DISC REVIEW
Overseas
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WAVVES
King Of The Beach
極私的な解釈でスイマセン!このアルバムを聴いてるとバンド組みたくなるんです。テクもギミックもいらねぇよ!とにかく勢いで突っ走ってしまえ!ってヤンチャなノリ。でも根幹はピュアな音楽愛に満ちている感じ。わかる?古くはRAMONESとか、最近ではVIVIAN GIRLSとか、日本ではBLUE HEARTSとか。ちょっとでも理解してくれたら連絡ちょうだい!バンドやろうぜ!はいごめんなさい、本線に戻します。海外メディアも大絶賛のWAVVES登場です。ローファイ&ガレージな荒々しさが持ち味だが、なんと言っても一度耳にしたら忘れられない強烈なフックを持ったメロディが最高!ヴォーカルNathanくんの恋人はBEST COASTのBethanyちゃんらしいので、ともに日本デビューを祝したカップリング・ツアーでの来日なんか実現しないかなぁ……切望します!
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TWIN SHADOW
Forget
ドミニカ共和国生まれ、ブルックリン在住のGeorge Lewis Jrによるソロ・プロジェクト。DEERHUNTERの大ヒットも記憶に新しい、現在飛ぶ鳥落とす勢いの4ADからのリリースということもあり、既に海外音楽メディアからは高い注目を集めている。下半身にぐいぐいきすぎないファンクネス、夢の中でミラー・ボールに照らされ踊っているような、眩しくもどこかぼやけている、キラキラとしたまどろみのサイケデリアが心地良い。ベルベットのガウンをまとったような、なめらかな肌触りのグルーヴが全身を包みこみ、音とメロディが脳内に絡みつき、鈍く反響し、陶酔させられる。そんな、脳内麻薬のごとき作用で、魔性の誘惑をされそうになるが、幻想的でありながらも、メロディがものすごくキャッチーなので、決してそのまま眠らせてはくれない。
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DEERHOOF
Deerhoof vs. Evil
OGRE YOU ASSHOLEとの東名阪ツアーや、ドラマーのグレッグがKIMONOSのアルバムにゲスト出演するなど、日本人アーティストとの交流も深く、世界各国で幅広く活動を続けるDEERHOOFの10枚目となるフル・アルバム。クリアになりすぎない音が刻む変拍子と、サトミ・マツザキの朴訥なヴォーカルの浮遊感が生み出す中毒性。何度も繰り返されるフレーズが脳内を支配し、その巧妙な罠に思考能力と体力を奪われていくようだ。飄々としているのに一切隙が無い。得体の知れないものに出会ってしまった気分だ。結成16年を迎えるが、"ベテラン"という完成形と言うよりは、まだまだ未知の可能性を秘めた若者のような空気感を帯びている。なんとも奇妙なバンドの、摩訶不思議なアルバムだ。
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MT.DESOLATION
Mt.Desolation
英国の国民的バンドKEANEのメイン・コンポーザーを務めるTim Rice-Oxleyが中心となり結成されたMT.DESOLATIONのデビュー・アルバム。KEANEの持つ叙情的で美しいメロディを引き継ぎながらとても軽やかな心地よい作品だ。オープニングを飾る「Departure」が特に素晴らしい。カントリー・テイストの軽快なリズムに乗り男女のヴォーカルが絡み合うこの楽曲はアルバムの幕開けとして理想的なナンバー。THE KILLERSやNOAH & THE WHALEのメンバーも参加している事あるのだろう。アルバム全体からは一つの事に縛られない自由で穏やか雰囲気と遊び心を感じる事が出来る。KEANEとはまた違う美しさを持った素晴らしいアルバム。
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V.A.
