DISC REVIEW
F
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FABLED NUMBER
ELEXGAME
プロデューサーにSxunを招聘して制作されたミニ・アルバムは、FABLED NUMBER史上最大火力を誇る1枚に! ヘヴィなギターと凶暴なエレクトロニクスをエネルギッシュに畳み掛けていく「Symphonies Of The Dawn」や、猛然と突き進んでいく2ビートを軸にした「After A Storm Comes A Calm」など、どれもキャッチーさは保持しながらも攻撃力が格段にアップしている。「The Sundown」のようなド派手なEDMとラウドなバンド・サウンドを掛け合わせた彼ららしいポップネスに溢れた楽曲もあるが、それでも手触りはかなりハード。これが2ndデビュー作と言ってしまっても過言ではないほど、瑞々しさや野心に満ち溢れまくっている超快作だ。
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FABLED NUMBER
Millionaire
2017年にメジャー・デビュー、その年に2枚のアルバムをリリースした大阪の6人組が1年2ヶ月ぶりに3作目のアルバムをリリース。メジャー・デビュー後、多彩な表現に挑んできた彼らが原点回帰を掲げ、2018年6月にリリースしたシングル『I Bet My Life(or Death)』の延長線上で、ライヴでファンとシンガロングすることを強く意識し作り上げたような全12曲が収録されている。ラウドロック×EDMというコンセプトそのものに変わりはないし、エレクトロニックなサウンドの使い方もこれまで同様のセンスの良さを感じさせるが(ここ大事)、メランコリックなバラードも含め、エモーショナルな歌モノのロックという打ち出し方は、より幅広いリスナーにアピールできそうだ。
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FABLED NUMBER
I Bet My Life(or Death)
昨年、メジャー・デビューを飾るやいなや、立て続けに2枚のアルバムをリリースしてきた大阪の6人組が自身初となるシングルをリリース。2枚のアルバムで、"EDM×ロック・サウンド"を追求する自分たちの可能性を、いろいろ試してきた経験を踏まえたうえで、今一度、原点に回帰。新たなバンドの決意がタイトルから窺える表題曲は、ライヴハウスに足を運ぶファンが盛り上がれることをまず一番に考えた結果、FABLED NUMBER史上、最もアッパーで、最もアンセミックな1曲に。サビの歌から始まる構成や掛け合いのコーラスという新たな試みはライヴでこそ、その威力を発揮するに違いない。その他、やはりアンセミックな魅力を持つダンス・ポップの「Windshield」と「夜の鼓動」のリミックスをカップリング。
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FABLED NUMBER
A Revolutionary
ミニ・アルバムとしては前作『The DIE is cast』以来、約2年ぶりとなる3作目。今回は、タイトルにある革命家の名に相応しくチャレンジがあって、前進するエネルギーが高い作品になっている。また歌詞には日本語詞も多く用いられ、「世界は君に鳴り響く」や「Dancer In The War」などは、初めての日本語詞でありながらも違和感なく、むしろ日本語のリズムをもサウンドのアクセントとして活かしている感覚。流れるようなエレクトロ・サウンドの、ポップなフックとして耳を惹く。このキャッチーさが、高い温度感、昂揚感のあるサウンドの、さらなる起爆剤として機能するのではないかと思う。もともとあるバンドの攻撃性やエッジ、ラウドなパンチ力といったものを抑えることなく、ポップ性を磨き上げ、高次元で化学反応を起こしたアルバムだ。
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FACTORY FLOOR
JPN
今ロンドンで最もヤバい3 人組のデビュー・アルバムが遂に完成。デビュー・アルバム発売前にも関わらず、既にFUJI ROCK FESTIVALやALL TOMORROW'S PARTIESなどいくつかの大型フェスへの出演が決定しているFACTORY FLOOR。ロックの巨匠THE VELVET UNDERGROUNDと元祖テクノ・ポップKRAFTWERKを混ぜ合わせ、さらにアナログ・シンセやテープ・マシーン、ノイズ寸前の歪みを効かせ、少々ニヒリズムを織り込んだサウンドには高い芸術性を感じる。類を見ない実験的で、計算し尽された巧みな構成に、寡黙なメロディが溶け込みなんとも心地が良い。モンスター・バンドにまた出会ってしまったと思わせる一枚。
