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DISC REVIEW

Overseas

Lola Versus Powerman And The Moneygoround, Part One

THE KINKS

Lola Versus Powerman And The Moneygoround, Part One

今年はデビュー50周年となり、1964年から1970年までの作品が復刻リリースされることとなったブリティッシュ・ロック・バンド、THE KINKS。今なお多くのバンドに影響を与え、世界中の音楽ファンのフェイヴァリット・バンドであり続ける、ポップでシニカルで、それでいて甘美なロックンロールの名盤たちの最初の復刻盤である今作は、1970年に発表されたコンセプト・アルバム。音楽業界のあれやこれやを批評的に、たっぷり毒もユーモアも盛って1枚のアルバムへと仕立てられていて、コンセプト・アルバムと言うと敷居の高い感じ?と思いきや、シンプルでキャッチーな曲のオンパレード。ガツンとワンパンチでKOする即効性の高さがあって、口ずさめるフレンドリーで中毒性の高いメロディやフレーズで酔わせ続けるアルバムだ。

We Will Reign

THE LAST INTERNATIONALE

We Will Reign

民衆を蹂躙する巨大な権力と闘う必要のない平和な時代を希求する想いを込め"最後の革命歌"と名乗るニューヨークの3人組。男女デュオとしてスタートしたのち、今回のメジャー・デビューをお膳立てしたRAGE AGAINST THE MACHINEのTom Morelloのサジェスチョンで同バンドのドラマー、Brad Wilkが加入。RATMを手がけたBrendan O'Brienがプロデュースを担当している。どこか60年代を思わせるフォーク~ロック・サウンドはRATMとは全然違うものだが、ハード・ロックからバラードまで、真摯なメッセージを歌いあげるパワフルな女性ヴォーカルには多くのロック・ファンを虜にする魅力がある。THE BEATLESも歌ったTHE SHIRELLESの「Baby It's You」のカヴァーも彼ららしいものになっている。

After The End

MERCHANDISE

After The End

米フロリダ州タンパ発の5ピース、MERCHANDISEが通算4作目で、4ADからは初となるアルバムをリリース。フロリダというと個人的にはエモやハードコア勢の強いイメージの地で、彼らもまた遠からずというか、ノイジーで実験的なサウンドを生みだしていたと思うが、今作では劇的に変化。80年代ポップスのセクシーさ、シンセ・ポップも取り込んだ。わかりやすくシンセをキーにした曲よりも、深みを増した匂い立つようなギター・サウンドの曲が圧倒的にいいのだけど、ここにCarson Coxの低音が横たわるとさらにロマンティックに。DEPECHE MODEやINTERPOL、GRIZZLY BEAR作品を手掛けるGareth Jonesをミキサーに迎えて、音作りからバンドの意思を明解に伝えたアルバムは、THE CUREなども思い浮かぶ繊細なメランコリーが美しい。

(What's the Story) Morning Glory?

OASIS

(What's the Story) Morning Glory?

OASISが世界的な"現象"になるまでの1993〜1997年を振り返るプロジェクト"Chasing The Sun"シリーズ第2弾は「Wonderwall」「Don't Look Back in Anger」など猿でも知ってる(!?)世紀の名作『Morning Glory』。オリジナル・アルバムのリマスタリング盤はもちろん、「Acquiesce」「Rockin' Chair」などシングルBサイド曲を収録したディスク、さらになんと1994年の初来日時の渋谷CLUB QUATTRO公演のサウンド・チェック音源やデモを収録したディスクなど未発表音源も多数収録。そのレア度も嬉しいが、オリジナル・アルバムに溢れるロック・バンドにしか成し得ない高揚感はエヴァーグリーンであると同時に生々しい。まだこの先半世紀以上我々を突き動かしてくれるだろう。

Neon Future Part.1

Steve Aoki

Neon Future Part.1

昨年のSUMMER SONICで共演したLINKIN PARKに続き、今回、FALL OUT BOYをフィーチュアしたことで、彼の名前はロック・ファンの間でさらに知られることになるだろう。エレクトロ・ハウスのDJ/プロデューサーとしてのみならず、Dim Mak Recordsのオーナーとしてもその音楽センスを発揮しているSteve Aoki。メジャー・デビューとなるこの2作目のアルバムも前作同様、FOBに加え、EMPIRE OF THE SUNのLuke Steele、BLACK EYED PEASのwill.i.am、Katy Perryへの楽曲提供で知られるBonnie Mckeeら多彩且つ豪華なゲストを迎え、全曲にヴォーカル/ラップをフィーチュア。彼一流の研ぎ澄まされた感覚をより多くのリスナーにアピールするAoki流EDMをひっさげ、ポップ・フィールドに殴りこむ。

