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DISC REVIEW

N

DRAWINGS[CD+DVD]

Nabowa

DRAWINGS[CD+DVD]

ヴァイオリニストを擁する4人組インストゥルメンタル・バンド、Nabowaが3年2ヶ月ぶりにリリースするオリジナル・アルバムは、ジャズ/ファンクをベースとしながら、バンドが様々な形で仕掛ける意外性の連続がすこぶる刺激的。なかでも圧巻はPUNCH BROTHERSを彷彿とさせるプログレ・フォークのTrack.5から、Track.7、8、9とアダルト・オリエンテッドな魅力をたっぷりと味わわせ、その直後にハード・ロッキンなファンク・ナンバーが飛び出す中盤以降の流れだろう。ヴァイオリンと鍵盤ハーモニカが奏でるメロディには歌心が感じられるから、普段インストに馴染みがないリスナーにも薦めてみたい。現役女子高生シンガー 山田なづ(Track.4)、BRAHMANのTOSHI-LOW(Track.12)の客演も話題だ。

4

Nabowa

4

オール・インストになった前作『Sen』に続き、ミックスや共同プロデュースにzAkを迎えたニュー・アルバム。おなじみになったヴァイオリンの主旋律が広くアジア的なニュアンスを持っていて、どんなタイプの楽曲でも、どこか懐かしく温かな気持ちが喚起させられるのが心地よい。まさにそのムードを象徴するTrack.1「白む海、還る霧」、ピエニカに似たアンデスを用いていると思われるロマっぽい「ナイスパレード」の陽気さもいいし、zAkのサウンド・メイクが冴えるエフェクティヴなベースが牽引する「MACAO」、今のインスト/ジャム・バンド、ポスト・ロックを通過してきたバンドとしては珍しくてらいないスケール感を表現する「雲海の上の旅人」など、心底音楽好きでいい意味で捻らない姿勢が作品の敷居を下げていて好感度大。

Sen

Nabowa

Sen

2ndアルバム『Nabowa』、全曲ゲストを交えて制作された『DUO』を経て、共同プロデューサーにzAkを迎えて、楽曲にはゲストを交えずNabowaのみで制作された3rdアルバム。今作はNabowaとしてのポップ・ミュージックのほぼ完成形といっても良いくらいの完成度の高い作品だ。「今日の空」「続く轍と懐かしき扉」といったNabowaの柔らかい部分が描写された楽曲から緩やかに始まり、「So Fat?」「pulse」では厚めのグルーヴを見せる。インスト・バンドで見せることができる様々な可能性を提示してくれる作品であり、1枚のアルバムが朝の穏やかな始まりから夜の怪しい匂いまで、1日の移り変わりを感じさせるような作品。

You Know Who You Are

NADA SURF

You Know Who You Are

アジカン後藤正文の熱心なフックアップもあり、ここ日本でも地位を獲得しつつあるUSオルタナティヴ・ロックの偉大なる中堅どころの8作目。前半こそ従来のグッド・メロディが並ぶが、Matthew Cawsの声がけだるさと情熱の間を振れゆく様がたまらない「Rushing」、ストーンズ・ライクなリフを軸としたフォーク・ロックの「Animal」、これまでの足跡を辿るかのようにノー・ギミックでミディアム・ビートを刻んでいく「Gold Sounds」~「Victory's Yours」と後半の流れが素晴らしい。20年の総括と共に、向かう先の光が見えるいぶし銀な魅力に溢れている。大ブレイクはないものの真摯に活動を続けてきた彼らだからこそ出せる哀愁、居直りも含めたNADA SURF印の風格が感じられる。

If I Had a Hi-Fi

NADA SURF

If I Had a Hi-Fi

昨年のNANO MUGEN FES.で初来日を果たしたNADA SURF初のカヴァー・アルバム。彼らのメロディアスなパワー・ポップのルーツを辿りながら、SPOONやSOFT PACKなどもしっかりとセレクトしているところも心憎い。そうかと思えば、DEPECHE MODEにARTHUR RUSSELL、さらにはMOODY BLUESなんて渋いところまでついてくる。また、Bill FoxやMERCROMINAといった、僕も知らなかったアーティストも収録されているのだが、その楽曲がまたいいので、辿ってみよう。そのどれもが、NADA SURFクオリティの泣きのギター・ポップで、安心して聴ける。さらに、日本盤にはアジカン「Mustang」やスピッツ「Sora Mo Toberu Hazu」の英詞カヴァーも収録。