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FACTORY FLOOR
Talking On Cliffs
ロンドンのアンダーグラウンド・シーンで絶大な支持を集める3ピース・バンド、FACTORY FLOORのデビュー・ミニアルバム。無機質で実験的なミニマル・ビートの上で漂う、囁くようなヴォーカル。反復されるビートと輪郭を保持しないアブストラクト・サウンドに身を委ねていると、徐々に神経が麻痺していくような感覚に陥ってしまう。初めて聴いた時、何故だか死にたくなった。音楽を聴いて死にたくなったの、久しぶりなんですけど。「もう止めて!あ、でも・・・止めないで」みたいなマゾヒスティックな感覚まで抱いてしまう。NEU!もJOY DIVISIONも呑み込み、THESE NEW PURITANSをさらにディープに推し進めたような劇薬級のポスト・パンク。
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FAITH
Sweet Error
前作から1年3ヶ月ぶりとなる2ndアルバム。今作までに、"Pre-independence Diary("私"をみつけるために)"をテーマに配信シングル3部作をリリースしてきた。音楽的な挑戦をしてサウンドをアップデートし、既存の枠組みを壊していく作業と同時に、歌詞の面ではより内省的に、これまで言葉にならなかった観念的なことを掘り起こしながら、言葉に、歌にしていた。その過程は、今回のアルバムに美しい実りをもたらしている。90年代のインディー・ロックから、さらに懐かしいタッチのソウルやポップスから受け継いだ普遍性を軸に、"今"の感性やアレンジ・センスで聴かせる曲が並ぶ。Mori ZentaroやESME MORIといったクリエイター陣とも好相性で、輝きのあるアルバムになった。
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FAITH
Capture it
軽快で、リラックスしたギターのカッティングと気持ち良く身体を揺らすようなビート&コーラスの「Party All Night」でスタートし、19歳の現在のリアルな心境を綴った伸びやかなポップ・チューン「19」や、アコースティックからパンキッシュな曲、Akari Dritschlerによる内なるエモーションを自由に解き放っていくヴォーカルが冴える「Caught Up in Time」など幅広い曲が揃う。メジャー初アルバムの今作は、高校生の頃から5人で育んできたキャッチーでポップなロック・サウンドを、さらに一歩推し進めて繊細なアレンジを施し、今の想いをエヴァーグリーンなメロディとサウンドで包み込んでいる。メンバー全員が20歳になる2020年。その記念碑的な美しくまばゆいアルバムだ。
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FAITH
Yellow Road
甘酸っぱさやほろ苦さなど心くすぐるグッド・メロディと、パワフルでいてしなやかな柔軟性のあるサウンドで、パンク~ポップなロック・チューンを奏でる5ピース、FAITHの2nd EP。活動の密度が濃くなって創作欲が刺激されているのだろう。臆することなく幅広い曲を貪欲に噛み砕いてポップに吐き出した作品だ。表題曲は、武器であるブライトなメロディとアカリ ドリチュラー(Vo)の透明感のある歌を、力強いアンサンブルが後押しする。90年代USオルタナやインディー・ロックの空気感があるサウンドが気持ちいい。レイドバックしたサウンドで恋の痛みを綴る「Stargazer」は、切なくも甘美な思いすらもかき立てる。どの曲もリスナーが自由に心を寄せるエアリーな空間や余韻があるのがいい。
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FAITH
UN
10代限定フェス"未確認フェスティバル2017"のファイナリストに選出され、1stミニ・アルバム『2×3 BORDER』は、ストリーミング・サイトでも注目のニューカマーとなった男女混合バンド、FAITH。ポップ・パンク、USインディー・ロックをベースにした爽快なギター・サウンドと、アカリ ドリチュラーの甘さもクールさもある伸びやかなヴォーカル、そこにガレージにたむろしては音楽を聴いたり曲を作ったりして遊んでいるような(※想像)、バンドのいい空気が音に練り込まれている。青春映画にハマりそうなポップな毒っぽさも、胸をくすぐる。ニューEP『UN』は、よりエネルギッシュな曲とグッド・メロディのキャッチーな曲が中心。5人で作るという、彼らの会話が音になった心地よい間合いや遊びが詰まっている。