Yorktown Heights

Grant Nicholas

Yorktown Heights

UKのベテラン・バンド、FEEDERのフロントマンGrantNicholas(Vo/Gt)初のソロ・アルバム。FEEDERのアルバムにthe HIATUSの細美武士、ASIAN KUNGFU GENERATIONの後藤正文が参加したことも関係あるのか、Track.2「Hitori」なんていうタイトルの曲も収録。アコースティック・ギターを基調としたサウンドと丁寧に歌われるヴォーカル楽曲が並んでいるが、Track.4「Robots」、Track.8「Hope」のような激しめの曲はライヴでの再現が楽しみなバンド・サウンド。アコギの弾き語りがベースになって作られているにも関わらず、それぞれが違う表情を見せる多彩なアレンジによる抒情的で繊細な15の楽曲は、メロディ・メイカーとしての彼を存分に発揮しているだけでなく、ギター・ロックの可能性すら示唆しているようだ。

PENTATONIX

PENTATONIX

PENTATONIX

すべて"声"だけで成り立っているとは俄かには信じられないが、ヴォーカル・ベースとビートボクサー、そして女性、を含む3人のヴォーカルの5人で、DAFT PUNKやGotyeFUN.の壮大なカヴァーやオリジナル曲を聴かせる米の アカペラ・グループPENTATONIX。DAFT PUNKやSWEDISH HOUSE MAFIAなどの、エレクトリックな音を再現しつつ、ボリューム感のあるアンサンブルでエモーショナルに音の世界を作り上げているのも圧巻。ポップスからロック、ジャズなどジャンルも幅広く、誰もが知るヒット曲を演るキャッチーさがある一方で、20代ながら格式高いステージでの演奏経験を持ったメンバーもいる。王道であり、生歌だからこそごまかしがきかない難易度の高い音楽を、楽しく聴かせてくれる5人。SUMMER SONICでのステージに期待!

Angels & Devils

THE BUG

Angels & Devils

Justin Broadrick(NAPALM DEATH、GODFLESH、JESU他)と組んだGOD、TECHNO ANIMALやThom York、PRIMAL SCREAMのリミックスを手がけたことでも知られるエレクトロ・ミュージック・シーンのアウトサイダー、Kevin Martin。その彼によるメイン・プロジェクト、THE BUGの3作目のアルバム。3部作の完結編ながら、DEATH GRIPSらを迎え、極悪ハードコア・ダンスホールを炸裂させるその一方で、暗黒ニュー・ウェイヴ/ポスト・パンクを現代のエレクトロ・サウンドで再現したような新境地をアピールした前半からは更なる可能性が窺える。テーマは光と闇。もちろん、光=明るい、なんて単純な世界はここにはない。張り詰めた緊張の中、背筋がゾクゾクするようなスリルが全編で味わえる。

Melancholy & The Archive

WE NEED SECRETS

Melancholy & The Archive

カナダ東部に位置するノバスコシア州出身のChad Peckによるソロ・プロジェクトWE NEED SECRETS。"ひとりマイブラ"と称される彼の、デビュー・アルバムにあたる今作は、4年もの歳月をかけて作られた渾身の一作。ソロ・プロジェクトでここまで深く、丁寧にシューゲイザー・サウンドを作りこめるのは、Chadのシューゲイザーへの愛ゆえだろうか。Track.4「Melancholy」ではひずんだギター・サウンドの中にポップなメロディが乗せられ、このプロジェクトのふり幅の大きさを感じさせてくれる。更にRINGO DEATHSTARRのフロントマンElliott Frazier(Gt/Vo)が客演、録音で参加しており、マスタリングにはSHELLACのBob Weston(Vo/Ba)が担当という、まさに"轟音"な布陣で固めている。

Alvvays

ALVVAYS

Alvvays

カナダはトロント出身の美人女性ヴォーカル擁する5人組、ALVVAYSのデビュー作。THE VASALINESやBELLE AND SEBASTIANといったグラスゴー勢譲りの牧歌的なメロディに、BEST COASTやVIVIAN GIRLSといったUSサーフ・ロック勢譲りのローファイでノスタルジックな音の鳴り。移りゆく時代の中でロックンロールが、背負わされた物語や絡みつく資本の外側に追い求めた"純粋さ"がこのアルバムには凝縮されている。誰しもが子供のころに感じたであろう夕方の帰り道の身を切るような切なさや、想う相手と手が触れ合った瞬間の全身に電流が走ったような喜び――そういった、失われてしまうからこそ美しく、永遠に私たちを魅了し続けるすべての甘美な恋と夢と酩酊を、ドリーミーなリヴァーヴの奥に閉じ込めた玉手箱のような1枚。

