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DISC REVIEW

U

KABA

UA

KABA

デビューを圧倒的な賞賛で迎えられたアーティストは、以降の活動においてそれが大なり小なり壁となり、表現の模索が困難に陥る傾向があるが、UAのスタンスでは、自己の世界を完遂させるためにどんな手段も厭わない強度のアーティスト・エゴがあり、いつでもその一身さで表現の壁を突き破っているように感じる。それはAJICOや菊地成孔とのコラボ、または女優業としての課外活動で顕著に表れるが、どの分野でも彼女の歌声・存在感は圧倒的だ。本作はデビュー15周年の節目を祝したカバー・アルバム。UA 本人がセレクトした内容は、ピンク・レディーからRADIOHEAD と幅広く、ジャズをベースに自身の世界観で再構築している。改めて、比類なき才能を痛感するが、その創作意識に影響を与えた音楽を知る意味では重要な1枚だ。

ハルトライブ

UA

ハルトライブ

初の公開レコーディングLIVE音源である本作は、その臨場感が褪せることなく収録されており、迫力満点だ。そして、最大の魅力はUAの圧倒的な存在感だろう。全編を通し、彼女のヴォーカルには生命力がみなぎっている。デビュー15周年キックオフ企画ということで、96~ 09年のナンバー13 曲が披露されているが、どれひとつとっても、当時のまま鳴っているものはなく、全て新たなものへと生まれ変わっている。リリース当時の「悲しみジョニー」は、これほどにエロティックで肉感的な曲であっただろうか。「情熱」の熱情はより強く激しくなり、ラストの「太陽手に月は心の両手に」では当時にはなかったフロアを包み込むだけの包容力が生まれている。1曲聴くごとに、彼女が希有な個性と無限の表現力を持つアーティストへと成長を遂げたのだと再確認させられる。

ATTA

UA

ATTA

第二子を妊娠~出産し、本人は理想と語る前作から約二年ぶりとなるアルバムが届けられた。LITTLE CREATURES、内橋和久、半野善弘、YOSHIMIO、朝本浩文、そして細野晴臣といった多彩なトップ・アーティスト達とのコラボレーションを果たし生み出された今作。平熱のビートが気持ちいい「愛の進路」から始まり、様々なリズムと豊かな音色が絡み合う13曲。そしてCORNELIUSを彷彿とさせる繊細なサウンド・テクスチュア。前作がみんなの期待するUAを意識したものなら、今作はそこから少し離れて、どこまでも自由で解放感がある。タイトルである「ATTA」はまだしゃべれない赤ん坊がなにかを初めてした時に発する言葉だという。

WHITE

uchuu,

WHITE

4人組の新体制となった彼らの新作EP。"Crossover Music Creators"をテーマとして掲げた前作『KEEP ON』のエレクトロ・サウンドなダンス・ミュージックから一転、バンド史上最大のポップ・ナンバー「FLY」から始まる、バンド・サウンドを推し進めた作品となった。鍵盤の音色も清々しく美しい「Magic」や、軽やかなシンセ音から徐々に激しさを増していくサウンドに興奮させられる「東京エソラ」もいいが、「My Name is Answer」と「Freedom」の聴かせる洒落たポップスよりもオールドスクールな感じがすごくいい。いずれの曲も、EDM的な高揚感を絶妙に残しつつも昨今の音楽シーンに顕著な"ダンス・ミュージックを人力のバンド・サウンドで聴かせる"ことに徹している印象だ。

+1

uchuu,

+1

嬉しい。ひとりの音楽ファンとして、こういう作品に出会えると、音楽を聴き続けてきてよかったと心底思う。大阪の男女5人組がリリースする1stフル・アルバムは、彼らの本気度がこれまで以上に感じられる1枚。もちろん、これまでだって本気だったと思うが、そのベクトルはぐぐっと向きを変えている。歌って踊れるuchuu,のエレクトロなロックは今回、ギター・サウンドやファンキーなリズムを強化。ラウドロックばりのインパクトをアピールする一方で、J-POPのファンにも訴えかけられる歌モノとしての魅力もモノにしている。もっとも、それは表層の変化にすぎない。僕らが聴き取らなきゃいけないのは、こだわりやエゴを捨て、彼らがここに結実させた"この音楽をもっと多くの人に届けたい"という思いだ。

