DISC REVIEW
M
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M83
Junk
"今作では今までと異なる一面を見せたかった"。今作のリリースにあたり、M83の首謀者であるAnthony Gonzalezはこのように語った。彼がかつて標榜したエレクトロ・シューゲイズの金字塔的作品となった前作から早5年。プロデューサー的視点で制作された今作は、これまでのサウンドを面影に残すものの、AORやディスコ・ファンク、フュージョンまでも取り入れた80'sライクの完熟したシンセ・サウンドが基調となる。大胆な路線変更という意味では、今作は賛否両論を呼ぶであろう。しかし、必殺のギター・ソロが響く甘いソウル・ナンバーのTrack.2、BECKをフィーチャーしたブラック・コンテンポラリーを聴かすTrack.13を始め、粒揃いの楽曲が立ち並ぶこの『Junk』が凄まじく完成度の高い作品であるということはまず間違いない。2016年、ハズすことのできない1枚。
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M83
Saturday = Youth
エレクトロにシューゲイザーを取り入れた独自のサウンドで人気を集めるAnthony Gonzalezのソロ・ユニットM83の新作。アルバム・タイトルが示すように、テーマは10代の青春そのものという本作。うねるシンセと甘美なメロディが浮遊するアンセム「Kim & Jessie」。とろけるような「Skin Of The Night」。散りばめられた幻惑的なノイズと切ない男女混合のヴォーカルも絡み合い、美しいサウンドスケープを描き出す。徐々に高揚感を煽っていくディスコ・トラック「Couleurs」も秀逸。煌くようなシューゲイザーのエッセンスとノスタルジックな80'sシンセ・サウンドが美しい化学反応を引き起こしたエレクトロ・ポップ。
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THE MACCABEES
Given To The Wild
英国のインディー・ロック・バンドTHE MACCABEESの待望のサード・アルバム。一聴してまず驚いたのがサウンドの変化。前作までの踊れるアップ・ビートな曲を期待している人は必ず裏切られるだろう。アルバム全曲がダークで深く、そして繊細なサウンドで統一されている。一聴するとシンプルに聴こえるが、聴き込むうちに細かい音の作り込みが感じられ、今作の制作に12カ月も費やしたというのも頷ける。THE DRUMSのセカンド・アルバムと似た雰囲気を感じたが、どうやら彼らの大ファンらしいので偶然ではないかも。曲と曲を繋ぐ流れと緩急があり、それぞれの曲に異なった特徴はあるが、聴き終わると全ての曲が同じ方向を向いていると感じられるまとまりのある作品。久々に“アルバムとは本来そういうものだ”と実感できた秀作だ。
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Machico
STAY FREE
人気TVアニメ"この素晴らしい世界に祝福を!"の前日譚であるスピンオフ作品"この素晴らしい世界に爆焔を!"オープニング・テーマである「STAY FREE」。どこかFOO FIGHTERSを想起させるスケール感と生音のロック・サウンドがヴォーカリスト Machicoの新たな可能性を引き出している。スキルフルでハイトーンの突き抜ける歌唱がこれまでの彼女の魅力だとしたら、本作では抑えたトーンで静かに燃えるようなAメロが特に新鮮な響きに溢れ、従来のリスナー以外にもリーチしそうな大人っぽいニュアンスと力強さも。カップリングの「星の旅は夢うつつ」はシティ・ポップ・テイストだが、それにとどまらず転調で変化をつけた構成で耳が楽しい仕上がり。"声のプロ"の次なるフェーズを感じさせる。
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Machico
10th Anniversary Album -Trajectory-
世界に誇るサブカル・コンテンツとして、日本はアニメ/ゲームという偉大なる財産を有している。このMachicoのベスト・アルバムはその文脈において注目すべき点が多いのは事実だが、そんな今作の最後を締めくくるのは彼女が高校生のときから敬愛してきたというバンド、シドの明希が提供している10周年記念曲「Shall we...?」という新曲だ。ここではMachicoが自ら詞を書き、この10年をかけてファンとの間に培ってきた関係性をオトナっぽい恋愛模様になぞらえながら、これまでにない大胆な表現にも挑戦している点が実に興味深い。ちなみに明希は作曲のみならずアレンジやべース・レコーディング、ヴォーカル・ディレクションにも参加しており完全監修しているとのこと。粋なコラボが実現している。
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MACHINE GUN KELLY
Mainstream Sellout
自身初のロック・アルバムとなった前作『Tickets To My Downfall』で全米No.1を獲得し、ポップ・パンク・リヴァイヴァルを牽引する存在として注目を集めるMACHINE GUN KELLY。前作から2年足らずでリリースされた新作は、自らのテリトリーをいい意味でさらに節操なく広げた作品だ。ポップ・パンクを軸とした楽曲はもちろん、BRING ME THE HORIZONやWILLOWとコラボしたエモ・ソング、LIL WAYNEを迎えたトラップ・チューンなどバラエティ豊かで、MGKも渋みのある歌声から高速フロウまで自在な表現を聴かせる。批判に縮こまることなく、いいと思ったものを貫き通す潔さと、新たなメインストリームを築いていこうという気概が感じられる。
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Made in Me.