Kitsune Maison 10-The Fireworks
名門Kitsuneの名盤コンピレーション『Kitsune Maison』シリーズ。その確かな選曲とウィットに富んだリミックスは他の追随を許さない。そして、なんと言っても、アーティスト集団でありながら、きちんと時代の風潮と自分たちの感性に折り合いをつける能力に魅力がある。アーティスティックな自分の趣向をリスナーの需要に合わせ、誰にでも門戸を開いた作品にするのは容易ではない。本作でも、いい意味で期待を裏切る構成で聴く者の耳を楽しませてくれる。TWO DOOR CINEMA CLUB「What You Know」も、ダンス・ロック全開のサウンドから、打ち込みに彩られ全く異なった様相を呈したサウンドへと再構築されている。現実を見据えることのできる稀有なアーティスト集団Kitsune。その羨むべき才能は、これからも楽曲の持つ未知の領域へ私たちを連れ出してくれることだろう。
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Sofia Talvik
Florida
照りつける太陽のような眩しさ、オレンジ、グレープフルーツ...果物のように、どこもかしこもカラフル。そんな鮮やかな色を持つ豊かな南の地へのラブレターが、北欧から届いた。いや、アプローチとでもいおうか。スウェーデン出身の女性アーティストSofia Talvikが本作で描いたのは、温暖気候の観光地"フロリダ"。作中に流れている人肌の温もりを感じるあたたかさ、そしてそのフロリダ譲りの人懐っこさ。それと同時に、美しく、どこか近寄り難い、気品を持ち合わせているのは母国スウェーデン直系のものだろう。そう、彼女は暖色のオーラを放ちながらも、薄暗く深々とした北欧の静けさをも併せ持っている。
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NAKED HEARTS
Mass Hysteria
グランジって、単に当時のバンドの服装や、ストリートの若者たち、ノイズのように乱暴なサウンドを形容するためだけに用いられたのではなく、“薄汚れた”中にある、シンプルで美しいメロディと、当時の若者が“本当に歌って欲しかった真実”をより輝かせるために用いられた言葉ではないかと思う。00年代に入った今になって、またそんなことに想いを巡らせてしまったのは、彼らのせいだ。NAKED HEARTSのデビュー作は、まさにグランジ直系。ただ、まみれた中にあるのは、「ハロー ハロー どのぐらいひどい?」というストレートな言葉ではなく、大量の情報、多くの人間が溢れ返る中で、それらのエネルギーに影響されてしまうという現状から生まれた、自我という己の核さえ、ひどくあやふやなものであるという、よりナイーヴな00年代の真実だ。
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CROCODILES
Sleep Forever
JESUS AND MARY CHAINがTHE VELVET UNDERGROUNDを聴きながらハイになってやがる。そんなダーティーな臭いがプンプンする。カリフォルニア州サンディエゴ出身、Brandon WelchezとCharles RowellのデュオからなるCROCODILESの2ndアルバム。昨今盛り上がりをみせるニューゲイザー、ローファイに連なるノイズが持ち味だが、前作での奔放な世界観を踏まえつつ、対なる魅力のメロディアスな側面に焦点を合わせたようだ。だからと言ってノイジーな演奏を薄めているわけではなく、トータルとしての構築美を強め、耽美な世界観がいっそう浮き彫りとなっている。「Mirrors」や「Hearts Of Love」とアンセミック・ナンバーも飛び出し、より多くの人が入り込めるだろう。痺れるほどの危険な薫りに酔いしれろ!それとA PLACE TO BURY STRANGERSやSERENA MANEESH好きは問答無用にマストバイだから、よろしく!
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BLACK MOUNTAIN
Wilderness Heart
サイケデリックでいてヘヴィ・ロック。メタル要素もあってフォーキーなサウンド。気だるさと緊張感を合わせ持つStephenとAmberのツイン・ヴォーカル。発することを自由に楽しんでいるメンバーの心が音の隅々にまで染み渡っている。自国カナダを飛び出て、シアトルとロサンゼルスという、まったくタイプの違う2箇所でレコーディングされた今作。LAの持つライトな感触や、シアトルの持つダークな雰囲気など、現地の空気をそのままパッケージしたようだ。だがどの曲にも一貫して軽やかな開放感がある。2人のプロデューサーを起用したことにより、更に彼らの持つ世界が広がったのだろう。今まで気付くことのなかった扉を開け、更なる高みへと進んだ5人は、どこまでも自然体。心地良い安心感に包まれた渾身の1作だ。
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PTTRNS
Science Pinata
