DISC REVIEW
09
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04 Limited Sazabys
Squall
表題曲は疾走する演奏にメランコリックな歌が乗る、まさにフォーリミ印のメロディック・ナンバー。今年2月に日本武道館公演を成功させてからも快進撃が止まらない彼らが約1年3ヶ月ぶりにリリースするシングルとしては、ちょっと手堅いんじゃない? と思いきや、"こんなはずじゃない/こんなもんじゃない"という歌詞にグサッとヤラれた。闘志なのか、それとも飢餓感なのか、危機感なのか。いずれにせよ、彼らの中にはまだまだ、こんな気持ちがくすぶっている。さらなる飛躍の前にバンドとファンの間でそれを再確認。そういう位置づけのシングルと受け止めた。Track.3「capture」のハードコアな演奏ももちろんだが、キュートなTrack.2「happiness」でGEN(Ba/Vo)が奏でるウォーキング・ベースも聴きどころだ。
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04 Limited Sazabys
eureka
メジャー・デビューしてから、パンク・シーンに留まらない人気を確立しながらロック・シーンでめきめきと頭角を現してきたとはいえ、バンドが持っている本質に何ら変わりはないことは、前作アルバム『CAVU』から1年5ヶ月ぶりに完成させたこの2ndフル・アルバムが雄弁に物語っている。メロコアや2ビートに頼らないメロディックなロック・ナンバーという王道路線ももちろんいい。Track.2「Feel」、Track.3「drops」、Track.4「Warp」他、前半の6曲を聴けば、彼らが自分たちの王道をさらに磨き上げたことがわかるだろう。しかし、彼らなりに90年代のJ-POPの魅力を再現したTrack.7「Night on」からの型にハマらない展開がやっぱりフォーリミ。後半は、僕らが知らないフォーリミを存分に楽しませる。
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04 Limited Sazabys
AIM
昨年、初の全国ワンマン・ツアーを成功させた04 Limited Sazabysが前作『TOY』から8ヶ月ぶりにリリースするメジャー第2弾シングル。夏にリリースすることを意識して、原点回帰を思わせる2ビートのメロコア・ナンバー「climb」がオープニングを飾っているが、『TOY』収録の「Letter」同様、「fog」ではメロディアス且つ、ちょっと大人っぽい魅力を存分にアピール。その他、ハードコアの影響が表れた「cubic」、そしてポップなロック・ナンバーの「Give me」とそれぞれに異なる魅力を楽しめる計4曲が収録されている。バンドの新たなステートメントとも言える「climb」はもちろん、ラヴ・ソングの「fog」と「Give me」。ヒネらず、あえてストレートに綴った歌詞も聴きどころだ。
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04 Limited Sazabys
TOY
持ち前のメロディ志向がせつないメロディに実ったTrack.1「Letter」を始め、それぞれに異なる魅力を持った4曲が揃い、バンドの快進撃とともに成長をアピールするメジャー第1弾シングル。「Letter」の印象が強すぎて、しっとりしすぎてしまうんじゃないかとメンバーたちは心配したそうだが、ハード且つエモーショナルなTrack.3「escape」とキュートなポップ・ソングのTrack.4「soup」の毒っ気が作品全体をギュッとひきしめているから昔からのファンもご安心を。逆に「Letter」を聴き、フォーリミに興味を持ったリスナーもその2曲を聴けば、彼らがどんなバンドかたちまち理解できるはず。「Letter」で聴ける大人っぽい音色およびフレーズのギターも聴きどころだ。彼らの新境地と言ってもいい。
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04 Limited Sazabys
CAVU
3rdミニ・アルバム『monolith』のヒットをきっかけに吹き始めた追い風に乗って、さらに加速したバンドの勢いが感じられる1stフル・アルバム。メジャーからの第1弾ということで、「swim」で打ち出したポップな一面をさらに追求したものになると思いきや、予想以上にアグレッシヴでちょっとびっくりした直後、バンドの芯がこれっぽっちもぶれていないことがわかって思わず快哉。メロディック・パンクを軸に新しいサウンドも含め、いろいろな楽曲に挑戦しているが、その幅広さがポップからアングラまでというところにバンドの心意気が感じられるが、スロー・ナンバーが1曲もないところもいい。「Any」を始めライヴではお馴染みの3曲もリメイクして収録。現在のバンドの姿をすべて曝け出すという想いもあるようだ。