Lucky

NADA SURF

Lucky

96年結成のUSインディ・ロック・バンドNADA SURFの最新作『Lucky』の日本盤が初来日に合わせて発売される。本国では2008年に発売された本作のプロデュースはDEATH CAB FOR CUTIE のChris Walla 。WEEZER直系の力強いパワー・ポップ「Weightless」、伸びやかなヴォーカルとメロディ・ラインが印象的な「I Like What You Say」など、シンプルに胸に響いてくるメロディを備えた眩いポップ・ソングが彼らの持ち味だ。決して目新しさや派手さはないが、タイムレスなグッド・メロディが持つ魅力を実感できる一枚。ふとした瞬間、いい歌といいメロディに立ち戻りたくなったなら、手にとってもらいたい。温かく、包容力のある歌があなたを迎えてくれる。

NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST2

NakamuraEmi

NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST2

TVアニメ"メガロボクス"EDテーマ「かかってこいよ」、NHKドラマ10"ミストレス~女たちの秘密~"主題歌「ばけもの」など、メジャー・デビュー後に発表された名曲たちをまとめた、2枚目のベスト。集大成的な作品であるのはもちろんだが、ここに新たに加えられた新曲3曲もとにかくすごい。特に衝撃を受けたのは「東京タワー」。彼女が何もうまくいかず、どうしようもなくなって向かった東京タワーで生まれたというこの曲は、彼女の力強い歌声と言葉たちによりその情景が聴き手の脳裏にハッキリと映し出され、心に強く押し込められるような曲だ。脆さをも抱えて強く生きようとする女性にしかできない描写にはハッとする人も多いのではないか。彼女の歌を聴くと"私も彼女のような女性でありたい"と思わずにいられない。

NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5

NakamuraEmi

NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5

およそ1年ぶりのリリースとなるNakamura Emiのメジャー3rdアルバム。SNSが発達したことで簡単に人を傷つけることができてしまう現代の問題点に着目し、本当に向き合うべきものを明示する「かかってこいよ」、便利さと引き換えに失われていってしまったことを綴る歌詞が胸に刺さる「新聞」など、コミュニケーションや人間臭さをテーマとした全8曲を収録。パワフルで表情豊かな歌声は健在で、楽器隊のシンプルさがメッセージ性の強い歌詞をより引き立たせている。ちなみに、TVアニメ"笑ゥせぇるすまんNEW"のOPテーマとして起用された「Don't」は"Albummix"として収録されており、気づいたら少しニヤリとしてしまうようなちょっとしたサプライズもあるので、ぜひ探してみてほしい。

NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST

NakamuraEmi

NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST

人生なんてそれぞれ違うし、同じ道なんてひとつもない。だけど"生きる"という目的は誰しも同じ。そんな人生を歩み続けている女の視点をリアルに綴るNakamuraEmiのメジャー・デビュー・アルバム。今作では、インディーズ時代にリリースした3枚の作品に新曲をプラスして収録。自分の道を突き進めと歌う「YAMABIKO」を始めとした全10曲はどれもこれも強力なリリックでインパクトがものすごい。恋をすると何も見えなくなる自分をたしなめる「All My Time」、仕事で失敗しても舐めときゃ治ると一蹴する「I」、お風呂で泣いて何かを決意する「女子達」、カッコいい大人でいることを望む「プレゼント~繋ぐ~」。流されるのではなく"自我"をしっかり持たせてくれる1枚。どの道を歩もうが、自分次第。もっと今を大事にしようと思った。

Mass Hysteria

NAKED HEARTS

Mass Hysteria

グランジって、単に当時のバンドの服装や、ストリートの若者たち、ノイズのように乱暴なサウンドを形容するためだけに用いられたのではなく、“薄汚れた”中にある、シンプルで美しいメロディと、当時の若者が“本当に歌って欲しかった真実”をより輝かせるために用いられた言葉ではないかと思う。00年代に入った今になって、またそんなことに想いを巡らせてしまったのは、彼らのせいだ。NAKED HEARTSのデビュー作は、まさにグランジ直系。ただ、まみれた中にあるのは、「ハロー ハロー どのぐらいひどい?」というストレートな言葉ではなく、大量の情報、多くの人間が溢れ返る中で、それらのエネルギーに影響されてしまうという現状から生まれた、自我という己の核さえ、ひどくあやふやなものであるという、よりナイーヴな00年代の真実だ。

