がそびえ立つ。これはミックスを担当したSonic Boomの存在も大きいだろう。ややダークなトーンが漂うなか、木霊するような独自の柔らかいエモーションが流れる......それはまるで"鳴りの抱擁"のように。

Viva Las Vengeance

PANIC! AT THE DISCO

Viva Las Vengeance

P!ATD=Brendon Urieのルーツとも言える、ラスベガスをテーマとしたパーソナルな内容のアルバム。今作は、前作『Pray For The Wicked』(2018年)の派手に作り込んだファンキーでダイナミックな雰囲気とは少し変わって、親しみやすいポップ・サウンドが特徴的。ロック色が強く、生音感、バンド感の前面に出たサウンド面でもルーツに挑戦する内容となっている。QUEENを彷彿とさせるドラマチックなロック・オペラには、ピュアに全力で音楽を楽しむBrendon Urieの姿勢が見て取れる。エネルギッシュで繊細な感情表現もあるヴォーカル・ワークも相まって、彼のポップ・センスが存分に発揮された、シンプルに楽しめる楽曲が並んだ痛快なアルバムだ。

A GIRL SUPERNOVA

PANIC SMILE

A GIRL SUPERNOVA

17年目を迎えたPANIC SMILE。僕が彼等を知ったのは、10年前。僕の上京後、初めてのライヴがNUMBER GIRLとPANIC SMILEだった。だから、その日のことはよく覚えていると言いたいが、NUMBER GIRLのことしかあまり覚えていない。免疫のなかった当時の僕は、PANIC SMILEの変なビート、変なテンションによるぶっ飛んだ音楽に、ショックを受けたことはよく覚えている。そして、本作でもPANIC SMILE節の首も腰も膝もカックンカックンしてしまうビートは健在。「Girls On Floor1」などでは奇妙な歌心も披露しているが、そこも含めてとにかく自由だ。そして、PANIC SMILEはいつ聴いても不思議と風通しがいい。これをポップと言わずに何と言う。

Sunny Side Up

Paolo Nutini

Sunny Side Up

2006年にデビューしたスコットランドの若きSSW、PAOLO NUTINIのセカンド・アルバム。いきなりROLLING STONESの前座に抜擢されるなど、デビュー当時からその才能を高く評価され、最近では、THE VIEWの新作にも一曲、ゲストで参加もしている。デビューアルバムも確かにいい作品だったが、正直なところ、こんなに深みのある作品を創るとは思っていなかった。OTIS REDDINGやTOM WAITSといった至高の歌い手を彷彿とさせる深みと、若々しいポップセンスが見事に同居している。ソウルフルなバラードからニューオリンズ、そしてスカまで、様々なジャンルに挑んでいるが、どんなスタイルにおいても、彼の才能が遺憾無く発揮されているタイムレスな作品集。

Hello,Manmade Mermaid

PaperCloud

Hello,Manmade Mermaid

現役大学生のベッドルーム・ミュージック・ソロ・プロジェクトだそうだが、エレキもアコギもギターへの偏愛がきっとこの人の音楽を独特のものにしているのではないだろうか。基本的に繊細なアルペジオや心地いいコードが鳴りつつ、ビートがいい意味で拙かったり、ギター主体でありつつインディーR&B感のある歌メロが登場したり、韻踏み遊びがラップのフロウを生み出しつつリズムはマス・ロックだったり。なぜか自由なはずの宅録がチルアウト・ヒップホップばかりなご時世、この"自分の脳内にあるものを気持ちいいほどコラージュしまくる"感覚は爽快ですらある。しかも日本のギター・ロックに馴染んだ耳にもすんなり入るはず。且つ、新鮮な東京の切り取り方という意味では"2022年のサニーデイ・サービス"のようですらある。

【nd】

papersyndrome

【nd】

4人組ロック・バンドpapersyndrome。彼らの1sミニ・アルバム『【nd】』が、タワーレコード限定でリリースされる。読み方は“ヌード”。バンドにとって初音源である本作は、かき鳴らされる轟音に潜む精神性、衝動が爆発し、サディスティックかつエネルギッシュ。まさに一糸まとわぬサウンドを響かせるバンドの最大の持ち味は、なんといっても白石のヴォーカル・スタイルだ。シューゲイザーとも形容できるノイジーなギター・サウンドに、白石の絶叫とも言える血気にはやる歌声は痛快。反骨精神すら感じられるヘヴィなサウンドは、闇を切り裂き疾走する光のような力強さを放っている。強烈なサウンドを轟かせる7曲は、聴く者の心に不思議に小気味よい余韻を残していくはずだ。

Losing Sleep

PARACHUTE

Losing Sleep

全米においてアルバム発売前にiTunesアルバムチャート1位を獲得したり、日本でもデビューを前にしてFUJI ROCK FESTIVAL' 10の参戦が決定したりと、日本でも注目度が高いバージニア出身の5人組PARACHUTE 。日本デビュー盤となる『Losing Sleep』は“ 次のMAROON 5”とFly Magazineに称されたほどだ。そしてヴォーカル、Will Andersonの透き通るような歌声にゾクゾクさせられる。恋愛について赤裸々に歌い上げた恋の教科書みたいなアルバムで、特に1曲目の「She Is Love」は繊細なバラード調のラブソングだが、女子だけじゃなく男子にも聴いてもらいたい。きっと何か思い出すかも…。

