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DISC REVIEW

H

Every Weekend

HADOUKEN!

Every Weekend

2007年、"ニュー・レイヴ"と呼ばれたブームの火付け役として彗星のごとく登場したHADOUKEN!。若さ故の勢いをそのままパンキッシュなダンス・ミュージックに落とし込み、デビュー当時は異端の存在感を放っていたが、2ndアルバム『For The Masses』ではTHE PRODIGYからの影響を伺わせる本格派のエレクトロ•アルバムに。今作もその流れの延長線にあるが、計算し尽くされた曲構築の完成度は圧倒的にパワー・アップ。全ての曲に、今をときめく様々なDJ/トラック・メイカーにプロデュースを依頼したのも勝因だろう。突き抜けたパーティー・チューンだけでなく、イギリス特有のシニカルで緊迫感を感じさせるダーク・チューンもあり、更にダブステップの要素も積極的に捉えた結果、バラエティに富みながらも不思議な統一性のある仕上がりとなった。Jamesのシンガーとしての成長も目覚ましい進化を遂げ、2013年の幕開けに相応しい、エレクトロ•アルバムの誕生だ。

For The Masses

HADOUKEN!

For The Masses

Skream!読者の皆さんは、HADOUKEN!に対してどんな印象を持っていましたか?最近のエレクトロ系として聴くにはクールさが足りなくて、インディ・ロックというよりはラウドロックに聴こえたのでは?しかも、例えるならばRAGE AGAINST THE MACHINEというよりは、LIMP BIZKITみたいな。ちょっとうるさ過ぎるし、BPMも速過ぎるって思ってたでしょ?でも、今回の新作は、ヴォーカルのJamesが言っている通り、断然RATM側に近くなってると思います。単純に、音的に言えば、俄然THE PRODIGY寄りに。BPMは大分落ち着いて130前後のものが多くなり、強烈なフックが少し薄れた分、ビートが太くなって、ダンス・ミュージックとしての機能が超倍増されてます。手放しでかっこいい!

Full Circle

HÆLOS

Full Circle

ブリストルやマンチェスターを感じるロンドン出身とは。この時代に珍しくも一聴しただけでUKと断定できた純度の高い初作。MASSIVE ATTACKやPORTISHEADといったトリップ・ホップがよぎるが、サンプリングやダンス・ミュージック/ヒップホップ的な要素は希薄で、バンド・サウンドを意識したトラック・メイキングになっている点は2010年代的だ。また紅一点のArthurDelaneyが、CHVRCHESや SUNFLOWER BEANのような同世代男女3人組とは違い、バンド・アイコンとして突出するでもなく、全員フラットにヴォーカルをとる光景も新鮮。すでにイギリス各地のフェスも沸かしており、今後、曲の幅の広がりも見えれば新たなUKシーンの旗手となりうる。

星見る頃を過ぎても - The BEST of H△G

H△G

星見る頃を過ぎても - The BEST of H△G

結成10周年を記念して制作されたベスト・アルバム。新曲2曲やインディーズ楽曲の再録3曲を含む、全16曲を収録。青春パンクをルーツに持つコンポーザーを中心に形作られていった楽曲群はどれも純度が高く、凛としたきらめき、胸をキュッとさせる切なさ、痛みを連想させる。当初はギター・ロック・サウンドが主だったが、オーガニックなアコースティック・サウンドやジャズ、サンバにも手を伸ばし、表現の幅を広げながら、日本の音楽特有の風情、言葉の美しさを追求した10年だった。今作からはその軌跡を感じ取ることができる。そのうえで集大成に留まらず、バンドの"この先"を想像させる内容になっているのが嬉しい。様々な曲調に1本の筋を通すChihoのヴォーカルも見事だ。

瞬きもせずに+

H△G

瞬きもせずに+

昨年3月にアルバム音源、ライヴ映像、ミュージック・ビデオを収録し、H△Gのクリエイティヴィティをトータルで表現した、新世代パッケージBlu-rayディスク・アルバムとしてリリースされた『瞬きもせずに』のCD化作品。アルバムに収録されていた12曲に加えて、ドラマ"ハルとアオのお弁当箱"主題歌「5センチ先の夢」など、3曲が追加収録される。移りゆく春夏秋冬の中で経験する別れや悲しみを受け入れ、夢に向かって突き進むという『瞬きもせずに』のストーリーに新たな要素が加わったことで、H△Gが放つポジティヴなパワーがより強く浮き彫りになった。中でも言葉遊びのサビが軽やかに踊る「卒業の唄」は、人生は卒業の連続であるというH△Gの永遠のテーマに触れる珠玉のポップ・ソング。

