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DISC REVIEW

Overseas

Not Music

STEREOLAB

Not Music

STEREOLABは91年MCCARTHYというバンドで活動していたTim GaneとLætitia Sadierを中心にロンドンで結成された6人組のポストロック・バンド。02年にはメンバーのMary Hansen が事故で他界。悲劇を乗り越えて活動を続けていたが、09年にホームページ上で活動休止を発表。それから待望の復活を果たし約2 年振りとなる11作目のニュー・アルバム『Not Music』を発表。今作はまさに音楽+趣味+実験=STEREOLABという彼らからイメージされるバンド・イメージ通りのアルバムとなっている。ポップなリズムと心地いいテンポを味わえば、きっとSTEREOLAB(音響研究室)から抜け出せなくなるはず。

Man Meat

SWAHILI BLONDE

Man Meat

元WEAVEのドラマーであるNicole Turleyが中心となって始まったこのプロジェクト。今作の話題はなんと言ってもRED HOT CHILLI PEPPERSを脱退したばかりのギタリストのJohn Fruscianteが全面的に参加している事だろう。ヒリヒリとするようなノーウェイヴ/ニューウェーブ・サウンドが駆け巡る今作ではJohnのファンキーで切れ味のあるギターが炸裂している。もちろんNicole Turleyのエキセントリックで幻想的なヴォーカルも聴き所だが、今のブルックリン勢にはない攻撃的で異国情緒漂う独特なサイケ感がとても新鮮に響く。変則的なグルーヴも新たな体験を与えてくれる。豪華ゲスト陣と作り上げたフューチャー・サイケデリック・アルバムの完成だ。

Margins

PAUL SMITH

Margins

イギリスの老舗レーベルWARPからの初のギター・ロック・バンドとして注目を集めたMAXIMO PARK。そのフロントマンであるPAUL SMITHの初のソロ作品。MAXIMO PARKとしては昨年にサード・アルバムを発表したばかりだが、その時にあったエネルギッシュなポスト・パンク・サウンドとは違い今作は、PAUL SMITHの作るメロディに焦点が当てられたシンプルでとてもしなやかなレコードだ。自主レーベルそして交流の深いアーティストと制作されたという今作はとてもパーソナルな作品で、バンドでのコミカルな側面とは違う彼の新たな魅力が浮かび上がってくる。本人も今までで一番と認めるように、今作にはとても美しく胸を突くポップな楽曲が詰まっている。

Marnie Stern

MARNIE STERN

Marnie Stern

DEERHOOOFやXIU XIUなど、ひとクセもふたクセもある手練ミュージシャンを数多く輩出するレーベル“Kill Rock Stars”から、またしても強烈な作品が登場!プロデューサーも務めたZach Hill(Hella)の人間業とは思えない怒涛のドラミングに真っ向から応戦するのは、USインディーロック界の才女Marnie Stern。2年ぶりのニューアルバムになる今作でも、持ち前の超高速&超絶テクなギタープレイはもちろん健在。その圧巻のテンションで攻めるニュースタイルなロックンロールナンバーとともに、「Female Guiter Players Are The New」などで見られるキャッチーなメロディが今回はとても印象的。アバンギャルドなサウンド・アプローチとポップセンスの絶妙なブレンド具合に、彼女の確実な進化ぶりを見た。

Cinema

THE CAT EMPIRE

Cinema

なんて心地いいグルーヴ!勝手に踊りだしちゃう、このノリ。ラテン、ジャズ、ソウル、ヒップホップ……あらゆる音楽を飲み込んで自分たちのものにしている。オーストラリア・メルボルン出身のTHE CAT EMPIREの新作が到着した。リズムはラテン的に、そこにホーンが加わってスカっぽくもあったり、けれどもメロディがキャッチーで聴きやすい。人懐っこいヴォーカルも魅力的。そして彼らは11月に来日予定とのこと。今後、フェスなどでも引っ張りだこになりそうな予感(2006年のSUMMER SONIC出演時にはベストアクトの呼び声も高かったとか)。地元オーストラリアでは国民的人気アーティストのようだが、その波ももうすぐここ日本に到達するだろう。要注目。