Lost Art Of Conversation

NAKED SIX

Lost Art Of Conversation

英国ギター・ロックの伝統を引き継ぐ新たな才能がここに! 3ピースのエネルギッシュなロック・バンド、NAKED SIXのデビュー・アルバムがリリースされた。若者のロック離れなんてなんのその、時代の移り変わりには、必ずロックの芽が息吹く。NAKED SIXのサウンドには、そんな空気を感じさせるパワーがある。根底にはUKギター・ロックのシンプルな魅力がありながら、ガレージ・ロック、オルタナ、パンクなどのアグレッシヴな面も併せ持ち、時折ブルージーで影のある顔ものぞかせる。だが、そんな複雑なことは考えず、頭を空っぽにして楽しめるアルバムだ。その証拠にほら、曲の頭で"ワァーオ、イエー!!"って気持ちよく叫んでる曲が2曲も。今の君に必要なのはこの"ワァーオ、イエー!!"ですよ。

インキャのキャキャキャ / オタ恋

NANIMONO

インキャのキャキャキャ / オタ恋

NANIMONOは、インキャの子たちが集まったグループ。明るくポップに弾けた「インキャのキャキャキャ」は、ネット民として生きてきた自分たちの人生を否定するのではなく、"最後は必ずインキャが勝つ!"とポジティヴな力に変え、同じインキャでオタクな人たちに生きる希望を与えてゆく楽曲。「オタ恋」は、アイドルに恋の妄想を抱くオタクの純粋でまっすぐな恋心を描いたミドル&メロウなバラード。片や本人側からの、もう片方では、ファン側からの視点でオタク心を描写。2曲共に、主人公のオタク心を少しシニカルに表現。オタク特有の自己否定しがちな感情を認めたうえで、そんな自分に自信を持とうと勇気や生きる希望を与えてゆく、まさにオタクのための、オタクに向けた、オタク賛歌作。

むりなんだがw

NANIMONO

むりなんだがw

メンバー全員がインキャの新鋭アイドル NANIMONOが、結成から1年あまりでメジャー1stフル・アルバムをリリースした。"インキャのための応援ソング集"というテーマが掲げられた本作には、キャッチーで中毒性が高い「ジャージは戦闘服★」のような曲もあれば、「アイデンティティー」や「インキャ・オブ・ファイヤー」のように、ライヴでの盛り上がり方を歌詞に入れ込んだライヴ特化と言える楽曲もあり、さらにジャンルとしてはEDM、エレクトロ、シティ・ポップなどとにかく多彩。それでも各楽曲をNANIMONOのインキャな世界観で包み込むことによって、まとまりのある作品に仕上げているところが好印象だ。6人の個性豊かな声質も耳を楽しませてくれて飽きがこず、ついリピートしたくなる1枚。

ボロボロになった人へ

nanomachine

ボロボロになった人へ

リリー・フランキーが2003 年に発表した短編集『ボロボロになった人へ』とのコラボレーションという異色の作品をリリースするnanomachine。彼らにとって4 年ぶりのリリースとなる本作は、自主レーベルを立ち上げてから初となるリリースとなる。緻密なバンド・アンサンブルが生み出すのは、テクノ、エレクトロニカからの影響を昇華したポスト・ロック。nanomachine 独自の音解釈がはっきりと現れた個性的な楽曲群は、どこか不思議な世界観を持ちながらも、人懐っこさを失わない。原作を読んだことがある人はもちろん、読んだことが無い人も、心地よく彼らの音世界に入り込めるだろう。ポスト・ロックという枠に収まらない、新鮮な驚きが詰まったポップ・ミュージックに仕上がっている。

不眠症のネコと夜

nano.RIPE

不眠症のネコと夜

nano.RIPEにとって再スタートの狼煙となった6thフル・アルバム『ピッパラの樹の下で』から約4年、7枚目のオリジナル・フル・アルバム『不眠症のネコと夜』が完成。メジャー・デビュー12周年を迎えてリリースとなる本作は、"nano.RIPEらしさ"に立ち戻って制作されたとのことで、原点回帰とバンドの進化が見事に同居した作品となっている。本作には、TVアニメ"食戟のソーマ 豪ノ皿"OP主題歌「ラストチャプター」などのタイアップ楽曲に加え、初のCD化となる2曲と録り下ろしの新曲8曲を収録。これら収録楽曲の根底にあるのは一貫して、前向きに生きることへの肯定感だ。それを高らかに歌い上げるきみコの芯の通った歌声とストレートなバンド・サウンドがどこまでも勇敢で頼もしい。