瞬きもせずに

H△G

瞬きもせずに

フル・アルバムは『青色フィルム』以来約2年ぶり。収録曲は春夏秋冬の流れに沿って配置されていて、四季の光景や、それとともに移り変わる登場人物の心情が音や歌、詞を通じて丁寧に描かれている。風情ある表現を大切にしてきたH△Gの魅力を存分に堪能できる作品だ。特に印象深かったのは、2声の声質やミュートをかけた金管楽器の音色で儚さを演出する「夏のまぼろし feat.ま に こ」、クールな音像でありながらゴスペルに通ずる幸福感もある「青より蒼し」、アコースティック・ギターをフィーチャーした「夢の轍」。温かみや仄暗さを表現する術が増えたことにより、作品としての深みや、"あなたの弱さはあなただけの強さにもなり得る"というメッセージの説得力が増している。

宵待ち花火

H△G

宵待ち花火

今年3月からデジタル・リリースを重ねているH△Gが、8月にも新曲をリリース。"りんご飴"、"綿菓子"、"金魚掬い"といったワードが私たちを一気に"あの夏"へ連れていく。花火大会を舞台にした男女のストーリーを描いたこの曲において、ピアノやストリングスは恋の儚さを、バンド・サウンドは高揚感を表現。両面を滑らかに行き来するChihoの歌声は聴き手の心にスッと入り、それぞれの思い出を呼び起こすような不思議な力を持っている。編曲はこれまでにもH△Gの楽曲を多数手掛けてきた宮田"レフティ"リョウ(イトヲカシ/Ba/Gt/Key)。歌詞は男子/女子バージョンの2種類制作されているが、このシングルのリード曲は男子目線の内容となっている。MVは2バージョン公開されるのでそちらにも注目だ。

エガオノカナタ

Chiho feat. majiko

エガオノカナタ

タツノコプロの創立55周年企画となるアニメ"エガオノダイカ"のオープニング主題歌として、愛知を拠点に活動するコンポーザー&クリエイター集団、H△Gのヴォーカリスト Chihoと、シンガー・ソングライター majikoのスペシャル・ユニットで放つシングル。作曲/編曲に宮田"レフティ"リョウ、作詞に小説家の牧野圭祐を迎えた表題曲「エガオノカナタ」は、アニメに登場するふたりの主人公"ユウキ"と"ステラ"が持つ光と闇のコントラストを、Chihoとmajikoというキャラクターの違うツイン・ヴォーカルで見事に表現した。カップリングにはふたりがクラシカルでホーリーな歌に挑戦した「星巡讃歌」を収録。このコラボでなければ決して生み出すことのできない唯一無二の世界観を作り上げている。

青色フィルム

H△G

青色フィルム

昨年7月にメジャー・デビューした"青春"をコンセプトにしたコンポーザー&クリエイター集団"H△G"のメジャー1stアルバム。"卒業"をテーマにした本作の特徴は、なんといってもサウンドが多彩なこと。Yamato Kasai(Mili)、宮田"レフティ"リョウ(イトヲカシ)、ORESAMA、708(ハローモンテスキュー)といった親交の深いアーティストが楽曲提供をしているため、また、メジャー進出をきっかけに起こったH△G自身の進化が自作曲に反映されているため、とにかく曲調の幅が広いが、それらに1本太い芯を通すChihoのヴォーカルも頼もしくていい。現時点での集大成的な温度感をまといながらも、これからに懸けるH△Gの可能性を押し広げるような、快作の誕生だ。

イタズラなKiss と ラブソング。

H△G

イタズラなKiss と ラブソング。

明るく甘酸っぱい声の女性ヴォーカル Chihoを中心としたコンポーザー&クリエイター集団 H△Gのメジャー2ndシングル。映画"イタズラなKiss THE MOVIE3~プロポーズ編~"の主題歌である表題曲、そしてカップリングの「約束のうた」は同映画にインスピレーションを受け制作されたもの。とはいえ、ウェディング・ソングとしてもクリスマス・ソングとしても捉えられるようなサウンドメイキングなど、タイアップの世界観に寄せつつも、適度に普遍性が保たれている。デビュー以来タイアップ続きというのも納得の、絶妙なセンスが光っている。さらに秦 基博「キミ、メグル、ボク」のカバー、表題曲の英語バージョンも収録。ボリュームたっぷりの作品となった。

