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DISC REVIEW

Overseas

The Game

DAS POP

The Game

“ポップ・ミュージックとは人生を変えるものさ!”と叫びベルギーから華麗に登場したのは、約2年前の出来事。その言葉通り、ありったけの幸福感を呼び起こすカラフルなポップ・ワールドを繰り広げ、新人とは思えぬポップ・マイスターっぷりには驚かされた。そして、彼らの次なる“Game”が完成した。前作ではその才能に惚れ込んだSOULWAXがプロデュースしていたが、今作はセルフ・プロデュースとなる。この変化は、本能の赴くままに筆を走らせたような軽やかさと大胆さが同居する、豊かなサウンド・ボキャブラリーに表れているだろう。HALL&OATESやWHAM!のような80’sサウンドを彷彿とさせ、あの輝かしくも享楽的な時代が甦るようなサウンドは、クラブ・シーンからお茶の間レベルまで浸透しそう。世代を超えて楽しんでもらいたいアルバムだ。

Colour Of The Trap

Miles Kane

Colour Of The Trap

一日が終わりを迎え、始まりに切り替わる瞬間はいつだろう。夜明けは終わりでもあり、始まりでもある。Miles Kaneは、そんな時間や空間の連続性の中に自分自身を見出している。血が湧き踊るビートとタイトで熟成されたサウンドは、密度が濃い。時間軸を思わせる楽曲は、圧倒的な完成度を誇る一日を記した日記、大きくはMiles Kane個人の歴史のようでもある。最終的には「Morning Comes」と歌い、終わりから始まりのシフトを予感させる。歴史の最後に終わりが訪れない、それこそがMiles Kaneが仕掛ける“罠”なのだ。オールディーズを踏襲した正統さの中に見え隠れする、狡猾さと貪欲ささえも心地よい。THE LAST SHADOW PUPPETS、THE RASCALES、THE LITTLE FLAMES――彼がこれまでに刻んだキャリアは、みんな忘れてしまえ。純粋培養の美意識の前では、冠言葉ほど無用なものはない。

Something A La Mode

SOMETHING A LA MODE

Something A La Mode

DAFT PUNKやJUSTICEを生んだフランスから新たなエレクトロの刺客が登場。エレクトロといっても、彼らは元々チェリスト、バイオリニストとして活動していて、このユニットは自ら体験したクラブ・カルチャーとクラシックを融合しようと始まったもの。ストリングス×エレクトロというとDAFT PUNKが担当した映画『TRON』が思い浮かぶが、それをもっとフロア仕様に、よりファッショナブルにした感触。艶やかなアンサンブルと切れのあるダンス・ビートの組み合わせは新鮮だし、楽曲によってはフランスのアーティストらしい哀愁あるメロディがあるところも良い。ソウル・シンガーAdam Josephを迎えた「Little Bit Of Feel God」はホント鳥肌もの。

Blood / Candy

THE POSIES

Blood / Candy

90年代のUSギター・ポップ/パワー・ポップを牽引してきたTHE POSIESの5年振りのニュー・アルバム。88年にデビュー、しかし98年に活動休止、そして05年に再結成と長いキャリアを持つ彼らは、他アーティストの支持率も絶大であるとともに日本のファンからも人気が高い。それは、彼らが涙腺に訴えてくるような素晴らしいメロディ・センスを持っているからだろう。新作では、そのキャリアの初期のような瑞々しいサウンドが全開。TEENAGE FANCLUBを彷彿とさせるような暖かいメロディも魅力的なのだが、あのTHE BEATLESをも引き合いに出される曲の展開や引き出しの多さが彼らの真骨頂だろう。BROKEN SOCIAL SCENEのLisa Lobsingerなどゲスト陣も豪華。

Self Help for Beginners

AUTOKRATZ

Self Help for Beginners

1stアルバム『Animal』で世界中のダンス・フロアに新たな風を巻き起こしたロンドン発シティ派エレクトロデュオ、autoKratzの2ndアルバム。しかも今作はPRIMAL SCREAMのAndrew Innesが参加し、ギター・サウンドが切れ味抜群なビートと融合し問答無用にアガれる仕上がりになった。ソリッドな電子音が突き刺さるダンス・アンセムだけれど度肝を抜かれる展開も見せる曲構成からは、既存のものをぶっ壊したいというエネルギーが伝わり、その根底にはロック・スピリッツも感じる。初期衝動が詰まったデビュー・アルバムで注目されるアーティストは多いが、続く2ndで1stを上回り、更なる進化を遂げて想像をはるかに超えるような作品を世に出すことは難しい。しかし、彼らはそれをやってのけた。

