JapaneseOverseas
【ゲスの極み乙女。/Mrs. GREEN APPLE 表紙】Skream!1月号、本日より配布開始。アジカン、KANA-BOON、ブルエン、cinema staffらのインタビューなど掲載。黒猫チェルシーのコラムも連載開始
2016.01.04 12:00
Skream!マガジン1月号が本日より配布スタートとなります。
今月号は、1月13日(水)に2ndフル・アルバム『両成敗』をリリースするゲスの極み乙女。と、同じく1月13日(水)に1stフル・アルバム『TWELVE』をリリースするMrs. GREEN APPLEの2組が表紙を飾ります。
その他にも、注目アーティストのインタビューや特集記事、ライヴ・レポートを掲載。また、今月号より新たに黒猫チェルシーのコラム「開拓!ネコロンブス」が連載スタートとなります。indigo la Endの長田カーティスによるコラム「月刊 長田」、アルカラによるアーティスト・コラム「ぐるぐるムニムニ化計画」、KEYTALKの首藤義勝による「ニッポン留学記!」を始めとするアーティスト・コラムも好評連載中です。
Skream!マガジン1月号掲載アーティストは以下の通り。
【インタビュー】
ゲスの極み乙女。
Mrs. GREEN APPLE
A GREAT BIG WORLD
ASIAN KUNG-FU GENERATION
KANA-BOON
BLUE ENCOUNT
cinema staff
SHERBETS
鶴
THE ORAL CIGARETTES
ザ・チャレンジ
POT
EVERLONG
午前四時、朝焼けにツキ
植田真梨恵
DECAYS
ジョゼ
NOVELS
クウチュウ戦
バスクのスポーツ
雨(AME)
君ノトナリ
【特集記事】
H△G
MLE Music特集
(HIGH BONE MUSCLE / Teddy Flannel Blanket / END OF INDUSTRIES(P))
【SPECIAL FEATURE】
Skream! BEST CHART 2015
Skream!×MUSE音楽院公開講座(Guest:藍坊主)
KEYTALK × SOL REPUBLIC コラボ・インタビュー
ベイビーレイズJAPAN × Qaijff スペシャル対談
Eggsプロジェクト特集(インタビュー:Damn Drive)
PICK UP! ROOKIES
(スカーフ / Helsinki Lambda Club / ENTHRALLS / ケトル)
【ライヴ・レポート】
ねごと
Brian the Sun
BATTLES
グッドモーニングアメリカ
SMALLPOOLS
cinema staff
go!go!vanillas
indigo la End
ガガガSP
Dinosaur Pile-Up
アルカラ
モーモールルギャバン
【アーティスト・コラム】
渡辺大知(黒猫チェルシー) [新連載]
長田カーティス(indigo la End)
タカハシヒョウリ(オワリカラ)
wowaka(ヒトリエ)
疋田武史(アルカラ)
首藤義勝(KEYTALK)
剛(WHITE ASH)
蒼山幸子(ねごと)
フクザワ
今月号も内容盛りだくさんで、読み応え抜群な内容となっていますのでゲットはお早めに。
なお、店舗、地域によって店着日が異なる場合がありますので、ご了承下さい。配布店舗が近くにない方や、毎号確実に手に入れたい方の為に定期購読も承っております。
詳しくはこちらから。
【お詫び】
Skream!フリーマガジン1月号掲載のディスク・レビュー・ページにて、
ドラマチックアラスカの『人間ロック』のジャケット写真に誤りがございました。
掲載写真は先行配信シングルのものとなっております。
関係者ならびに皆様に多大なるご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。
激ロックエンタテインメント㈱
Skream!編集部
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ゴッチがブログに"震災後、2度目の人生を生きている心持ち"という意味のことをときどき書いているが、現実の音像、そして作品に昇華されたのが今作なのだと思う。シングル『Easter』同様、FOO FIGHTERSのプライベート・スタジオで全曲レコーディングされたこのアルバムの重量とソリッドさが矛盾なく存在するどでかい音像は、イヤフォンで聴いてもつま先まで痺れるようだ。まず肉体に訴えかけてくる。そしてもはや対岸の火事ではなくなった人間同士の断絶などの現実を冷静に描く歌詞の多さ。しかしアルバム・タイトルが示唆するように未来は"ワンダー・フューチャー"なのだ。楽観も絶望もない、励ましもセンチメントもない。ただ生きる意思を鳴らしたらこうなんだ、そんな潔さに満ちている。
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V.A.