夏の在りか

H△G

夏の在りか

永遠の17歳をコンセプトに青春期の葛藤や胸の痛み、蒼さを言葉やサウンド、デザインで表現しているコンポーザー&クリエイター集団がメジャー・デビュー。名前にある"△"にちなんで、新曲3曲を書き下ろし、内容が異なる3形態でのリリースなど"3"をキーワードに展開されたシングルとなった。優雅なストリングスと晴れやかなChihoの声がパワフルなTrack.1は新しい世界へ飛び立つためのファンファーレのよう。Track.3は繊細なコーラス・ワークや各楽器の巧妙なリズムが混ざり合うなど、これまでのH△Gとは異なるアプローチで引きつける。初回限定盤A、BにはZONEの「secret base ~君がくれたもの~」のカバーを収録。隅から隅までポジティヴな夏の青春が描かれている。

H△G × ORESAMA

H△G × ORESAMA

H△G × ORESAMA

H△G恒例のスプリット・アルバム、今回のパートナーは80sディスコをエレクトロやファンク・ミュージックでリメイクした新しいダンス・ミュージックを作り出す2人組のORESAMA。H△Gは新曲でクリスマス・ソングに初挑戦し、渋谷を拠点に活動するORESAMAとのスプリットということで東京をテーマにした楽曲を制作。ORESAMAはH△Gの持つ"青春"というカラーに合わせ、新曲としてすでにライヴでよく披露していた楽曲と、東京の若者をテーマにした楽曲を収録している。これに加えて互いのカバー曲も収録しており、それぞれでカバーの解釈や手法が異なるところも面白い。音楽ジャンルは異なる2組だが、どちらもポップ・ソング。1枚で2組が作る現実と理想の狭間の世界を感じられる。

HaKU

HaKU

HaKU

解散を表明したHaKUのラスト作となるベスト・アルバム。インディーズ・デビュー作『WHITE LIGHT』収録の「光」から、昨年TVドラマ"監獄学園 -プリズンスクール-"オープニング・テーマに起用された「衝動」までの彼らの代表曲に、新曲2曲を加えた全17曲を収録している。メランコリックな空気とダンス・ビートが交錯する初期曲から、オープン・マインドなアプローチへと移行し、音楽的挑戦をしていく様は、バンドの刻んだ9年間の走馬灯のよう。ラストを締めくくる新曲「ファンタスティックミラーボール」はバンドのハッピー・エンドを飾るに相応しい、肩肘張らない軽やかな音像が印象的な、まさに名の如しの楽曲だ。囁くように歌われる"光は届くよ"という言葉に満ちた愛情が琴線に触れる。

衝動

HaKU

衝動

人気コミックを実写化したドラマ"監獄学園-プリズンスクール-"の書き下ろしオープニング・テーマを表題に掲げたシングル。Track.1のようにロックとポップとダンスが三位一体となったサウンドはバンドの十八番だが、音の隅々に"衝動"の要素を感じるものが多い。特に太い音色を聴かせるドラムはこの曲のキーで、人間的なダイナミズムが心地よいグルーヴを生んでいる。ギター・リフを筆頭に上モノの味つけも細部まで華やかでファンタジックだ。ウェットな辻村有記の歌声と透明感のある三好春奈の歌声が織りなす交錯やコントラストは、男女間の駆け引きや温度差、本能性を如実に表す。4人それぞれが鍛え上げてきた武器とバンドの特性をフルに使った楽曲。アウトロのパワフルな疾走もドラマティックだ。

I HEAR YOU

HaKU

I HEAR YOU

前作『シンバイオシス』はHaKUが以前から貫いていたポリシーの極限と、"共に生きる"ことをテーマに掲げるというバンドの心境の変化が同居した作品となった。そして彼らはそこで見つけた"聴き手がいてこその音楽"を突き詰めるためにより自由な表現を求め、自らに課していた制約をすべて振りほどいた。ベーシストの三好春奈が初めてリード曲のメイン・ヴォーカルを務め、Track.3にグッドモーニングアメリカの渡邊幸一をゲスト・ギタリストに招き、適材適所でシンセを用い、過去曲のリミックスをトラックメイカー/DJのbanvoxに依頼するなど、より自分たちの音楽の可能性を広げている。結果、歌やメロディの強さもプレイヤーの個性も際立った。非常に表情豊かでエモーショナルな、HaKUの攻めの姿勢を存分に味わえる。