HELLO,HELLO,HELLO,

uchuu,

HELLO,HELLO,HELLO,

自分たちの音楽を通して、バンドとオーディエンスが『HAPPY』(前作のタイトル)になれることを確信したうえで、今度はそれをもっと多くの人たちに届けたい――さまざまな出会いをテーマにした今回の『HELLO,HELLO,HELLO,』というタイトルにはそんな想いが込められているようだ。大阪の5人組が掲げる"歌って踊れるエレクトロ・ロック・サウンド"はこの3作目のミニ・アルバムで、よりエモーショナルに、そして日本語の歌詞が増えたことでさらにキャッチーに進化している。ピアノやガット・ギターのループを効果的に使って、巧みにアコースティックな質感も交えるなど、同時にサウンド・メイキングにもこだわった作品には違いないが、ライヴに足を運びたいと思わずにいられない6曲が並んでいる。

HAPPY

uchuu,

HAPPY

"世界で、泣き、踊り、唄え!大阪発最新型エレクトロ・ロック・サウンド!"と謳う5人組が前作から10ヶ月ぶりに完成させた2ndミニ・アルバム。プログラミングを巧みに使った浮遊感あふれるトラック・メイキングと熱度満点のバンド・サウンドの融合、そして胸を打つ情熱的なヴォーカルがこの5人組のサウンドを特徴づけているが、1番の聴きどころは踊れるリズムを追求したうえで、緩急の変化をそれぞれにつけた全6曲がどれも、誰もが楽しめる......言い換えれば、リスナーを限定しないポップ・ソングとしてちゃんと成立しているところにある。彼らが今回、テーマにしたという「HAPPY」は、彼らのライヴにおいて、大勢の人たちが泣き、踊り、唄いながら1つになった時の光景を表現した言葉に違いない。

CHORD

UHNELLYS

CHORD

前作から2年振りとなる5作目のアルバム。昨年リリースされた『SCREAMER e.p.』収録曲「体温」のMVがYouTubeで45万再生され話題となったことも記憶に新しいが、kim曰く"賛否両論を巻き起こした"このトピックに安易に乗っかるつもりなど毛頭無いとばかりに、原発問題に触れた冒頭の「DOORS」をはじめ全くブレることのないポリシーを感じさせる楽曲が並んだ作品となっている。"音楽で警鐘を鳴らす"というkimの姿勢が明確な輪郭を持った言葉となり耳に飛び込んでくると共に、インストでも充分通用するファンキーな演奏が楽しめる。様々な社会問題をテーマとした曲が並ぶ中で、個人に語りかけるような表題曲「CHORD」にkimの温かい人間性を感じることが出来るのが嬉しい。バンドの知名度が上がっていることは間違いないので、今作をきっかけとして彼らの音楽が遠くまで届くことに期待したい。

SCREAMER

UHNELLYS

SCREAMER

バリトン・ギターとトランペットを扱うヴォーカリストKimと、ドラムスとコーラスのmidi*による男女2人ユニット、UHNELLYS。今作で改めてKimの刻む言葉の威力におののいた。「体温」は、実話を基に、ある夫婦の最後の1日を綴った衝撃のリリック。夫の心情で描かれる生々しいストーリー・テリングは、ヘヴィなパンチを鳩尾にくらうように体内へ打ち込まれる。「SCREAMER」はメンバーが10代に多大な影響を受けたグランジへのオマージュ。midi*のダイナミックで焦燥的なドラムが緊張感をより際立てている。2人の楽器の音色が巧妙にループして交錯する「DOMINO」はスリリングでありながらも、2人のコーラスがキャッチー。新曲3曲とリミックス2曲、全曲に心地良い違和感があり、翻弄される。

アンリミッター

uijin

アンリミッター

2019年7月に渋谷TSUTAYA O-EASTで自身最大規模のワンマンを行う、"neo tokyo"をコンセプトに活動するアイドル・グループ、uijin。彼女たちが、その布石となる2曲入りシングルを完成させた。表題曲は常に次のステップへ進み続けたいという彼女たちの気持ちを表した1曲に。等身大の感情を言葉巧みに描く歌詞と、キャッチーなメロディに定評のあるDECO*27が作詞作曲を手掛けているのも頷ける。c/wは、前作に引き続き草野華余子が作詞作曲を担当。シンセ・サウンドが特徴的な「ignition」から一転して、ピアノとストリングスを軸にした楽曲に仕上がっている。今年に入り早くも3枚目のシングルとなるが、そのスピード感と楽曲の完成度の高さに驚かされる。