NANO-MUGEN COMPILATION 2014
このコンピの充実度は毎年計り知れないが、今回はASIANKUNG-FU GENERATIONの新曲「スタンダード」を聴くだけでも相当、価値ある1枚。ゴッチ自身が"これは先の都知事選についての歌"と明言しているが、何も変わらないと諦めたら非難の対象と同化してしまう。愚直なまでに続けること、そしてバンドのイメージを引き受けるとはどういうことか?まで応えた1曲だ。文字数の半分をAKG新曲に費やしてしまったが、今年はユニコーンやスカパラなどベテランから、KANA-BOON、グッドモーニングアメリカら新鋭、くるりやストレイテナーらAKG同世代まで縦横無尽な出演者が揃うわけで、このコンピも自ずとその厚みや充実感を体感できる。お得感で言えばくるりの未音源化楽曲や、ストレイテナーの新曲収録も嬉しい。
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Yes,We Love butchers〜Tribute to bloodthirsty butchers〜"The Last Match"
吉村秀樹が亡くなってから1年と1日目にリリースされるトリビュート盤第4弾。あがた森魚(ブッチャーズの射守矢や小松も参加)、the 原爆オナニーズらベテラン、ASIAN KUNG-FU GENERATIONやTHE BACK HORNといったシーンの中核を担う存在、+/−ら海外の盟友、それでも世界が続くならといった若手まで顔を揃えた今回は、シリーズの中でも最も吉村の影響の広範さを証明。ギター・サウンドとフィードバックだけで胸に熱いものがこみ上げるAKGやenvy、合成ボイスや読経のようなリズム感で再構築したASA-CHANG&巡礼や、ピアノをフィーチャーし、生死の狭間を行くようなサイケデリックな祈りの歌へ昇華したGREAT3など、バンド/アーティストがリスペクトの姿勢を究極まで研ぎ澄ましている。
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Gotch
Can't Be Forever Young
全曲メジャー・キー、生ドラムを使わない圧の少ないサウンド・プロダクションが、まず聴き手の構えた気分を解きほぐす。"まぁ座りなよ"とでも言われてる気分とでも言おうか。スクラッチが90sのUSインディーやローファイ感を想起させる「Wonderland/不思議の国」もあればオーソドックスなR&Rが新鮮なタイトル・チューンもあるし、ホリエアツシがギター、ピアノ、コーラスで参加した「Great Escape from Reality/偉大なる逃避行」はエクスペリメンタルでありつつ、潔く音を引いた聴感が心地よい。そしてアルバムのラストに配置された「Lost/喪失」が、アルバムの中にあることで、また違う聴こえ方をするのも興味深い。日常の中にある旅もどうしようもない諦念も怒りも、声高じゃない分、より細胞に染みわたる。
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ASIAN KUNG-FU GENERATION
フィードバックファイル2
シングルのカップリングやアルバム未収録曲の編集盤である『フィードバックファイル』第2弾。アルバムやシングルの表題が音楽的なイノベーションを前向きに背負う位置づけにあるとすれば、このシリーズは必然的に普遍的で無防備な楽曲が揃うことになるのではないだろうか。中でも今回、胸に深く刻まれるのは震災直後、やむにやまれぬ心情でゴッチが命を削りだして書いた曲。記号にしてはいけない3.11、アーカイヴできないあの頃の気持ちが否応なしに思い出される「ひかり」や、この2年のライヴの重要曲「夜を越えて」の存在感。また、昨年のハマスタ・ライヴ日に配信された新曲「ローリングストーン」「スローダウン」に窺える11年目への姿勢。移ろう日々の中でも常に携えていたい気持ちを呼び起こす名盤だ。
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ASIAN KUNG-FU GENERATION
ザ・レコーディング at NHK CR-509 Studio
1曲目の「遙か彼方」での太いベース・ラインが鳴った瞬間の臨場感たるや!メンバー4人での緊張感のあるテイクには、初期のナンバーが持つ心の底から奮い立つようなアジカンならではの音楽の駆動力が、今のアレンジで鳴らされている。また、三原重夫(Perc)、上田禎(Key/Gt)、岩崎愛(Cho)を迎えた7人編成での「新世紀のラブソング」など、オリジナル録音の再現ではない新たな解釈は、合奏の歓びが(もちろん、シビアさも含めて)横溢。奇しくも最新曲「今を生きて」のタイトルが象徴的だが、ライヴ・レコーディングとはまさにそれ。そしてその臨場感を削がず、美化せず、ただクオリティの高い音像として定着してくれたことに感謝したい。メンバーはもちろん、楽器やアンプやエフェクターの息遣いが聴こえる。
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V.A.