Foreign Tapes

PARADES

Foreign Tapes

これは面白い。このデビュー作はANIMAL COLLECTIVE、FOALS、SIGUR ROS、PASSION PIT、DEERHUNTER、YEASAYER などの、ゼロ年代後半の優れたインディ・ロック達の長所だけを取り外し、組み合わせて、それらが走馬灯のように頭を駆け巡る、総復習的な内容になっている。だがこのシドニーの青年達はそれだけに留まらず、彼らの独自の異次元的なハーモニー、トライバルで疾走感溢れるビート、至る所で見受けられる実験性などを、諸先輩方の叙情性・レイヴ感・サイケデリック感と絡み合わせることにより、サイケデリック・ミュージックとポスト・ロックとエレクトロ・ポップの交錯点を紡ぎ出すような意欲作に仕上げた。もう完全に予測不可能になった十年代の音楽未来予想図は、まずは彼らが見せてくれそうだ。

G⇔P

GO TO THE BEDS & PARADISES

G⇔P

GANG PARADEから分裂したG(GO TO THE BEDS)とP(PARADISES)が、全メンバーをトレードして"トレード・スプリットEP"を完成させた。ゴリっと歪ませたロックやダンス・サウンドを主軸としてきたGと、"WACKの楽園"を掲げて自由度高めに活動してきたP。それぞれの道で表現力を培ってきたからこそ、両グループの代表曲がトレード前後で驚くほど印象の違う仕上がりになっている。新曲は2曲。テラシマユウカがGで作詞をした「merry bad end」、ヤママチミキがPで作詞をした「you」は、それぞれが互いに贈った手紙のように思えてつい深読みして聴いてしまう。いつも予想外の活動で驚かせてくれるこの2組は、今回のトレードを経てどうなるのか。次の一手にも注目だ。

大事な歌

PARADISES

大事な歌

新メンバー"キャ・ノン"の加入、月ノウサギがレンタル移籍から帰還、そしてウタウウタの脱退――大きな変化を迎えたPARADISESの1stシングル。「大事な歌」は、バンド・サウンドで爽やかに駆け抜ける1曲だが、歌い出しの"約束したことも/共に歩いた思い出も/一瞬で消え去るってことを知った"という言葉がグループの今にリンクする。とはいえ"流れぶった切っちゃってグイグイ行かなきゃ"と歌うあたりは実に頼もしい。c/wは月ノ作詞の「Season Song」。多くの出会いと別れを経験したからこそ、真実味と重みを持った言葉と歌が心に沁みる。何があっても"行かなくちゃ/どこへでも/行かなくちゃ"と前を向いて歩き続ける"WACKの楽園"の明日が、雲ひとつない青空のように澄み渡ることを願う。

PARADISES RETURN

PARADISES

PARADISES RETURN

新メンバー ウタウウタの加入、そして月ノウサギが所属事務所 WACKの別グループ WAggへレンタル移籍し、新体制となったPARADISESの1st EP。表題曲は、サウンドもメロディもエモーショナルな方向に振られているが"どこの誰よりも何よりも金よりも/大事なことは/踏ん張って踏ん張って/あきらめない気持ちだけさ"と歌う歌詞は、意外にも泥臭く、そして熱い。メロディでいい意味の違和感を与え、中毒性が高いアッパー・チューン「アレキシサイミア」や、ぶっ飛んだ歌詞を歌うドリーミーなポップ・ソング「cry wanna」など、フレッシュで、型にはまらないWACKの楽園らしい1枚。6曲中3曲で作詞を手掛けたウタウウタの才能が、今後のグループにどんな変化を起こしていくのかも楽しみだ。

PARADISES

PARADISES

PARADISES

GANG PARADEから分裂する形で生まれたWACKの新グループによる1stフル・アルバムは、セルフ・タイトルの"PARADISES"="楽園"を体現する1枚に。温かなサウンドと4人のフレッシュな歌声が聴き手を優しく包み込む「終わらない旅」や、"私絶対キラメくさ"と高らかに歌い上げるポップ・ロック・ナンバー「TWINKLE TWINKLE」は、聴いているうちに自然と心が開放的な気分になった。古き良きJ-POPを彷彿させる「ズルい人」のサビメロとコーラスには引き込まれたし、メンバーのピュアな歌声は、「青い春」のようなラヴ・ソングとの親和性もバッチリだ。全体として耳馴染みのいい1枚は、既存のWACK SLAVEだけでなく、リスナーの裾野をさらに広げていくだろう。

Petals For Armor

Hayley Williams

Petals For Armor

PARAMOREのシンガー Hayley Williamsの初となるソロ・アルバムは、メンバーも制作に関わっているものの、PARAMOREで築いたオルタナ・ロックの歌姫というパブリック・イメージを覆すような作品となった。アルバムは3部構成で、RADIOHEADやBjörkを髣髴させるダークでウェットな楽曲が並ぶ第1章、80sエレクトロ・ポップを軸に徐々に前向きさを取り戻していく第2章(Track.9には若手女性SSWのスーパー・グループ BOYGENIUSがコーラスで参加)、エレポップ/ファンクに乗せて再び前進していく第3章と、感情の移り変わりとともに多彩なサウンドを展開。Hayleyの歌唱も実に表情豊かで、パーソナルな歌詞と併せて、彼女の新たな側面に触れることができるだろう。