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FAITH
2×3 BORDER
"未確認フェスティバル2017"でファイナリストとなった5ピース・バンド FAITHが、セルフ・プロデュースした初の流通盤。英詞ながらも耳に残るワード・センスと、心打たれるまっすぐなサウンドで、平均年齢17歳の現役高校生とは思えないほどの仕上がりに。ドリチュラーあかり(Vo)のフレッシュな声で、夢に向かって進み続けるひたむきな想いを伝えた「Bana Pla」や、じわりと胸に染み渡るセンチメンタルなサウンドの「distance」では、彼女たちの想いがストレートに伝わってくる。さらに、「DON'T FALL」では、オルタナティヴな世界観且つグルーヴィなサウンドで大人な一面も。立ち止まっていないで、とにかく一歩踏み出そうと思える――あなたを奮い立たせてくれる1枚。
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FAITH NO MORE
We Care A Lot - Deluxe Band
1982~1998年まで活動し、その後も何度か復活ライヴが行われ、2015年には新作『Sol Invictus』をリリースしたFAITH NO MORE。単なるリユニオンという思い出に浸るのでなく、現在進行形で、その奇妙奇天烈な世界をディープに掘り下げ、拡大していくミクスチャー・サウンドが進化を遂げていることを知らしめ、圧巻のバンド力を見せたが、今回は彼らの初期作のリマスター盤をリリース。Mike Patton(Vo/1988年より参加)加入以前の、Chuck Mosleyがヴォーカルを務めていた当時の1stアルバム。Mike加入以降で、さらに独自の音楽に発展していった感があるが(MR. BUNGLEなどの活動もあって日本では特に変態っぽいイメージが色濃くあるMikeだが)、その萌芽ともいえる実験性や、オルタナティヴな音楽性の面白さを楽しめる。
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FAKE BLOOD
Cells
SINDEN、HERVEらとともにフィジェット・ハウス・シーンで頭角を表したグループ、MACHINES DON’T CAREとしても活動。2007年以降はUNDERWORLD、Calvin Harrisらのリミックスを手がけたことでも知られるFAKE BLOODことTheo Keating待望のデビュー・アルバム。太く重いブリーピーなベース・ラインはフロア仕様だが、音作りはどこかダークでシニカル、時に恐怖さえ感じさせる要素が盛りだくさんで、それを物語的に聴きこんでいく楽しみも。サックスやバルカン・ブラスなど管楽器の使い方がリフ的で面白いのだが、どれもひび割れたようなサウンドが不穏。それでいて唐突に「I Feel Love」っぽいラインが登場したり、「Sideshow」で日本の子ども?の声による合いの手が入ったり「Phantom Power」はホラーな中にもユーモアが覗くあたりも心憎い。
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FAKE TYPE.
FAKE SWING 2
和楽器を融合させた「Toon Bangers feat.DEMONDICE」。ケルト音楽を融合させた「ヨソモノ」。古からの民族音楽と、最先端のエレクトロ・スウィングを掛け合わせた2曲が象徴しているように、FAKE TYPE.だけの楽曲を生み出していくという果敢な挑戦が随所に見えるアルバムとなっている。nqrseや花譜などフィーチャリング・アーティストも豪華だが、エンターテイメント性を広げるだけではなく、トラックやリリックの意味を深めるために招いていることが、聴いているとよくわかる。高速ラップなどの実力も遺憾なく発揮しながら放たれる、リアルもファンタジーも昇華したメッセージがスウィングするダンス・ミュージックに乗って、踊るように日々を生きるエネルギーをくれる快作。
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FAKE TYPE.