Bubblegum

CLINIC

Bubblegum

RADIOHEADの来日公演のオープニング・アクトを務めたことで日本でも認知度の高いCLINIC。ARCADE FIREがファンと公言するなどアーティストからの評価も高い彼らだが、それから10年近く経った今、筆者を含め彼らへの関心が薄らいでしまったこともまた事実。しかし6作目の今作は彼らの持つフリーキーでサイケデリックな魅力が今の時代にマッチしたとても魅力的な作品だ。切れ味の鋭いリフで押し切るサウンドから弦楽器を全面にフィーチャーし、今のUSインディと共鳴するようなドリーミーな音色へ。不安定なアンサンブルに脱力系ヴォーカルと彼らの放つ独特な高揚感も健在。今のUSインディどっぷりという人に是非手に取ってもらいたい作品だ。

The Age Of Adz

Sufjan Stevens

The Age Of Adz

アメリカ合衆国の全50州をテーマに50枚のアルバムを作るぞ宣言をしたりするユーモア精神、最高ですよね!そんな遊び心とともに、他の誰にも真似できない音世界を表現する才人の、“歌もの”アルバムとしては5年ぶりの新作。ギターのアルペジオと鍵盤がリフレインしたかと思えばノイジーに急転、打ち込みのビートの上でやわらかなメロディが響き、交響楽風のサウンドが勇ましくアンサンブル、etc……。この多種多様な音楽のスタイルをきっちりジャンル分け出来るという人がいたら、ぜひともお目にかかってみたいたい(笑)。その中でも、波間を漂う泡の粒のごとく響く、「Bad Communication」の浮遊感たっぷりな音色は個人的には特にたまらない!この夢見心地なムードにいつまでも酔っていたい……。

Generation Hexed

DRUMS OF DEATH

Generation Hexed

“DRUMS”は“DRUMS”でも、あのハッピーなサウンドで世間を席巻している某バンドとは大違いである。エレクトロ、ハウス、パンクなど、刺激的で挑発的な音が脳内を駆け巡る。PLAYボタンを押した瞬間からじわりと侵食する物々しい空気。唐突に切り替わるように挿入される声の不協和音。ひどく前衛的な映画を観ているかのような印象を受ける。アドレナリンが垂れ流されるかのように飛び交う音は、一曲ごとに目まぐるしくその表情を変容させる。音楽性が似ているわけではないが、雑多で詰め込まれたサウンドは、Klaus Nomiのでたらめにクールな音楽を彷彿とさせる。ゾワッとした鳥肌の感覚は同じだ。オペラやクラシックを中心大胆に彩り、融合させたNomiに対し、Colin Baileyは多種多様な電子音、音としての声をでたらめな分量で衝突させている。それは、ドラッグにも匹敵する危険性を孕んでいる。

The Forest And The Trees

THE FOREST & THE TREES

The Forest And The Trees

スウェーデンからまたポップで美しいメロディを持ったユニットが登場。THE CARDIGANSを彷彿させるLinnea Edinのキュートで澄んだ歌声を中心にシンプルなサウンド・プロダクションで作られた今作はとてもポップでキャッチー。LUCKY SOULを始めとする近年盛り上がったガールズ・ポップの流れでこのアルバムを聴いても何の遜色もないだろう。しかし、森そして木々にインスピレーションを受けたと語るアルバム全体から感じられるオーガニックで穏やかな質感と雰囲気は夫婦であるこのユニットならではのもの。特に後半にかけての流れはこれからの季節にピッタリ。すっと心に染み込むメロディが心地良い素敵なアルバムだ。

The Shallow End

SEVEN SATURDAYS

The Shallow End

本作はこれまで発表した2枚のEPを組み合わせ、リミックスや未発表曲を加え編集した日本独自企画盤である。プロデューサーはSt.Vincentのデビュー作を手掛けたDaniel Farris。さらにレコーディング・メンバーにはMorgan Grace Kibby(M83)、Wesley Precour(t Jenny Lewis)、Mike Garson(David Bowieの数々のアルバムに銀盤で参加)など、錚々たるメンバーが名を連ねる。あらゆる要素を視覚的な音像に構築した驚くべきセンスには、やはり豪華なバックの影響も大きいだろう。その雄大で荘厳な音響空間は、ALBUM LEAFの叙情性、SIGUR ROSの抱擁力、M83の轟音美、そしてBrian Eno の優美なトーンまで漂うもの。瞬時に心を染め上げる音のマジックに彩られた本作で沸き起こるのは、希望?愛?絶対的な答えのないインストゥルメンタルは、あなたの解釈をもって燦然と輝くはずだ。