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04 Limited Sazabys
YON
切なさとポジティヴなヴァイブが絶妙に入り混じりあいながら一皮剥けたことをアピールするTrack.1「swim」は、3rdミニ・アルバム『monolith』のヒットをさらに大きな広がりのあるものにするに違いない。ブレイク間近!?と噂されている名古屋の4人組が『monolith』から7ヶ月ぶりにリリースするシングル。その他の3曲もメロディック・パンクならではの疾走感を持ちながら、曲ごとに新境地を思わせるアレンジを閃かせ、より広がりある魅力を心憎いまでにアピールしている。1度聴いただけで耳に残る中性的な歌声のインパクトのみならず、多彩なリズム・パターンで曲のバリエーションを作るドラムや印象的なフレーズを奏でるギターも聴きどころ。バンド・サウンドそのものに個性が感じられるところがこのバンドの一番の強みだ。
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0.8秒と衝撃。
つぁら﹆とぅ﹆すとら
塔山忠臣がこのアルバムに向けて"挑戦する芸術の美しさを届けます"とメッセージを寄せていることに、未だシーンの中ではアグレッシヴで盛り上がる要素を求められつつ、内面の真実を探ろうともがいているアンビバレントな思いを見たのだが......。実際、非常に振り切った5曲だ。まるでEDMの享楽性がバカバカしく思えるエレクトロニック・ボディ・ビートのTrack.1。ラウド/ミクスチャー/デジコアとボカロ的な表現が交互に登場するTrack.2、ハウスと歌謡を行き来するTrack.3は、いずれもエレクトロを塔山のニュー・ウェーヴ観で再定義したかのよう。メタルの殺伐を革命のサウンドスケープに模したTrack.4、アーバン・テイストなのにエレジックなTrack.5。"共感地獄"に辟易した耳に"音で語る哲学"が新鮮に響く。
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0.8秒と衝撃。
破壊POP
Track.1「The Killing Moon」が、80年代UKサイケの雄、ECHO & THEBUNNYMENの名曲と同名であることからもわかるが、本作を体系づけるなら、塔山が常に敬意を捧げる電気グルーヴのナンセンス、その奥にある80年代UKニュー・ウェイヴ、そして、そのさらに奥に広がるTHE DOORSやLOVEなど60年代USダーク・サイケデリアにまで辿り着く。それは"ラヴ・アンド・ピース"という理想主義の裏側にあり、それが朽ち果てたあとも残り続ける、クソみたいな現実に対する麗しき反抗の歴史でもある。全10曲、過去最高にメロディアスな耳馴染みだが、音の隙間からは狂気が零れ落ちる。J.M.の歌唱が今まで以上にしなやかに響くのも大きい。冷気を宿したアコギが映えるTrack.4「白昼夢」が特に素晴らしい。
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0.8秒と衝撃。
ジャスミンの恋人
素晴らしい。この「ジャスミンの恋人」は、ハチゲキ、狂騒のボディ・ミュージック時代の幕開けを告げた2011年のシングル曲「町蔵・町子・破壊」以来のターニング・ポイントとなる1曲だろう。ノイズが消え、シンプルに削ぎ落とされたアレンジ。故に今まで以上に輪郭が露わになった、ソリッドなビートのトラック。その上を流れるアコースティック・ギターは、時に聴く者の心のひだをそっと撫でるように艶やかなメロディを奏で、時に聴く者の腰をダイレクトに揺さぶるようにアタック感強く掻き鳴らされている。80年代のイギリスでNEW ORDERやTHE STONE ROSESが鳴らしたサウンドを、20年以上の時を超えて再解釈しているような新機軸。誰にも踊らされない君の気高き心は、こういう音楽でこそ踊らせるべきだ。
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0.8秒と衝撃。
いなり寿司ガールの涙、、、EP