シンバイオシス

HaKU

シンバイオシス

1年以上の歳月をかけて向かい合った"シンバイオシス"="共生"というテーマを掲げた2ndフル・アルバムは、既発曲5曲を含む全14曲という大ボリューム。だがまったく飽きさせることなく、ドラマティックに情景を変化させていくのは1曲1曲のサウンドのポテンシャルの高さの賜物だろう。より鋭く洗練された音色はクリアに、肉体的に迫りくる。そのサウンドはフロントマン辻村有記の"人に伝えたい"という想いが導いたものだ。シンガロングできるパートや、聴き手に向けて語り掛けるような詞、女性視点で描かれたものなど遊び心もふんだんで、これまでのHaKUの作品のなかでもかなり歌の力を強く感じる楽曲が揃っている。純粋な想いと知的好奇心が作り上げた、スケール感のある慈愛に満ちたロック・アルバム。

the day

HaKU

the day

4月リリース予定の2ndフル・アルバムからの先行シングルを配信限定でリリース。この曲は昨年6月に開催された『wonderland』のリリース・ツアーで初めて新曲として公開された曲で、そのときから観客を引っ張っていくポジティヴなパワーに溢れていたのが印象的だった。フロントマンの辻村有記はこの曲のことを"右端に振れた曲"と語った。核の部分ではない、振り切った状態だからこそ見せられる昂ぶりが、この曲には存在する。1日の流れを表現したドラマティックな展開に、一聴して耳に残るツイン・ギターのリフ。そして人を交わり、真っ直ぐ見つめたことで芽生えた素直な想いが詰まった歌――そんなあたたかい気持ちが聴き手に寄り添う。HaKUならではの応援ソングに仕上がった。

dye it white

HaKU

dye it white

iTunes限定でリリースされたデジタル・シングル。表題曲のほか、海外デビュー盤のボーナス・トラックとして収録されたTrack.2と2013年6月に渋谷CLUB QUATTROのライヴ音源6曲の計8曲を収録している。表題曲は"白に染まれ"と歌われている通り、バンド名が持つ"白"がモチーフになっている。その白を"自由"として捉え、彼らが辿り着いたのが"共生"というテーマ。肉感のあるダンス・ビートと、ハード・ロックさながらに鮮やかなギター・リフが堂々と響く。透き通るヴォーカルとコーラス・ワークもふとした瞬間に感情的な側面が牙を剥くなど、遊び心も抜群。フロントマンの辻村有記が"これからの原点となる曲"と語るように、聴き手の心と体に訴えかけるライヴ感のある楽曲だ。

wonderland

HaKU

wonderland

疾走感の高いビートにのって、景色が目まぐるしく変化をしていく。その加速する風を体感するTrack.1「ショウガイレンサ」。Vo/Gt辻村のハイトーンは性急さと、輝きを増しながら、聴き手をぐっと掴んで、彼らの描く世界に連れ立って行く。デビュー・アルバムから8カ月を経て、4人のサウンドはタフになった。豪快と言ってもいい勢いで、ポップな旋風を生みだし、或いはスリリングなドライヴをしながら、ワンダーランドへと突入していく感覚だ。ダンサブルなビート、グルーヴは軸となっているけれど、サウンドスケープは広い。ミニ・アルバムというサイズだからこそできるような、振れ幅の広さと試みのある曲が揃っているけれど、なにより伝わってくるのは作り手の高揚感。そのテンションがワクワクする色やエネルギーを生んでいる作品だ。

Simulated reality

HaKU

Simulated reality

大阪を中心に活動する4人組ロック・バンドのメジャー・デビュー・アルバム。ザ・ビートモーターズやTHE UNIQUE STARとのスプリット・ツアー等で既にご存じの方も多いと思うが、その特徴はシンセやコンピュータを使わないエレクトロ・サウンドだ。そのメインとなるのは、やはり多彩な音色で浮遊するギターだろう。ギターだけでここまでできるのかと思わず舌を巻く。そして跳ねるドラムがダンサブルに楽曲をまとめ、ハイ・トーンのヴォーカルは楽曲をリードするというより楽器の1つとしてサウンドに溶け込んでいる。新人というには違和感を覚えるクオリティ、デビュー前からマレーシアのJ-ROCKイベントに出演する等、話題性も十分! ロック・リスナーを語るのであれば、チェック必須のニュー・フェイスである。

throw

Hakubi

throw

片桐(Vo/Gt)が紡ぐ真正直な言葉と、美しくリアルで切実な歌声。歌に乗せた想いや感情を丁寧になぞる、ヤスカワアル(Ba)、マツイユウキ(Dr)の構築する独創的な楽曲世界。バンドの振り幅を大きく広げた2ndフル・アルバム『Eye』を経ての今作は、"自分にしかできない表現"に立ち返った原点回帰的な気持ちと、ここまで培ったキャリアやスキルを存分に発揮した高い表現力から生まれた、Hakubiならではの世界観を堪能させてくれる。自分の言葉かのように深く胸に突き刺さる、片桐のパーソナル且つネガティヴなワード。誰にも言えない想いが音楽と共に昇華されて、少しだけ気持ちが楽になる。眠れない夜、今作にひとりどっぷり浸るのもいいが、「Decadance」、「Heart Beat」といったライヴ仕様の楽曲を生で体感するのもオススメです!(フジジュン)