A-Z Vol. 2

ASH

A-Z Vol. 2

今年のフジロックで久々にASHのパフォーマンスを見たが、良い意味で昔と変わっていなかった。変わっていない部分とは、ともすれば無邪気なほどの、音楽に対するピュアな姿勢だ。そのスタンスがブレないから、いつでも瑞々しく、あの胸のすく繊細な旋律を奏で続けることができる。そんな彼らだからこそ、2週間に1度、デジタル配信&アナログで26曲を1 年間でシングル・リリースするという前代未聞な企画も有言実行できたのだろう。そしていよいよ、その『A-Z』シリーズの完結編、Vol.2 がリリースされる。Vol.1同様、全曲それぞれのスタイルでバラエティに富んだ内容はもちろん、これでもかってくらいASH節満載!曲作りからレコーディングにツアーと同時進行で制作されたというこのシリーズだが、その野心と勇気に心から拍手を送りたい。

Fox Trot Mannerisms

PURSUIT GROOVES

Fox Trot Mannerisms

ルックリンに拠点を置く女性アーティスト Vanese SmithによるユニットPURSUIT GROOVESの音源が日本初上陸。海外でのリリースはあの超人気ダブステッパーPINCHが主宰するレーベルTECTONICからということで、この作品もダブステップのイメージを持って聴くと……ちょっとビックリするかも。断続的に打ち込まれるブレイクビートはダブステップとは一線を画すスタイルだが、そのハネッぷりはダブステップ・フリークも強烈にステップを踏みたくなること確実。さらに面白いのは、そのビートを包む多彩な音色。優雅な響きの女性ボーカル、パーカッション、ときに空間的に広がり、かと思えば可愛らしい響きで弾ける電子音……。あえて言うならテクノ・ダブとでも表現できそうな、新種のエレクトロニック・ダンス・ミュージックだ。

Lucky Shiner

GOLD PANDA

Lucky Shiner

4月に過去の音源を集めた日本オリジナル編集のアルバムをリリースし、3月には来日を果たしSIMIAN MOBILE DISCOのオープニング・アクトを務め、本誌のパーティにも出演してくれた新世代のトラック・メイカーGOLD PANDAの1stアルバム。全て新曲で構成された本作はオリエンタルなボイス・ループが印象的なリード・トラック「You」で始まり、ダブ・ステップ、ミニマル・テクノなどあらゆる音楽の要素を詰め込みそして削ぎ落としたとても繊細でメランコリックなアルバムだ。ダンス・フロアに映える曲ももちろんあるが、iPod に詰め込んで夜の街を歩きながら聴くことがこのアルバムには似合う気がする。感動的で美しい都会のサウンドトラック。

Swanlights

ANTONY AND THE JOHNSONS

Swanlights

ANTONY AND THE JOHNSONSの世界は、あまりにも独自に突き抜けており、安易な気持ちでは触れられない気がする。そう感じたのは彼が敬愛する日本舞踏界の至宝、大野一雄をジャケットに配した前作『THE CRYING LIGHT』でのこと。壮大なサウンド・スケープに唯一無二の歌声は、強固なまでの美意識を醸し、まるでSIGUR ROSなど幼く感じてしまうほどの張りつめた緊張感があった。その孤高の世界観がビルボードのヨーロッパ・チャートで1位を獲得したのは当然な結果か。そして、待望の新作である。前作と比較するとラフな質感を活かし、さまざまなアプローチでこれまで以上に大衆的間口の開かれた印象を受けるが、美意識の芯は揺るがない。歌姫BJORKとのデュエット曲は早くも話題になっているが、個人的にはラスト「Christina's Farm」の壮美な流れに感動した。

Halcyon Digest

DEERHUNTER

Halcyon Digest

08年リリースの前作『Microcastle』は各メディアで高い評価を集め、一躍USインディ・シーンの中心バンドの一つに上り詰めたDEERHUNTER。今思うと昨今のインディ・サイケポップ・ムーブメントの流れを作ったのはNO AGEとこのバンドである事は間違いないだろう。共同プロデューサーにANIMAL COLLECTIVEを手掛けたBen Allenを迎えた4作目は、水の中に吸い込まれるようなサイケデリアとATLAS SOUNDの流れを汲んだシンプルでポップなメロディ溢れる素晴らしい作品だ。緻密なサウンド・プロダクションはもちろん、圧倒的な美しさを放つ本作はサイケ・ポップというカテゴリーに収めるにはとても無理がある決定的な一枚。