そもそも塔山とJ.M.は、とても誇り高く純潔な契りを音楽やアートと結んでいる2人である。音楽に対するロマン、真剣さ、切実さ――ハチゲキを他とは一線を画す存在たらしめていたのは、そこにある純度の高さに他ならない。これまでの彼らが苛立ちや怒りを抱えていたとすれば、それは"何故、他の誰も自分たちと同じくらい深く強く音楽を愛せないのか?"という孤独と哀しみから生まれるものだったのだと思う。しかし、新興レーベル"HAGATA"移籍後初リリースとなる本EPでハチゲキは、もはやそうした苛立ちや哀しみに捉われていない。例え相手の土俵の上だろうが、真正面から勝負してやる。そして、勝ちに行く――そんな覚悟と決意と自信が、本作の研ぎ澄まされた1音1音からは聴こえてくる。素晴らしい。まさに覚醒の1枚。
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0.8秒と衝撃。
NEW GERMAN WAVE4
0.8秒と衝撃。の、今年2作目となるフル・アルバム。制作開始当初、石野卓球『BERLIN TRAX』から影響を受けたというこの作品は、アルバム・タイトルの"NEW GERMAN WAVE"という言葉が示すように、電子音楽の深淵を巡る。このアルバムでハチゲキは、自分たちの鳴らす音楽の奥には歴史と文脈という道しるべがあることを表現してみせる。そして音楽性だけでなく、このアルバムは精神性の部分でもハチゲキのディープな内面が吐露されている。特に、ふくよかなサウンドに乗せた優しげなメロディが心地よい「FLoWeR」、壊れそうなほどに美しい「UKuLeLe HiBisQs」。この2曲は、これまでのバラード曲よりも一段と重い筆圧で"別れ"と"死"を歌う。音楽的にも、バンドの精神性的にもより深みを覗き込んだ大傑作。
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0.8秒と衝撃。
電子音楽の守護神
前作、そして去年のEPを経て、クラウト・ロックやインダストリアル・ロックを参照することで0.8秒と衝撃。の音楽的個性となった暴力的なビートは、本作でも健在。だが、それは今までのように周囲に対する違和感や怒りを表現するためのものではなく、リスナーを鼓舞するためのものとして、本作では鳴らされている。無論、苛立ってはいるが、いじけてはいない。電気グルーヴとTHE BLUE HEARTSに影響を受けたという塔山の言葉は、THE BLUE HEARTS的な部分――つまり、リスナーに対する扇動者としての役割に一層自覚的になった。この時代、“生きづらさ”を感じることは、同時に、“自分を持っていること”の証明でもある。生きづらくて結構。楽しめ。そんな強さと誇りに満ちた、現時点での最高傑作。
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0.8秒と衝撃。
バーティカルJ.M.ヤーヤーヤードEP
作品ごとに新たな音楽的側面を覗かせる0.8秒と衝撃。だが、1年前ぶりの音源である本EPにおいても、やはり一筋縄では行かない進化を見せている。去年リリースされたセカンドアルバム『1爆2爆3爆4爆5爆6爆、東洋のテクノ。』において、エレクトロやインダストリアル・ロックを参照することで体得した暴力的なビート・ミュージック的意匠はそのままに、しかしファースト『Zoo&LENNON』の頃より垣間見えていた塔山のメロディ・メイカーとしての才もまた、本作では発揮されている。その結果、“体より心が先に踊る叙情的ダンス・ミュージック”という、かなり独創的な世界観を構築。最後の最後に「大泉学園北口の僕と松本0時」という美麗バラードを持ってくる点も、ニクい。
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0.8秒と衝撃。
町蔵・町子・破壊
5月に発売されるアルバムに先駆けて2000枚限定で発売される0.8秒と衝撃。の最新シングルは、収録曲3曲でありながら破壊力抜群。圧倒的な言葉数の多さと目まぐるしい曲展開故に、まくしたてられているのかと思ったが、どちらかというと制作者本人が軽い混乱状態にあるようにも聴こえる。何故だろう、この混乱という脳内の無秩序状態から、太宰治や三島由紀夫が連想されたのだ。1stアルバムから変わらず引き継ぐ昭和歌謡的なメロディのせいだろうか。三島の美への異常な執着や、太宰の作品に多く見られる退廃・刹那的なものへの強烈な憧れといったものに似た臭いを感じたのだろう。知性故の反逆と反骨の精神がもたらす切れ味の鋭さと危うさ、ナーバスすぎるが故の正常と異常の境界線がひどくあいまいなのも最高にクレイジー。
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0.8秒と衝撃。
エスノファンキードフトエフスキーカムカムクラブEP