Gloss Drop

BATTLES

Gloss Drop

Tyondai脱退後、3人編成となった彼らの新作は、不穏に拡がるサウンドスケープが波のように押し寄せ、ボルテージがどんどん上がっていく「Africatsle」から始まり、シングルカットされた「Iscream」を始め、ヒップホップ/ファンク要素も散りばめられている。南国的なパーカッションや、土着的な民族音楽のエッセンスも取り入れられ、非常にバラエティに富んだ内容だ。自由な音階で3連符の嵐を刻む「White Electic」を聴けばわかる通り、メンバー個々の、プレイヤーとしてのセンスと技術の高さに、改めて感服してしまう。BATTLESの中核となるハードコアなアイデンティティはそのままに、心躍らずにはいられないアッパーでポップなサウンドを新機軸として提示し、更にパワーアップした姿を我々に示してくれた。

Bread And Circuses

THE VIEW

Bread And Circuses

あらあらこんなに大人になって! なんて、おばちゃんが久し振りに会った親戚の子に言ったりするが、そんな台詞を自分が、音楽を聴いて呟くなんて思ってもみなかった。そんな比喩がピッタリなTHE VIEWの3作目。元KILLING JOKEのYouthをプロデューサーに起用して1年の歳月を掛けて作られた今作は、今までの彼らの音をぎゅっと絞ってスマートにさせた見事なまでの洗練っぷり。1曲1曲のバリエーションも格段に広がり、キーボードやストリングスなどが大々的に取り入れられている。カラフルなサウンドが、瑞々しく美しいハーモニーの持つ力、声の持つあたたかみをとめどなく引き出してゆく。進化に対する彼らの粘り強さの賜物だろう。軽やかで力強いギター・ロック・サウンドに笑みが零れる。

Hot Sauce Committee Part 2

BEASTIE BOYS

Hot Sauce Committee Part 2

極上のラフ・ミックスみたいな仕上がり――。インタビューでメンバーが語った言葉は思いっきり頷ける。MCAの病気治療によるインターバルを経てついにリリースされる新作は、他の音源からのサンプリングで楽曲が構築されることも多いヒップホップというジャンルの中で、生音ならではのグルーヴ嗜好も色濃いビースティの真骨頂を感じる。全編で展開するサウンドの質感は、ある意味荒削り。しかし、だからこそ一聴からインパクトはもの凄い。そして、“これで踊らなかったら何で踊るの?”なんて言いたくなってしまう“どファンキー”なナンバーが並ぶ中で、「Lee Majors Come Again」はハードコア・パンク色が濃かった初期をちょっと思い出させたり……。ビースティはやっぱりビースティ、そのやんちゃ小僧っぷりは不変!

Helplessness Blues

FLEET FOXES

Helplessness Blues

デビュー・アルバムが数々の批評家やメディアからベスト・アルバムと絶賛を受けたFLEET FOXESから3年振りの2ndアルバムが到着。先行ダウンロードされたタイトル曲「Helplessness Blues」の世界感と同じくアルバムも壮大で完成度の高い曲が並ぶ。まず前作同様に美しいコーラス・ワークとストリングス・アレンジに心奪われる。中でもヴォーカルのRobin Pecknoldの伸びやかで穏やかな歌声は彼ならではもの。USフリー・フォーク勢とはまた違う凛とした佇まいが彼らの一つの魅力だろう。牧歌的でポップな「Bedouin Dress」やARCADE FIREを彷彿とさせる力強い「Grown Ocean」など楽曲も粒ぞろい。前作を上回るスケール感だ。

9 stories

Veni Vidi Vicious

9 stories

昨年1月の突然の活動休止から389日、静かに復活を遂げたVENI VIDI VICIOUS。復活後1作目となる本作は、過去2作と比べると、そのジャケットのごとく全体的に暗く煙ったい。だがこの煙は、ただただぼんやりと漂っているようでありながら、気付けばこの身にまとわりついて離れない。暴力や酒が飛び交う喧騒の真ん中で、それを斜に構えて見ているような、野暮ったい悲恋を描いたジム・ジャームッシュのような、ひどく寂しい映画の如く、どこか虚しくも愛おしさが募ってしまう世界のより深くまで誘われ、気付けばその深みにはまっている。“いつだって世界は嘘にまみれる”“願わない 信じない そうやって生きてきた”…言葉を拾おうとしたらきりがないほどに、切れ味鋭くも脆く不安定な刹那がいくつも詰まっている。

What Did You Expect From The Vaccines?