NANO-MUGEN COMPILATION 2013
ASIAN KUNG-FU GENERATIONが主催するNANO-MUGEN CIRCUIT 2013に出演する全アーティストの楽曲を収録したコンピレーション・アルバムがリリース。アジカンの楽曲「Loser」は、BECKの同名曲の日本語カヴァーだ。歌詞は日本語訳ではなく、原曲が綴る"負け犬"を、後藤正文が2012年の日本版として新たに描いている。その中には"海辺で燃え続ける夢の切り札""膨張する正義"など、最初から最後まで意味深なワードが並ぶ。後藤のポエトリー・リーディング風のラップはそれを軽やかに届けるが、内にこもる怒りはBECKのそれを彷彿させる。全15アーティストの提示したい色が明瞭に出た楽曲たち。現代の日本に鳴り響く芯のある音楽を、この1枚で楽しめるはずだ。
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ASIAN KUNG-FU GENERATION
今を生きて
アルバム『ランドマーク』から約半年のインターバルでリリースされたシングルは、映画『横道世之介』の書き下ろし主題歌。長崎から上京したばかりのお人よしの大学生である主人公とそれを取り巻く青春物語である『横道世之介』ワールドに寄り添うあたたかいナンバーだ。喜びや哀しみが漂う日常的な風景が描かれた歌詞と、気張らず軽やかに鳴り響くサウンドは、人間が持っている自然体の力強さを感じさせる。後藤正文のファルセットは大切な人に優しく手を振るようなやわらかさで、聴いているこちらも自然と笑顔になっていた。"生きている"という事実を素直に喜びたくなる。タップ・ダンスのようにたくましく躍動的に耳を刺激するピアノの音色が印象的なc/w「ケモノノケモノ」も必聴。
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ASIAN KUNG-FU GENERATION
ランドマーク
3.11以降、社会的な発言や行動をとってきた後藤正文が放つ言語、そしてバンド・サウンドの現在が注目される本作は、まさにこの間、彼らが体験してきた逡巡や希望や疑問が、シンプルで純度の高い表現で結晶した力強い内容。浮遊感とトライヴァルなビートが交錯する「AとZ」、アジカンらしさを2012年にアップ・デートしたような「それでは、また明日」、後藤のスポークン・ワーズが諦観と希望を行き来する樣がリアルな「マシンガンと形容詞」後戻りできない事実を認めつつ、だからこそ日常の愛おしさが際立つ「アネモネの咲く春に」など全12曲。表現に正解も不正解もないが、今年発表される作品として、何かしらの感銘や反応をリスナーに起こす作品。
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ASIAN KUNG-FU GENERATION
マーチングバンド
鳴らす足音。息を吹き込み、力強く叩きながら、鳴らされる沢山の楽器。一歩ずつ前進する、前へ前へと突き進む姿を、行進する吹奏楽団と形容した本作は、迷ったけれど、苦しいけれど、それでも前へ進んでいこうと強く決意し歩み出した者の歌だ。そして今、後藤正文(Vo&Gt)が、どうあろうとしているのかがよく分かる。"希望を掲げよう""ささやかな光を"というように、希望を灯そうという想いが能動的な言葉たちから読み取れる。歩みを止め、躊躇することはいくらでも出来る、その迷いや弱さを消せぬことは認めた上で、"それでも僕らは息をしよう"と歌う。そうやって前進していく言葉たちは、一度も振り返らず、一度も後退しないまま、最後まで"行け"と想いを貫き通す。後藤の言葉、その伝えようとする想いは、僕らの心目がけて一歩踏み出した。
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V.A.
ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN COMPILATION 2011
アジカン企画&主催の夏フェス"NANO-MUGEN FES."も今回で9回目(ツアー形式だった「NANO-MUGEN CIRCUIT2010」を含めると10回目)。WEEZERやMANIC STREET PREACHERSをヘッドライナーに、BOOM BOOM SATELLITES、the HIATUS、若手注目バンドねごと、モーモールルギャバンなど、洋邦共に相変わらずの豪華ラインナップ。出演バンドの楽曲が1曲ずつ収録されているコンピレーション・アルバムは、今作で5作目。そして、今回収録されているアジカンの新曲は2曲。チャットモンチーの橋本絵莉子(Vo&Gt)を迎えた「All right part2」は、後藤と橋本の気だるい歌い方と熱が迸る歌詞のコントラストが鮮やかで、高揚感に溢れたギター・リフとメロディも力強く鳴り響く。ユーモラスなあいうえお作文、男性の言葉で歌う橋本の艶とレア感も思わずニヤついてしまう。東日本大震災時の東京を描いた「ひかり」は、人間の醜い部分や絶望感にも目を逸らさず、物語が淡々と綴られている。言葉をなぞる後藤の歌に込められた優しさと強さは、当時の東京を克明に呼び起こしてゆく。生きることが困難な時もあるだろう。だが"オーライ"と口ずさめば、ほんの少し救われる気がする。音楽の持つ力を信じたい――改めて強くそう思った。
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ASIAN KUNG-FU GENERATION
マジックディスク
Track.1「新世紀のラブソング」、Track.2「マジックディスク」で幕を開けるこのアルバムは、新しい時代をポップにしていこうという意志によって貫かれている。「新世紀のラブソング」や「迷子犬と雨のビート」でみせたように様々な新機軸がありながらも、従来のアジカン・サウンドがまた新たな次元に到達している。これまで以上に軽やかなフィーリングがとても新鮮だ。2000年代の閉塞感から抜け出し、新たな10年をどう塗り替えていくか。それは結局、個々の生活の中に、個々の思いの中にしかない。その意志の強さが徹頭徹尾貫かれる『マジックディスク』。音楽が持つ魔法の力をもう一度信じよう。きっと10年後にこのアルバムが2010年代の日本のポップ・ミュージックにとってターニング・ポイントのひとつになっているはずだ。
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ASIAN KUNG-FU GENERATION
ソラニン
4月に公開される映画『ソラニン』の主題歌となるニュー・シングル。昨年リリースされたシングル「新世紀のラブソング」は、これまでのアジカンの言語感覚をもう一歩推し進める形で新たなスタンダードを提示する挑戦的な曲だったが、今回はこれぞまさにアジカンと言うべき王道のスタイル。起承転結のはっきりした展開で、アジカンらしいフックの効いたメロディがドライヴしていく。今回は、『ソラニン』の原作者浅野いにおが手がけた歌詞にメロディをつけるというコラボレーションという形態をとっている。新機軸に挑むことと王道と呼べるスタイルで楽曲を更新していくことが両輪となって、アジカンというバンドをさらに前進させ続けるという事実を示す一曲。カップリングには、映画用に新たにミックスされた「ムスタング」を収録。
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1年2ヶ月の創作活動を経た後にリリースされるアジカンのニュー・シングルは、二つのメイン・メロディが交錯し、歌うというよりは呟きを発する前半から、1オクターブを自在に操りながらも、朗々と力強いメッセージを発する後藤の歌が、曲を聴いた何時間後も頭に残って離れることがない。これまでのアジカンらしさは決して失われていないながらも、確実に新機軸を打ち出しており、まだまだ音楽に対する意欲が彼らの中で漲っていることを感じる。そしてそこには、様々なバンドが通過する迷走感は微塵もなく、ファンの期待に応えながらも新しい感動を投げかける、とっても素晴らしい曲なのだ。カップリングの「白に染めろ」も、力強さに満ち溢れたナンバーだ。12月からは全国ツアーが始まるが、新世紀を迎えた彼らの勇姿を、とくとこの目に焼き付けたい。
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捲し立てるラップ調のパートで焚きつけ、パッと開けるキャッチーなサビで躍らせる。そんなアッパーチューン「ソングオブザデッド」は、ゾンビ・パンデミックによりブラック企業から解放された主人公の"ゾンビになるまでにしたい100のこと"を描くアニメを盛り上げる人生讃歌。"遊び疲れるまで生きてみようぜ"と歌うこの表題曲に対し、カップリングに収録されたのはその名も「ソングオブザデッド 2」、「ソングオブザデッド 3」と早速遊び心が。10周年を迎えたバンドのいい意味で肩の力が抜けた余裕が垣間見える。アニメのテーマにとことん寄り沿った一貫性を持つ本作は、ゾンビとコロナウイルス、状況は違えどパンデミックに陥り混沌とした日々を生き抜いてきた我々にも通ずる、シリアスな世の中もポジティヴに照らす1枚だ。