0.8秒と衝撃の新作EP は、ファースト・アルバムに比べ、音が整理された印象。攻撃的なポスト・パンク「ビートニクキラーズ」や「号84谷渋」も、ジャンクなハードコアではあるのだが、ポイントをしっかりと押さえた構成と音作り。ナイーヴな昭和歌謡的メロディ×フラメンコ「21世紀の自殺者」は0.8秒と衝撃。のセンスが凝縮された秀逸な雑食ポップ。逆に、「FOLK GUERRILLA」は正直ピンとこない。例えばUSインディの文脈もジャンクに取り入れながら、独自の感性を持つ歪なポップ・ソングになっているところがこの二人の面白さだけれど、その対象がSunny Day Serviceになると、途端に素直になるからそう感じるのかも。でも、ブルーにこんがらがった愉快犯的センスはやはり好きです。
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0.8秒と衝撃。
ZOO & LENNON
ソング・ライティングを手がける塔山忠臣とモデルとしても活躍するJ.M. による男女二人組ユニット、0.8秒と衝撃。のデビュー・アルバム。2008年に結成し、音源を一切リリースしていないにもかかわらず、ネット上を中心に話題を集めていたこのユニット。ヤケッパチで自意識過剰気味な歌詞をディストーション・ギターに込めたかと思えば、おセンチなポップ・ソングになったり、昭和歌謡になったりと、ほとんど愉快犯的なソング・ライティングが一番の魅力。オルタナを基盤に、時にダブやHIP HOP の要素も取り入れたアレンジもしっかりしていて驚かされるが、自主プロデュースなんだろうか?どこか刹那的な匂いをプンプン放っているこの二人、どこまでこのセンスを高めていくことができるか注目だ。
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0℃ PARADE
TULI
0℃ PARADE、1stフル・アルバムにして初の全国流通音源。一聴するとUK/USインディー色が濃いが、彼らがやりたいのは決して洋楽の焼き増しではない。押韻を多用した流れるようなリズムにしろ、身体の内側から迫りくるような熱量の上げ方をしているバンドのアンサンブルにしろ、どちらかというと日本人的。その趣き深さこそが"何となく耳と頭に残る感じ"を生み出している要素であり、彼らの音楽をポップ・ミュージックたらしめている要素でもあるといえよう。インタビュー中、性格や心情が自然と音に出てしまうという趣旨の発言が目立ったが、それはつまり、次回作では他の色を見ることができる可能性も高いということ。もっといろいろな曲を聴いてみたいと素直に思った。
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1000say
BABYLON
前作より4年ぶりとなる2ndフル・アルバム『BABYLON』を放つ男女ツイン・ヴォーカルのエレクトロ・ロック・バンド、1000say。結成10年という節目を飾る今作では、"発展しては崩壊していく空想の街"という近未来的な世界観を描き、疾走感溢れる楽曲で駆け抜ける。イントロダクションのような幕開けを演出するTrack.1「THEGATEWAY TO BABYLON」でファンタジーの世界へと誘われ、Track2.「DET-ROCK」では、まるで小説の一節を早口で畳み掛けるかのような言葉の圧に、のっけから度肝を抜かれる。しかしそれはこの作品のほんの序章にしかすぎず、アルバムが進むごとに空想世界を言葉巧みに魅せてくれるのだ。本編ラストのTrack.11「流星DESTINY [STARLIGHT VERSION]」では、どんな結末が描かれているのだろうとワクワクさせられる1枚だ。
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100s
世界のフラワーロード
100sの3rdアルバム『世界のフラワーロード』が完成した。映画「ウルトラミラクルラブストーリー」のエンディング・テーマ「そりゃそうだ」などのストレートなロックンロールから、「フラワーロード」のような優しい歌、ディスコティックな「モノアイ」と、様々な楽曲を尽きることのない遊び心で100s色に染め上げる。ノスタルジックな空気が全編を貫く、どこか奇妙で、どこまでも人懐っこいポップ・ワールド。20世紀がもうすぐ終ろうとしていたあの頃、人生をばら色に変えてくれたあの魔法を信じ続けているかい?100sから届けられた新たな魔法。身近な日常を無限の世界に変貌させる57分07秒。CD+DVD盤には、「ウルトラミラクルラブストーリー」の横浜聡子監督による全曲のミュージック・ヴィデオが収録されている。
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101A
dance in a dim....