救いを求める情景が鮮明な2ndフル・アルバム『Eye』と地続きにある印象のミニ・アルバム『throw』。しかし今作では自身を内省した先にある"空虚"への解像度がこれまで以上に高く、形容し難い感情を真正面からパワフルに歌い上げた全7曲が収録される。エモーショナルな片桐(Vo/Gt)のヴォーカルと感情を吐露する歌詞に加え、アップビートな疾走感溢れる「Heart Beat」やピアノ・アレンジが染みるバラード「拝啓」など、幅広いアプローチで構成された叙情的なサウンドは、孤独や焦燥を抱えた"心"そのものを映す。一人称ベースの詞世界が聴き手の心にも向き合うのは、心情を描いたテーマのみならず、バンドとして前進してきた過去があるからだろう。ふたつとない未来への舵を切っていくHakubiの原点回帰的アルバムとなりそうだ。

Eye

Hakubi

Eye

昨年以降コンスタントにシングルを発表してきたHakubiが、それらを含むアルバムをリリース。内澤崇仁(androp/Vo/Gt)とタッグを組んだ経験も功を奏し、バンドの世界観が着実に構築されてきた印象だが、同時に聴き手へメッセージを届ける意志も滲むようになった。はやるテンポと鍵盤、言葉を捲し立てるヴォーカルが印象的な表題曲をはじめ、これまでにないHakubiを切り拓く新曲も存在感がある。そしてつぶやくような片桐の歌がグッと距離感を縮めると同時に、消え入りそうな"さよなら"が危うくてドキッとさせる「サイレンと東京」からラスト3曲で畳み掛けていく。無情な世界で傷ついていないふりをする自分に嫌気が差しながらも、"いつか"と微かな光を探す、リスナーと共に生きるバンドの姿勢を示す作品。

結 ep

Hakubi

結 ep

"夜中、あなたに寄り添う音楽"をコンセプトに活動中の京都発3ピース・ロック・バンド Hakubiが5枚目のEPをリリース。片桐(Vo/Gt)が一歩踏み出す決意を、今の自分自身へ喝を入れる気持ちで書いたという本作は、全3曲がそれぞれ違う色を持ち、新たなバンドの姿を見せてくれる1枚になっている。リード曲「22」は、前EP収録の「17」に続くバラード。17歳のときに書いた歌を手紙として受け取った22歳の彼女が綴った、等身大の想いのようにも思える。ドラマチックなピアノの音が加わった壮大なバンド・サウンドに乗る、片桐のまっすぐで美しい歌声が胸に刺さる1曲だ。そして新機軸な「Friday」とバンドの決意が窺えるライヴ・チューン「ハジマリ」も必聴。Hakubi第2章の幕開けも感じられる。

white disc +++

halca

white disc +++

昨年5月にTVアニメ"ヲタクに恋は難しい"のEDテーマ「キミの隣」でメジャー・デビューを果たした新世代シンガー、halcaの企画ミニ・アルバム。今作はインディーズ盤『white disc』に新曲4曲を加えることで、halcaの"始まり"と"現在地"の両方を堪能できる作品になった。kz(livetune)がプロデュースを手掛けたテクノ・ポップ「Hail to the world!!」などの既存曲のほか、新曲としては、作詞作曲を手掛けたコレサワがコミカルなタッチで描く女心がキュートな「君だけ」や、松隈ケンタがプロデュースを手掛けた癒しのロック・バラード「GOING CRAZY NIGHT」を収録。表情豊かに楽曲へと憑依するhalcaが新たな境地を切り拓く。

〆

Half-Life

結成14年目となる3ピース・バンドの4枚目のフル・アルバム。自ら"挫折、解散危機を乗り越えた苦労人バンド"と名乗るだけあってタイトルの「〆」(シメ)という意味深な1文字が気になってしまうのだが、アルバムを紐解くとゼロ年代以降のバンドらしいミクスチャー・ロックからの影響を感じさせるサウンドにまず惹き付けられる。ライヴで鍛えられてきた確かな実力を証明しているギュッと締まった演奏がとても良い。特に抜けの良いギターが聴けるTrack.5「kiss me」、己自身に問いかけるように激しく心情を吐露するTrack.4「後悔処刑」といった曲はライヴで聴いてみたい。しかしなんといっても曲名からは想像できないめちゃめちゃソリッドなカッコイイ曲、Track.2「げきおこぷんぷんまる」がイチオシ。