THE VACCINES

What Did You Expect From The Vaccines?

vaccineとは“ワクチン”の意(ちなみに英語読みだと“ヴァクシーン”)。このバンド名、麻痺し切ったこの世の中を健全へと導く覚悟なのだろうか。“THE VACCINESに何を期待する?”というそこはかとなく挑発的なアルバム・タイトルからも彼らの自信が伺える。その自信はハッタリに非ず! 結成から1年にも満たないこのバンドは、デビュー・アルバムにして名盤を作り上げてしまった。瑞々しくダイナミックなサウンドは、UKロックの歴史を全て継承したようなスケール感と振り幅に溢れている。ドラムが炸裂した直後に美しいピアノで聴かせたかと思えば、ポップな音色を投下したりと、聴き手の心を常に揺さぶり続ける。正攻法の中に光る独特のセンスは、ギター・ロック・シーンの新たな希望と言って良いだろう。

Hello Friends, Goodbye Friends

Will Samson

Hello Friends, Goodbye Friends

イギリス生まれの23歳、Will Samson。彼は幼少期からオーストラリア、イギリス、ドイツなどに移り住み、ジャケット写真からも見てとれるように、19歳の頃ヒマラヤ山脈を経る放浪の旅を続けていたそうで、そこからインスパイアされた楽曲は、そびえ立つ山脈のように力強くも時間がゆったりと流れる。アルバム・タイトルの『Hello Friends,Goodbye Friends』はたくさんの地を旅して一期一会を繰り返した彼ならではのタイトルだろう。心臓の鼓動のようなリズムは安心感を生み出し、サウンドに溶け込んだ歌声と心地よい繊細な音に身を委ねたい決定的な睡眠導入盤。個人的に、彼はものすごいポテンシャルの持ち主だと感じるので、アートやデザインなど音楽以外の表現作品でも才能を発揮しそうな気がする。

Perch Patchwork

MAPS & ATLASES

Perch Patchwork

シカゴのインディー・ロック・4ピース・バンドMAPS & ATLASESの1stフル・アルバム。以前リリースされたEP盤では作り込まれた変拍子が特徴的なマス・ロック色が非常に強かったが、今作は一転、ヴァイオリンやフルート、サックス、パーカッションなどの生楽器も多様されており、フォーキーでサイケな色味が強い。その中にちらほら香るマス・ロック・テイストが非常にハイソ。アレンジの幅もグッと広がり、彼らの本領発揮といったところ。フロントマンDave Davidsonが独特なファルセットで紡ぐ伸びやかなメロディと軽やかでポップなサウンドは、雨の中お気に入りの傘と長靴でくるくると踊るような童心に返らせる懐かしさも携えている。春の幕開けにピッタリの軽やかさ。

Condors

NEDRY

Condors

01年にメジャー・デビューしたシンガー・ソング・ライター岡北有由が、英国男性2人と08年の春にロンドンにて結成したNEDRYの1stアルバム。不穏に鳴り響くシンセ・ベースとノイジーなギター。人懐こさを感じさせるダブ・ステップのビートに絡み付く生音は、暗く深い海の中を漂うような浮遊感を持っている。他者を突き放すようでありながらも、包容力も強い。この矛盾が彼らならではの美なのではないだろうか。別々の何かが結びついて新たなエネルギーを作り出す様は、植物の光合成にも似ている。音の中に滲んでゆく岡北の透明感のあるヴォーカルは象徴的だ。拠点を日本から英国に移した岡北が導き出したミュージシャンとしての答え。このアルバムにはそれが詰まっているのではないだろうか。

Tomboy

Panda Bear

Tomboy

上野動物園にパンダが復活した時同じくして、USインディのイノベーターANIMAL COLLECTIVEの創始者であるPANDA BEARも復活!ソロ作としては実に4年ぶりの新作が完成した。前作『Person Pitch』はPitchforkで07年のベスト・アルバムに選出され、さらにサンプラーを駆使し繰り広げた独創的な"揺らぎ"の高揚感は、現在のCHILLWAVEを示唆したものだったが、本作はサンプラーの厳しい制約にうんざりし、NIRVANAとTHE WHITE STRIPESを考えギターとリズムに重点を置いたという。大胆なサンプリング感覚は後退し、シンプルな構造ながらダビーなアレンジで陰影に富んだ音響構築がそびえ立つ。これはミックスを担当したSonic Boomの存在も大きいだろう。ややダークなトーンが漂うなか、木霊するような独自の柔らかいエモーションが流れる......それはまるで"鳴りの抱擁"のように。