『0号室の旅人』以来5年ぶりの6作目。すでに自己の音楽性を確立しているバンドだが、ここでは従来の路線をしっかりと踏襲しつつも、さらにその先にブレイクスルーした感がある。たった3人で作り出しているとは思えないディープでドープなサウンドは唯一無二だ。変拍子をそつなくこなすSallyのドラムが演奏を加速させ、the kの巧みなサウンドメイクが広がりのある美しい情景を作り出す。noahの消え入りそうに可憐で、だが強固な意志を感じさせるヴォーカルと、空間を効果的に生かしながらも分厚く力強いトラックは時に鋭く、時に優しく、時に厳しく、劇的に対峙して世界を描き出している。やや観念的なコンセプトも、音を聴けば納得する。結成以来17年、ついに産み落とされた最高傑作である。
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120 DAYS
120 Days II
ノルウェー出身のダンス・ロック・バンドの5年ぶりの新作。宇宙に迷い込んだかのようなスペイシーなサウンド、森の中を漂っているようなサイケなサウンド、クラブで踊り明かしているようなダンサブルなサウンド、そしてガレージに閉じ込められたようなロックなサウンドと、これだけの色々な要素が奇跡的に上手く混ざり合っているのがとにかく素晴らしく、確実に前作よりも進化している。多様性のあるサウンドに絡み合うヴォーカルの歌声も時に熱っぽく、時に艶っぽく存在感を放っていて、この高揚感はクセになる。定評のあるライヴを早く生で体感したくなる曲ばかりで、目を閉じて聴いていると前後不覚になってしまうので要注意!
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17歳とベルリンの壁
Abstract
13年の結成以来シューゲイザー、ギター・ポップ、ドリーム・ポップに影響を受けた音像とポップながらどこか低体温なメロディを掲げ、ある意味エクスペリメンタルなポップ・ミュージックを追求してきた男女ツインVoの4人組、17歳とベルリンの壁。それぞれに違う方向性でバンドの可能性を表現してきた4部作シリーズの最終作となる、この4thミニ・アルバムでは、大胆にシンセの音色を使ってシューゲイザーとエレクトロニックとの融合を試みている――という小難しい字面からは意外なほど曲そのものはポップなところが大きな魅力だ。アーバンなサウンドに挑んだ「凍結地 - Frozen Place」のような曲もあるが、基本、ギミックに頼らずにメロディそのものでポップネスを追求する曲作りに美学を感じる。
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THE 2(ex-2)
VIRGIN
The SALOVERSの古舘佑太郎(Vo/Gt)が"エピソード2に当たる"として結成したバンド"2"。彼らの1stミニ・アルバムには、置いてきてしまった青春を取り戻そうとする焦燥感があるのに、所々のフレーズにどこか懐かしさを感じる。全体的にストレートなギター・ロックで構成されており、どの楽曲も閃光のように一瞬で駆け抜ける。青春パンクを彷彿させる曲調と、日常生活を切り取った歌詞が合わさると、そこから溢れ出す人間味に引き込まれて、気づくと何回もリピートしてしまう。無我夢中で駆け抜けた"青春"の先にあるものを、荒削りながらも追い掛けるまっすぐさには眩しさすら感じる。そこには難しい言葉も音階も必要なく、ただシンプルにかき鳴らしたいという衝動だけが横たわっているのだ。
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THE 1975
Notes On A Conditional Form
2018年の前作『A Brief Inquiry Into Online Relationships』と対になるニュー・アルバム。環境活動家 グレタ・トゥーンベリのスピーチに端を発し、UKガラージ、アンビエント、ヒップホップ、果てはインダストリアル・パンクまで多種多様な音楽的背景、地球温暖化やLGBTQなどの社会的トピックが22曲に詰め込まれ、まるで現代社会の混沌をパッケージしたかのよう。そんな一歩間違えば雑多な作品になりかねない題材を、洗練されたサウンドへと見事にまとめ上げるのがTHE 1975という稀代のバンドのなせる業なのだろう。変化し続ける世界に道標を立て続ける旅のような作品で、それだけにバンド・メンバーへの愛を歌うラスト・トラック「Guys」が胸を打つ。
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THE 1975
I Like It When You Sleep, For You Are So Beautiful Yet So Unaware Of It