ピッパラの樹の下で

nano.RIPE

ピッパラの樹の下で

結成20周年の祝福ムードにはちょっとそぐわないほど気迫に満ちた、約2年ぶりとなる6thフル・アルバム。結成メンバーであるきみコ(Vo/Gt)とササキジュン(Gt)のふたり体制になってから初めてリリースするアルバムということで、再スタートという想いも込められているとのこと。アグレッシヴにバンド・サウンドを追求する一方で、ふたりになった自由度を存分に生かして、複数のアレンジャーと多彩な曲調、およびサウンドにも挑んでいる。そこには結成20周年を迎えたバンドならではの成熟も窺える。このタイミングで成熟とベテランらしからぬ勢いに満ちたアルバムを作った意味は大きい。バンドに取り組む気持ちをはじめ、胸の内を包み隠さずに言葉にした歌詞からも、この作品に向かう想いの強さが感じられる。

アザレア

nano.RIPE

アザレア

メンバー・チェンジを経て、きみコ(Gt/Vo)とササキジュン(Gt)のふたり編成になってからリリースする3枚目のシングル。ふたり編成になって、彼らの自由度が増したことは、TVアニメ"citrus"のオープニング主題歌でもある表題曲を含む今回の3曲を聴いても明らかだろう。そのタイトル・チューンは疾走感溢れる演奏に大胆にストリングスを加えているが、バラードの「最終前」は、シンプルなバンド・サウンドのなかで絶妙なコード進行が映える佳曲となっている。また、シンセの音色を大胆に使って、オーケストラルに仕上げた「スターハンター」もなかなかにチャレンジング。そして、そんな3曲を貫くきみコの伸びやか且つ力強い歌声が、改めてnano.RIPEらしさを印象づけている。

スペースエコー

nano.RIPE

スペースエコー

カントリー・ポップの「こだまことだま」(Track.5)、大人っぽい「ライムツリー」(Track.3)、そしてアグレッシヴなギター・サウンドを追求した「スノードロップ」(Track.9)。この5thアルバムに収録されたシングル・ナンバーを聴き、nano.RIPEがシングルにおいても大胆な挑戦を繰り返してきたことを改めて実感したうえで、それらシングル・ナンバーと比べても何ら遜色がない曲が並んでいることに快哉を叫ぶファンは少なくないはず。挑戦という意味ではアコースティック・ギターの爪弾きがやがてピアノ・バラードになる「日付変更線」(Track.8)、ポリリズムに挑んだ「イタチ」(Track.11)、オーケストラル・ポップな「ディア」(Track.13)が出色。曲が進むにつれ熱度が上がるバンドの演奏も聴きどころだ。

ライムツリー

nano.RIPE

ライムツリー

挑戦の連続になりそうな2016年の幕開けに相応しいニュー・シングル。前作の『こだまことだま』から一転、これまでよりも大人っぽいnano.RIPEを意識しながら、昨今のAOR感をnano.RIPE流に取り入れたメランコリックな「ライムツリー」ほか計3曲が収められている。どの曲もバンド・サウンドならではの熱気を伝える一方で、『七色眼鏡のヒミツ』以降と言えそうなダンサブルなポップ・ナンバーの「希望的観測」、アコースティック・ギターとピアノが軽やかに鳴るバラードの「ティーポットのかけら」とそれぞれに違うサウンド・アプローチをアピールしながら、今後の展開を期待させるものになっている。これを聴くかぎり、あっと驚かせるような曲も、これぞnano.RIPEと言える直球ナンバーもどちらもいけそうだ。

七色眼鏡のヒミツ

nano.RIPE

七色眼鏡のヒミツ

今の自分たちなら新しいことに挑戦してもぶれることはないという確信の下、自ら殻を破ることに挑み、メジャー・デビュー5周年というアニバーサリー・イヤーに相応しい成長を印象づける4thアルバム。クラムボンのミトがアレンジを手がけたオーケストラル・ポップなリード・トラックの「こたえあわせ」を始め、基本編成にない楽器の音色を大胆に取り入れ、多彩な表現を試しながら、バンドの思惑通りどれもnano.RIPEらしいと言えるものになっているところにバンドの底力が感じられる。それをより一層感じたいなら外部からアレンジャーを迎えた4曲よりもメンバーだけで作り上げた「4分間」、「嘘と月」。シンプルなバンド・サウンドをストレートに追求しながらその2曲がアピールする新境地の意味はかなり大きい。