Dancer Equired

TIMES NEW VIKING

Dancer Equired

アメリカ、オハイオ州のローファイ・シューゲイザー・3ピース・バンド、TIMES NEW VIKINGの通産5枚目となるオリジナル・アルバム。これまでカセット・テープやVHSのビデオ・テープを使い録音しリリースしていた彼らだが、今作では遂にスタジオ・レコーディングを敢行したとのこと。メロディや不協和音はクリアに際立ち、極上のローファイ・サウンドはより一層深みを増し、新たな可能性へと導かれている。デジタルが溢れるこの時代に、ここまで人の汗と太陽のぬくもりを感じさせる音楽はなかなか存在しないのではないだろうか。気だるいポエム・リーディングのような男女ツイン・ヴォーカルを聴いていると幽体離脱しそうな感覚に陥って来る。非常に自由度の高い、これぞ自然体と呼ぶべきアルバム。

Start & Complete

ABOUT GROUP

Start & Complete

HOT CHIPのAlexis Taylorのサイド・プロジェクトによる2ndアルバム。エレクトロ・ポップなどとよく評されるHOT CHIPと、サイケデリック・ロックの雄SPIRITUALIZED、ポスト・パンクの伝説的バンドTHIS HEATのメンバーが集結したバンドの音色は、HOT CHIPのイメージを想像した人にはちょっと驚きかもしれない。Alexの魅惑の歌声を前面に押し出したうえで、あのアビーロード・スタジオでなんと一日のレコーディングで作り上げたというサウンドが、1曲1曲それぞれに異なる個性を与えている。その面白さを特に象徴する1曲を挙げるなら、現代音楽家Terry Rileyのカバー「You’re No Good」。原曲の20分にも渡る超実験的音楽も凄いが、メンバー全員がお互いの存在を肌で感じながら音を奏でる姿が見えるようなABOUT GROUPバージョンの10分強のセッションもすごい。心地よくも、緊張感たっぷり!

Bakesale

SEBADOH

Bakesale

DINOSAUR JR.のベーシストLou Barlowが中心となって活動していたSEBADOHの最高傑作である『Bakesale』がなんとボーナス・ディスク付きの完全リマスターで登場。DINOSAUR JR.の復活、そして昨年のPAVEMENTの再結成ツアーとロウ・ファイの再評価が高まってきている時期と言えるかもしれない。SEBADOHも今年はツアーなどの活動もしていくそうだ。今作を改めて聴き返すと凄くポップなアルバムでありながら、持ち前のヘロヘロな脱力感もたっぷりでとにかく心地よい。特に4曲目以降の切なくて胸が締め付けられるようなメロディとLou Barlowのヴォーカルが素晴らしい。40分強という長さも含めストレートなナンバーが多いので入門編には持って来いだろう。

Cherish The Light Years

COLD CAVE

Cherish The Light Years

2009年にリリースされた1stアルバムに収録されていたキャッチーで女性ヴォーカルが印象的なシングル「Life Magazine」が日本でもクラブ・ヒットしたのも記憶に新しいCOLD CAVEがついに日本デビュー。その前作も非常にポップだったが今作は更にポップさを増している。前作の不穏でダークな印象が影を潜め、今作では80’Sシンセ・サウンドが全面に押し出され、DEPECHE MODEやPLUPを彷彿とさせるロマンティックでより肉体に訴えかけるようなサウンドが核となっている。ビートも強度を増していてフロア受けも良さそうだ。この大きな変化は驚きだが前作と同じく中毒性も高く聴けば聴くほどにはまっていく。

Whokill

TUNE-YARDS

Whokill

生っぽい打楽器の音がループしたかと思ったら、いきなりシンセが切れ込み高揚感が上がり、吹奏楽器が楽しげな雰囲気を演出し、女性ヴォーカルがハミングする......。オープニング・ナンバー「My Country」でいきなり驚かされたこのスタイルを、どう表現したらいいのだろうか。M.I.Aのトライバルな感覚や、民族音楽なども取り込んで音楽の新たな可能性を見せたBjorkなど、ダンサブルで革新性を持った音楽と通じるものをTUNE-YARDSからは感じる。それとともに強烈な印象を与えるのが、このソロ・プロジェクトの主宰者Merrill Garbusの声の力。高音から低音、打楽器のようなリズムを奏でる声から穏やかなウィスパー・ヴォイスまで使い分ける多彩なヴォーカル・ワーク。そして、「Powa」や「You Yes You」のソウルフルさ。実験的かつ、"魂"を熱くする力がこの音楽にはある。