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DISC REVIEW

Overseas

Hot Thoughts

SPOON

Hot Thoughts

2015年に開催された第57回グラミー賞授賞式で、いまは亡きPRINCEは"みんな、アルバムって覚えてる?"と口にした。名門レーベルMatadorに復帰したSPOONの新作は、そんな彼の言葉への最適解のようにも受け取れる。表題曲「Hot Thoughts」のアトモスフィアなサウンドから、オールドスクールなコード進行にシンセを重ねるプロダクションなど、変化を恐れないそのスタイルは、いくら時間が経ってもルーキーだったころを思い出させる。だが、20年のキャリアで得た知見と、現在の母国アメリカのビルボードに見るブラック・ミュージックの特性がグルーヴとして見事に取り入れられているあたり、やはりベテランであることに変わりはない。バンドであり、バンド・サウンドに縛られない。まさにPRINCEが体現してきたスタンスを汲み取る、アルバムで聴き取るべき作品である。

Black And White Rainbows

BUSH

Black And White Rainbows

1990年代から活躍、累計1,000万枚以上のセールスを誇るUKの大御所ロック・バンド、BUSHの3年ぶり7枚目のアルバム。2010年のバンド再結成以降、『The Sea Of Memories』(2011年)、『Man On The Run』(2014年)とコンスタントに作品をリリースしてきたバンドの充実度が伝わってくる15曲を収録。「Mad Love」の陰鬱なギター・リフから始まり、ミディアム・テンポでじっくり聴かせる楽曲が並んでおり、グランジ/オルタナティヴ・ムーヴメントを経てよりポップさを手に入れたベテラン・バンドの歌モノ作品といった印象。「Sky Turns Day Glo」、「All The Worlds Within You」などで聴かせるGavin Rossdale(Vo/Gt)の歌声は渋みと透明感の両方を感じさせるもの。「The Edge Of Love」、「People At War」と続く幻想的なサウンドで締めくくられる心地よいアルバム。

Visuals

MEW

Visuals

前作から2年という、バンド史上最も短い期間でリリースされる完全セルフ・プロデュース/レコーディングによる7枚目のアルバム。2015年にBo Madsen(Gt)の脱退という大きな変化に立ち止まることなく、むしろその変化や直感が素直に閉じ込められた作品だ。時間をたっぷりかけ創り上げるという彼らの従来の制作スタイルを打ち破ることに挑戦した本作は、ツアーでのエネルギーや閃きが、ギター・サウンドやより開放的になった歌詞にストレートに表れている。彼ららしさを失わないまま、「Carry Me To Safety」に代表される、エネルギッシュなのに繊細、それでいて以前より壮大になった印象を与える楽曲ばかり。永遠に続くものなどない――変化が目まぐるしい現代だからこそ、長い期間を空けずに彼らが届けたかった思いが感じられる1枚だ。

÷

Ed Sheeran

÷

前作『X』(2014年)で、世界で最も多くのセールスを記録した男性ソロ・アーティストの称号を獲得し、グラミー賞受賞したEd Sheeran。注目の高まるなかでの3rdアルバムだが、自分自身の経験や体験、半径1メートル内の、体温や鼓動も感じるようなソングライティングであることは変わらない。いつ、どんなときにプレイボタンを押しても、心や気分にそっと寄り添う、僕や私の歌を歌う人であることは1ミリもブレていない。そのうえで、歌心だけでなく、ヒップなサウンド・アプローチや新たな感触、モチーフにも恐れずに飛び込んでいく、ポップ・アーティストとしての好奇心や探究心が、アルバムごとに増している。耳馴染みの良さのみではない、やんちゃなこの姿勢もまた、彼がリスナーにもミュージシャンにも愛される所以だ。

Everybody Wants

THE STRUTS

Everybody Wants

去年のサマソニに続き、先日、単独来日を果たしソールド・アウトさせたUK出身、現在はLA拠点で活動するTHE STRUTS。80年代メタル風なルックスやMÖTLEY CRÜEからの高評価で先入観を持つリスナーもいるだろうが、ぶっちゃけヴォーカル Luke Spillerの破格の存在感――Freddie Mercuryばりの表現力、巻き舌、エンターテイナーっぷりは笑っちゃうほど強力だ。そしてOASISやTHE LIBERTINES好きだったバンドのアンサンブルはシンプル且つモダン。THE ROLLING STONESをいい意味でもっとインスタントで呑み込みやすくしたような16ビート・ナンバーや、モータウン・ポップに、Noel Gallagherが書きそうな歌メロが乗るナンバーなどなど、親しみやすいったらない。ファッションはいったん横に置いて聴く価値大アリ。