Weather Re:port
昨年1stフル・アルバムを発表した、横浜 町田を拠点に活動するミクスチャー・ロック・バンド、Made in Me.。自由な発想と、異素材を掛け合わせた歪さをポップにエモーショナルに聴かせる5人の1stミニ・アルバムだ。今回はコンセプチュアルな世界観で、天気をモチーフに繊細な感情やドラマチックな心象風景を音にした。彦(Vo/Rap/Gt)によるアンセミックなメロディあり、ラップあり、詩情的なゆかり(Vo/Syn)の歌やリーディングあり、またサウンドもパンキッシュで音遊びに富んだものから、シューゲイザーとローファイなインディー・ロックが混じり合ったもの、余白で物語るものなど様々。めまぐるしい空模様のようで新鮮で、でもどこかペトリコールにも似た不思議と懐かしい気持ちに触れる作品だ。
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Made in Me.
Re:Habilis
横浜/町田発のバンド Made in Me.。ソングライティングを手掛け、歌や強力なラップでも表現する彦、詩的な語りから静寂を鮮やかに打ち破って瞬間的に聴く者の心を奪う声を持ったゆかり、HyperVideo2名義でビートメイカーやアレンジも手掛けるじゅんちゃい(Gt/Cho)、デザインなどヴィジュアル面も担うU sucg :):(Ba/Cho)、バンドの屋台骨でありRECエンジニアとしても音世界を広げるDAIKI(Dr)という5人の個性は、その音の中で自由気ままに跳ね回っている。日常と非日常を行き来するようなサウンドは、奇想天外でいてキャッチーさも忘れない。音楽への衝動や楽しむ心を思い出す、そんなバンドのスピリットが真ん中にあるミクスチャー・ロックは、アンセミックに響き渡る。
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MADKID
One Room Adventure
『Change The World』に続く8枚目のシングル。綿密に作り込まれたサウンドと爽やかなメロディが印象的な表題曲は、TVアニメ"Lv1魔王とワンルーム勇者"のOPテーマとしてオンエア中なので、すでに耳に馴染んでいるオーディエンスも多いのでは。これまでにない趣の楽曲と前向きなメッセージからは、グループの新たな意思も感じられたりして、妙にわくわくする。FLOWのメンバーが手掛けたカップリングの「Future Notes」は、バンド・サウンドを軸にアッパーなラップ、泣きのメロ、美しいハーモニーが絶妙のバランスで絡み合い、最高にクールな仕上がりに。キャッチーだけど力強く、揺るぎない勇気を与えてくれる。彼らの想いはもちろんのこと、その人柄までも凝縮したかのような2曲。爽快でついつい何度もリピートしてしまう。
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MAE
(m)orning
12曲、12ヶ月、1ゴールという、メイク・ア・ディファレンス・プロジェクト真っ最中のMAEによる、2年ぶりのニュー・アルバム。今作『(m)orning』の後は、『(a)fternoon 』『(e)vening』と続くという、コンセプチュアルな3部作だ。日本盤ボーナス・トラックを除いては全9曲。前半2曲は9分弱、7分と、長尺で壮大なナンバーによって構成されている。シンコペーションを多用したリズムと、いくつにも分かれた曲構成は聴いていて飽きることがないし、何よりもメロディが素晴らしいのだ。創造力をフル活動させながら、MAE独特の清らかな旋律を堪能してほしい。こんなにも純粋さに溢れたアルバムを聴いた後だと、彼らが熱心に行っているチャリティ活動に対して、より説得力を感じずにいられない。
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magdala
magdala
Aureoleのリーダーであり、kilk records主宰の森大地と夢中夢のヴォーカリストのハチスノイトによるユニット“magdala”。曲の端々に丹念に織り込ませた音色の数々と、牧歌的かつシンフォニックに響くエレクトロニカ・サウンドはあまりに神秘的で神々しくもある。そして幽玄でありながら音に融けずにしっかりとした輪郭をもち、まるで音像の中をゆるやかに踊るような歌声が響く。正直“アンビエント”という言葉を免罪符に雰囲気“だけ”でなにも提示しない音楽も決して少なくはないが、この2人が紡ぎ出す音はまず大前提として非常にクオリティの高い優れたポップ・ミュージックである。願わくばこのユニットが今回限りでは終わらず、もっと多くの音楽ファンの耳に届いてくれることを望む。
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MAGIC!