やたら長いアルバム・タイトルと、グラム・ロックとPRINCEがマリアージュしたような先行配信ナンバー「Love Me」、「Ugh!」が話題で、1月の来日公演も即完売。と、ここまで書いて、今、そんなロック・スターめいた"洋楽バンド"他にいる? と思うわけだ。若干の"暗さ"をマンチェスターという出自と結びつけていた1stと比較すると、今作は前述の2曲を始めとする80sフレイヴァーでミニマル・ファンク調にハジケたポップ・チューンや、USのトレンドであるエレクトロ/R&B、スタジアム・バンドで言えばCOLDPLAYのお株を奪い去りそうなスケール感。しかもシンセ・ポップ経由のドラマチックなナンバーが居並ぶのだから、さらに全世界を魅了する可能性大。サウンドとしてのロックを漂白してもロック的という不思議な作品。
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THE 1975
Music For Cars EP
THE 1975は、夜の闇に隠れてロックで踊る。マンチェスター出身のこの不良たちの音楽は“ロックの復権”なんて安っぽい言葉で片付けられない大きな希望に満ちている。ちょっと学が足りなさすぎるんじゃないの……なんて下手したら勘違いしそうになる歌詞やギター・フレーズの執拗なまでの反復は、エレクトロやクラブ・ミュージックの快楽性を切り取ったものだし、ポップなメロディの隙間に顔を覗かせるマンチェスターの工業地帯の荒涼とした夜を思わせるサウンドスケープは、SIGUR ROSや各種のシューゲイザー・バンドを思い起こさせる。しかし、その実験の成果が「Chocolate」のような素直なポップに結実しているのが彼らの可愛いところであり、また大きな可能性を感じさせる部分だ。大期待。
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20/Around
HEAVY
九州限定オーディション"Born to 九州 2019"で審査員特別賞を受賞した、福岡のハード・ロック・バンドによるミニ・アルバム。OP「Rock Addiction」から、YosuKe(Vo)のルーツである70'sハード・ロック・サウンドを、二十歳過ぎの彼らがこれでもかとストレートに鳴らす。それが逆に新鮮みがあり、ガツンとしたインパクトを与えている。また表題曲は、短い楽曲ながら各パートで様々な音色が味わえる仕上がり。今作では"ヘヴィ"を軸にしつつも、ダンス・ビートやラップ・メタル的な要素も盛り込まれているが、ジャンルを絞らず、いろんなものを自分たちなりにアウトプットしていくのが、20/Aroundのスタイルだという。演奏クオリティが高いだけに、今後の挑戦も楽しみ。
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22-20s
Latest Outtakes
衝撃の解散から4 年、再び歩み出した22-20s。今年は6 年ぶりとなる2ndアルバム『SHAKE/SHIVER/MOAN』をリリース、FUJIROCK での勇壮なパフォーマンス、そして10 月のジャパン・ツアーと、見事な復活劇を遂げる1 年となった。そしてラストを飾るのは、アルバム未発表曲6 曲に「Bitter Pills」と「Ocean」のアコースティック・バージョンを収録したこのミニ・アルバム。エッジーなギターと疾走感あるビートが揺さぶる「Blood In The Basement」、フロントマンMartin Trimbleの歌声が渋みあるロマンティズムを醸す「Crack In My Confidence」など、楽曲それぞれのカラーで楽しめ、また基礎となる“ブルーズの憧憬”も再認識できる1枚だ。世界中のメディアから“早熟の天才!”と叫ばれたデビューから紆余曲折あったものの、今後は第2 章となるバンド・ライフを謳歌してもらいたい。
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22-20s
Shake/Shiver/moan
男臭さ全開の荒々しいブルース・ロックで注目を集めた22-20sが、まさかの解散劇から4年を経て、新メンバーとともに再結成を果たした。これは、昨今の同窓会的な再結成ブームとは全く意味が異なる。素晴らしいアルバム一枚だけで解散した彼らは、まだまだ若々しいうちにバンドへの情熱を取り戻したのだから。今作で特徴的なのは、何と言ってもメロディに力点が置かれていることだろう。ブルースを根底に持ちながらも、眩さに満ちた楽曲の力強さと言ったら。まさしく、今の彼らが音楽に希望を抱いているからこそ獲得できた暖かな歌心。タイトル・トラック「Shake,Shiver And Moan」などはFLEET FOXESあたりとも共振しそうな美しさがある。このアルバムには、彼らの希望と情熱が満ち溢れている。
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The 3 minutes
シュレディンガーの女
いわゆる陽キャにはなりきれないものの、かといってつまらない陰キャに甘んじているわけでもない。今作に収録されている計4曲においてThe 3 minutesが描いてみせるのは、それぞれにいい意味で無キャでモブな"どこにでもいる誰か"の物語たちであるように感じる。中でも、表題曲は最近何かと話題の量子力学をモチーフにしながらSNS世代ならではの機微を描いた歌詞が印象的な恋愛劇で、音楽的には近年のボカロ文化からの影響も感じる過密型ポップ・サウンドが満載。はたまた「そいえば」で繰り出されるアオハル全開な恋模様と、切なげな情緒をたたえたメロディ・ラインもなかなかに味わい深く、つまるところ自称 名古屋発"純情/妄想ミクスチャー"シンセ・ポップ・ロック・バンドの名は伊達ではないと言えよう。