In Mind

REAL ESTATE

In Mind

懐かしい――ニュージャージー州出身のREAL ESTATEの音に耳を傾けるたび、場所や時間を問わず、ノスタルジックな気持ちにさせられる。ソフト・ロックを追求し続け、普通と普遍を掛け合わせたポピュラー・ミュージックには、そんな人の記憶にアクセスする作用があるのかもしれない。昨年、結成時からのメンバーであったリード・ギターのMatt Mondanileが脱退。新たにJulian Lynch(Gt)を迎え入れレコーディングされた4作目は、本来バンドにとって新章を告げる作品となると思われた。しかし、全体を通して感じる音色はどこまでも流麗で、奇をてらうような仕掛けもない。すべてをフラットに受け止める彼らの音楽はただひたすらに優しい。疲弊した現代に、急かされるように生きる日本人のような人種にこそ、彼らの音が必要だ。

Feel Your Feelings Fool!

THE REGRETTES

Feel Your Feelings Fool!

ジャケット、アー写、ライヴ、どこをどう切っても画になる4人組だ。Lydia Night(Vo/Gt)を筆頭にみな2000年前後に生まれながら、モダンなファッションでBuddy Holly、THE TEMPTATIONSといった50~60年代の音楽に傾倒していく。その流れ自体は、正直あまり珍しいことではない。それでも、他との大きな違いは、短尺で勢いを詰め込むロックンロールの作法を倣いながら、旧石器なガレージ・パンクのサウンドを現代にアップデートしていることだ。それらを象徴する「Hey Now」などの楽曲が今の若いリスナーにとって新鮮に響いているのは、少し皮肉にも感じる。だが、そんな皮肉さすら絶対的な若さで呑み込む彼らのこのデビュー・アルバムには、2017年を前に進めるための抗う力が備わっている。

Oczy Mlody

THE FLAMING LIPS

Oczy Mlody

2014年のフジロックが特に新作のないタイミングで過去の名曲オンパレードだったので、もう落ち着いてしまうのか? と思った矢先に新鮮な音像が届いた。トレンドに合わせたわけじゃないだろうが、ドラムもギターもうっすらリップス流のミニマルで、でも十八番のメランコリックでノスタルジックなサイケデリアが多幸感とも違う穏やかな心地に誘う。なんでもタイトルはポーランド語で、意味は"若き人の目"とのこと。Wayne Coyne(Gt/Vo)は"オクシィ・ムロディ"という発音に麻薬的なものを感じてつけたらしいが、まさに悪影響のないドラッギー・サウンド、半覚醒状態で聴くと最高に気持ちいいトータル・アルバムだ。一概にエレクトロと言えない手作り感、切なくてキュートで思わず泣けてくるTrack.4のようなメロディは彼らにしか作れないだろう。

Sick Scenes

LOS CAMPESINOS!

Sick Scenes

前作から約3年、デビュー以来、バンド史上最も長い制作期間を経てリリースされる通算6枚目のアルバムは、昨年開催された欧州サッカー選手権"UEFA EURO 2016"開催中にレコーディングされたという。バンドの地元カーディフがある初出場のウェールズ代表が好成績を残すなか、どこか重々しい雰囲気を纏った楽曲が並ぶ理由は彼らを取り巻く政治情勢のせいかもしれない。それでも、英国産インディー・ロック特有のパンキッシュさが弾けたTrack.2や、ムーディなコーラス・ワークを堪能できるTrack.5など、活気と色気に満ちたバンド・アンサンブルは今なお健在。10年以上バンドを続けているからこそ訪れる心境の変化を結晶化した、ネクスト・ステージへ向けた渾身の1枚。

Snowdonia

SURFER BLOOD

Snowdonia

数々の悲劇を乗り越え、新たなラインナップで辿り着いた新境地からひと言では語りきれないメンバーたちの想いを汲み取りながら耳を傾けたい。フロリダ州ウェストパームビーチ出身の4人組が約2年ぶりにリリースする4作目のアルバム。THE PIXIESフォロワーの面目躍如とも言える轟音ギターを炸裂させながら、ノスタルジックなメロディが単なるフォロワーではないこともアピール。そのノスタルジーはTHE BYRDSを連想させるサイケデリックなフォーク・ロックに結実。その一方で、ガレージ/サイケ調のTrack.5「Six Flags In F Or G」ではギター・オーケストラに挑戦。終盤、もう一度ギターの轟音をガツンと鳴らすTrack.9「Taking Care Of Eddy」もエキゾチックなメロディがバンドのユニークさを物語っている。