Primary Colours
デビュー・シングル『Rude(邦題:ルード★それでも僕は結婚する)』が全米チャート6週連続1位を記録したカナダ発のレゲエ・ポップ・バンドがお待ちかねの2ndアルバムをリリース。なるほど、リズムはレゲエのバック・ビート主体だが、USのメイン・ストリームでコンポーザーとしても活躍するNasri Atweh(Vo)のポップなメロディ・センスは洋楽を初めて聴くリスナーにも馴染みやすくブライトなサウンドだ。80sのネオアコ・バンドがラテンに接近したニュアンスにも近いTrack.1や、THE POLICEのギター・サウンドにも近い洗練されたTrack.3、シンセ・ポップ好きにも受け入れられそうなTrack.7、Nasriのスウィートな声の魅力が味わえるR&B調のタイトル・チューンなど、ジャンルも洋楽邦楽も問わず夏を彩る決定版を探している人にレコメンド。
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MAGIC MAN
Before the Waves
Gotye、PASSION PITを輩出したNEON GOLD RECORDSからリリースされる注目のシンセ・ポップ・バンド、MAGIC MANの1stアルバム。2010年にボストンで結成されたバンドのようだが、すでに完成されたメガ・アーティスト感が満載で、スケールの大きい楽曲群は来年のSUMMER SONICあたりで聴けそうなスタジアム・ポップ。タイトルどおり荒涼感のある風の音と寂しげな乾いたギターが聴こえてきたと思ったらいきなり4つ打ちのビートでイケイケでキラキラなシンセ・ポップが飛び出してきたらさすがにテンションが上がろうというもの。80's産業ロック的で大仰な「Waves」のような曲やラストのアツい疾走感の「It All Starts Here」も、ダサいという向きもあろうがメロディの良さにはひれ伏すしかない。
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THE MAGIC NUMBERS
The Runaway
兄弟2組という珍しい構成のバンドTHE MAGIC NUMBERSの3rdアルバム。FRANZ FERDINANDの日本武道館公演ではオープニング・アクトを務めるなどして、その知名度を高めた彼ら。本作は、Björkのサウンドクリエイターとして長年コラボしているValgeir Sigurdssonがプロデュースを手掛けたことも話題となっている。淡く流麗なサイケデリアをより際立たせるのは、どれが主旋律なのかすら分からなくなる男女のヴォーカル同士の絡み合い。コーラスであったはずの女性ヴォーカルが気づけば男性ヴォーカルと一体化し、両者の切れ目が分からなくなる。かと思えば、ふと気づくと、いつの間にか女性ヴォーカルは姿を消していたり。2種の声が、細胞分裂と結合を繰り返すような妖しい美しさがありながらも、その外形はとても軽やかでポップなサイケデリック・ナンバーとなっている。
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MAGIC OF LiFE
MAGIC
悲しいときにはその涙を拭うための優しい歌を、苦しいときにはそれすらも笑い飛ばす陽気な歌を。それがMAGIC OF LiFEというバンドの流儀であることを感じるミニ・アルバム。新しい生活への期待とお節介な"間違い探し"への苛立ちを歌った「陰日向」をはじめ、コロナ禍に制作されたことが伝わる切実な楽曲が並ぶ。ホーリーなハーモニーとダンス・ミュージックが溶け合う「What a Relief」や、バンド史上最速と言える妄想ソング「コーラ」、"生きている"と力強く歌い上げる「未来を追いかけて」など、様々なシーンを描いた全8曲は、あらゆる矛盾を抱えて日々を奔走する私たちの心の温度にとても近い。珠玉はバラード曲「記念日」。彼らの音楽は、"命の残りの日数"を豊かに彩ってくれる。
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MAGIC OF LiFE
Wanderer
約11ヶ月ぶりのリリースは、2019とちぎテレビ高校野球応援ソング「応援歌」、栃木市マスコット・キャラクター"とち介"イメージ・ソング「大福」を含む、8曲入りミニ・アルバム。前々より取り入れていたストリングスやエレクトロ、EDM要素といったバンド外の音との親和性を高め、より包容力のあるサウンドスケープが実現している。人を愛する意味の大きさをまっすぐと歌うバラード「素晴らしくて」、繊細な音使いで爽やかに駆け抜ける「Four Seasons」、バンド・サウンドが前面に表れたエモーショナルな「Anniversary Ring」など、それぞれ趣向の違う楽曲でありながらも、ひたむきに前を見ている姿勢は一貫。美学に向かって邁進していく生き様が、混じり気なく昇華された楽曲が揃った。
