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DISC REVIEW

Overseas

Sleeptalk

SLEEPTALK

Sleeptalk

"Space Rock"を掲げるロサンゼルスの5人組がCrystal Lakeらを擁するレーベルからデビュー。もともと、LIKE GIANTSというポップ・パンク・バンドをやっていたメンバーたちが自分たちの成長を楽曲にするため新たに結成したそうだ。ANGELS & AIRWAVES、THE 1975、Drake、THE WEEKNDをインスピレーションに掲げ、シンセ・サウンドやダンサブルなビートを導入。1stアルバムということで、アンビエント且つ壮大なスケールを意識したものから、R&B/ヒップホップを含む現在のメインストリームのポップ・サウンドを意識したものまで、様々な可能性を試しているが、シンガロングしながら踊れるTrack.8~10の流れは、これからこのバンドの大きな武器になっていきそうだ。

For Crying Out Loud

KASABIAN

For Crying Out Loud

ギター・ロックの復権どころか、70年代から現在に至るまでのあらゆるビート、グルーヴをロック・バンドの手法とガッツで昇華した作品。Ed Sheeranのモンスター・ヒット・アルバム『÷』の全英1位を9週でストップさせた理由もそれだろう。初期作品を想起させるポスト・パンク的なビートからファンクネス溢れるサビに解放される「Ill Ray (The King)」での幕開けから、BLONDIEとも符合するセクシーで美しいメロの「You're In Love With A Psycho」、ROXY MUSICやDavid BowieのグラマラスなR&Rを底に感じる「Good Fight」や「Comeback Kid」、ザ・UK的なメロディを持つ「All Through The Night」。淡く薄いトラック全盛だが、グランジ×ダンスの肉体性と完成が求められている証左が本作の高評価に顕在した感がある。

Weather Diaries

RIDE

Weather Diaries

90年代シューゲイザー・シーンの代表格であるRIDEの21年ぶりとなる新作は、その歳月分に見合った興奮を私たちに与えてくれるものであった。先に公開されたTrack.2とTrack.4では往年の風通しのいいクリア・トーンとウォール・オブ・サウンドを堪能できたが、アルバムでは時代の流れと向き合ったトラックも多数収録されている。そんな今作を現代のフォーマットに着地させている大きな要因は、自身もDJとして活躍するErol Alkanをプロデューサーに起用していることだ。ヴォーカルのカットアップが印象的なTrack.3などからは、その手腕を存分に感じられるはず。サウンド、メンバーの関係性、すべてが次なるタームに向かおうとしているバンドの、新たな円熟期を素直に喜びたい。

Kicking Up The Dust

CAST

Kicking Up The Dust

活動を休止しているイギリス・リヴァプールの伝説的バンド、THE LA'Sでヴォーカル・ベースを担当していたJohn Powerが率いるバンドの5年ぶりとなるスタジオ・アルバム。今作はクラウドファンディング・サイト"PledgeMusic"でキャンペーンを行い制作されている。ベケベケしたチープなベースとドラムの音から始まるタイトル曲は、ディレイのかかったギターが加わりドラマチックな展開を見せるサビを持った佳曲。オリエンタルでジャリジャリしたギター・リフが印象的なTrack.3やメランコリックなTrack.5、しみじみと感動が伝わってくるバラードTrack.9など、独特の憂いのある歌声とそれにマッチしたサウンドは最前線ではないものの、THE KINKSのRay Daviesにも似た誇り高きUKロックの系譜を感じさせる。

I'm Not Your Man

Marika Hackman

I'm Not Your Man

UKのシンガー・ソングライター Marika Hackmanが、新レーベルに移籍して初めてリリースする2ndアルバム。前作のフォーキーでメロウな方向性から、よりロックに重心を落とした仕上がりだ。ALT-Jなどを手掛けるCharlie Andrewをプロデューサーに起用し、4人組ガールズ・バンドのTHE BIG MOONと共にレコーディング。こういった布陣の影響もあるのだろう。荒々しくダウナー、且つストロングなガールズ・ロックが、全編にわたって轟いている。そのなかで、甘さが滲み出たような歌声や、繊細で優し気なコーラス・ワークがキラキラと顔を覗かせており、結果的に彼女が新しく作り上げた意欲的な面も、これまで内に秘めてきた面も堪能できる1枚になっている。