Overnight Rainbow

ukka

Overnight Rainbow

昨年末をもってリーダーの川瀬あやめがグループを卒業、今年1月には宮沢 友と若菜こはるの新メンバー2名を迎えた新体制でのパフォーマンスをお披露目したばかりのukka。ジャンルレスな楽曲を詰め込んだメジャー1stフル・アルバム『青春小節~音楽紀行~』の充実ぶりも記憶に新しいが、そんな彼女たちからメジャー2枚目となるシングルが届いた。本作には、爽やかなシティ・ポップの表題曲「Overnight Rainbow」、プロデュース・デュオ tee tea楽曲提供の「透明」ほか、各曲のインストゥルメンタルを含む全6曲を収録。"まだ見えてない景色 何度だって見に行こうよ"と高らかに歌い上げるTrack.1、"透明な明日が色付くように"と希求するTrack.2と、彼女たちの新たな旅立ちを印象づける1枚に仕上がっている。

青春小節~音楽紀行~

ukka

青春小節~音楽紀行~

ukkaがメジャー1stフル・アルバム『青春小節~音楽紀行~』をリリースした。結成から約7年、2022年11月にメジャー・デビューを果たした彼女たちの待望のフル・アルバムは、"音楽紀行"をキーワードに人生(ストーリー)経験を辿るような様々なサウンド/音楽要素を取り入れた1枚に。ライヴのSEとしてもお馴染みのオーバーチュアを皮切りに、爽快なロック・ナンバー「Rising dream」、ukka流ニュートロとも言える「don't say Love」、EDMテイストに仕上げた「コズミック・フロート」、そして昨年をもって卒業したメンバー 川瀬あやめの想いが歌詞とリンクするリード曲「つなぐ」など全12曲を収録。グループとしてひとつの節目を迎えた彼女たちが見せる多彩な音楽性と表現力が凝縮されている。

Saturday boogie holiday

UKO

Saturday boogie holiday

ディスコ・サウンドやファンク、R&B、ニュー・ミュージックなどのグルーヴを飲み込んで、しなやかな歌で心地よく吐きだしていくソロ・シンガー、UKO。初のアルバムは、タイトルにあるように、土曜日というワクワクする昂揚感と、仲間との賑やかなとき、いつまでも浸っていたいチルアウト感やひとりの時間など、ささやかな日々の中の贅沢さを彩ってくれる音楽が揃った。楽曲制作に数々のトラックメイカーを迎え、太陽の下から現れるネオンサインから、朝焼けのときまでフィットする幅広い曲調となっている。その多彩なトラックをトータル・ディレクターであり、シティ・ポップ・ファンから高い評価を受けるクニモンド瀧口(流線型)が鮮やかな手法で洗練させていき、絶妙なポップのさじ加減と、UKOの媚びない艶っぽさとが溶け合った、洒落た1枚となった。

A Long Way To Fall

Ulrich Schnauss

A Long Way To Fall

ドイツ出身で現在はロンドンを拠点に活動しているシューゲイズ・エレクトロニカの代表格Ulrich Schnauss。2007年リリースの前作『Goodbye』が音響/エレクトロニカ作品としては異例の大ヒットとなっており、本作は約6年ぶりのソロ作品。その場で新しいアレンジを作ることができるエイブルトンという音楽ソフトのおかげで、変化に富んだ多彩なライヴ・パフォーマンスができるようになったようで、ドリーミーなサウンドと高揚感のあるエレクトロニック・サウンドを中心に、型にはまった曲の構成ではなく、自由でとても広がりのある楽曲が詰まっている。リミキサーとして多くのバンドにリミックスを提供し、別のプロジェクトやプロデューサー、DJ等多くの顔を持つ彼は、このアルバムで更に独自のサウンドを確立した。

春火鉢

UMEILO

春火鉢

北海道在住の若き4人組、UMEILO。"小説のような世界観"が評判を呼ぶなか、今回はヴォーカルの伊藤純輔が書き下ろした小説に、2曲入りのシングルCDがパッケージされた作品をリリースする。"文学系ギター・ロック・バンド"というキャッチコピーに説得力を感じさせる、結成2年目の決定打だ。「春火鉢」は寒い土地から生まれたバンドならではの温かさや、20歳という狭間の年齢の伊藤が歌う青春のリアリティが伝わってくる。「夢路を終えて」は5分半を超える尺にたっぷりと言葉が詰まった切なく壮大な1曲。さらりとは受け流せない、いい意味で重みのある作品だ。伊藤やバンドの成長と共に世界観や音楽性が変化していくバンドのような気もするので、これからも楽しみに見守りたい。