Before the Waves

MAGIC MAN

Before the Waves

Gotye、PASSION PITを輩出したNEON GOLD RECORDSからリリースされる注目のシンセ・ポップ・バンド、MAGIC MANの1stアルバム。2010年にボストンで結成されたバンドのようだが、すでに完成されたメガ・アーティスト感が満載で、スケールの大きい楽曲群は来年のSUMMER SONICあたりで聴けそうなスタジアム・ポップ。タイトルどおり荒涼感のある風の音と寂しげな乾いたギターが聴こえてきたと思ったらいきなり4つ打ちのビートでイケイケでキラキラなシンセ・ポップが飛び出してきたらさすがにテンションが上がろうというもの。80's産業ロック的で大仰な「Waves」のような曲やラストのアツい疾走感の「It All Starts Here」も、ダサいという向きもあろうがメロディの良さにはひれ伏すしかない。

New Eyes

CLEAN BANDIT

New Eyes

イギリスでNo.1ヒットになった「Rather Be」によって、一躍、世界中からの注目を集め始めた4人組、CLEAN BANDIT。クラシックをベースにしたエレクトロ・サウンドと話題になっているが、それが顕著に感じられるのはTrack.1「Mozart's House」ぐらいで、それ以外の曲はヴァイオリンとチェロの音色を味つけに使ったエレクトロニックなダンス・ミュージックという印象。クラシックと聞きビビッた人はご安心を。もちろん洗練された作風はクラシックの影響だが、期待しすぎるとちょっと物足りないかも。むしろ聴きどころは90年代、いや、80年代にまで遡って、多彩な表現を追求したサウンド・メイキングと、ほぼ曲ごとにフィーチャリング・シンガーを使いわけ、こだわった歌ものとしてのクオリティだ。

Tied To A Star

J Mascis

Tied To A Star

DINOSAUR JR.のJが2011年の初ソロ名義アルバム『Several Shades Of Why』以来となる2ndをリリースする。前作同様、ほぼ全編アコースティック・サウンドで構成された繊細なプロダクションが印象的だが、なんと言ってもこのアメリカならではの午前中の光の感じというか、だだっぴろい国道に誰もいない感じを醸し出せるのは、先達のNeil Youngか盟友James Ihaぐらいなんじゃないだろうか。しかし耳を澄ますとアコギのアルペジオの背景にお馴染みのファズ・ギターがうっすら鳴っているリード・トラックの「Every Morning」や「Come Down」の"J印"なこと!また、Track.1「Me Again」のナチュラルなアコギのフォーク感の中に配されたオルガンのゴスペル的な美しさ。どんな時も気持ちをフラットにしてくれる。

High Life

ENO・HYDE

High Life

Brian EnoとKarl Hyde(UNDERWORLD)による2作目の共演アルバムがリリース。これが前作『Someday World』から、わずか2カ月でのリリースとなる。『Someday~』でやり残したアイディアを更新しながら、新しい形にしていった今作は、準備に約2週間、録りに5日間というスピードで行なわれた。実験を重ね構築したサウンドは緻密でいて、かつシンプル。必要最低限の音で、鮮やかで奥行きのある空間を生みだしている。エクスペリメンタル・サウンドでありつつ機能美という言葉もはまるような感覚。両者ともに長いキャリアがあるけれど、次から次へと湧くアイディアを、互いに触発し合い面白さを何倍にも増幅させて、"コラボレーション"の高いテンションを大事にしている。その熱量を瞬時にパッケージしたアルバム。

A Letter Home

Neil Young

A Letter Home

繊細なシンガー・ソングライターと荒くれたロッカー両方の顔を持つ御年68歳のベテラン。しかし、やっていることは若い連中よりよっぽど乱暴だ。2012年にリリースした2枚のアルバムも轟音ロック・サウンドがシーンを震え上がらせた。そんな御大の最新作はBob Dylan他、若い頃に聴いていたフォーク・シンガーの曲を、アコギあるいはピアノで弾き語りしたカヴァー・アルバム。主に観光地で使われていた47年製の簡易録音ブースでレコーディングしたというローファイの極地と言えるノイズ交じりのよれっとした音がある意味、衝撃的。しかし、それも含め、味わい深い歌が胸にしみる。人を感動させるには何が必要なのかを改めて考えさせる問題作。ラストは録音ブースの持ち主、Jack Whiteとのデュエットだ。