透明な世界

nano.RIPE

透明な世界

TVアニメ"グラスリップ"のエンディング・テーマでもある表題曲をはじめ、改めてnano.RIPEらしさをアピールするという想いを込め、ストレートなロック・ナンバー3曲を収録したシングル。アニメの世界観にリンクする前向きなメッセージを歌う表題曲は、90年代以降のガールズ・ロックの流れを汲んだnano.RIPEの真骨頂と言える曲ながら、キラキラと鳴るギターをはじめ、躍動感とともに奥行きを感じさせる演奏がバンドの成長を物語る。そして、ヒネったアレンジとライヴ・アンセムになり得る魅力を併せ持つ「絶対値」。現在のバンドの充実ぶりを印象づけるという意味では、こちらを推したい。インディーズ時代の曲を現在のメンバーで録りなおした「フォルトファインダー」は、他の2曲にはないメランコリーが聴きどころだ。

涙の落ちる速度

nano.RIPE

涙の落ちる速度

紅一点メンバー、きみコ(Vo/Gt)を擁する4人組、nano.RIPE。結成以来、ライヴ活動に精力を注ぎ、年々、ライヴの動員を増やしてきた彼らにとってさらなる飛躍のきっかけになるにちがいない3作目のアルバム。90年代以降のガールズ・ロックの流れを汲みながら、nano.RIPEならではと言えるその個性と存在感をアピールする閃きに満ちたアレンジとアンサンブルは、ファンキーなTrack.10「マリンスノー」をはじめ、よりオープンになった印象。そういう意味でも、バンドにとってターニング・ポイントになる作品かもしれない。人が生きる中で日々感じるさまざまな葛藤を歌の主人公や物語に託した歌詞によるところが大きいのだと思うが、ポップかつキャッチーな作風の中にメランコリーが感じられるところが作品全体に説得力を加えている。

nano sound museum

nano sound museum

nano sound museum

プログラミング&生バンドというスタイル自体はもはやデフォルトだが、このアルバムにはビッグ・ビートの"楽しんだもん勝ち"感と、ロックの"何かを変えてやる"意志力が絶妙のバランスで融合した上で間断なく押し寄せる。デジタル音もディストーション・ギターも凄まじい圧で攻めまくる冒頭の「ain't nothing but my music」「no escaping」「disco」は彼ららしさの真骨頂。中にはR&Rリヴァイバル的なギター・サウンドとビートを持った「kill the music」や、ブライトなサウンドとトライヴァルなビートでアルバムに緩急をつける「realize」など、攻めの姿勢の中にもアレンジのバリエーションが。まさに""Don't think,feel"な1枚。エレクトロニック・サウンドに腰が引ける人にも敷居は低いはずだ。

phenomenon

nano sound museum

phenomenon

ロック・バンドのヴォーカルとして活動してきたナガオ タツキが、所属バンドの解散を機にソロ・プロジェクトとしてnano sound museumを始動。学生時代に影響を受けたBREAK BEATS、TECHNO、HOUSE、DRUM`N BASS等のダンス・ミュージックを“ライヴハウスでROCKとしてやってみたい”というテーマで楽曲を制作。出来あがったファースト・アルバム『phenomenon』は、じわりじわりと音を包み込むような感覚のソフトなエレクトロ・ロック。中期くらいのBOOM BOOM SATELLITESも連想させる傑作に仕上がっている。ベースにオガワ ヒロナガ(つばき)とドラムにカジタニ マサヒロ(KELUN)という豪華な面子を迎えて行われるライヴも楽しみだ。

Laugh Track

THE NATIONAL

Laugh Track

前作『First Two Pages Of Frankenstein』と同セッション時に制作された"もうひとつの最新アルバム"。曲を作れなくなっていたというMatt Berninger(Vo)の心を壊れかけの車に喩えた、昨年リリースの「Weird Goodbyes Feat. Bon Iver」は待望のアルバム収録となった。またPhoebe Bridgersと再共演、さらにRosanne Cashが参加するなど今作もコラボが聴きどころに。「Space Invader」の後半、静寂から約3分かけてじっくりとボルテージを上げていく楽器陣のライヴ感も堪らない。そしてラストを飾るのは、8分近くに及ぶ「Smoke Detector」。キャリアを重ね、より自由に奏でられた至極のインディー・ロックを堪能してほしい。