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KANA-BOONは卓越したキャッチーなメロディや言葉遊びが注目されがちだが、バンドの名を一躍シーンに知らしめた「ないものねだり」や、疾走感で一気に駆け抜けるポップ・ナンバー「1.2. step to you」など、キャリア初期からBPMの速い四つ打ちを得意とする一方で、ストレートなラヴ・ソングを歌い続けたバンドだと思う。そんな彼らが、"恋愛"に焦点を当てたコンセプト・アルバム『恋愛至上主義』をリリースする。"10th Anniversary Edition"には、十八番とも言える失恋ソング17曲(上記2曲も収録)をコンパイルしたベスト盤CDも付属。今年9月にメジャー・デビュー10周年を迎えるバンドが重ねてきた年輪を、"ラヴ・ソング"という側面から堪能してみてはいかがだろうか。
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谷口 鮪(Vo/Gt)の復帰を祈り待っていたファンへのアンサー・ソングでもある「Re:Pray」から始まる本作は、タイトルに"あなたは誰かにとって特別な存在である"という思いが込められたように、彼らにとっての特別な存在に届けたい温かいメッセージに溢れている。深い悲しみの中で生まれた楽曲たちは、自分自身を勇気づけるように希望を歌い、聴く者の孤独を救うように語り掛ける、共に生きていくための歌だ。バンドを象徴するキャッチーさはそのままに、より深みを増した歌声と演奏。ファンと共に苦境を乗り越えた今の彼らにしか出せない音、伝えられない言葉が心を震わす。そして、生きづらさを歌いながらもポップに響くサウンドがグッとくる1曲「メリーゴーランド」が、心に暖かな光を灯しアルバムを締めくくる。
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前作「HOPE」が暗闇に一筋の光を見いだしたばかりの第一声だとしたら、今回は"新たなる祈り"と題されているだけあり、一歩踏み出した決意表明だ。バンド・サウンドの生々しさで勝負しつつ、風を顔に受けて前進するような感覚をマンドリンの響きで繊細に表現してもいる新鮮味も。本当に曲に必要な音を選び抜いたサウンドスケープはまた始まるバンドの日々(3年ぶりのツアーも含め)への希望だ。カップリングにハード・エッジなサウンドと忌憚のないメッセージを込めた「右脳左脳」を収録する感じは、『シルエット』時の「ワカラズヤ」などを想起させるシングル定番スタイル。カラッとしたR&Rで"生きてたらいいことあるかも"と歌う「LIFE」も最強に泣けるし笑顔になれる。早くライヴで会いたい曲ばかりだ。
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KANA-BOONの約9ヶ月ぶりとなるニュー・シングルのキーワードは"解放"。思わず手拍子をしたくなるハイテンションなイントロで始まり、そのまま失速することなく展開される軽快なギター・リフは、まさに抑圧された空間からの解放を感じると同時に、ライヴハウスで披露した際の盛り上がりと興奮を想像させる。まだまだ日々の生活にも音楽活動にも制限がかかる世の中ではあるが、希望の火を灯し続け、あらゆる規制が解除されることと、現在休養中の谷口 鮪(Vo/Gt)が再び元気に歌声とギターの音を響かせてくれることを待ち続けたい。カップリングにはリフレインする歌詞が彼ららしい「センチネル」と、夕暮れ時の儚い一瞬をメロディアスに歌った「マジックアワー」の2曲を収録。
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KANA-BOON THE BEST
7年間の軌跡を全シングルと代表曲、そして、バンドとファンにとって思い入れの深い全30曲に収めた初のベスト・アルバム。DISC 1 は、10年代前半の邦楽ロック・シーンを彼らが象徴することがわかる楽曲が多いうえで、KANA-BOONならではの切なさやリアリティが溢れるレパートリーが満載だ。加えてインディーズ時代の「スノーエスカー」を再録しているのも聴きどころ。DISC 2は谷口 鮪(Vo/Gt)のDTMによるデモ制作が軸になって以降の、アレンジや新しいサウンド・プロダクションの進化が窺える楽曲揃い。バンドのスタートでありパーソナルな歌詞に突き動かされる「眠れぬ森の君のため」、そして、最新曲とも言える「マーブル」もバンドの現在地であり核心。新旧2曲の対比も味わいたい。
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KANA-BOON
スターマーカー