Ultraviolence

Lana Del Rey

Ultraviolence

David Lynch作品にも通じるデカダンを打ち出して、ノスタルジーは美しいものという幻想を破壊した前作『BornTo Die』から2年、"ギャングスタ界のNancy Sinatra"を謳い(Nancy Sinatraの「Summer Wine」のカヴァーは秀逸!)、ショウビズ界の堕天使を演じるLana Del Reyがリリースした2作目のアルバム。その世界観こそ変わらないものの、サウンド的に前作のトリップ・ホップ路線を改め、ストリングスやピアノも使いながら生音を意識したことで、R&Bの要素をはじめ、彼女が作る悲劇的なバラードの芯にある魅力がより剥き出しになった印象だ。プロデュースはこのところ、プロデューサーとして立てつづけにいい仕事をしているTHE BLACK KEYSのDan Auerbach。彼の代表作になることは間違いない。

Hard Believer

Fink

Hard Believer

プロデュースに関わった故Amy Winehouseをはじめ、John Legend、RADIOHEAD、BON IVERらを虜にしてきたイギリスのシンガー・ソングライター、Fin GreenallことFinkによる6作目のアルバム。ゴシック・ブルースを思わせる1曲目からブルースとR&Bをバックボーンにフォーク・ロックと室内楽が交差する曲の数々を披露。浮世離れした歌声の魅力に加え、華麗とも荘厳とも言えるサウンド・メーキングに圧倒される。悲劇的なサウンドに息が詰まるような曲もあれば、そこから一転、そこに差し込むほのかな光を感じさせる曲もある。プロデューサーはGARBAGE、MUSE、FOSTER THE PEOPLEらとの仕事で知られるBilly Bush。BON IVERと通じるところもあるが、彼らよりも断然荒々しい魅力がある。

Your Charizmatic Self

BOK BOK

Your Charizmatic Self

ロンドンのアンダーグラウンド・ダンス・ミュージック・シーンでファッションやカルチャー方面からも熱い注目を集めるクリエイター集団"Night Slugs"の首領BOK BOKことAlex Sushon。彼が日本限定盤としてボーナス・トラックを追加収録したニューEPをリリースする。ファンクをグライム、エレクトロ・ミュージックへと昇華させたBOK BOK流とも言うべき音楽は、新世代UKのアンダーグラウンド・サウンドを魅せてくれる。「Melba'sCall」には、BBC Sound of 2014にもノミネートされ、センセーショナルなデビューを飾ったKelelaをフィーチャー。ソウルフルな彼女の歌声とBOK BOKのエレクトロ・サウンドのコラボにはうっとりと酔いしれてしまう。

Disgraceland

THE ORWELLS

Disgraceland

結成からわずか4年で世界に飛び出してきた5人組がいよいよメジャー・デビュー。彼らの存在をアピールしてきた破天荒なライヴ・パフォーマンスとは若干印象が違い、20歳そこそこのメンバーがここで奏でるガレージ・ロックンロールは荒々しさのみならず、曲が持つノスタルジックかつポップな魅力も際立たせるものになっている。THE STROKESからElvis Presleyまでと語る幅広いバックグラウンドは決して伊達ではないらしい。曲作りのうまさに加え、ARCTIC MONEKYS を手がけたJim Abbissら、3人のプロデューサーによる導きも大きかったとは思うが、フレーズ作りや音の響かせ方にも明らかな成長が窺える。ボーナス・トラックとして、ライヴ・ヴァージョンで収録された「Mallrats」は彼らの代表曲中の代表曲だ。

Love Frequency

KLAXONS

Love Frequency

ニュー・レイヴ=インディー・ロックとダンス・ミュージックの融合の先駆者による4年ぶりの新作。メタル/ハードコア畑のプロデューサーとして知られるRoss Robinsonと組み、ロック色濃いサウンドに挑んだ前作から一転、今回、彼らが目指したのはダンス・ミュージック回帰。それはJames Murphy、Tom Rowlands(THE CHEMICAL BROTHERS)に加え、今をときめくErol Alkan、GORGON CITYも起用したプロデューサー陣の顔ぶれからも明らかだが、ポップ・アルバムを作ることをテーマにエレクトロなサウンドやR&B/ディスコの影響を大胆に取り入れ、強烈に"今"を印象づける曲の数々は、ひょっとしたら前作以上に物議を醸すかもしれない。メロウな作風とは裏腹にバンドの野心が窺える問題作だ。