FAKE LAND
音楽ユニット、FAKE TYPE.が約3年半の休止期間を経て発表する復活作。マジカルでちょっと怪しい、ジャジーなエレクトロ・スウィング・サウンドは、まるでディズニー映画でヴィランが愉快に歌い踊るシーンが思い浮かぶような、とびっきりの異世界感に溢れている。そこにトップハムハット狂の表情豊かでこれまたキャラクター性の強い声とフロウが乗ると中毒性抜群。表題曲が、ひと癖あるオンライン脱出ゲーム"封鎖された魔王城からの脱出"のテーマ曲に抜擢されたのも、頷くばかりだ。そんななかで際立つのが、自らのリスタートを歌う感傷的なラスト・トラック「はじまりの背中」。リリックに散りばめられた彼らの足跡を示す言葉たちは、この新たな一歩がこれまでと地続きであることを示す、誠実な姿勢の表れだろう。
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FALL OUT BOY
So Much (For) Stardust
ロック・シーンの最前線を走り続けてきたFOBが、ついに今年デビュー20周年を迎える。今作は、そんなアニバーサリーに相応しく原点である古巣 Fueled By Ramenに帰還し、さらには初期の3作品を手掛けたNeal Avronをプロデューサーに迎えて制作された。そんな経緯もあって、前作『M A N I A』(2018年)のようなEDMを強く意識したアプローチは少し抑えめに、どちらかと言えば『Infinity On High』(2007年)や『Folie À Deux』(2008年)あたりのような、バンド演奏に主軸を置いたグルーヴィでダンサブルなロックを貫いている。加えてシンセ・アレンジや壮大なオーケストレーションを盛り込むことで、アップデートされたFOBを印象づける作品となった。
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Far apart Daily life
VERSATILE
2009年に現メンバーとなった4人組ロック・バンドFar apart Daily lifeの2ndフル・アルバム。インスト曲「obsidian」や変拍子を織り交ぜた曲の構成が凡百の四つ打ち流行曲とは一線を画している「Agitate」など、一筋縄ではいかない各プレイヤーのテクニカルな演奏が楽しめる一方で、クリアな音質とヴォーカルの声の相性も良く、3.11をテーマとした「You are not alone」を筆頭にメロディアスな曲調とシリアスな歌詞が耳に残る。全員で行なっているコーラス・ワークも見事で、タイトル通り多面的でプログレッシヴなサウンド・プロダクションは完璧で圧倒される。音楽を糧に生きていくスピリットを感じさせるバンドだ。
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Fated Lyeno
justice before the dawn
2010年の1stミニ・アルバム『get over trials』から4年。この間に活動休止やメンバー交代など曲折を経たが、昨年現メンバーの3ピース(ドラムはサポート)になりパンクmeetsジャズのハイブリッド・サウンドを磨き進めてきたFated Lyenoによる渾身の新作が完成。エモーショナルなメロディや、ギターによる鋭く細やかなフレーズ感、ドラマ性のあるサウンド展開などバンドの名刺部分は残して、活動の空白期間を埋めながら、ビター&スウィートな魅力が加味された。ファストなビートでアグレッシヴに突き進むけれど、ぐっと叙情的。テクニカルだったり攻撃的な面よりも、遊び心と言えるようなさりげなくも耳にひっかかる隠し味がきいている。力の入った作品だけれども、ちょっとした余裕というか、引きの美しさがいい塩梅では。
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Fated Lyeno
get over trials
和歌山出身のメロコア・バンドのファースト・ミニアルバム。2008年の結成から、関西を中心に活動を続け、昨年のSUMMER SONICオーディションでは最終選考まで残るなど、着実に人気を獲得してきた彼ら。メロディは正統的なメロコアと言えるが、自在に変化するリズム隊のタイトなプレイヤヴィリティと、転調を繰り返し曲の表情を変えていくアレンジの多彩さは、聴いていて面白い。疾走感に溢れたメロコアらしい泣きのメロディにしっくりとはまるヴォーカルと、転調の中に時折顔を出すどこか大人びた叙情性の相性もよい。二十歳という若さで、このアレンジ力と演奏力の高さは、これから先どういうバンドに成長していくのか楽しみです。メロコアという枠に留まらない進化を見せてもらいたい。
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FAT PROP
Leap of Faith