First Two Pages Of Frankenstein

THE NATIONAL

First Two Pages Of Frankenstein

USインディー・シーンでもっとも愛されているバンドのひとつ、THE NATIONALの通算9作目となるアルバム。嫌味のないソフトなメロディと、透き通るように繊細なハーモニーなど、独特の儚げな響きにはあまりの美しさに胸がギュッと締めつけられる。また、インディー・ロック職人のこだわりが感じられる、耳に残るようなアナログ感のある音作りが、楽曲に深みを与えている。さらに、今作にはゲスト・アーティストとして、幅広い世代から愛されるポップ・アイコン Taylor Swiftや、インディー・ロック・シーンの新星 Phoebe Bridgers、過去にも共演しているSufjan Stevensといった、新旧の盟友たちが参加。多くのミュージシャンから敬愛されるTHE NATIONALならではの豪華な顔ぶれだ。

Trouble Will Find Me

THE NATIONAL

Trouble Will Find Me

2010年に全世界的なブレイクを果たした、ブルックリン発の兄弟バンド、THE NATIONAL、待望の6thアルバム。“危険が僕らを見つける”という神経症的なタイトルとは裏腹に、今作はリラックスして、開放的なサウンドを志向したとか。確かにここに収められた13曲はどれも非常に伸びやかで、構築されたタイトなバンド・サウンドというよりは、音を演奏すること自体を楽しんでいるように思える。ため息をつきながら歌っているような、諦観に満ちた歌声は、隠遁した老人のそれのようだ。どこまでいってもわかりあえない人間同士、それでもどうにかして希望を見つけ出したい、そんな彼らの想いが込められたこのアルバムは前作同様、多くの人々の共感を呼ぶだろう。

High Violet

THE NATIONAL

High Violet

世界的にロング・ヒットを記録した前作『Boxer』から3年、THE NATIONAL通算5枚目のニュー・アルバム。前作の抑制されたシリアスとも言える統一された雰囲気から一転今作はバラエティに跳んでいて、とてもドラマティックでエネルギッシュなアルバムになった。自身のスタジオでリラックスして作られた事も大きいのだろう。彼らの持つ美しくメランコリックなメロディは健在ながら高揚感のある曲も多い。2000年代最高の歌声とも言われるヴォーカルMatt Berningeの歌声もとても伸びやかで素晴らしい。そして外の雑音を物ともせず作り上げられた楽曲それぞれの凛とした佇まい。ブルックリンの最後の大物というその名に恥じない新たな傑作。

ハルノライト

NECOKICKS

ハルノライト

まさかの活動休止を発表したNECOKICKS。オフィシャル・サイトでは、その理由をTAKUMI(Gt/Vo)が"整えなければいけない問題と向き合うため"と発表しているが、その言葉からは、今後もバンドを続けるための前向きな決断が感じられた。そんなネコキの活動休止前ラスト・シングルの表題曲「ハルノライト」は、春の訪れとともに新生活をスタートさせる希望と不安に全力で寄り添う瑞々しいナンバー。高速バスを降りて嗅ぐ匂い、慣れない駅の改札、何もない部屋。ひとつひとつの景色を丁寧に描く歌からは、ネコキの音楽はいつも私たちの日常にとても近いところで鳴るものだと感じさせてくれる。ボーナス・トラックは「ワンダーワンダー」を始め、代官山UNITで開催されたライヴの音源6曲を収録。今作を聴きながら、またライヴハウスで彼らに会える日を待っている。

パパはNewギニア

NECOKICKS

パパはNewギニア

"いやマジでやれちゃう気がする"と、根拠のない自信で突っ走る痛快なロック・ナンバー「弾丸ライナー」がオリコン週間インディー・シングル・ランキングで4位にランクイン。地元・長野ではワンマン・ライヴが即日ソールド・アウトするという急成長中の4人組バンド、NECOKICKS(読み:ネコキックス)。彼らの最新アルバム『パパはNewギニア』は、1ミリもかっこつける素振りを見せず、ありのままで憎めない楽曲が並んでいた。ゆとり世代の不満をぶちまける「ワンダーワンダー」、あの子との妄想を爆発させる「100m走、全力疾走、ゴールで待ってる、君に首ったけ」。バンド名といい、アルバム・タイトルといい、収録曲といい、いちいちツッコミどころが満載なこのバンドは、きっと遊びの天才だと思う。