Something Else

THE CRANBERRIES

Something Else

全13曲中、新曲は3曲。それを物足りないというのはたやすいが、室内管弦楽団との共演が全曲、新曲だったら、それはそれで物議を醸しただろう。室内管弦楽団との共演という結成28年目の挑戦をファンと分かち合ううえで、「Dreams」、「Zombie」他のヒット曲の数々を、アコースティック・バージョンでセルフ・カバーするというやり方はとりあえずベストだったと思う。そして、その挑戦は心に残る曲をいくつも作ってきたという事実とともに透明感溢れる......などというひと言だけでは表現しきれない、冷徹さを湛えた紅一点シンガー、Dolores O'Riordanの歌声の魅力を改めてアピールする絶好の機会となった。昔からのファンならジャケ写にニヤリとなるだろう。その意味を想像しながら、そんな遊び心も楽しみたい。

Figure

VÖK

Figure

"アイスランド"というジャンルを愛しているリスナーにとって、この4人組に使われるドリーム・ポップというカテゴライズは、まさに便宜上のものでしかないと思う。それよりもOF MONSTERS AND MENといった人気バンドを輩出したコンテストの出身と言った方が、結成から4年を経てついにリリースするこのデビュー・アルバムに対する信頼はずっと増すに違いない。バンド名は氷に空いた穴を意味するという。アンビエントなシンセと、こだわりが感じられるビートを軸にしながら、メランコリックなものからバウンシーなものまで、それぞれに趣向を凝らした曲の根底にはソウル・ミュージックの影響が窺える。オートチューンも使い、絶妙な揺れを表現した女性ヴォーカルがちょっとBjörkを思わせるところも。

Different Days

THE CHARLATANS

Different Days

2013年には結成以来のメンバーだったJon Brookes(Dr)を脳腫瘍で失いながらも、前作から2年4ヶ月でニュー・アルバム『Different Days』をリリース。その歩みを止めずに進み続けているTHE CHARLATANS。今作は、そんな彼らに愛とリスペクトを表するように、たくさんのゲストが集結した1枚となった。Johnny Marr、Paul Weller、Peter Salisbury(ex-THE VERVE)、Stephen Morris(NEW ORDER)など......UKロック・フェスのようなラインナップである。そして、収録されている13曲はというと、昔からのファンの期待にも応えてくれる彼ららしいメロディやビート感を生かしながらも、決して枯れてはいない鮮やかさと躍動感を誇っている。

Somewhere Between

ALVAREZ KINGS

Somewhere Between

英国はサウス・ヨークシャー出身の4人組 ALVAREZ KINGS。過去には"Vans Warped Tour 2015"への参加やPVRISらとツアーを行うなど、バンド結成からの5年間はみっちりとライヴ経験を重ねてきた。そんな彼らの待ちに待った1stアルバムは、PARAMOREの新作にも参加するCarlos De La Garzaをプロデューサーに迎え、アメリカはカリフォルニア州にてレコーディングされた。サウンドはU2やKINGS OF LEONといったスケールの大きいスタジアム・ロックと、トロピカルなシンセが調和した最近のCOLDPLAYなどを想起させる。地道な努力と理解ある人を追い風に、アンセム・バンドとしてこれからが期待できる彼らの音楽、早くフェスなどで堪能してみたい。

Spitting Image

THE STRYPES

Spitting Image

50'sブルーズの香りを放つバリ渋・ティーンだったTHE STRYPESも、もう20歳。もともと、ティーンエイジャーらしからぬサウンドで世界を驚愕させた彼らだが、いろいろと吸収しやすい年頃の2年間というのはバンドを大きく成長させるには十分な時間だ。3枚目のアルバムとなる今作では、持ち味でもあるブルージーなアプローチはもちろん、彼らと親交の深いPaul Wellerの影響も感じさせるニュー・ウェーヴの雰囲気も盛り込まれた、ある意味、時代がワンステップ進んだ感じの作品となった。さらに、これまでのどこか危うさを感じさせるような背伸びした表現と比べると、瑞々しく輝くメロディやコーラスに等身大の若々しさが感じられて、好印象。ライヴ・バンドとしても定評のある彼らのフジロックでの来日公演も楽しみ。

Humanz

GORILLAZ

Humanz

いきなり6年ぶりの新曲「Hallelujah Money」を公開、しかもトランプ政権を批判した内容をトランプ・タワーで撮影するという、GORILLAZらしい一撃でこのニュー・アルバムの幕は開いた。そしてVRを導入し、360度ビューを実現した「Saturnz Barz」と、ヴァーチャル・バンドである彼らの強みを最高に打ち出してシーンに舞い戻った感もある。そしてメディア・アート的な試み以上に、昨今のアブストラクトなヒップホップ・シーンや、あらゆる人種を呑み込んだ未来のゴスペルのような「We Got The Power」の地に足のついた音楽としての強さが素晴らしい。個々のピースを包摂するようなサウンドトラック的な厚みやスケール感で表現していることに狭義のジャンルを超える共振も期待できる。今年のフジロックは伝説になること必至だ。

Shake The Shudder

!!!