約3年半の沈黙を破って、FAT PROPがリリースする6thミニ・アルバム。教会風のオルガンに導かれるように始まるFAT PROP流サーフ・ミュージックなんて言えそうなTrack.1「Take Your Time」に、"おっ!?"と思っていると、終盤にはQUEEN風に展開してFATPROPの帰還を高らかに宣言。そこから正調ピアノ・エモのTrack.2「Fault」に繋げると、あとはファンキーなTrack.3「Tricks」の他、ブラック・ミュージックからの影響も交えながら、ピアノ・エモのひと言に収まりきらないリッチなサウンドをアピール。Track.4「LuminousWorld」のアカペラを始め、ダイナミックなバンド・サウンドに溶け込ませたハーモニーは大きな聴きどころ。思えば、彼らは昔からアダルト・オリエンテッドな洗練さを持ったバンドだ。
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FAT WHITE FAMILY
Songs For Our Mothers
サウス・ロンドンの荒くれもの6人による3年ぶりの2ndアルバム。カントリー・サイケ・ガレージなサウンドとダーティなビートで反体制を歌い、破壊行為もいとわない狂気的なライヴで登場し、瞬く間にオーバーグラウンドまで上り詰めた彼ら。本作でその攻撃性はそのままに、じっくり腰を据えてサウンドを構築していった印象。「Satisfied」では共作にSean Lennonを迎え、キャッチーではあるがダウナーなメロディはまるで荒廃しきったTHE BEATLESの「Yellow Submarine」だ。HOMESHAKE、Travis BretzerなどのMac DeMarco周辺がAORやポップなサウンドで登場する中、彼らと共鳴するローファイな部分はあれど真逆の方向に振り切ってしまった愛すべきチンピラ野郎どもだ。
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FEEDER
Torpedo
UKのみならず日本でも高い人気を誇るFEEDERの、約2年半ぶり11作目となるオリジナル・アルバム。前作『Tallulah』では瑞々しいロック/ポップ路線を鳴らしていたが、コロナ禍以降に制作された楽曲を収めた本作では、重々しいディストーション・ギターが前面に打ち出されている。長尺曲のTrack.1を皮切りに、低重心なリフから美しくアンセミックに響き渡るコーラスへと展開し、ヘヴィネスと開放感の間を揺れ動く強力ナンバーを揃えた一方で、Grant Nicholasの歌声が映えるアコースティックな楽曲も収録。FEEDERらしいキャッチーさをしっかりと残しながら、初期から近年のスタイルをハイゲインでまとめ上げた本作は、最近ご無沙汰だというリスナーにこそおすすめしたい。
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FEEDER
All Bright Electric
メンバーであるGrant Nicholas(Vo/Gt)とTaka Hirose(Ba)がそれぞれに取り組んでいたバンド外活動を経て、前作『Generation Freakshow』から約4年ぶりにリリースした9作目のアルバム。美しいメロディと轟音で鳴るギターはFEEDERらしいと言えるものながら、そこに中期のTHE BEATLESを連想させる展開を加えた1曲目の「Universe Of Life」から奥行きがあるというか深みのあるアプローチの曲が並んでいる。ハンドクラップとともに跳ねるリズムが印象的なTrack.4「Paperweight」、どこかウェスタン風のTrack.6「Oh Mary」、FEEDER流のダンス・ナンバーと言ってみたいTrack.10「Holy Water」など、曲ごとに趣向を凝らした、日本盤ボーナス・トラックを含む全14曲は聴き応え満点だ。
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FEEDER
Generation Freakshow
昨年でデビューから15周年を迎えたFEEDERの通算8枚目のオリジナル・アルバムがついにリリース。ヘヴィなギター・サウンド、キャッチーなメロディ、温かみのあるアコースティック・サウンド、どんな曲調の曲にも自然に絡み合うヴォーカルGrantの歌声。そんな彼らの全ての魅力が今作に詰まっていると言っても過言ではない。全曲これぞまさにFEEDERだ! と叫びたくなるような要素が満載で、尚且つ新鮮味と勢いを感じられるのが嬉しい。東日本大震災を受けてチャリティー・シングルとしてリリースした「Side By Side」も本編最後に収録されており、もうすぐ1年経つ今聴くとまた違った深みがあって感慨深い。まだ一度も彼らの音楽に触れたことのない人への入門編としてもオススメできる快心作だ。
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FEEDER
Renegades