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MAGIC OF LiFE
FOR YOU
約1年ぶりのリリースとなるミニ・アルバムは、8曲入りのラヴ・ソング集。悲しさだけでなく感謝の気持ちが添えられた温もりのある失恋ソング「朝焼けとからっぽ」や、恋が芽生える瞬間を魔法に例えた「魔法にかかる」、闇の中に見えたひと筋の光を歌う荒々しいサウンドが印象的な「QUICK DRAW」など、表情豊かな楽曲が揃う。"FOR YOU"というアルバム・タイトルに相応しく、様々なシチュエーションでの甘酸っぱく切ない"君"への想いが綴られている。恋の終わりや始まり、日常に溢れる小さな幸せばかりではなく、どこにぶつけたらいいのかわからない葛藤も包み隠さず描かれ、まるでひとつの恋の物語のよう。そして最後には一緒に前を向いてくれるところが、実にMAGIC OF LiFEらしい。
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MAGIC OF LiFE
線香花火/乱舞ランデブー
2017年初作品となる両A面シングル。agehasprings 玉井健二と約5年ぶりにタッグを組み制作されたTrack.1は、当たり前のようで当たり前ではない命に感謝することをテーマにした楽曲で、眩しすぎるくらいの愛が綴られている。彼らの武器とも言えるストリングスの効いたバラードに、ノリの良さをプラスした壮大なサウンドは新境地。一瞬の光の美しさを讃える心と、いつか輝きを失うことを憂う心の双方を感じさせる高津戸信幸のヴォーカルを十二分に堪能できる。Track.2はダンサブルなビートと12弦ギターなどによる豊かな響きにより異国情緒を感じさせる楽曲。Track.3にはDIRTY OLD MEN時代に制作された楽曲のアコースティック・バージョンを収録している。
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MAGIC OF LiFE
X-1A
自身の制作活動以外にも、地元で自主企画フェスを開催したり、Rhythmic Toy Worldとともに世界中の子供たちにおもちゃを届けるプロジェクト・バンド"GIFT MEN"を結成するなど、精力的に活動するバンドの姿がそのまま音楽になっているのでは。テクニカルに疾走するギター・ロック、温もりを感じさせるミディアム・ナンバー、スカのテイストを取り入れたものやファンキーでハッピーな楽曲、ポスト・ロック風のリズムを取り入れた壮大な楽曲など、様々なチャレンジや煌きに満ちた楽曲ばかりだ。特に象徴的なのはTrack.1。EDM、ポエトリー・リーディングやラップ・テイストのヴォーカル、シンガロングできるサビなど、これだけ大胆に取り入れてしまう度量や勇気には舌を巻くばかり。
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MAGIC OF LiFE
「はじまりの日々」 / 「スキルフラワー」
劇場版アニメ"弱虫ペダル SPARE BIKE"の主題歌である「はじまりの日々」と、TVドラマ"弱虫ペダル"の主題歌である「スキルフラワー」を収録した豪華ダブル主題歌シングル。どちらの曲もスピード感のあるバンド・サウンドという似た趣を持つ。「はじまりの日々」は煌びやかなシンセなどのウワモノと、ダイナミックなドラムが炸裂。歌詞には登場人物の感情の起伏が丁寧に描かれている。「スキルフラワー」はギター・リフが先導して音を作る、まさしく火花をまき散らすような肉体的な楽曲。そのサウンドのモードと同じく、歌詞に並ぶ言葉も強気で男らしい。近しいカラーを持たせつつ、作品を各曲で別の角度から捉えている。この2曲は9月7日にリリースされるフル・アルバム『X-1A』には収録されないので、チェックはマストで。
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MAGIC OF LiFE
風花ノ雫