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The 3 minutes
インスタント・インスタンス
"あなたの3分いただきます"という挑発的なセリフで口火を切るタイトル・トラック「インスタント・インスタンス」をはじめ、これまで以上にバンドの揺るぎない信念を詰め込んだ、The 3 minutesの約1年半ぶりのリリースとなるミニ・アルバム。キャッチーでノリのいいシンセ・ポップ・ロックは、現在のロック・シーンで人気を博している多様なロック・バンドからの影響を強く感じる。女性ヴォーカルとの掛け合いがキュートな「ちゅーしたい」や賑やかで楽しいポップ・サウンドに乗せて"Hey Siriさん"と呼び掛ける「スマホのうた」など、ライヴハウスの熱狂を可能なかぎり音源へ落とし込んだ。そんななか盛り上がる曲だけではなく、バンドがステージで歌う意味を改めて刻んだ「誓い」が収録される意味は大きい。
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The 3 minutes
Shiny Days / 妄想ヤンデレーション / ハルノウタ
名古屋発、平均年齢21歳の5人によるThe 3 minutes。シングルとしては2作目で、現メンバーでは初作品となる今作はトリプルA面で、バンドの幅広さを見せる内容だ。1曲目となった「Shiny Days」は、シンセの音色が晴れやかに響き、パンキッシュに疾走するアンセム。明快なサウンドや"さあ行こう"と手を掴んで引っ張り上げていく直球さは、彼らいわく挑戦的な曲だという。アクセルを踏み込む力を感じる1曲だ。「妄想ヤンデレーション」(Track.2)は凝ったアレンジの歌謡性溢れるロックで、「ハルノウタ」(Track.3)はつい思い出してしまう切ないシーンを封じ込めた曲。いずれも親しみやすいメロディを肝にしていて、そのうえで自由に今やりたい音楽、やってみたいサウンドに取り組んでいる5人のしなやかさが、爽やかに伝わる。
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3nd
we dance × avec toi
2009年にリリースされた『world tour』から約2年、インスト・ポスト・ロック・バンド3ndがミニ・アルバムを発表する。ちなみに"avec toi(アヴェク・トア)"とはフランス語で"一緒に"という意味。一緒に踊る、という意味合いが込められたタイトルだけに、収録されている7曲は非常に軽やかなリズムに溢れている。高音のギター・アルペジオは、バレリーナが爪先で舞台を華麗に舞うような繊細さを彷彿させ、リズム隊は独特の変拍子で音を自在に操る。3ピースとは思えないスケール感に息を飲む。「コロコロ転がる」のような人懐こい曲、「Rain Song」のような流麗でドラマティックな曲、「Black Swan」のような迫り来る緊張感のある曲まで、色とりどりの音楽性に魅了される。
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3OH!3
Omens
アメリカはコロラド州発のエレクトロ・ポップ・デュオ3OH!3。1stシングル『My First Kiss』が全米で大ヒットした彼らのニュー・アルバムはノリの良いラップと、クラブ、ダンス・チューン、エレクトロ・サウンドの融合センスがひたすら光る作品となった。まるでハリウッド映画のアクション・シーンを観ているかのようなハラハラ感のTrack.2、Track.11は圧巻。楽しくて思わず飛び跳ねたくなるような衝動を与えてくれるTrack.6は最高だ。攻撃的なサウンドから、開放感溢れるサウンドまで、全てがキャッチ―ど真ん中。しかし、そのどれもが巧妙なアプローチで、一切飽きの来ない聴き応え抜群の作品となっている。体がリズムを刻まずにはいられなくなる1枚だ。
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44°+
Consider and forget
音楽が言葉を持たないことは不思議でもなんでもない。しかしロックの文脈において、言葉がもたらす"意味"は時に音そのものよりも重要視されてきた。だからこそ、00年代の初めに"ポスト・ロック"というタームがシーンに浸透した時、そこには言葉を持たず、"音"だけで物語を紡ごうとする人々が多く現れた。本作は、神戸出身のインストゥルメンタル・バンド、44°+(シーフォー)の初の全国流通盤となるミニ・アルバム。リリカルなギターの音色と小鳥のさえずりから始まるTrack.1「朝焼けの音」から、アルバム全体を通して穏やかで凛とした美しい景色が描かれている。余計な装飾を排した4ピースのストイックなアンサンブルがとても心地よく、音が雄弁に聴くものの胸の内に語りかけるような、そんな親密さを感じさせる。