新体制後初シングルには金澤ダイスケ(フジファブリック/Key)をアレンジと演奏で迎え、ポップスのスケール感にチャレンジした楽しげで華やかな1曲が完成した。音像のアッパーさに伴って、これまでと地続きな内容の歌詞がグッと力強く聴こえるのも面白い。本質を変えないために表現の幅を広げるという、バンドのこれまでを踏襲した作品と言えるだろう。さらに、素でワイドなサウンド・プロダクションがモダン・アメリカン・ロック的な「シャッターゲート」、これまでのKANA-BOONの代表的なメロディやビートのスタイルをアップデートさせた印象の「ユーエスタス」と、各々まったく違うベクトルの3曲を収録しているのも久しぶり。ちなみに、全曲ベースは谷口 鮪(Vo/Gt)が演奏しているのも聴きもの。
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KANA-BOON
まっさら
スタートの合図のような4カウントから走り出す8ビート。目の前が開けるような大きなコード・ワークが印象的なAメロ。シンガロングしたくなるサビ。それを支える重量感のあるベース・ライン。そのサウンドメイク自体が今の彼らの逞しさを実感させてくれる、デビュー5周年企画を締めくくるに相応しい新たな始まりの1曲だ。"独り"を前向きに捉え、普通の日常のやるせなさも認める強さを持つ。そのうえで繋がる助けになる音楽、それをKANA-BOONは作り始めたのだ。c/wの「FLYERS」はロックンロール・リバイバル的なセンスのリズムやリフの上を、言葉でリズムを作る谷口 鮪のヴォーカルが乗る小気味いい1曲。こちらもグッと太く生感のあるサウンドで、バンドの頼もしさが十二分に伝わる仕上がりだ。
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KANA-BOON
ハグルマ
B面集『KBB vol.2』収録の「夜の窓辺から」やミニ・アルバム『ネリネ』と、バンドのいい状態を示す新曲を続々発表しているKANA-BOONから、さらに新たなフェーズに入った決定打が到着。TVアニメ"からくりサーカス"のOPテーマでもある「ハグルマ」。人間の尊厳や暴力性も描く原作の強度にマッチするハードでドラマチックなサウンドと展開、竜巻のようにバンド・アンサンブルとともに暴れるストリングス・アレンジにも息を飲む。谷口 鮪(Vo/Gt)が幼少期から影響を受けてきたという作品への最大のリスペクトを今のKANA-BOONの器で見事に表現したと言えるだろう。一転、何気ない日常を余裕のある演奏で描く「オレンジ」では、彼らの過去の"夕焼けソング"からの変化と不変を味わうのもいい。
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KANA-BOON
ネリネ
夏盤と称した『アスター』と対になった本作。"ネリネ"の花言葉は"再会を楽しみに"や"忍耐"という意味を含み、冬盤らしい心象を表現した内容になっている。が、それ以上に注目したいのはこの2作が企画盤という意味合い以上に、現在進行形のKANA-BOONの音楽的な楽しさに溢れている面だ。タイトル・チューンの「ネリネ」はホーン・アレンジも新鮮な跳ねるポップ・チューン。「春を待って」は童謡「雪」のフレーズが盛り込まれ、且つお囃子的なリズム感や歌詞のフロウが融合するという、なかなかにハイブリッドな仕上がり。それでもあざとさがまったくないのがこのバンドのキャラクターを証明している。日常的で幸せな情景と真逆な情景が1曲の前後半で展開する「湯気」など、新鮮な変化に驚かされる1枚。
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KANA-BOON
KBB vol.2
これまでリリースしてきた12枚のシングルに収録されたカップリング23曲から11曲を収録。ロッキン・ソウルなニュアンスの「Weekend」やスピーディなガレージ・ロック・テイストの「ミミック」など、谷口 鮪(Vo/Gt)のその時期その時期の怒りや憤りが凝縮された曲が序盤に並び、表題曲かと勘違いするほどKANA-BOONらしい情景描写と優しいメロディの「街色」、1stシングルのカップリングで初々しさが新鮮な「かけぬけて」など、バンドの音楽的な幅も自由度も楽しめる。加えて、これからの彼らを代表しそうな、淡々としていながら強い楽曲「夜の窓辺から」は、あらゆる人が前を向ける確かな根拠がある。締めの和楽器を加えアレンジされた「盛者必衰の理、お断り (和和和 version)」で大笑いできるのも彼ららしい。
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KANA-BOON
アスター
メジャー・デビュー5周年の今年、5シーズンに5リリース、5イベントを企画している彼ら。第1弾のB面集『KBB vol.1』が結果的に怒りに寄った内容であったこととは対照的に、今回は様々な角度での恋愛がテーマ。バンドが大きなメッセージを発信するべきタイミングでの覚悟と決意を見せる表情とは違う、脆くて情けなく、誠実な谷口 鮪(Vo/Gt)の素が、楽曲という姿だが滲み出ているような印象を受ける。インディーズ時代の名曲ラヴ・ソングとは違った今の年齢なりの苦みや現実も見え隠れするのも自然でいい。タイトルの"アスター"は花言葉に追憶、信じる恋、変化などがあるそうだが、まさにラヴ・ソングだからこそ描けるリアルな心情やこれまでにないワードが頻出。その描写の瑞々しさが心を震わせる。
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KANA-BOON