Rhythmic Toy WorldとともにGIFT MENを結成し、10月には改名1周年記念ツアーを行うなど精力的な活動を続けるMAGIC OF LiFEが7月30日にリリースした配信限定シングル『音無き言葉』に続き新曲を発表。ピアノとシンセが煌びやかな疾走感のあるサウンドに、繊細なハイトーン・ヴォイスが映えるロック・ナンバーだ。高津戸信幸(Vo/Gt)はこの楽曲に"近くにある愛情や幸せの大切さに気づいて欲しい""近くにいる人に自分の気持ちをたくさん伝えて欲しい"と想いを込めたという。歌詞に綴られているのは大事な人との別れと後悔、悲壮感。アップ・テンポ且つダンサブルなサウンドには、そんなやりきれない心情を解き放つポジティヴなパワーがある。彼らのニュー・アンセムに成り得るのでは。
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MAGIC OF LiFE
栄光への一秒
昨年10月にDIRTY OLD MENから改名したときは驚いたが、"MAGIC OF LiFE"というバンド名の方が彼らの音楽には合っていると思う。高津戸信幸(Vo/Gt)の紡ぐ、物語のような歌詞はキラキラと輝いていて、まるで魔法みたいだから。TVアニメ"弱虫ペダル GRANDE ROAD"のエンディング・テーマに起用されている「栄光への一秒」も、前へ進めと背中を押してくれる魔法のような楽曲。アニメの世界観とマッチした歌詞で、"弱虫ペダル"ファンの心も掴むであろう。カップリングの「古ぼけた季節に」は、懐かしく暖かいバラード・ナンバー。優しいギターの音色に、ささやくような高津戸の歌声が重なり、なんだか涙がこぼれそうになる。MAGIC OF LiFEの静と動、両方の魅力を味わえる1枚。
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MAGIC OF LiFE
Storyteller
Track.1のイントロから、4人の作る世界が優しくダイナミックに聴き手を包み込む。バンド名の"命の魔法"という奇跡は、現実に起こすことができるものだと、音のひとつひとつが正面から訴えかけてくるようだ。すべてから漲る生命力、それはいつか来る"終わり"から逃げずに、受け入れた人間だからこそ出すことができる。この11曲は嘘偽りのない、このバンドが11年で感じてきた想いと痛みそのものだ。ラウドロックにも負けず劣らずの骨太ロック・ナンバー、民族楽器的な音色が懐かしさを呼び起こす楽曲、ポップなギター・ロック、アコースティック色の強い楽曲やミディアム・ナンバー、触れ幅の広いすべてにファンタジーとリアリティが美しく混ざり合う。まさしく"MAGIC OF LiFE"だ。
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MAGNETIC MAN
Magnetic Man
南ロンドンのクロイドンが発祥地とされるダブステップは、ダブやドラムンベースなどの重低音が響くサウンドに、2ステップやグライムを変容させたようなビートが特徴で攻撃的なものからムーディーなものまで、その音楽性は実に幅広い。今回ダブステップ界の立役者のSKREAMと創始者であるBENGA。さらにBENGAのプロデューサーのARTWORKの3人でMAGNETIC MANを結成。本国イギリスで、デビューアルバムがUKチャート初登場5位を記録。日本盤はデジタルのみでのリリースとなるが、硬派なダブステップにキャッチーなサウンドや重低音のベースのバランスに頼もしさを感じた。Trackの流れも非常に自然で最後まで退屈させない仕上がりだ。
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Maica_n
replica
ジェンダーレスな佇まい、自分の意志をしなやかに突き通すデビュー時の印象はMaica_nの一面でしかなかったのか、とジャンルとテーマの多彩さに驚くメジャー1stフル。ドライヴするアメリカン・ロック、王道のピアノ・バラード、アコギ主体のフォーク・ロック、現行のUSのR&Bに通じるミニマムなアレンジ。歌詞も意外なほどセンシュアルなものもあれば、大人でも子供でもあって、ないような二十歳前後の心情もあれば、ワーキング・ウーマンのオンとオフを表現する、海外ドラマのような国を超えた共感性の高いものも。これだけバラエティに富んでいても、ひとりの女性の物語として自然に聴けるのは、声質の誠実さがなせる技。ハスキーなのにクセがなく、スキルフルな歌唱でも嫌味がなく、切な苦しいキーでは胸に迫る。
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Maisie Peters
The Good Witch