How To Destroy Angels

HOW TO DESTROY ANGELS

How To Destroy Angels

この男の動向はまったく読めない。昨年、NINの活動休止を宣言したTrent Reznorが新バンド、HOW TO DESTROY ANGELSを結成した。メンバーは愛妻Mariqueen MaandigにNIN関連でお馴染みのプロデューサーAtticus Ross。このプロジェクトの意図するところはいまひとつ謎だが、気心知れた関係での課外活動からあらゆる面でのリセットを図ったのだろうか?本作は今年6月に無料配信されたデビューEPの日本デビュー盤である。サウンドはミニマリステックなエレクトロからゴシック・インダストリアルな不穏さを浮かべ、艶めかしいMariqueenの歌声が濃密に絡まり合う世界観。本気度も伝わる緊迫感も満ち、これを機に本格的な活動に突入するかと思いきや、最近のTrentはファンである塚本晋也とDavid Fincherの映画にNIN名義で楽曲提供をしている。ムムム......まったく読めない男だ。

Wreckorder

Fran Healy

Wreckorder

英国の国民的ロック・バンドTRAVISのヴォーカリストFran Healyの初のソロ作品。TRAVISの4作目『12 Memories』にあったラフで生々しいサウンドを彷彿とさせる所もあれば、ストリングスを多用したシンプルで美しい曲もあり、全体的には彼の音楽に向ける情熱が反映された穏やかで心地の良い作品だ。Fran Healyの歌声を中心としたダイレクトなサウンドもとても躍動感に溢れている。そしてまた曲も素晴らしい。現在拠点となっているベルリンでレコーディングした事も大きいのだろう。リラックスしていながらTRAVISとはまた違う広がりある力強いヴォーカルを聴かせてくれる。Paul McCartneyもベースで参加している他、ゲスト陣も豪華。

Road Eyes

AMUSEMENT PARKS ON FIRE

Road Eyes

若手シューゲイザーの旗手AMUSEMENT PARKS ON FIREの約4年ぶりとなる3rdアルバム『Road Eyes』が完成した。しかし究極のサウンドを目指すあまりミックスに時間がかかり14人ものミキサーを試してみたが、最終的にはバンドのメンバーが担当し、やっとバンドが求める最高のサウンドに辿り着いた。完成に数年を費やした当アルバムはTrack.1の「Road Eyes」から始まる何層にも重ねられたポップで甘くて美しい旋律と深くて儚いギターサウンドに心を奪われてしまった。日本盤にはボーナス・トラック2 曲収録。それにしてもMichael Feerick が最初に影響受けたバンドがプログレだったとは驚きだ。

Penny Sparkle

BLONDE REDHEAD

Penny Sparkle

日本人女性Kazuとイタリア出身の双子SimoneとAmedeoよるベースレス・バンドBLONDE REDHEADの、3年ぶりとなる8thアルバム。VAMPIRE WEEKEND、ANIMAL COLLECTIVE 、DIRTY PROJECTORS、MGMTなどの登場で沸くニューヨーク・インディー・シーンで活躍し、地元ではインディーズにも関わらず10万枚のセールスを上げる実力を誇るベテラン・バンドである彼ら。この出来栄え、さすがです。本作は、色見を抑えたシンプルな音が作る閉鎖された空間が舞台となっている。それは、外界との一切の接触が禁止された現実味のない世界、何もない空洞に、ノイズを流し込んだような、息苦しいほどに重厚な世界。そこに滲み浮かびあがるように存在するヴォーカル。空間に反響するノイズ、それと共鳴するヴォーカルが共存するこの高貴な浮遊感は、酔わせ、夢見心地にさせる甘美な魅力で私たちを誘惑してくる。

Things Are What They Used To Be

ZOOT WOMAN

Things Are What They Used To Be

ここ最近では、「memory」が某有名恋愛シュミレーション・ゲームの動画にオマージュされ、話題を呼んだZOOT WOMAN。その繊細で抒情的なメロディと歌詞が、あまりにも切な過ぎるのだ。流麗なサウンドの中にも、ポップ・センス爆発な80年代レトロな電子音が連なる。アップ・テンポな勢いがパンチとなって美しく淡い世界観に刺激を与え、ダンス・ロックへと昇華していく。1st、2ndの流れをきちんと継承しながらも音の作りに幅が広がり、巷に広がるエレクトロ・ポップ・バンドとは一線を画している。さらにはNEW ORDERや、なぜかバックの音にオペラなどをごたまぜにしたKLAUS NOMIを一瞬彷彿とさせるものを感じにやりとしてしまう。非常に多彩な音が組み合わされたアダルトな音が溢れているのだ。