宇宙旅行

ウミネコサウンズ

宇宙旅行

柔らかいアコースティック・サウンドに乗せて、人の心にスッと入り込むウミネコサウンズ=古里おさむの歌。それは一見、何の変哲もないシンプルなもののようで、とても手の込んだ職人芸のようなものだ。歌そのものの良さを活かす、仕事。何もしないわけでもなく、安易な装飾を施すのでもなく、例えば「宇宙旅行」でもメロディを際立たせながらも、その歌の背景にそっと宇宙を描き出すようなサウンド・アレンジ。USインディの手触りが感じられる「顔」でそっと琴線に触れるようなピアノの音色。シンプルでありながらも、過不足がないウミネコサウンズのセンスには、歌を聴き手に最良の形で委ねようとする強固な意志が感じられる。もちろん、それも素材となる歌の良さがあってこそ。素晴らしい歌が詰まったミニ・アルバムだ。

kaiba

umiuma

kaiba

1つ間違えれば不協和音に聴こえてしまうほどのスレスレのラインを何食わぬ顔で歩く、しかもハイヒールで。仙台出身の女性1、男性2からなるこのポスト・パンク・トリオのumiuma。SOMEONE STILL LOVES YOU BORIS YELTSINなど数々の良質な海外のインディー・バンドをリリースしているレーベルのMoor Worksからのリリース。確かに海外のインディー・ポップバンドと共振するようなザラザラとした質感をもちながら、一聴して日本人にしか成し得ないポップネスが同居する、非常に稀有な存在であると言える。Track.1の「ERA」のスリリングを通り越して狂気すら感じるギター・サウンドと荒ぶるドラムス、そして能天気さすら感じる女性ヴォーカルから織り成される唯一無二のサウンド、ライヴで是非体感したい。

Distance to you

u named (radica)

Distance to you

細やかなところまでこだわりが詰まった1枚。ヨシダマサト(Ba)がエンジニアまで手掛けることで、楽曲の世界観が忠実にパッケージされている。大人になることへの葛藤や、置き去りにしてしまった過去といった、心の中で燻り続けている想いに、美しい風景や表現を重ね合わせて、しっくりと寄り添ってくれる歌詞。ロック・バンドという軸足がぶれることなく、アレンジや音色、歌い方などで広がりをもたらした曲調。あらゆるところに、可能性が溢れている。バンドの世界観に宿った少年性/少女性の根幹を形作る令(Vo/Gt)の柔らかく高い、それでいて芯のある歌声も魅力的だ。"失ってから気づくものなんて無かった/常に何かを忘れ続けているだけ"と歌う1曲目「アンファ」にハッとさせられてから全6曲、耳が離せない。

with time

UNCHAIN

with time

"~を開放する"という意味のバンド名通りの道のりを歩いてきた彼らが、結成20年目に放つに相応しい思わず身体が動くグルーヴィな楽曲が揃った1枚。Mark Ronson然り、往年のCHICをアップデートしたような「get down」、ロック・バンドのケレン味たっぷりに谷川がセクシーなヴォーカルを聴かせる「Mr.WiFi」、本物感あふれるメロウネスを鳴らす「baby baby」、アルバムの中ではかなり普遍的なJ-POPフレイヴァーを感じさせる「2 late 2 luv」など、ようやく時代とUNCHAINのモードが合致してきたことを印象づける。ロック・バンドがやるファンキーな楽曲が好きなリスナーにも、世界的なトレンドとしてのファンク好きのリスナーにもこの新鮮なメイド・イン・ジャパンの作品を体験してほしい。

Orange

UNCHAIN

Orange

めくれたオレンジの向こう側に地球が見えるジャケットが目を引くUNCHAINの6thオリジナル・アルバム。多彩なゲスト・アーティストを多く招いた『Eat The Moon』、洋邦問わず様々なジャンルのカヴァーに挑戦したアルバム『Love & Groove Delivery』の流れを経て彼らが行き着いたのは、日、米、英、蘭、北欧のサウンドの融合。寄り添うようなぬくもり溢れる音色は心地よいが、音のひとつひとつを取ってみると細かいギミックが効いているので、耳をすまして聴いても楽しい。ここに辿り着くまでには様々な挑戦や追求があり、中には苦しみを伴うこともあったようだが、そんな裏側を感じさせない無邪気な作品に仕上がっているのはさすがUNCHAINの手腕だ。生活を彩るグッド・ミュージックに酔いしれよう。