KBB vol.1
これまでリリースしてきた12枚のシングルから、古くは『盛者必衰の理、お断り』の、また『結晶星』のc/wだった「ハッピーエンド」や「桜の詩」など、KANA-BOONの名曲中の名曲、そして表題曲では表し切れない側面を描いたc/w曲を合計12曲セレクト。特に「バカ」、「LOSER」、「I don't care」、「スパイラル」といった、彼らならではのポップ且つエッジーなナンバーから見られる怒りや自己嫌悪は、登場当時から谷口 鮪(Vo/Gt)が書かずにいられない感情を吐露した個性だ。そしてその最新型が新曲の「Flame」に結実。また、メロディとラップの両方を行き来する谷口のリリックとフロウのうまさ、歌を含めたアンサンブルでリズムを生む小気味よさはもっと評価されていい。ライヴで聴きたい曲も多数。
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KANA-BOON
NAMiDA
「Wake up」、「Fighter」、「バトンロード」と、内燃する高揚感を立体化した力作が続いたので、アルバムもテーマはスケール感なのかな? と想像したが、そう簡単ではなかった。四つ打ち、言葉が言葉を連れてくるような谷口 鮪(Vo/Gt)らしい言葉の運びが特徴的なTrack.1「ディストラクションビートミュージック」は一時期揶揄された十八番要素を根本的にビルドアップ。個性は個性として深化させればいいじゃないかと言っているような1曲だ。もちろん中にはかなりベタにディスコ/ダンス的な曲もあったり、音像もぐっと厚みを増していたりするけれど、何より鮪がメロディについてチャレンジし続けていること、寒くて怖い夜明け前を乗り越えるようなリアリティをずっと抱えていることはKANA-BOONのかけがえのなさだ。
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KANA-BOON
バトンロード
"NARUTO"シリーズでは4回目のタッグとなる"BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS"のOPテーマとして、物語とシンクロする部分はもちろん、これまで以上にロック・バンドが伝えてきたマインドを自分も繋ぐんだという谷口 鮪(Vo/Gt)の意志に満ちた歌詞、ストリングスも含めた厚い音塊で押せる今の力量が鮮明だ。"無我"を意味するTrack.2は谷口お得意の韻を踏んだラップ調のヴォーカルと演奏のリズムが表裏をチェイスするようなリズムの組み立てがユニーク。シニシズムと和テイスト、そしてヒップホップを料理した独自のものを作るKANA-BOONらしい出来だ。打って変わって高速ウエスタン風のTrack.3は2分ちょいのショート・チューン。いい曲も面白いこともテーマにフォーカスが合っている。
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KANA-BOON
Fighter
最近の曲作りでは、DTMで構成を練り込んだデモを作ること、自分の中で納得感が強い曲を作ることを挙げていた谷口 鮪(Vo/Gt)。2017年第1弾は得意の四つ打ちも大幅にアップデートされ、スピーディな展開にダークでソリッドな世界観も積載された、キャリア上最強のエクストリームなナンバーだ。TVアニメ"機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ"OP曲として"戦場での一瞬の輝き"をテーマに書き下ろしたという着眼点自体が、1曲1曲の強度で"勝ちに行く"、今のKANA-BOONのスタンスも反映している。展開の多さと構成の複雑さで言えばTrack.2「スーパームーン」も、パンク、ファンク、大きなグルーヴのロックまで呑み込んだ大作。一転、Track.3「君を浮かべて」はシンプルなアレンジだが、かつてないまっすぐな言葉に心が震えた。
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KANA-BOON
Wake up
アルバム『Origin』のリリースから約8ヶ月。乾いたアメリカン・ロックとトライバル感が混ざり合ったような序盤から、メロディもすべての楽器も復活祭に参加するように集まってくる構成の新しさがある。そして大サビで歌われる"言葉を紡ごう/心を震わそう"というKANA-BOONの最も太い軸に辿り着く覚醒感。瞬間沸騰ではなく、前進しながら徐々に心が沸き立つ構造に谷口鮪のソングライターとしての成長とタフさを増したバンドの力量を感じる。「Wake up」が表だとしたら、もう一方の今のKANA-BOONからのソリッドな意思表示が「LOSER」。強靭になったグルーヴそのものが現状に安住することなく、一撃であらゆるリスナーを射抜こうとする。そしてR&Rマナーを血肉化した「Weekend」の軽快さもすこぶる新鮮だ。
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KANA-BOON
Origin