ドイツのアヴァンギャルドな実験性を受け継ぐパンキッシュなディスコ・パンク・バンド。時には3人同時にパーカッションを務めるなど、変則的なスタイルながら高い演奏力とグルーヴで多くの音楽ファンの心を掴む事必死のニューカマーの登場だ。このデビュー・アルバムは全体で約40分とコンパクトな作りで、勢いをそのまま詰め込んだようなとても熱量のある作品。パンキッシュでありながらとてもダンサブルで踊れる所も今作の魅力。3人それぞれのヴォーカルも聴き所で、またその3人が歌い上げるコーラス・ワークも美しい。ポスト・パンクやディスコの要素を吸収し、それを生演奏というスタイルにこだわりそのケミストリーを今作では爆発させている。
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22-20s
Latest Outtakes
衝撃の解散から4 年、再び歩み出した22-20s。今年は6 年ぶりとなる2ndアルバム『SHAKE/SHIVER/MOAN』をリリース、FUJIROCK での勇壮なパフォーマンス、そして10 月のジャパン・ツアーと、見事な復活劇を遂げる1 年となった。そしてラストを飾るのは、アルバム未発表曲6 曲に「Bitter Pills」と「Ocean」のアコースティック・バージョンを収録したこのミニ・アルバム。エッジーなギターと疾走感あるビートが揺さぶる「Blood In The Basement」、フロントマンMartin Trimbleの歌声が渋みあるロマンティズムを醸す「Crack In My Confidence」など、楽曲それぞれのカラーで楽しめ、また基礎となる“ブルーズの憧憬”も再認識できる1枚だ。世界中のメディアから“早熟の天才!”と叫ばれたデビューから紆余曲折あったものの、今後は第2 章となるバンド・ライフを謳歌してもらいたい。
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GIRLS
Broken Dreams Club
まず、サプライズに届けられたプレゼントのようで嬉しい。そして、これは来るべき2nd アルバムへの序曲だろうか? GIRLS が6 曲入りEP をリリース。どの曲もGIRLS らしい、切なさと温もり混じるメロディが彩り、センシティヴにイマジネーションをくすぐってくる。1st アルバムの延長線という印象も受けるが、本作最大のトピックとして、初スタジオ・レコーディングという変化が挙げられる。前作でのくぐもったサウンドはクリアとなり、より繊細な魅力が引き出された結果に。ラテン風味の冒頭曲「Oh So Protective One」に顕著だが、ホーン・セクションを大胆に導入しサウンドの幅を広げた点も興味深い。傷心や逃避の果てに鳴らされた無垢の音楽は世界中から称賛されたが、新たなマテリアルを手にした今、ふたりは何を想い飛躍するのか……。
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LITTLE RED
Midnight Remember
まず息を潜めて最初の4曲を聴いて欲しい。すると感じるはず、今作には体も心も、大人でも子供でもない15 歳ぐらいのあの時に感じていた恋愛や不安や喜びなどの甘酸っぱいヴァイヴがはちきれんばかりに充満していることが。オーストラリア出身の五人組、LITTLE RED のデビュー作は、COLDPLAY のような透明感&浮遊感のあるポップと、THE VIRGINSなどを髣髴とさせる緩いノリのディスコ・ロック、MAROON5 のような甘いR&Bなどを参照点として、心擽るメロディを奏でる耳に優しいポップ・アルバムになっている。ただその参照点を未成熟な少年の視座から解釈したような、垢抜けた音楽を垢抜けない思春期の子供達が背伸びして演奏しているような、そんな雰囲気が出ていて最高にキュート。このバンド、愛さずにはいられないです。
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ELLIOTT SMITH
An Introduction to Elliott Smith
昔はBob Dylan だったと思うが、現在20歳代の僕達の世代にとって、体に染み渡るアコースティック・サウンド&か細く美しい声とメロディでアコースティック・ギターが1本あれば何だって出来るということに初めて気付かせてくれたのはこのElliott Smith だった。彼の死後、7 年ぶりに発表されるこのベスト・アルバムには、生前に発表された5 枚のアルバムと死後に編集された2 枚のアルバム、計7 枚からの選曲になっていて、初めて彼の音楽に接する人にとっては絶好の入門盤であり、ファンにとっては様々な時期の彼を対比して聞ける楽しみ方もできるだろう。フォークを更新したと言われるTHE NATIONAL やSfjan Stevens などが評価されている今、黙々とフォーク・ミュージックを更新し続けた彼の功績はその大きな礎となっているだろう。
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MASERATI
Pyramid Of The Sun
アメリカ発のインストゥルメンタル・バンド、MASERATI。イタリアのスポーツ・カーから取られたバンド名の通り、スタイリッシュで疾走感のあるサウンドを巻き起こす4 人組だ。サイケデリック、パンク、エレクトロをプログレ・テイストに昇華した新感覚の音楽性が凝縮。生楽器と電子音の融合は非常に繊細で、ストーリー性に溢れている。絶えず続くストイックな緊張感が逆に心地良い。 昨年事故で他界したドラマーであるJerry Fuchs の遺作ともなった今作。終曲「Bye M'Friend, Goodbye」は冒頭の透き通るコーラスが印象的で、非常に晴れやかなロックンロール・ナンバーだった。Jerry に捧げる曲なのだろうか。彼らの音には、言葉よりも確かな“思い” が詰まっている。