前作より2年ぶりとなるFEEDERの7thアルバム。兎に角、キャリア15年はダテじゃないということか。作品ごとによりシンプルになっていく彼らだが、今作もまた然り。現在主流のインディ・ポップ・サウンドとは間逆を行く、骨太なギター・ロックで、攻めの姿勢を貫いている。パワーとスピード感のあるヴォーカルとギターを主役に、エネルギッシュなドラムがスリリングかつ重厚な背景を描写する図式は、まさにギター・ロックの王道だが、展開の早い作品でありながらも、一節ごとに確実に聴かせるどっしりとした佇まいはさすがの一言。そんなFEEDER、なんと今年は2 枚のアルバム・リリースが決定しており、次回作は10月発売予定。その尽きぬ制作意欲は、この男臭い体育会系のテンションと、攻めのサウンドに、そのまま反映されている。
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FEEDWIT
小さじ一杯ヨーロッパ
大阪発、弱冠22歳の男女混成トリプル・ヴォーカル・バンド、FEEDWITの2ndミニ・アルバム。おもちゃ箱をそのままひっくり返したような予測不能の曲展開、次々と新たな表情を見せるトリプル・ヴォーカル、その裏でギミックを効かせまくるそれぞれの楽器の旋律、中学時代の同級生同士だというメンバーの和気あいあい感、人懐こいようでいて心の奥底で中指立てているようなキレの良さ。エネルギーもバイタリティも溢れ返っていて、制限時間内に収まっていない感じがどの曲にもあり、何だこりゃ!? とザワザワしている間に疾風のように去っていってしまう。若さゆえの向こう見ずさに堪らなくキュンとさせられるが、だからこそ、今後どのように覚醒していくのかが気になる。
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FEEDWIT
ねこまんまのレシピ
大阪を中心に活動中の男女4人組トリプル・ヴォーカル擁する新感覚ギター・ロック・バンド。"ビクターロック祭り"への出演をかけた新人オーディションで最終選考まで残った経歴を持つ彼らの初となる全国流通盤。さっきまで笑っていたかと思えば、今度は泣いていて、アレをしていたかと思えば、今はもう違うことをしている。そんな思考回路をそのまま音と言葉に押し込んでいるような感覚で歌い吐き出している今作は、予測不能なトリッキーな楽曲構成と、トリプル・ヴォーカルによる掛け合いが絶妙。幼馴染みで組んでいるだけあるなと頷けるナチュラルさだ。左右交互に言葉を脳に刻まれるかのような恐さが宿るTrack.1があれば、爽やかで純粋無垢なサウンドを鳴らすTrack.2もある縦横無尽な1枚。めくるめく展開に、そしてこのスピード感にあなたはついていけるだろうか!?
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FERN PLANET
stardustbox
天体にまつわる単語を散りばめ統一性を持たせながら、"バンドを続けること"に対する凛とした決意を滲ませるSERINA(Vo/Gt)のソングライティング。3ピースならではの素朴さを生かした引き算のアンサンブル。新曲と既存曲を織り交ぜつつも起承転結を鮮やかに描いてみせる構成力――どこを取っても、作家性と独白性、俯瞰的視点と衝動的リアルが絶妙なバランスで共存している印象があり、つまりここからどうにでも化ける可能性を秘めているのでは? と思う。本作リリースと同時にバンド名を改めたことからも読み取れるように、この1stミニ・アルバムは、彼女たちの新たな一歩として位置づけることもできるが、同時に、若くしてキャリアを積んだバンドの正統進化の証でもある。
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FES☆TIVE
HUMAN NATURE WORLD
本多しおりを新メンバーに迎え、6人体制となったFES☆TIVEの通算16枚目となるシングルは、アクティヴな彼女たちらしい元気いっぱいの仕上がりに。表題曲はアイドル界隈でも絶大な人気を誇る玉屋2060%がプロデュースを担当、バンド・サウンドを基調としたEDMで"LOVE"や"PEACE"をテーマに明るい未来を歌う。c/wには若手クリエイター Medansy、Repezen Foxxのトラックメイカー チバニャン、SSW みゆはんが参加、それぞれ愛とユーモア溢れる楽曲でFES☆TIVEとタッグを組む。淡い夏の恋を歌う「色違いサンダル」、ライヴが目に浮かぶ「かっトびサンデイ!!」、凝った音作りの「アンダルサイトダンス」、6人の個性がてんこ盛りの「革命的オーバードーズ」と様々な表情が詰まった盛りだくさんの内容。
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FES☆TIVE
ニホンバレデンセツ
新メンバーの辻 こはるが加入した"お祭り系アイドルユニット"FES☆TIVEが、新体制初のCDを完成させた。タイトルからしておめでたい表題曲の「ニホンバレデンセツ」は、半ば強制的に頭をポジティヴに切り替えてくれるハッピー・ソング。終始ハイテンションでわちゃわちゃした、これぞFES☆TIVEの真骨頂と言えるお祭りソングだ。カップリングには今作も形態によって異なる楽曲を収録。和楽器の効いたダンス・ミュージックの「ジャパニーズOROCHI」(TYPE-A)、胸を締めつけるような歌唱が聴きどころのロック・ナンバー「あの日のファンファーレ」(TYPE-B)、キラキラしていて、ガーリーでかわいらしい「No more 煩悩!」(TYPE-C)と、表情の異なる楽曲が揃った。