After The Party

THE MENZINGERS

After The Party

3年ぶりのリリースとなるこの5作目は、作品を重ねるごとに音楽性を広げてきたTHE MENZINGERSの印象をまた若干変えるかもしれない。2006年結成のペンシルベニア州フィラデルフィアの4人組。THE CLASHを連想させるストリート・パンクの要素も持つポップ・パンクという本質のところは変わらないものの、フォークやオールディーズといったアメリカン・ロックのルーツに回帰するような曲がある一方で、80年代のUKロックを彷彿させる煌きを纏った曲もあるのは、メンバーそれぞれのバックグラウンドをこれまでよりも自由に反映させた結果なのか。ともあれ、それらがしっかりと彼ららしい曲になっているのは、10年のキャリアの中で培った独特なグルーヴと歌声のユニークさによるところが大きいのだろう。

Back From The Edge

James Arthur

Back From The Edge

幼少期に両親の離婚を経験したというJames Arthurが荒んだ10代のエピソードと共にイギリス版"The X Factor"で優勝したのが2012年。1stアルバム『James Arthur』は全英2位を獲得するも、自身のSNS上での発言をきっかけにレーベル契約が切られ、一時はアーティスト活動休止に追い込まれていた。そんな彼が"Back From The Edge=崖っぷちからの帰還"と名づけたアルバムで再び音楽シーンへと戻ってきた。表題曲「Back From The Edge」を始め、決して幸福ではなかったバックボーンを象徴するように、陰りを帯びたダークなメロディが全編に漂うが、過去を悔い、救済を求め、再起を誓う自身のリアルを込めた13曲(国内盤は19曲)は、アーシーなサウンドに彩られて未来へ希望を託す本編のラスト・ソング「Finally」へと向かう。

Bury Me In Philly

Dave Hause

Bury Me In Philly

Fat Wreck Chordsからアルバムをリリースしているパンク・バンド、THE LOVED ONESのフロントマンによる3作目のソロ・アルバム。Bob Dylanから連綿と続いているシンガー・ソングライターの流れの上で、自らのソングライティングを磨き上げることに挑戦という意味では、前2作の延長と言えるが、地元フィラデルフィアのヒーロー THE HOOTERSのEric Bazilianを共同プロデューサーに迎えたことで、これまで以上にBruce Springsteen、John Mellencampを始めとするアメリカン・ロックンロールに接近。"Bo Diddleyビート"を取り入れたり、ピアノやアコーディオンを使ったりしながら多彩なアレンジを加えたことで、いぶし銀と表現されてきた作風が広がりを見せたことは今回の一番の成果だ。

Afi

AFI

Afi

結成25年目にして、オリジナル・アルバム初のセルフ・タイトル作。メロディック・ハードコアからスタートして、ポスト・ハードコア、ゴス、インダストリアル、ポスト・パンク/ニュー・ウェーヴと音楽性の幅を広げていったAFIがここではポスト・パンク/ニュー・ウェーヴに加え、改めてメロディック・ハードコアにアプローチ。前半こそ、THE CUREやJOY DIVISIONの影響とともにダークなロマンチシズムを印象づける耽美系の曲が多めに並んでいるが、後半はMISFITSやTHE OFFSPRINGを連想させるパンキッシュな曲が並んでいる。抜き身のサウンドがバンド自ら"The Blood Album"と呼ぶ原点への回帰を印象づけつつ、ラストを締めくくるブルース・ナンバーがアピールするのは、バンドの新境地だ。

Life Without Sound

CLOUD NOTHINGS

Life Without Sound

Dylan Baldi(Vo/Gt)の宅録プロジェクトからバンドに発展したオハイオ州クリーブランドの4人組。オルタナ・リヴァイヴァルをリードする存在としてコンスタントにアルバムを作り続けている彼らがほぼ3年ぶりにリリースする4作目のアルバム。"高校生のときの自分がドライヴしながら聴いて、いいねって思えるような作品"とDylanは語っているから、作りたい作品はあらかじめはっきりとわかっていたに違いない。その意味では、ここに邪念はこれっぽっちも感じられない。持ち前のメロディに磨きを掛けつつNIRVANA、あるいはWEEZERフォロワーとしての真っ当な姿を追い求め、そのうえで疾走するだけに終始しない表現力を手に入れている。圧巻は終盤の盛り上がり。それまでの疾走感が混沌に変わる。