Shake The Shudder

どんなジャンルと交差しても、どこか沸騰するようなエモーションとエッジ、そしてちょっとイカれた楽しさが溢れる、!!!。彼らが"恐れを振り払え"と題したニュー・アルバムは、従来のディスコ・パンク・バンドのスタンスはそのままに、ビートやサウンドメイキングでグッとハウスに寄った印象だ。MVも公開されているTrack.1のエレクトロニックでジャングリーなニュアンスは現行のR&Bにも通じるセンスだし、Track.5やTrack.7は、ミニマル・ファンク的で、PRINCEがポスト・パンクを演奏しているような隙間の多いスリリングで何が起こるかわからない、いい緊張感も孕んでいる。そして今夏の"SONICMANIA"で久々の来日となるステージでも盛り上がりそうなTrack.3は、どんなライヴ・アレンジになるのかも注視したいところ。

Pollinator

BLONDIE

Pollinator

歳のことは言うまいと思いつつ、このヴォーカル、このメロディやサウンド・センスの軸にあるDebbie Harry(Vo)が71歳とはにわかに信じがたい。そして同時に元祖NYパンクの女王の根本は何ら変わらないということも証明している。Dave Sitek(TV ON THE RADIO)参加のTrack.4のエレクトロ・ディスコも、クールでありつつDebbieのメロディの素晴らしさで頭ひとつ抜けた出来だし、BLOOD ORANGEとの共作曲であるTrack.2は、かの名曲「Heart Of Glass」を今の時代の質感にアップデートしたような惚れ惚れする仕上がり。他にもJohnny Marr、Sia、Nick Valensi(THE STROKES)ら、豪華な面々が参加しているが、同じ価値観を持ったメンバーと思えるほど自然。飽くまで現代の傑作だ。

Drive North

SWMRS

Drive North

Billie Joe Armstrong(GREEN DAY)の息子 Joseph Armstrongがドラムを務めることでも知られるカリフォルニア、オークランド出身のパンク・ロック・バンド。といっても、単なるパンク・ロックなんて言葉だけでは表現しきれない魅力溢れる彼ら。ポップだけど気だるさたっぷりのサウンドとCole Becker(Vo/Gt)の叫びは、カリフォルニアのポップ×サーフ×パンクのイメージをアップデートしてくれた。エッジーなギター・サウンド、鳴り止まないドラムとベースのビート、そして"ポスト思春期"とでも言える主張たっぷりのリリック、どれも都会と田舎の良さを知る彼らだからこそ創り出せるものだろう。日常に窮屈さを感じている人におすすめしたいアルバム。

Love In The 4th Dimension

THE BIG MOON

Love In The 4th Dimension

ロンドンを拠点に活動する4人組ガールズ・ロック・バンド、THE BIG MOON。彼女たちが、CRYSTAL CASTLESやKAISER CHIEFSも所属するUK老舗レーベル"Fiction"と契約し、デビュー・アルバムをリリース。PIXIESを彷彿とさせる穏やかさとノイジーさのコントラスト、そしてJuliette(Vo)の美しく哀愁漂うハーモニーと軋むギター・サウンドのミックスが、なんともクセになる。そして、とにかく曲の展開が読めない。Track.3「Cupid」のようにノスタルジックで穏やかな曲かと思えば、サビにかけて静寂を破るダイナミックな展開にいい意味で何度も裏切られる。飾り立てないサウンドに彼女たちの底知れぬポテンシャルを感じる1枚だ。