Eat The Moon

UNCHAIN

Eat The Moon

UNCHAIN 5枚目のオリジナル・フル・アルバムは、メンバーが“深夜の移動遊園地”“夜に現れるサーカス団”と例える通り、腰が砕けそうなほどファンタジックでロマンティックな作品だ。過去最多という13人のゲストを招いて作られたのもあり、様々な音が楽しさを抑えきれない! と言わんばかりに隅から隅まで目まぐるしく弾む。谷川正憲のヴォーカルは曲ごとに異なる表情を見せ、様々なアトラクションに変幻して我々を楽しませてくれる。そして、止まらないドキドキだけではなく微睡みのように甘く蕩けそうな心地良さも。夜は人間が眠りに就くオフ・タイム。夢との狭間とも言える現実の中の非現実、その隙間を丁寧に掬い上げた作品だ。ぬくもりを感じる鮮やかなコーラス・ワークにも注目。

SUNDOGS

UNCHAIN

SUNDOGS

まずは、「太陽とイーリス」をぜひ聴いてもらいたい。UNCHAINが追い続けてきた“ソウル”の息吹が、感動的なメロディを伝わって胸を貫く――。そんな“ソウル愛”を強力な芯にして、彼らはまたも新境地を開拓した。「スタイル・ミサイル」のスピード感は、パンクやハードコアを彼ら独自の咀嚼の仕方で解釈したかのよう。「My Bicycle」は、“乳白色のボディーがキュート”なマイ自転車への恋歌(笑)。こんな遊び心も見せるバンドだったのかと驚かされ、かと思えば「アザラシ」はアコースティック・ナンバー、さらに続くは「Another Vision」の超ヘヴィなギター・リフなどなど……。楽曲的な幅広さは彼らの作品史上No.1、かつ、どの曲にもソウル・フレイヴァーは確実に託された超意欲作!

literacy

undervár

literacy

2013年6月に現在のメンバーで活動することを発表した4人組が1年4ヶ月ぶりにリリースする2ndアルバム。ギター、ベース、ドラム、そしてピアノの音が激突しながら轟音で鳴るポスト・ロック・サウンドがかっこいい。もちろん、ポスト・ロックは彼らの一面を物語る便宜上のカテゴライズ。R&B/ファンクやハードコア他、多彩なバックグラウンドを感じさせる楽曲の数々がJ-POPシーンで堂々と勝負できるポピュラリティやJ-POP特有のナイーブさも持ち合わせているんだから驚かされる。それぞれにメッセージを込めながら掛け詞を駆使した歌詞もユニークだ。歌詞カードとにらめっこしながらじっくりと言葉遊びの妙を楽しみたい。ちなみにラストを飾る「Defying Gravity」はミュージカル"ウィキッド"挿入歌のカバー。

Barbara Barbara, We Face A Shining Future

UNDERWORLD

Barbara Barbara, We Face A Shining Future

先行配信第1弾となった「I Exhale」のまるでLou Reedのごときモノローグ調のKarl Hydeのヴォーカルや、エレクトロで8ビートを表現したような第一印象、かと思えば音のあたりはインダストリアルでもあるこの曲に良くも悪くも驚かされたわけだが、大音量で聴くとじわじわ彼らの先見性が聴こえてきた。続く「If Rah」の読経的な表現とある種古典的なテクノ/ハウスなトラック、しかし耳を澄ますと"楽器演奏的"な何かが明確ではないがうかがえる。その印象は後半の「Ova Nova」での非常に"近い"パースペクティヴを持つ音像からも伝わる。また、ケルトとアラビアンの中間のようなメロディを持つ中盤のインストも大気圏外から地球へのノスタルジーを綴るよう。"未来のフォーク"的なアルバムだ。

Barking

UNDERWORLD

Barking

これまでの経験に裏打ちされた圧倒的なオリジナリティがあり、冒険的であり意欲的な野心も感じる新境地である。説明不要の御大、UNDERWORLDから約3年ぶりに新作が届けられた。Karl Hyde のヴォーカルを前面に押し出した歌モノが目立つが、この新境地とはやはり全9曲中8曲が外部プロデューサーと制作された動きが顕著に物語っている。お馴染みDarren Priceやダブステップ・シーンを支えるAppleblim、「ドラムンベース界のDJ SHADOW」なる異名を持つLincoln Barrettなど個性的な顔ぶれのままに、カラフルなUNDERWORLD節が描き出されている。Darren Emerson脱退後はどこか内省的なムードを孕んでいたが、本作はそのベクトルがようやく掴んだ答えなのかもしれない。新たなアンセムとなるであろう「Always Loved A Film」や「Scribble」は、高揚感に溢れた深遠なる音楽の世界へ導いてくれるから。

BOW MORE!

unicycle dio

BOW MORE!