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FES☆TIVE
微笑ノ国
夏と言えばお祭り! お祭りと言えばFES☆TIVE! というわけで、"お祭り系アイドルユニット"FES☆TIVEの面目躍如となる2022年版サマー・チューンが到着した。表題曲のテーマは"微笑みの国"タイ。BPM200オーバーの高速ナンバーに乗せて"ガパオ ガパオ ガパオ ガパオ ガパオ"、"パッタ パッタ パッタ パッタ パッタイ"とタイ料理の名を元気に叫び続ける(最後はマッサマンカレーだそうです)楽曲は、深読みするだけ野暮で、ちっぽけな悩みなんて軽く吹き飛ばすポジティヴなパワーで溢れている。コロナ禍に入る前には現地でライヴをしてきただけあって、タイに対する愛や想いもしっかり込められている点も忘れてはならない。c/wでは形態ごとにそれぞれ違った表情を堪能できる。
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FES☆TIVE
新・奇天烈物語
5人体制になったFES☆TIVEによる13thシングル。表題曲「新・奇天烈物語」は"らしさ"溢れるポジティヴなお祭りソングで、新体制での再スタートの意志や、人との出会いの奇跡を歌う深くていい歌詞にも注目してほしい1曲だ。形態によって異なるカップリングは、大型フェスでとんでもない光景を作り出しそうな激アゲ曲「カンフーミラクル~愛~」をはじめ、ピアノ・ロックで新しいFES☆TIVEを見せた「YURARI」、EDM調の恋愛ソング「トライアングル」と、いずれも粒ぞろい。加えて初期の人気曲の再録も収められているのだが、生まれ変わったと言ってもいいくらいのバージョン・アップを果たしている。特に、バンド感が大幅に上がった「大江戸爆裂花火姫 2021」の変わりようはすごい。
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FES☆TIVE
心拍白昼夢(シンパクデイドリーム)
FES☆TIVEの11thシングル。これまでのシングル表題曲は彼女たちの代名詞とも言える"お祭り系EDM"な曲が多かったが、今回の「心拍白昼夢(シンパクデイドリーム)」は、新メンバーの八木ひなたを迎えたこともあり、ひと味違う1曲に。音からも歌詞からもあえてお祭り要素を取りのぞき、バンド・サウンドに乗せて切ない恋心を歌った歌詞とエモーショナルな歌声は、ポジティヴでアクティヴなイメージの彼女たちから新たな魅力を引き出している。カップリングは、彼女たちにとっての王道「サカサマサマー」や、クールなラップで魅せる「Crystal Bullet」、独特すぎる世界観が癖になる「カマキリさんVSひつじさん」、そして初期FES☆TIVEを彷彿させる"和"のナンバーと、とにかく表情豊か。
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fhána
Beautiful Dreamer
2023年にメジャー・デビュー10周年を迎え、春には日本コロムビアに移籍したfhánaの最新EPは、"夢"、"ドリーマー"がテーマとなった。1曲目「夢」はtowana(Vo)のポエトリー・リーディングでスタートする。誰かの夢、誰かの心にシンクロして静かに呼び掛けていくイマジネイティヴな始まりから、ポップで華やかな曲、メランコリーを帯びた曲が展開していく。日常の心の機微、あるいはめまぐるしく変化する世の中や、流れの速さに気持ちが追いつかないまま置いていかれてしまうやり場のない思いに寄り添って、もう一度夢見ることの尊さを掘り起こしてくれる、そんな6曲が並ぶ。その構築的なサウンドでまばゆく、優しい光を作り出していくような、fhánaというバンドの持つ世界観が凝縮された1枚。
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fhána
STORIES
今年8月にメジャー・デビュー5周年を迎えたfhána。来年1月には5周年のスペシャル・ライヴを行うことが決定しているが、その前にリリースとなるのが初となるベスト・アルバム。書き下ろし曲「STORIES」を加えた全14曲で、アニメのタイアップ曲を中心に収録された内容だが、アニメ作品に寄り添いながら、曲それぞれにバンドの状況や想いも封じ込められていた。まさにこのベストは、fhánaという物語の軌跡となっている。様々なアニメ作品の曲を手掛ける職人的な面と、ポスト・ロック・バンドやクラブ・カルチャーで活動をしてきたメンバーの音楽背景、音楽哲学や好奇心を、絶妙に混ぜ合わせたサウンドを奏で、稀有な立ち位置を築いている4人。その開拓者精神で切り拓いた5年間が詰まっている。