ネコキ名人スーパーベスト

NECOKICKS

ネコキ名人スーパーベスト

昨年1月にメンバー・チェンジを経た長野出身の4人組、NECOKICKS。グッドモーニングアメリカ企画コンピ『あっ、良い音楽ここにあります。その四』に参加していたことから、同作品で彼らのことを知った人も多いのではないだろうか。そんな新生NECOKICKSのベスト盤、今作のために現メンバーで録り直したというだけあって、はち切れんばかりのバイタリティがこれでもかというぐらい詰まっている。アッパーなリード曲に仕上がっている新曲「右往左往」や、ライヴの定番曲「シュガー」、初期曲「Sunny day」も収録されており、これまでのファンはもちろん、NECOKICKS入門編としても相応しい1枚。エネルギッシュなロックが聴きたくなったら迷わず手にとって欲しい。

Condors

NEDRY

Condors

01年にメジャー・デビューしたシンガー・ソング・ライター岡北有由が、英国男性2人と08年の春にロンドンにて結成したNEDRYの1stアルバム。不穏に鳴り響くシンセ・ベースとノイジーなギター。人懐こさを感じさせるダブ・ステップのビートに絡み付く生音は、暗く深い海の中を漂うような浮遊感を持っている。他者を突き放すようでありながらも、包容力も強い。この矛盾が彼らならではの美なのではないだろうか。別々の何かが結びついて新たなエネルギーを作り出す様は、植物の光合成にも似ている。音の中に滲んでゆく岡北の透明感のあるヴォーカルは象徴的だ。拠点を日本から英国に移した岡北が導き出したミュージシャンとしての答え。このアルバムにはそれが詰まっているのではないだろうか。

Negative Campaign Ⅲ

Negative Campaign

Negative Campaign Ⅲ

1stフル・アルバム『Negative Campaign』から2ndフル・アルバム『Negative Campaign Ⅱ』までの10ヶ月を上回る、約5ヶ月のスパンでリリースとなる3rdフル・アルバム。前作の時点でできあがっていたストックの中から選んだ曲が並んでいるが、もしそこに"一度は没になった曲集"というネガティヴなイメージを持つ人がいるのなら、それはまったくの見当違い。オルタナティヴ・ロックやパワー・ポップの枠を飛び出し表現の幅を広げ、意図的に普遍的なバラードに寄せたであろうリード曲「やっぱり僕は君が好き」に象徴されるように、持ち前のポップなメロディ・センスはより活き活きと躍動。全体的な流れにもストーリー性を感じる、アルバムとしての完成度が大きく高まった作品だ。

Negative Campaign Ⅱ

Negative Campaign

Negative Campaign Ⅱ

前作からわずか10ヶ月のスパンでリリースとなった2ndフル・アルバム。さらに3rdフル・アルバムもすでに計画中だという。まさに、その溢れんばかりのアイディアが詰め込まれた作品。前作のリード曲「スーパーカブに乗って」に負けないキラーチューン「Primitive」と「Empty Lamp」で幕を開け、60年代のソフト・ロックを思わせる「スイカ」やモータウン・ビートを大胆に採り入れた「サンドウィッチガール」など、総じて90年代以降の"パワー・ポップ"という印象が強かった魅力はそのままに、さらに音楽的な幅を広げサウンド・アレンジも豊かに。様々な時代感を自由に往来し、切り貼りするてらいのない抜群のポップ・センスを、ぜひ味わってもらいたい。

Negative Campaign

Negative Campaign

Negative Campaign

本格始動から約4年越しの初リリース作品となるセルフ・タイトル・アルバム。パワー・ポップやオルタナティヴ・ロックの洗礼を受けた、バンド名の如くネガティヴ野郎が長年にわたり書き溜めてきたという、ジレンマや妄想や愛がメロディとなって、時に熱く時に切なく響く。シンバルの残響がノイズのように響きギターと溶け合う「キスミー」、インディー・フリークっぷりが窺えるサウンドと、ドメスティックなポップスの影響を感じさせるサビでの転調から開ける景色のコントラストが楽しい「真夜中の決意」、BILLIE HOLIDAYへのオマージュをタイトルと歌詞に込めた「タバコと君とビリーホリデイ」、オルタナティヴ・ロックの生々しいカオスが炸裂する「環状線」など、サウンドのバリエーションも豊富で、実にエモーショナル且つ深みとコクのある極上の1枚だ。