Same Sun Same Moon

LITTLE HURRICANE

Same Sun Same Moon

スパニッシュなものからハードコアまで、アメリカを代表するリゾート地 サンディエゴ産の音楽は多様性を極める。そんな土地から最小人数で最大のロックンロールを爆発させているのが男女デュオ LITTLE HURRICANEだ。しゃがれたヴォーカルとファズの効いたギターを操るAnthony"Tone"Catalano、フォトジェニックな容姿とラウドなドラミングが最高にキュートなCeleste"CC"Spinaの組み合わせはヴィジュアルからして強烈なインパクトを残すはず。60年代のアメリカン・ブルースの現代版と比喩されそうな今作は、ハードとソフトなサウンドを使い分けることで、曲それぞれにドラマチックな要素を付加させている。巷ではTHE WHITE STRIPESの再来と言われてるらしいが、そんなクリシェ、このアルバムで塗り潰してしまえばいい。

The Last Bandoleros EP

THE LAST BANDOLEROS

The Last Bandoleros EP

メキシコとの国境に面したアメリカはテキサス州の4人組バンドのデビューEP。その堂々としたテクスメクスはまさに広大な土地からもたらされたアメリカンとメキシカンのいいとこ取り。ブルース、カントリー、ロカビリーと元は黒人文化が発祥となる音楽様式からの影響は、オープニング・ナンバーである「Maria」からしっかりと確認できる。一見単調に思われる流れに喜怒哀楽を与えているのは、ハーモニカやバンドネオンといったトライバルな楽器群、そしてそれらに豊かさをもたらす抜群のコーラス・ワークも聴きどころのひとつだ。そんな彼らを最も評価しているのがStingで、現在敢行中のワールド・ツアーにも帯同させるほど。そして6月に開催される武道館公演にてStingとともに来日も決定。そのスキルフルな演奏とダーティな佇まいに一目惚れすること間違いなし。

In∙ter A∙li∙a

AT THE DRIVE IN

In∙ter A∙li∙a

前回のリユニオンは不完全燃焼のまま終わってしまったが、今回、彼らが本気であることは、17年ぶりとなるこの新作からもしっかりと感じられる。メタルの影響が混じらない純度100パーセントのポスト・ハードコア・サウンド。よくもまぁ、ここまでストレートに奏でられたなとある意味、感心させられる。Jim Ward(Gt)の脱退は残念だが、Omar Rodriguez-Lopez(Gt)が奏でるフリーキーなフレーズと新加入のKeeley Davis(Gt)がかき鳴らすダイナミックなリフのコンビネーションは、Cedric Bixler-Zavala(Vo)の振り切ったヴォーカルと共に大きな聴きどころ。そして、ダブっぽい「Ghost Tape No.9」とシンセを差し音に使ったファンク・ナンバーの「Hostage Stamps」という最後の2曲がこの新作を未来に繋げる。

Death Peak

CLARK

Death Peak

近年はドラマの劇伴や舞台音楽など、多方面で活躍するCLARKが自身の名をタイトルに冠した前作から3年。"死の山頂"と名づけられた今作は、彼がここ数年抱えていたテクノ・ミュージックにおける狂気が堰を切ったように溢れ出した力作と言えるだろう。先行公開されたTrack.3「Peak Magnetic」からも滲み出ていた、様々なリズムを取り込むカオティックな音像は、各楽曲にてそれぞれ拡張されており、アンビエント、レイヴ、IDMといった彼自身のバックグラウンドに対する経年変化がサウンドにも反映されている。今でこそARCAのような前衛的で、リズムすら遠くに置いてしまうビートがベーシックになりつつあるが、その礎の一角を築いたのは間違いなくCLARKである。今作を通して、改めてその事実を電子音楽史にしっかりと書き加えておきたい。

Let The Dancers Inherit The Party

BRITISH SEA POWER

Let The Dancers Inherit The Party

UKインディー・シーンで絶大な人気を誇り、"FUJI ROCK FESTIVAL"や"Hostess Club Weekender"への出演で日本でもお馴染みの6人組男女混合ロック・バンド、BRITISH SEA POWERの4年ぶりとなるフル・アルバム。今回はこれまで作品を発表してきたレーベル Rough Tradeを離れて自主レーベル Golden Chariotからのリリースとなり、レコーディング費用をクラウドファンディングで募って制作された12曲を収録している。情緒溢れる静かな歌い出しから徐々に盛り上がる「What You're Doing」に続くキラキラな楽曲「The Voice Of Ivy Lee」への流れが素晴らしく、思わずグッと身を乗り出してしまうほど気分を高揚させるあたりは、百戦錬磨のライヴ・バンドならでは。アルバムを携えての再来日に期待したくなる作品。