身体と心と音楽について

Half time Old

身体と心と音楽について

格段のスケールアップが頼もしい4thフル・アルバム。"成長"をテーマに鬼頭大晴(Vo/Gt)が書き進めていった曲の数々を、曲によってはアレンジャーも迎えつつ、メンバー全員でアレンジしていった結果、これまで以上に広がった曲の振り幅は、今回Half time Oldの4人が成し遂げた成長と考えるべきだろう。ホーンも鳴る「Night Walker」、2ビートも使った、畳み掛けるような演奏が痛快な「dB」、ロック・バラードの「Come Morning」というふうに、曲ごとに相応しいアレンジやサウンド・メイキングを追求しているから聴き応えは満点。「Night Walker」をはじめ、自家薬籠中のものにしたファンキーなサウンドは今後、バンドの新たな持ち味になっていきそうだ。

ステレオアーモンド

Half time Old

ステレオアーモンド

"au三太郎シリーズ"のCMで話題になった「みんな自由だ」が収録されたHalf time Oldの6枚目のミニ・アルバム。"希望"の花言葉を持つアーモンドを冠した今作は、こんな時代だからこそネガティヴな気分を吹き飛ばすように、"人生は謎解きなんだぜ"(「スターチス」)と軽やかに歌い、"一生を冒険と呼んで"(「なにもの」)と力強く訴える。ユニバーサル ミュージック内のレーベル ZEN MUSICに移籍し、環境は変わっても、鋭く温かな筆致で綴る鬼頭大晴(Vo/Gt)が自問自答の歌を大切にしたバンドの本質は何も変わらない。コロナ禍も含めたきれいごとのない現実に向き合い、メンバー全員の地力を上げることで、"最新が最高"を掴み取った今作を聴くと、バンドへの信頼感はますます深まる。

CRISP YELLOW

Half time Old

CRISP YELLOW

インディーズながら、au三太郎シリーズのCMソング「みんな自由だ」に抜擢され、お茶の間への知名度を飛躍的に広げたHalf time Old。前作から約1年ぶりにリリースされるミニ・アルバムは、"君は間違ってないよ"と背中を押す青春パンク「雛の歌」、心地よいグルーヴで揺れる「2020」、裏打ちのリズムを賑やかに刻んだロック・ナンバー「OverEats」など、これまで以上にバラエティ豊かに振り切った7曲が並んだ。そこに貫かれるのは、ヴォーカル 鬼頭大晴がこのコロナ時代に抱いたリアルな想いだ。中でも、七転び八起きの人生を肯定するフォーク・テイスト「達磨」が胸を打つ。理不尽を受け入れ、そこから何度でも立ち上がろうとするしなやかな希望の色は、今作全体に通底するメッセージだと思う。

宅配便で現実を送りつけて

Half time Old

宅配便で現実を送りつけて

ライヴ映えする楽曲が多く収録された前作『真夜中の失踪に聡明と音楽』から、約10ヶ月ぶりにリリースされるミニ・アルバム。長くサポート・ベースを務めた内田匡俊(Ba)が正式メンバーに加入して、4人体制となったHalf time Oldが完成させた今作は、バンド本来が持つ幅広い音楽性を全開放したバラエティ豊かな1枚になった。誰もが平等に"死"へと向かう"生"の必然を歌った「アナザーロード」から、壮大な愛のナンバー「愛の真ん中」まで、全7曲が独立しながらも、全曲通してソングライティングを手掛ける鬼頭大晴(Vo/Gt)の人生哲学が密接に絡み合う。今まで以上に日常の景色を歌詞に盛り込みながら描き出される人間の姿は、欲望と自意識の強さに悩み、どこまでも滑稽で、愛おしい。

真夜中の失踪に聡明と音楽

Half time Old

真夜中の失踪に聡明と音楽

前作『発見と疑問』のモードを引き継いで、Half time Oldが完成させた渾身のロック・アルバム。今作では、「ほたる」と「ミニマリスト」の2曲でセカイイチの岩崎 慧(Vo/Gt)をサウンド・アレンジャーに迎えた。その「ほたる」で"僕達は愛の間に生まれた自由だ"と歌われるように、大人になるほど常識に縛られ、身動きできなくなってしまう自分自身に抗い、自由を求めるムードが全編に漂っている。ボーナス・トラック「嵐の中で貴方に向けた歌」(オリジナルは2014年のアルバム『and ACE』に収録)のピアノ・バージョンも素晴らしいし、多くの言葉を費やしたアルバムのタイトルが"真夜中の失踪に聡明と音楽"というのも意味ありげで、いくらでも深読みさせてくれるのも彼らの音楽の面白いところだ。