A Letter Home

Neil Young

A Letter Home

繊細なシンガー・ソングライターと荒くれたロッカー両方の顔を持つ御年68歳のベテラン。しかし、やっていることは若い連中よりよっぽど乱暴だ。2012年にリリースした2枚のアルバムも轟音ロック・サウンドがシーンを震え上がらせた。そんな御大の最新作はBob Dylan他、若い頃に聴いていたフォーク・シンガーの曲を、アコギあるいはピアノで弾き語りしたカヴァー・アルバム。主に観光地で使われていた47年製の簡易録音ブースでレコーディングしたというローファイの極地と言えるノイズ交じりのよれっとした音がある意味、衝撃的。しかし、それも含め、味わい深い歌が胸にしみる。人を感動させるには何が必要なのかを改めて考えさせる問題作。ラストは録音ブースの持ち主、Jack Whiteとのデュエットだ。

The Worse Things Get,The Harder I Fight, The harder I Fight, The More I Love You

Neko Case

The Worse Things Get,The Harder I Fight, The harder I Fight, The More I Love You

USオルタナ・フォーク・カントリー・シーンきっての歌姫、約4年ぶりのニュー・アルバム。CALEXICOやLOS LOBOS、MUDHONEYや、自身のバンドNEW PORNOGRAPHERSら、ミュージシャンは前作までとほぼ変わりないようだが、Bill Frisellとの仕事で知られるエンジニア、Tucker Martinのセンスが冴えている。革命家のような凛とした側面と少女性を併せ持つNekoの声が前面に出た曲が並ぶ中でも、オーガニックとエレクトロが融合した「Calling Cards」や、透徹した孤独感が漂う「Afraid」、MUMFORD & SONS的なトラディショナルと今のUSインディーが合体したような「City Swans」など、今年のセンスでもって、オルタナ・カントリーの解像度を上げ立体的にした作品と言えそう。

NEO GLAMOROUS

NEO JAPONISM

NEO GLAMOROUS

もはや、フェスにアイドルが参戦することは常識の範疇。そして、アイドルの楽曲に優秀なブレーンが携わること自体は70年代でさえ当たり前のことであった。だとしたら、このアイドル・グループが乱立する時代にNEO JAPONISMが生を受けた意味とはなんなのか。それを考えるうえで、今作は重要なものとなっているように思う。松隈ケンタ氏のもとで作曲/編曲を行ってきたSaya氏が制作に参加している今作は、全編を通してバンド・サウンドが軸となったもの。EDM的なアプローチも垣間見られる厚めに作られた音の中で、例えば「聞こえない歌」では、5人の少女たちが"自分たちの声は届いていますか"と懸命に歌うのだ。その健気な姿から感じるのは、いい意味での野心と魅力にほかならない。

Physical Drafty

NeruQooNelu

Physical Drafty

メンバー・チェンジを繰り返しながら、長きにわたって活動を続けている3ピースのキャリア初アルバムには、現体制で再構築した既存曲と新曲を合わせた全12曲を収録。歌モノだった原曲をリミックスばりの勢いでインスト曲に再編した「DISCORTION BIG LINE」や、トライバルな趣きもある「Oishiii!!」など、ノイジーでローファイな爆音バンド・アンサンブルと、ミニマル・テクノを彷彿とさせるエレクトロニクスが交錯し、圧巻のサイケデリック空間を生み出している。全編通して変拍子もかなり多いのだが、耳に残るリフや歌メロがしっかりとフックになっていて、聴き手を突き放すことなく、全員まとめてトリップさせていく最高のストレンジ・ポップが、とてつもなくクセになる。 山口 哲生

サイダーのように言葉が湧き上がる

never young beach

サイダーのように言葉が湧き上がる

多彩な楽器や女声なども効果的に配した『STORY』をリリースし、ホール・ツアー完遂後のネバヤンは今年、一転してまたグッと身近な印象のシングルを発表している。本作はその親しみやすさに加えて、お得意の夏曲。同名の劇場アニメ主題歌である「サイダーのように言葉が湧き上がる」は、優しく軽快なギターが印象的な、まさに"サイダー"のように、カラッとした暑さに爽快感と懐かしさを弾けさせる1曲だ。シンバルやベースの響きを最小限に抑えた粒立ちの良い4人の音からなり、映画に登場する"言葉を交わすこと"に億劫になっている少年少女を見守る、安部勇磨の温かい歌声を際立たせる。c/w「シティサイド・ラプソディ」は阿南智史(Gt)作曲で、彼らとしては新しい都会的なファンクがえも言われぬ余韻を残す。