"わかる人にはわかる、けどわからない人にもわかる"をコンセプトに活動する4人組ロック・バンド、unicycle dioの初の全国流通盤。彼らは、理屈を越えたところで聴くものの"無意識"に訴えかける音楽を追求する。それは言うなれば"よくわからないけどかっこいい音楽"なのだ。実際には、ギター・ロックを軸にしながらも、ジャズやファンク、ブルースといった様々なアプローチがなされた楽曲が並び、まさに"全方位対応型のギター・ロック"と言える。バンドとしては2度の脱退劇を始めとする様々な困難を乗り越え現在に至る。それゆえに彼らの音楽には、もはや生き様ともいうべき"泥臭さ"が滲み、切実な音像をもって胸に迫る。生きるか、死ぬか、そんなことは置いといてやるしかないんだと。

Love me tender

Uniolla

Love me tender

ロック・サウンドの旨味を体現できるメンバー、KUMI(Vo)、深沼元昭(Gt)、林 幸治(Ba)、岩中英明(Dr)の4人が好奇心やイノセントな音楽好きの側面もてらいなくバンドに投入することで生まれるケミストリーは、2ndアルバムでさらに深化。愛らしいポップが際立っていた1stから成長した主人公を感じさせるオープナーTrack.1で本作の世界観に引き込み、モータウン・ポップ調のグッド・ミュージックTrack.2やTrack.4で深沼の書くメロディの良さに解放され、ニュー・ウェーヴのニュアンスを感じるTrack.5、ループするリフで踊れるTrack.6など新鮮な側面を見せ、終盤のタイトル・チューンが曲調と歌詞両面で生き方を温かく肯定してくれるよう。KUMIのヴォーカリストとしての柔らかで優しい表情もこのバンドの要と言えそうだ。

LEVEL 9

THE UNIQUE STAR

LEVEL 9

2週間で完売となった、限定シングル『宇宙少年』以来、約7カ月振りとなるTHE UNIQUE STAR待望の3rdミニ・アルバム。数々のライヴを経て鍛え上げられた鉄壁のバンド・アンサンブルによりスケール・アップし、ソリッドになったサウンド。彼らの持ち味である男女ツイン・ヴォーカルも、豊かになった感情表現からなるメロディも、より深くなり聴くものを揺さぶる。それにより、彼らの真骨頂である静と動のコントラストが今まで以上に際立った。さらなる飛躍が望まれる彼らの、その期待に応え得る素晴らしい力作だ。2月から3カ月連続で始まる2マン企画も楽しみだが、ぜひその前にこの『LEVEL 9』を聴き込んでライヴ開場へ足 を運んでほしい。

宇宙少年

THE UNIQUE STAR

宇宙少年

たったひとつしかない星が放つ宇宙のサウンド――。2010年4月にデビューした男女混合4ピース・ロック・バンドTHE UNIQUE STARのタワーレコード限定、数量限定販売のシングル。エッジが鋭く効いたギター・リフが印象的なイントロ、特徴的なハイトーン・ヴォイスが淡々と紡ぐメロ、そしてヴォーカルとコーラスが織りなす宇宙人の声を彷彿とさせるようなハーモニーが印象的なサビ。ちょっと無機質な音色と、どこかほっとするアジアン・テイストなメロディのアンバランスさが妙に心地良い。聴いたら誰もが“宇宙っぽい!”と思わずタイトルそのままの感想を言ってしまいそうな、日本人の持つ宇宙観がぎゅっと詰まったような1枚。「宇宙少年」を聴きながら天体観測に出かけてみてはいかが?

Good morning Devil

THE UNIQUE STAR

Good morning Devil

合理化が進んだ愛なき世界に対する不満・疑問から生まれる拒絶、だけどそこで生きるしか道はないと理解していながらもその現実に踏み切れないという自己矛盾と、それでも捨てることが出来ない未来への淡い希望。その狭間の闇の中を苦悩に満ちてもがき苦しみながらもがむしゃらに走り抜ける時に鳴る音が「たった一つの星」という名を持つこの少年少女達の音だ。だからギターはナイフのように鋭く尖っていて、ベースとドラムは野太く不穏で、ヴォーカルは少年のように澄んだ声で必死にその闇を切り裂こうとする。繊細かつ凶暴な音楽だ。今年4 月にデビューしたばかりの彼らのこの2nd ミニ・アルバムは、真夜中、現代社会に怯えベッドルームの中で言い知れぬ不安を感じている人達の絶望に効く薬にも、怠惰性を悪化させる麻薬にも成りえるだろう。