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SIMIAN GHOST
Infinite Traffic Everywhere
OWL CITY やJames Yuill 等の活躍により細やかで優しいエレクトロとアコースティックなサウンドが融合されたドリーミーなポップ・ミュージックが少しずつ注目を集める今、期待のニュー・カマーが登場。スウェーデンのポスト・バンドAERIALのヴォーカリストであるSebastian Arnstrom のソロ・プロジェクトのデビュー作である今作は、彼の繊細な歌声に中心に一曲目から透明感溢れる世界感が広がる。北欧系らしいメランコリックなメロディには、インディ・ポップ然としたギター・ポップもあり聴き手を飽きさせない。でもやはり一番惹かれるのは、楽曲ごとに様々な魅力をみせる彼の歌声だろう。
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LUCKY SOUL
A Coming Of Age
2007年のデビュー作でTHE PIPETTES と共に60’S ガールズ・ポップ・サウンドを現代に蘇らせたグループとして注目を集めたLUCKY SOUL の3年振りの2ndアルバム。THE PIPETTES が大幅なメンバー変更を経て不安定な状況にある中、そのポッカリと空いた穴を埋める様にポップで素晴らしいアルバムをLUCKY SOULが届けてくれた。レトロでポップな路線は変わらないが、ストリングスを多用したサウンドは前作よりも深みがあり少し大人になった印象。2 年かけて作られたという楽曲もまたまた甘酸っぱくてスイート。レゲエやカントリーを取り入れるなど音楽的な広がりもあってまさに理想的な2nd アルバムと言えるだろう。日本盤にはTHE CLASH「Rock The Casbah」のカヴァーも収録。
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THE WALKMEN
Lisbon
2002 年にNY のガレージ・シーンに登場してからTHE STROKES やVAMPIRE WEEKEND などに影響を与え、前作『You & Me』が英紙ザ・ガーディアンで満点を獲得して世界中から絶賛を浴びたバンド、THE WALKMEN。Frank Sinatra のような硬質でソウルフルな歌声を持つHamilton Leithauser が、エフェクトが強くかかりはち切れんばかりになっているがどこか温かみもあるギターと、深いリヴァーブで曇ったオルガンに乗せて歌う捻くれたソウル・ソングは決して他人には見せようとしない純粋&壮大なロマンチシズムを持ち、基本的に何を考えてるのか分からないクールな男を想像させる。全体的にミドル・テンポな曲が多く、どこか夢想的な雰囲気に満ちているのもこのクールな魅力に拍車をかけている。渋い・・・。
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ONE RING ZERO
As Smart As We Are
2004年に発売され、その斬新なコンセプトから本国では話題を呼んだONE RING ZEROの出世作が初の邦盤化。新種のアコーディオン「クラヴィオラ」との出会い、そして作詞を手がけた数多くとの作家との出会い。2 つの出会い、音楽と文学という2種の芸術の融合によって生まれた本作は、全18幕の物語を描く映像作品のようだ。1章ごとにまた舞台の幕が上がり、新しい物語が始まる。フランケンシュタイン、ゴキブリ…作家ごとに描くテーマ、切り口がまったくことなるが、皆一様に悲しいストーリーを語り出す。可愛らしい見た目とは裏腹に、少しグロテスクでダークなストーリー。子供向けであっても、あえて心に悪を種まくような、灰色のおとぎ話、夢物語を見ているようなこの世界に、私はチェコのアニメーションを連想した。
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HURTS
Happiness
狂おしいほどのロマンチシストはマンチェスターから。「BBC SOUND OF 2010」に選出され一躍脚光を浴び、最近ではNME恒例の「COOL LIST 2010」にもランクインしたHURTS。なにかと話題を提供してくれる2人組だが、本作を聴けば海の向こうの騒ぎも納得だろう。基本は80 年代のエレ・ポップを想起する世界観だが、決して懐古的な意識に捉われない、壮大でドラマチックな音響構築に妖艶な歌声でワン・アンド・オンリーな空間を現出させた。その強固な美意識がシーンを席巻する日は近いか?すでに発売されているヨーロッパ諸国でのチャート・アクションは良好のようで、国民的なアーティストの地位まで登る機運も高めている。来年には単独公演も決定したが、新人らしからぬパフォーマンスは必見なので是非とも足を運んでもらいたい。
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