発見と疑問

Half time Old

発見と疑問

より生々しく、人間らしく、毒も希望もないまぜにしたロック・アルバムが完成した。前作『人生の使い方』から1年ぶりにリリースされるHalf time Oldのニュー・アルバム。"こんな事歌詞にするべきか/悩んだけどせっかくなので"と歌い出し、決して飼い殺しにはならない人間の本能を剥き出しの言葉で綴った「忠犬ヒト公」など、今作では全曲のソングライティングを手がける鬼頭大晴(Vo/Gt)に詩人としての大きな変化を感じた。目の前にある現実を取り繕わずに活写しようとするそのスタンスは、よりソリッドに削ぎ落とされたロック・サウンドにもリンクする。私たちは何を目指し、なんのために生きるのか。その根本を探すバンドの姿勢は変わらないが、今作のHalftime Oldはいつになくリアルだ。

人生の使い方

Half time Old

人生の使い方

"自分が何者かもわからない日々を生きてきた"――そんなふうに歌うリード曲「シューティングスター」を皮切りに、Half time Oldが初のフル・アルバム『人生の使い方』で描き出したのは、ときに自分を見失いながらも、誰かとの出会いや別れを繰り返し、たまには世の中への皮肉を抱きながら生きる、そんな複雑で愛すべき人生の断片だ。その世界観はフロントマンで全曲のソングライティングを手掛ける鬼頭大晴(Vo/Gt)のパーソナリティを色濃く反映させつつ、あくまで普遍的なポップ・ソングとして成立させるのがHalf time Oldの流儀。もはや何が幸福かもわかりづらくなった時代にあって(「幸福病」)、それでも私たちは明日を笑うために生きるのだと、今作は小さな気づきを与えてくれる。

A-Z

Half time Old

A-Z

名古屋発のロック・バンド Half time Oldが自主制作盤3枚を経て、このたび1stシングルをTOWER RECORDS限定でリリース。家族、恋人、友人などの近しい相手とふとケンカしてしまったときの攻撃性を、"ロック!ソング!ダンス!"を合言葉にしたパーティー・チューンへと転換する「アンチヒーロー」。崩れてしまった関係性に対する後悔と悲しみを託すバラード「a.o」。"ひとり"に立ち返ることで得られた感情をそのまま発露する「おひとりさま」。3曲ともサウンドの色味は異なるが、起承転結の"承"、"転"、"結"をそれぞれが担いながら、ひとつの物語を描いている。シングルでこれだけ魅せてくれるならばもっと曲数の多い作品ではどうなるのか、興味が湧いた。

ANATOMIES

Halo at 四畳半

ANATOMIES

メジャー・デビュー作『swanflight』から1年3ヶ月ぶりとなるフル・アルバム。タイトルに"解剖"や"分析"という意味を掲げた今作は、これまで"人間を人間たらしめるものはなんなのか?"という根源的なテーマに向き合い続けてきたハロが、そのテーマをより深く掘り下げる意欲作になった。人間を"身体"と"心"とに分解したときに見えてくる二面性、あるいはもっと複雑に絡み合う様相を、詩人 渡井翔汰(Vo/Gt)が丹念に言葉で語り尽くす。サウンド面では「イノセント・プレイ」と「蘇生」の2曲で、前ミニ・アルバム『from NOVEL LAND』に続き、出羽良彰をプロデューサーに起用。これまで以上にダイナミックで深遠なサウンド・アプローチに、このバンドの飽くなき探求心を感じた。

from NOVEL LAND

Halo at 四畳半

from NOVEL LAND

昨年10月のメジャー・デビューから8ヶ月。バンド最大キャパとなるマイナビBLITZ赤坂でのワンマン・ライヴも成功させたHalo at 四畳半の4thミニ・アルバム。出羽良彰がプロデュースを手掛けたリード曲「リビングデッド・スイマー」や、壮大且つ深遠な「メイライト」をはじめ、これまで以上に大胆にシンセや打ち込みのサウンドを導入した今作は、バンドの可能性を押し広げる意欲作になった。ハロらしく宇宙を連想するワードがあちこちに散りばめられた歌詞には、やがて燃え尽きる命の期限を想いながら、自らの運命を掴み取ろうという闘争心が滲む。ここ数作で獲得した緻密なサウンド・プロダクションが充実の季節を迎えつつ、同時に爆発した抑えようのない衝動がロック・バンドらしくていい。