Ed Sheeranが主宰するレーベル Gingerbread Man Recordsと契約し、ますます勢いに乗るUKの新世代ポップ・シンガー、Maisie Petersが2ndアルバムとなる新作をリリース。等身大の日常や失恋を飾らない言葉で描きながらも、それをドラマチックにパッケージするポップスの魔法使い、まさにリスナーにとって彼女はタイトル通りの"The Good Witch(いい魔法使い)"だ。安定感があり力の入りすぎないヴォーカル・スタイルも彼女らしく、気軽に聴けるポップ・ソングとしての魅力を存分に引き出す要素のひとつとなっている。また、バックを飾る90年代っぽいちょっとレトロなシンセも、楽曲をかわいらしく装飾しオシャレに仕立てていて高評価。
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Maison book girl
Fiction
代表曲を再レコーディングし新たに生まれ変わった冒頭3曲で、現代音楽とポップスを融合した唯一無二の音楽性を再認識した。一方で、表題曲の「Fiction」は、いい意味で珍しくストレートなスロー・ナンバーに。初夏の雨上がりを想起させるような、しっとりとしながらも温かい情景の広がりが心地よく、前面に出たメンバー個々の歌唱も聴きどころだ。打ち込みの四つ打ちで展開するマッシュアップ曲「river」は、そうであることを感じさせない新曲としての立ち居振る舞いをしている――と、ここまであえて書かなかったが、本作はキャリア5年の集大成となるベスト・アルバム。新作と言われても疑われない充実作に仕上がったことがわかるだろう。プロデューサー サクライケンタの音楽家としての矜持も感じさせる1枚。
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Maison book girl
umbla
2019年第2弾シングル。「闇色の朝」は、彼女たちらしい前衛的な音楽が展開されるなかで、サビの独特な譜割りがいい意味で違和感を与えてくれる1曲だ。言葉が紡がれるたびに幽玄な情景が浮かんでは移り変わっていく歌詞にも注目したい。波を思わせる音から始まる「シルエット」では、曲全体の音数を減らすことで引き立つピアノの旋律によって、まるで水面にたゆたうかのような心地よさを味わうことができる。重々しい空気感のままドラマチックにストーリーが展開していくポエトリー・リーディング「告白」も、本作の世界観をより濃厚にしており、サクライケンタ(プロデューサー/音楽家)というフィルターを通すことで、"umbla(=影)"はこう表現されるのかと感嘆した。
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Maison book girl
SOUP
ブクガが2019年初のフィジカル作品を完成させた。Track.1「鯨工場」は、MVでも表現されているとおりの、鉛色の空と海辺に建つ寂れた工場の情景がはっきり浮かび上がる1曲。続く「長い夜が明けて」が「鯨工場」の歌詞ともリンクしており、シングルを通してひとつのショート・フィルムを鑑賞しているような感覚を覚える。ポエトリー・リーディング「まんげつのよるに」の水中や水面を思わせる音世界も作品全体に深みを出しており、そのアート性の高さは今作でも期待を裏切らない。ブクガらしさはそのままに、メンバーの歌唱力アップや世界観のさらなる広がりを感じさせる1枚に仕上がった。初回限定盤Blu-rayに収録されるワンマン・ライヴ"Solitude HOTEL 6F yume"の映像も必見。
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Maison book girl
yume
変拍子を多用した曲で存在感を放つ4人組ガールズ・ユニット、ブクガことMaison book girlのニュー・アルバム。"夢"をコンセプトとした本作では、全21曲の約半数を占める、"夢"との関わりを想像させる意味深なインスト曲が本作の世界観を彩ると共に、曲と曲とを心地よく繋いでいる。歌モノにも、コンセプトに沿った新曲が揃うが、脳波の動きをクラップのベロシティにしたという「夢」は、ブクガの真骨頂とも言える複雑な変拍子をサビで堪能することができる。お馴染みのポエトリー・リーディング「不思議な風船」は、不安感と緊張感を煽るようなサウンドと、コショージメグミが手掛けた幻想的な詩の交わる様が美しく、一度聴いたら忘れられない強烈な印象を与える1曲だ。
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majiko
愛編む