空前絶後

THE UNIQUE STAR

空前絶後

2008年に結成された男女混合4ピース・バンドのデビュー・ミニ・アルバム。ソリッドなギター・サウンドと男女の掛け合うハイトーン・ヴォーカルが魅力的な彼らは、SPACE SHOWER TV「クラブサーモン」やJ-WAVE主催のイベントなどに出演し注目を集める。疾走感やダイナミズムを併せ持った高い演奏力はライヴでより力を発揮するのだろう。事実ライヴで彼らのファンになったという人が多い様だ。もちろんこのアルバムが迫力不足かといえばそんな事は全く無く、一曲目の「不敵な笑みを浮かべる日」からエッジの効いたサウンドを聴かせてくれる。彼ら持つシリアスで独創的な歌詞と変幻自在のバンド・アンサンブルの組み合わせはとても面白く魅力的。これからが楽しみな新星だ。

Catcher In The Spy

UNISON SQUARE GARDEN

Catcher In The Spy

「桜のあと(all quartets lead to the?)」がアニメ"夜桜四重奏 ~ハナノウタ~"OPテーマに、そして"劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-"主題歌に起用された『harmonized finale』リリース時にはミュージックステーションに出演するなど、知名度を大きく上げた彼らが、ロック・リスナーもJ-POPリスナーも丁寧に誘う、非常にフレッシュでエネルギッシュな作品を完成させた。歌謡メロと強力なバンド・サウンドで序盤たたみ掛けると中盤からはポップに。と思いきやその後、切れ味鋭いロックで切り返す。全員が退かないアンサンブルによる牽引力はまるで彼らのライヴそのままで、随所に効いたヴォーカル・ワークなどの遊び心も痛快だ。高揚感溢れるラストまで、約50分を駆け抜ける。

harmonized finale

UNISON SQUARE GARDEN

harmonized finale

着実にスケール・アップしながらヒットを飛ばし続けている3人組、UNISON SQUARE GARDENによる9thシングル。『劇場版TIGER & BUNNY -The Rising-』の主題歌として書き下ろしたタイトル・ナンバーはピアノの音色が印象に残るとても気持ちのいいロック・ナンバー。構成そのものはシンプルながらドラマチックな展開および熱度満点のアンサンブルによって、何度でもリピートしたいと思わせる聴きごたえある仕上がりに。言葉をそっと置いていくような歌唱も個性を際立たせている。「オリオンをなぞる」「リニアブルーを聴きながら」同様、彼らの代表曲になることは必至。その他、それぞれに異なる魅力をアピールする「ピストルギャラクシー」「三月物語」「I wanna believe,夜を行く」の3曲をカップリング。

Innovation In The Dynamics Of Acid

UNIVERSAL INDICATOR

Innovation In The Dynamics Of Acid

これぞ、社会と常識を逸脱するための音楽。90年代初頭、Aphex TwinやMike Dredなどによって結成されたアシッド・ハウス・クルー、UNIVERSAL INDICATORの、01年にリリースされたミックス・アルバムがボートラ付きで再発。セカンド・サマー・オブ・ラブ以降、商業主義にひた走るシカゴ・ハウス勢へのアンチテーゼとして結成されたという彼らの音楽は、90年代初頭のクラブ・シーンの猥雑さや刹那的な恍惚、無垢な喜びを見事に表現している。スピーディに、ハードコアに、過去と未来を切り落としながら打ち鳴らされるアシッド・サウンドは、今聴いても圧巻。この再発盤は当事者たちが昔を懐かしみながら聴くのではなく、tofubeatsやMaltine Records系の音楽を聴いている今の若者たちに、是非聴いてもらいたい。

オークション

the unknown forecast

オークション

バンド名に“予測不能”という意味の言葉を掲げるとは、とても威勢がいい。そんな強気の姿勢が漲った、名古屋を拠点に活動する19歳の4ピース・ギター・ロック・バンドの2ndミニ・アルバム。シニカルでひやりとする物語を、艶のあるメロディと耳にまとわりつく鋭いサウンドが彩る。パートひとつひとつにも様々な仕掛けが盛り込まれており、衝動とユーモアを緻密に編んでゆくような質感。それに少し背伸び感があるところも、大人とも子供とも違う若者ならではだろう。キャッチーな和風リフが印象的な「モザイク」、仮想世界を描きながら現代の闇を照射する「狂売場」と「七転抜刀侍」、ストレートなアレンジがスケール感を生む「fish story」と「オーロラをさがして」、5曲全てにバンドの音楽的挑戦が感じられる。