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2:54
2:54
少し冷たいくらいが最高に心地いい。ロンドンにて2010年より楽曲デモをインターネット公開し、既にTHE BIG PINK等とツアーも回っているという姉妹バンド 2:54 のデビュー・アルバムは、夏の寝苦しい夜に、布団の体温を吸っていない部分を手探り足探りで見つけたときの感覚! 物憂げに響くギターの反響や淡々と刻まれるリズムを柔らかな歌声で編み込んでいくようなダークな楽曲群は一見ひんやりとした面持ちながら、聴き進めるごとに端々から溢れる感情が折り重なって温度を上げていく。Pitchforkにて24時間で1万再生を記録したTrack.2「You're Early」やラスト・ナンバーで「Creeping」まで、ただ空間をたゆたう無機質さより、黄昏時の音の森に響くようなエモーションを感じられる楽曲がひたすら美しい。クールとパッションの狭間にポンと放たれた1枚だ。
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256
SIGNAL
このミニ・アルバムが初の全国流通盤になる、ニューカマー 256(ニーゴーロク)。20代前半の4人だが、アレンジ力の高いバンドでソウルやファンク、ブルースなど様々なエッセンスをうまく香らせた、キャッチーで親しみやすいサウンドを鳴らしている。彼らいわく、J-POPも洋楽も、あるいはもちろんその世代ではないが渋谷系サウンドなども、雑多に聴いてきたという。作曲は主にベースの本庄拓也が行っており、彼が自由なアイディアで作り上げる曲を、3人がそれぞれの解釈で返答し、4人で研磨していく。勢いに任せたりせず、ギター・ソロや曲もドラマチックに仕立てているが、歌には青さや熱さが迸っていて直球だ。さらりと器用に生きているようで、体温はものすごく高い。そんなアグレッシヴさを感じる。
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3markets[ ]
君の心臓になりたい
"この人の歌には嘘がない"と聞くことがあるが、3markets[ ]ほどそれを体現しているバンドはいない。すべてを曝け出して生々しいのは詞だけでなく、音に関してもそうで、Track.1「拝啓、1メートル。」でカザマタカフミ(Vo/Gt)が第一声を発する瞬間から、ライヴハウスにトリップさせてくれるような緊張感を醸し出している。元メンバーへの思いを吐き出す「メンヘラ女とクソ男」などで痛々しいほどの鋭利な毒を撒き散らしつつ、サウンド面では明るさを見せるという変化も。前作より盟友 篠塚将行(それでも世界が続くなら/Vo/Gt)が代表を務めるレーベルへ移籍し、確固たる居場所を見つけたことも影響しているのだろうか。他のバンドには歌えないことを歌う彼らなりのまっすぐな恋の歌「底辺の恋」にも新境地が窺える。
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3markets[ ]
それでもバンドが続くなら
プロデューサーに盟友 篠塚将行(それでも世界が続くなら/Vo/Gt)を迎えた、3markets[ ]の1stアルバム。八方塞がりだったというバンドが助けを求めた篠塚が今作で行ったのは、"プロデュースする"ことよりもリアルなバンド像を引き出すこと。自意識過剰なくらい考えすぎで、もがきまくったり、疲弊感に自虐的にもなったりする姿も赤裸々に描き、叫ぶ生傷だらけの歌をヒリヒリとしたままパッケージした。USインディー・ロック的な、変則ビートやアンサンブルの絡みを従事したギター・サウンド、生々しく迸るエモーションやドライヴ感など、彼らの呼吸の荒々しさをポイントにして収録。何かを求めてひた走り音に綴る、その"何か"をここに残そうとしたアルバム。それだけにとてつもなく鋭利だ。
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3markets[ ]
バンドマンと彼女
普通、思っていても口にしない感情や、必死に取り繕って隠すような事柄を容赦なく歌にしてきたスリマ。その極端に不器用な生き様で、バンド・シーンにおけるアンチヒーロー的な地位を確立しつつある彼らの名作がまた誕生した。プロデュースは、それでも世界が続くならの篠塚将行が担当。カザマタカフミ(Gt/Vo)が自身の彼女に"私の曲を書いて"と言われた際の実話を綴った表題曲では、リリース発表時に"バンドマンと付き合うと全部曲にされるんだぞ"とコメントしていたとおり、ループする哀愁を帯びたリフに乗せ、リアルなエピソードを淡々と告白している。彼女に対する本音と、繰り返される"ごめんね"の言葉。そして最後にカザマは心のリミッターを外し、号泣するように歌う。共感というよりは、彼の恋愛ドキュメンタリーに感情が揺さぶられる1曲だ。
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