swanflight

Halo at 四畳半

swanflight

テーマは"悲しみ"。それを悲嘆するだけではなく、人生の糧として引き連れてゆく、そんなメッセージを託したHalo at 四畳半のメジャー・デビュー・フル・アルバムだ。ピッピッピッ......と心電計が無機質に一定のリズムを刻むような「ヒューズ」に始まり、自分だけのヒーロー像を模索する寺岡呼人のプロデュース曲「ヒーロー」、ダンサブルなビートに乗せて自分自身を騙す嘘を吐き捨てるような「擬態」、"終わり"という名の未来に向けて命を燃やす「アルストロメリア」、そして優しく物語の幕引きを告げる「魔法にかけられて」まで、どの曲が欠けても成立しない全12曲。一切妥協なく磨きあげた楽曲には、ライヴハウスで生まれ育った、紛うことなきロック・バンドであるという彼らの誇りと矜持が詰まっている。

Animaplot

Halo at 四畳半

Animaplot

タイトルは、Animaとplotを組み合わせた造語で、"生命の構想図"という意味。この作品でHalo at 四畳半が問い掛けるのは、"「人を人たらしめるもの」は何か"という内省的なテーマだ。ロボットと人間の違い、身体の左に心臓があるか、夢や希望を抱けるか、いつか命が尽きるかどうか。時に寓話的な切り口を使いながら、あるいは独白のようなかたちをとりながら、それぞれに独立した全7曲は、まるで共鳴し合うように私たちに深い疑問を投げ掛けてくる。かつてないほどに様々な楽器とサウンド・アプローチを取り入れながら、辿り着くラスト・ナンバー「点描者たち」で導かれるハロなりの答え。そこまでに紡いできた6つの物語が、最後の1曲を美しく響かせるために存在していたかのように思わせる結末は、あまりにも感動的だ。

BLACK WINE

HANCE

BLACK WINE

"大人の、大人による、大人のためのシネマティックミュージック"を掲げ、洒脱でイマジネイティヴな音楽を編み上げていくHANCEによる2ndアルバム。40代でアーティスト・デビューをした異色の存在だが、社会のなんとなくの常識に構うことなく好きなものを追求していくその贅沢さが、アルバムに詰まっている。アイディアを形にするのは、培ってきた経験や知識であり、磨いてきた美意識。ポップスやロック、フォークやエレクトロ・ミュージック、また映画音楽などからの影響はもちろん、様々なアートや旅、人とのコミュニケーションで日々生まれる心の機微が、ビターな隠し味が効いた甘美なメロディとなって紡がれる。時をかけて熟成されたワインが、誰かとの会話や時間を豊かにしてくれるように、この音楽も饒舌で味わい深い。

Will The Guns Come Out

HANNI EL KHATIB

Will The Guns Come Out

全くの新人ながら、今年6月にNIKEの世界キャンペーン・ソングに抜擢され、7月にはCONVERSEのCMソングに。一体何者ぞ? 何と彼はスケートボーダーであり、スケート・ブランドHUFのクリエイティヴ・ディレクターだった経歴を持つ、音楽界の異端児なのだ。歌、作詞作曲、全ての楽器をひとりでこなす彼が作り出すミュージックは、ブルース、ガレージ・ロック、ソウル、フォークととにかく様々。音楽だけでなくスポーツは勿論、映画や写真、いろんなことに興味があって仕方ない!全部音楽の中に放り投げちゃえ!ってな感じで気張らず自由に音で遊んでいるようだ。手作り感のあるちょっとローファイなサウンドも、彼のキャラクターを身近に感じられる。音に合わせて巧みに表情を変えるヴォーカルにも注目。

HELLO

HAPPY

HELLO

キラキラと飛び跳ねる音に、ぐっと心を掴んでそのまま惹き込んでいく最高にHAPPYなメロディ。初めて彼らの音源を聴いたときにも感じた、このどうしようもなく心が躍る感覚を、彼らの1stアルバム『HELLO』でも感じ取った のは、彼らのサウンドがまた一段と深みと広がりを増していたからだ。既にリリースされている2枚のシングルはもちろん、新録された既存曲たちのパワー・アップ具合がそのことを物語っている。また、音楽をただただリスナーに降り注ぐだけではなく、その楽曲でリスナーを引っ張っていく力も感じられるのは、3月のSXSWを含むUSツアーなど、様々な場所での経験が成長に繋がった証だろう。自分たちの音楽をしっかりと確立させた彼らの今と、これからの可能性が詰まった快作だ。