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fhána
World Atlas
前作から約2年の間にリリースされたシングル5作分が収録された3rdアルバム。美しいミディアム・チューン「calling」からブラスが空を舞うアッパー・チューン「青空のラプソディ」まで、曲調から、BPM、テンション、感情まで幅広いレンジの曲が揃っているが、その間をグラデーション的に埋める全14曲となった。できあがった1枚の地図には、音楽的な冒険者であるfhánaが精緻に彩った世界が描かれている。エヴァーグリーンなメロディを引き立てるソウル・フィーリングな曲、渋谷系タッチのミクスチャー精神が生きたラップ曲、またラスト曲は「It's a Popular Song」と名付けてfhánaのポップネスを凝縮し、ゆったりと大団円を迎える"みんなの歌"へ。陽性の余韻がさらに続いていく旅のはなむけとなっている。
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fhána
わたしのための物語 ~My Uncompleted Story~
ストリングスが入った歌謡性の高いサウンドや、駆け上がっていくようなメロディのダイナミズムと、渋谷系的でキッチュなひねりの効いたポップ・センスとが同居するのは、fhánaならではだろう。「わたしのための物語 ~My Uncompleted Story~」という曲は一聴するとシンプルだが、サウンドを因数分解すると、とてつもない情報量と、細やかな音が溢れ出す。ノイズや音の陰影、多彩なコード感や転調の妙、どの楽器も音色もフル回転させつつも、風通しのいいキャッチーなポップスに落とし込んでいる面白さはfhána節の最たるもの。c/wは、新たな音響、音像を追求し──というよりも、ハーモニーや実験を楽しみ、音を追い掛けて新境地に辿り着いた開放感がある。手間暇を惜しまない丁寧さと、大胆さを感じる。
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fhána
Hello!My World!!
キャッチーなのにプログレッシヴという、相反する音楽性や感覚を高次元でブレンドした、これぞfhánaというユニークさが炸裂している表題曲。EDM的なエフェクティヴなビートやシンセを隠し味のように使いつつ、曲の構成などはクラシック風で、快楽的なダンス・ミュージックには落とし込まずドラマチックに聴かせ、圧倒する曲になっている。アニメの主題歌でもあり、アーティスト盤とアニメ盤でカップリングの異なる形態となっているが、カップリングでも突き抜けた面白さを発揮。アニメ盤の「reaching for the cities」ではtowana(Vo)がラップを、アーティスト盤の「君の住む街」はグルーヴィで、BEN FOLDS FIVEを彷彿とさせる、テクニカルでユーモラスなピアノのロック・アンサンブルで聴かせる。多面的で自由度の高いシングルだ。
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fhána
ムーンリバー
これまで数々のアニメのテーマ曲を手掛け、中でもファンタジックで色彩溢れるサウンドや、シンフォニックで明るいトーンに満ちたメロディが冴える曲が印象的なfhánaだが、ニュー・シングル『ムーンリバー』は新たな、大人の表情が窺える。憂いあるメロディと、力を抑えたtowanaのヴォーカルが好相性で、心のさざ波を綴った歌の世界を美しく引き立てている。エレガントと呼びたいエレクトロ・サウンドから、バンド・サウンドへと、心の動きに合わせるように移り変わって、引き込んでいく曲となった。細かな声の表情、音の表情を大事にした曲で、静かに深く心に刻まれていく感覚だ。アニメ"有頂天家族2"のエンディング主題歌として書き下ろした「ムーンリバー」だが、fhánaとしての深化も織り込まれた1曲。
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fhána
青空のラプソディ
ニュー・シングルの表題曲「青空のラプソディ」は、スピード感に溢れ、頭から終わりまで陽性のビートやサウンド、メロディで貫かれている。fhána節とも言える、ホロリと哀愁が滲む旋律をピカピカに磨き、笑顔を映し込んだ内容で、祝祭的な鐘の音が鳴り続けるハレのテンションが爽快な曲だ。明るいだけでなく、ソウルやファンクの華やかさ、モンド・ミュージック的なポップな洒落っ気やオールディーズなロックンロールも練り込み、細やかな音楽的なこだわりが随所で炸裂しているのも聴きどころ。大編成だったという贅沢なストリングスや、幾重にも重ねたコーラスのパワーや遊びのある音響を、towana(Vo)の角のない柔らかなフォルムのハイトーンがグイグイ引っ張っていく。超重厚な音をも、風のように聴かせる術はさすがだ。
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