Blue

COMMUNIONS

Blue

デンマークはコペンハーゲンの新世代による男性4人組バンド COMMUNIONSのデビュー・アルバム『Blue』。"女性ヴォーカルかな?"と勘違いしてしまうほどフロントマン Martin Rehofの独特な甲高い歌声が飛び込んでくる「Come On, I'm Waiting」からスタートする今作。"Blue"というタイトルどおり、ヒリヒリとした若く青い色を彷彿とさせる衝動的なサウンドと、どこかOASISのようなビッグ・メロディをも感じさせる甘くて苦い全11曲を収録。これまで発表してきた作品が序章だとしたら、より研ぎ澄まされた今作でCOMMUNIONSの1章がやっと始まるのかもれない。まだ若く、エネルギー漲る彼らの1stアルバムを聴き逃さないでほしい。2月に来日予定とのことなので、こちらも要チェック。

Goodbye Terrible Youth

AMERICAN WRESTLERS

Goodbye Terrible Youth

米ミズーリに住むスコットランド人アーティスト、Gary McClure(Gt/Vo)によるソロ・プロジェクトから4ピースのバンド編成になった、AMERICAN WRESTLERSの2ndアルバム。バンド編成にはなったものの、セルフ・タイトルの前作でのローファイ感や、甘美な小宇宙たるベッドルーム・ミュージック感も程良く残していて、ドリーミーなギター・サウンドに気持ちよく酔う。まるでBUILT TO SPILLの奏でる白昼夢のような柔らかな霞を持った音像と、エコーがかかったヴォーカルの響きは、懐かしい記憶のフィルムを見ている感覚。埋もれていた幸せなときの断片をすっと引き出してくれそうな、郷愁や切なさを誘う音とメロディだ。素朴なハンドメイドの手触りは、今やいびつにも聞こえるかもしれないが、それがバンドのフックにもなっており、ポップさにも繋がっている。

The Golden Age Of Bullshit

PARTYBABY

The Golden Age Of Bullshit

PORTUGAL. THE MANのギタリストだったNoah Gershと、THIRTY SECONDS TO MARSのエンジニアをしていたJamie Schefmanを中心に、カリフォルニアで結成したPARTYBABY。それぞれに豊富なキャリアを持っているが、ガレージに集まって大音量でギターをかき鳴らすような衝動感で、爆発している。その勢いを心に、ハジけた曲からメロウな曲まで、90年代オルタナのエッセンスや、THE SMASHING PUMPKINSの持つキラキラとしたメランコリーやサイケ感を織り交ぜながら、3分間の曲を作り上げている。キャッチーで、グッド・メロディで、コンパクトななかに巧みなアレンジやフレンドリーな仕掛けが施されたサウンドの中毒性は、ポップ偏差値の高さがあればこそのものだろう。いつの間にか気になって、いつの間にか好きになっている。さりげなくもズルいテクニックを潜ませているバンドだ。

Conrad

THE LEGAL MATTERS

Conrad

2013年に結成されたデトロイト出身3ピース・バンド THE LEGAL MATTERSの新作。いくつかのメディアで"パワー・ポップ・バンド"と紹介されているが、チャーミングなロボットが主役のアニメーションMVも公開されているTrack.1「Anything」や、続く「I'm Sorry Love」を聴く限り、3声のコーラス・ワークを存分に活かしたアコースティック・バンドだ。もしかして髭面でかっぷくの良いメンバー3人のルックスから想像で言われているのでは!? と思ったほど。曲を聴き進めるうちに持った印象は、やはりコーラスの美しさと古き良きマージー・ビート的なアプローチのカッコ良さ。特にTrack.4「Short Term Memory」で聴ける歪んだギターには心躍る。リラックスして聴ける良作。

Night People

YOU ME AT SIX

Night People

UKを代表するライヴ・バンド YOU ME AT SIXの新作。ここ数年は、すっかりパンク色が薄れて成熟したロック・サウンドになった印象だが、実はまだ20代半ばという若さに驚きだ。もちろんパンク色が薄れたと言っても決してライトな音になったわけではなく、むしろ重厚感は増して、タフさと繊細であたたかいハートを兼ね備えた大人のロックという印象。ダンス・ミュージック仕立てにしたり、オーケストレーションで飾り立てたりせずに、一貫して"ロック"であることに軸を置いた、シンプルでありながらも胸を打つメロディや、UKらしいギター・サウンドを引き立てるアレンジも好感度が高い。UKロック好きだけでなく、"すっかりUKロック離れしちゃって邦ロックばかり聴いてる"っていう人にこそ聴いてほしい作品。