その歌声とピュアでいて遊びも毒も含んだ世界観で、アジアで高い人気を得ているmajikoの新作。1曲目は「Princess」。majikoの脳内のディープな部分に踏み込んだような、美しくもカオスな音楽世界に彷徨う曲だ。恍惚的でメルヘンな音とゴシックなインダストリアル・サウンドとが表裏一体になり、究極的な愛と狂気が強いコントラストで描かれ、一気にアルバムの世界に引き込んでいく。中華風な「TENGIC」、和的チル・ポップ「いろはにほへと」など音を通じて旅する感覚を味わい、いつかの記憶に触れる爽やかな歌心や感情のジェットコースターに乗り続けるような、時を超える体感にも酔う。"愛"や"救い"に出会えればと語る今作。終曲の「アイアム」を迎えたときの気持ち、一曲一曲の感触も堪能してほしい。
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majiko
世界一幸せなひとりぼっち
"別れ"をテーマとした1年半ぶりのフル・アルバム。今作はmajiko本人が、全曲の作詞作曲を手掛けている。亀田誠治をプロデューサーに迎えた表題曲は、別れは悲しいけれど、"愛を知った"ことを幸せだと歌うナンバーで、切ないほどに優しく響く彼女の歌声が心に染みる。MVの"大爆発"も必見だ。また、世界が終わる(かもしれない)日の最後の1分を描く「23:59」、冒頭でベース・スラップが炸裂するクールな「Once Upon A Time In TOKYO」、気だるげな色気のあるジャジーな「勝手にしやがれ」、"他人の幸せも喜べなくちゃ/それをみんなは人間だっていうのか"と問い掛ける「一応私も泣いた」など全11曲。それぞれのストーリーを声の表情で表現する、majiko渾身の1枚だ。
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majiko
MAJIGEN
モヒカン姿を披露したアートワークが衝撃的な、通算2枚目のEP。majikoいわく"かっこいいと思うもの、今までやったことがないことを詰めた作品"とのことで、ヴィジュアル含め、これまでにない彼女の姿を見ることができる1枚となっている。収録曲のほとんどを本人が手掛け、ソングライターとしての手腕もこれまで以上に発揮。幻想的なストリングスがおとぎの世界へと誘うピアノ・ロック「グリム」、モヒカン姿でネゴシエーター役に挑戦したMVにも注目のグルーヴィなナンバー「エスカルゴ」、過激な歌詞に痺れる問題作(!?)「トロイの馬」など、色とりどりな5曲には驚きと新鮮さがあるが、どれも彼女にしか出せない空気を纏っている。majikoの新次元="MAJIGEN"を体現した傑作。
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majiko
寂しい人が一番偉いんだ
レーベル移籍後初となるフル・アルバム。オープニングを飾る「エミリーと15の約束」(新世代ボカロP、カンザキイオリの書き下ろし楽曲)を聴いた瞬間、majikoが生み出した新たな名曲の誕生にハッとした。母から子へと諭すように"生きるうえで大切なこと"を優しく語り掛ける。伝えるべき"言葉"にこそ大きな比重を置いたナンバーは、これまで様々なタイプの歌に自分自身の心を投影してきたmajikoにとって、新機軸となる1曲だ。そして、アルバム全体に漂うのは、言いようのない孤独。縁あるミュージシャンと共に作り上げた豊潤なアルバムの中でも、敬愛するharuka nakamuraが作詞作曲を手掛けた「グラマー」では、かつての「声」の続編とでも言えるようなヒリヒリとした衝動に痺れた。
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majiko
COLOR
majikoの2019年第1弾となるEP。圧倒的な歌唱力と表現力は周知のとおりだが、ロックやヒップホップ、ジャズなど、どんなジャンルにもマッチする才能に改めて驚かされた。Michael Kanekoが手掛けた「狂おしいほど僕には美しい」は、本作の中で最も彼女らしいオルタナ・テイストの強いロック・ナンバー。引き裂かれるような痛みをその鮮やかな歌声に映し出し、心に潜む闇とのコントラストが強調された1曲。majiko自身が作詞作曲した「ミミズ」は、不安定で弱い自分を肯定するような歌詞が印象的だ。そのほか、GAGLEをフィーチャーした「Scratch the world」や2曲のカバー曲も聴き応え十分だ。ぜひ本作で彼女の色彩やかな世界観を感じてほしい。
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Chiho feat. majiko
エガオノカナタ