Stay Forever

Unknöwn Kun

Stay Forever

ネットから人気に火がついたUnknöwn Kunが、"資生堂アネッサ"のCMに書き下ろした「Stay Forever」に、「ToT」、「ロストシープス」の2曲を加えリリース。"UnknöwnからFamöusになる"という軌跡を辿ろうとしている彼にとって、今回のタイアップはネットにとどまらない、さらに多くの人に知ってもらう大きなチャンスになることは間違いないのだが、英詞も含め、そのタイミングでベッドルームからいきなりグローバル・スタンダードにアプローチしたとも言える、カッティング・エッジなポップ・ソングを選んだところに、アーティストとしての彼の本質が窺える。「ロストシープス」は日本語だが、情報量の多さの中にあえて違和感を残すトラックメイキングは他の2曲と共通している。

II

UNKNOWN MORTAL ORCHESTRA

II

2010年に米ポートランドで結成されたサイケデリック・ポップ・バンド。昨年セルフ・タイトルのデビュー・アルバムをリリースし欧米のメディアで高評価を得たが、GRIZZLY BEARやGIRLS等とツアーを回った後、人気レーベルJagjaguwarと世界契約を結び2ndアルバムのリリースが決定した。様々な音が入り混じったサイケデリック且つポップでソウルフルな楽曲を中心に、レトロな楽器の音が不思議な歌声と相まって強烈な個性を放っている。中盤のハイライトで7分超の「Monki」から1分の短曲「Dawn」への流れも素晴らしく、静かに幕を閉じるエンディングの「Secret Xiants」までまとまりがある。前作よりグルーヴ感も増しており、とても中毒性の高いアルバムに仕上がった。Hostess Club Weekenderでの日本初ライヴにも期待がかかる。

Black Light Spiral

Untold

Black Light Spiral

震えるように微かに刻まれるビートと、反響するサイレンの音―― 窓の外からうっすらと聞こえてくる街の喧騒を再現したかのようなTrack.1「5 Wheels」が始まった瞬間から、言い知れぬ不安感が聴き手を侵食していく。James Blakeを輩出したレーベルHemlockの主宰としても知られるロンドンのプロデューサー、Untoldが今年2月にアナログと配信でリリースした1stアルバムの完全版。ダブステップの内省的なビートとインダストリアルの無機質かつ歪な不協和音を絡ませ合いながら、彼はこの現実社会の哀しみと恐怖を、アルバム1枚通して陰鬱且つ強迫観念的な音世界で描き出した。"レイヴ・カルチャーへのレクイエム"と呼ばれたダブステップは、James Blakeのメランコリーと共に、このUntoldの残酷なまでの写実性へと行き着いた。

BRAiNMATHS

V.A.

BRAiNMATHS

James BlakeやSBTRKT、Zombyといった現行のベース・ミュージック・シーンを牽引するアーティストたちをコンパイルしたUKの名門レーベルRAMPの日本独自コンピレーション『R-Way Junction』のリリースに引き続き、サブ・レーベルであるBRAiNMATHSの初のコンピレーションが登場。上記3人以外に、ROSKAの別名義BakongoにUntold、 James BlakeバンドのギタリストでもあるAirheadが参加している今作は、彼らの初期音源やヴァイナルでしか手に入らなかったものがCD化された極めてレアなもの。Burialの影響を感じさせるJames BlakeとAirheadの「Pembroke」はその後の作品にも通じる白眉の出来だ。

TWiLiGHT

UQiYO

TWiLiGHT

RADWIMPSや[Alexandros]など、帰国子女のメンバーを擁するバンドは独特の感性を持っていることが多い(もちろんそれだけが理由ではないだろうが)。ロンドンとシカゴで育った経歴を持つYuqi、幼少時代台湾で過ごしたPhantao、9~13歳をアメリカ・ケンタッキー州で過ごしたSatoshiという、帰国子女3人によるヒューマン・エレクトロ・ユニット、UQiYOもまた然り。こんなにも心地よく"非日常"を感じさせてくれるバンドはそういないだろう。水晶のようにキラキラとした音たちが、スピーカーからこぼれ出てきて部屋中に膨らんでゆく。そのまま外へと飛び出し、この音たちは世界に広がっていくのだろう。前作以上に解放感に満ちたUQiYOワールドをご堪能あれ。