タツノコプロの創立55周年企画となるアニメ"エガオノダイカ"のオープニング主題歌として、愛知を拠点に活動するコンポーザー&クリエイター集団、H△Gのヴォーカリスト Chihoと、シンガー・ソングライター majikoのスペシャル・ユニットで放つシングル。作曲/編曲に宮田"レフティ"リョウ、作詞に小説家の牧野圭祐を迎えた表題曲「エガオノカナタ」は、アニメに登場するふたりの主人公"ユウキ"と"ステラ"が持つ光と闇のコントラストを、Chihoとmajikoというキャラクターの違うツイン・ヴォーカルで見事に表現した。カップリングにはふたりがクラシカルでホーリーな歌に挑戦した「星巡讃歌」を収録。このコラボでなければ決して生み出すことのできない唯一無二の世界観を作り上げている。
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majiko
ひび割れた世界
天性の歌声と作曲センスで魅了する女性シンガー、majikoのニュー・シングル。表題曲「ひび割れた世界」はオトナの土ドラ"限界団地"の主題歌に起用されており、狂気とも取れる"君"への愛をmajikoが情感たっぷりに歌い上げている。表現の世界では普遍的なテーマとも言える"愛と狂気"は、彼女の美しくも切ない歌声で独自の世界観を構築。聴いているうちに引き込まれ、耳から離れない1曲に仕上がっている。"妄想症"を意味するカップリング「パラノイア」はジャジーなサウンドが心地よく、ソングライターとしての実力も遺憾なく発揮。そして「エスケイパー」ではファズ・サウンドと相性抜群のハスキー・ヴォイスを披露しており、曲によって歌声を使い分けられる彼女の武器を今作でも見せてくれている。
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majiko
AUBE
昨年2月にリリースした『CLOUD 7』に続き、約1年ぶりにリリースされるmajikoの新作ミニ・アルバム。"夜明け"を意味する"AUBE"と名付けた今作は、これまで暗闇の中でもがき続けたmajikoが、希望に満ちた光に向かい、産声を上げるような1枚だ。中でも、majiko自身が敬愛する音楽家 haruka nakamuraが詞曲を手掛けたリード曲「声」は、チェンバー・ポップ的な賑やかな音像のなかで、悲しみから決別するように高らかに歌い上げるmajikoのヴォーカルが深い感動を呼ぶ。もちろん今作もホリエアツシ(ストレイテナー)や荒井岳史(the band apart)ら、majiko作品にはお馴染みの面々も参加。楽曲に寄り添い、変幻自在に声色を変えるmajikoのヴォーカリストとしての才気に感服した。
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majiko
CLOUD 7
ヴォーカリストとしての才を持つだけでなく、作詞作曲、編曲、イラストまでもひとりで手掛けるマルチ・アーティストが再メジャー・デビュー。過去作で楽曲提供を行っているストレイテナーのホリエアツシがプロデューサーとして彼女の世界観をアシストしている。この作品で彼女が描くのは夜明け前。朝が来る前、落ちた暗闇でないと気づけない灯や希望を掴む前までの、センチメンタルとエモーションを音と言葉で繋いでいる。とめどなく湧き上がる赤裸々な感情の泉は、ロックだけでなくジャズ、エレクトロニカ、民族音楽などを取り入れた音像に姿を変え、聴き手に寄り添いながらその世界へと溺れさせていくようだ。遊び心のある言葉の使い方や音の作り方も魅力のひとつ。彼女の感性の海に身を委ねてみては。
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MAJOR LAZER
Best Hits: Major Lazer
M.I.A.、Beyoncéらのプロデュースを手掛けたマルチ・クリエイター DIPLO率いるユニット、MAJOR LAZER。2019年にデビュー10周年となった彼らが、全キャリアから22曲を集めたベスト盤をリリース。Justin BieberやCamila Cabello、Ariana Grandeら人気アーティストたちとのコラボを重ね、レゲエ、ラテン、アフロビートなどの要素をエレクトロと掛け合わせた革新的なサウンドを誕生させた功績は計り知れず、00年代ダンス・ミュージック、EDMブームを語るうえで欠かすことはできない。そんな彼らの『Best Hits: Major Lazer』は、ここ10年の世界の音楽シーンにおける総括と言っても過言ではないだろう。
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