前作『TIME』のエンディング曲「パレード」で夢見た場所に足を踏み入れた歓喜を歌ったバンドの痛みを伴う成長の物語がここにある。アルバムの先鞭をつけた「ランアンドラン」はともかく、ポップな「なんでもねだり」から、ラウドでソリッドな新機軸「anger in the mind」や、ドラマティックな「インディファレンス」、当世流のネオ・シティ・ポップをKANA-BOON流に昇華した「グッドバイ」などサウンドの多彩さがまず1つ。加えて、この時代を生きる20代の真っ当なオピニオンとしてのリアルな歌詞が冴える「革命」、この1年の逡巡とバンドの決意がそのまま歌詞になった「スタンドバイミー」や「Origin」といったメッセージ性が窺える新機軸。登場時の勢いとはまた違う、"今"の強さが封じ込まれたアルバム。
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KANA-BOON
ランアンドラン
前作のスプリット・シングルを含めると、なんとデビューから2年4ヶ月で9枚目のシングルとなる今作。『ダイバー』以降顕著になってきた広がりのある古賀のギターのディレクションなど、アレンジ面での深化が冴える仕上がり。大きなグルーヴを持つ8ビートと、どこかメロディック・パンク的なニュアンスも持つTrack.1「ランアンドラン」は、これからの季節、新たな環境に身を投じるあらゆる人、特に若い世代のリスナーにとって勇気の源になってくれそうな1曲。カップリングの「I don't care」は、まさにタイトルが示唆する通り、口ばかり達者で動かない奴らを一刀両断。ラウド且つタイトな音像がこれまでのKANA-BOONになかったフィジカルなタフさも感じさせる新境地だ。
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KANA-BOONシナリオアート
talking / ナナヒツジ
CDの形態が複数あるのを承知で、できればこのスプリットに収録されているトータル6曲すべて聴いて欲しい。それぐらい両バンドとも楽曲クオリティと新たな挑戦を体感できる。KANA-BOONの「talking」はファンクネスすら感じる16のグルーヴやラップ部分にロック・バンドのケレン味を感じるし、アニメのエンディングにそのヒリヒリした世界観がハマる。シナリオアートの「ナナヒツジ」で聴けるソリッドで急展開する構成も新しい。また2曲目(KANA-BOON「ぬけがら」/シナリオアート「トワノマチ」)にどちらも各々の色合いでセンチメンタリズムを喚起する楽曲を配しているのも聴き比べてみると面白い。そして"すべてがFになる"裏メイン・テーマとも言えそうなKANA-BOONの「PUZZLE」での楽器隊の豊富なアイディアとテクニカルなプレイは嬉しい驚きの連続だ。
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KANA-BOON
KANA-BOON MOVIE 03 / KANA-BOONのとぅるとぅる かむとぅるーTOUR 2015 ~夢のアリーナ編~ at 日本武道館
当日のライヴも観たが、この映像作品でもまた心揺さぶられてしまった。KANA-BOON自身が夢の舞台に立つ、そのエモーショナルな部分をどんなアングル、スピード感、質感でドキュメントするか?という1番大事な部分が素晴らしく共有されているからこそ成せる作品だと思う。正真正銘、初めて足を踏み入れる武道館(4人がいっせーので入口を越えてみたり)のシーンだったり、歌う鮪の口元、ステージからのメンバー目線の客席、スタンド最上階のファンのシルエット、宙吊りになった古賀を下から見上げる鮪と飯田の笑顔だったり、頼もしいこいちゃんの背中だったり......。演奏や様々な試みやユルユルなMCはもちろん、一回性の撮影でまるで映画のごときダイナミズムに昇華したチームKB、そしてバンドの求心力に脱帽!
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KANA-BOON
ダイバー
もとよりKANA-BOONは曲がいい。それは高速BPMと四つ打ちを特徴としていたころからなのだ。そして新たな武器を手にした「シルエット」以降のKANA-BOONがより大きなグルーヴと、谷口鮪(Vo/Gt)が音楽に生きる根拠を明快に楽曲に昇華したのが今回の「ダイバー」だろう。単に大好きなアニメというだけでなく"NARUTO"とKANA-BOONの親和性の高さは大げさに言えば運命的。今夏の映画版のための書き下ろしだが、バンドがどれだけ大きな視点で活動しているのかがわかる代表曲足りえる新曲。加えてTrack.2「スパイラル」での古賀隼斗(Gt)のイマジネーションに富むフレージングや全体的に大人っぽいプロダクションにも注目。Track.3の「街色」は鮪のファルセットから地声へのスムーズさ、背景的な音作りが新しい。
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KANA-BOON
なんでもねだり
近年、バンド/アーティストがポピュラリティを獲得する大きなステップボードになっている印象があるCM且つ好企画でもある資生堂"アネッサ"のタイアップ曲として書き下ろした「なんでもねだり」。風の匂いや太陽の熱が明らかに変わっていく季節感をサウンドやビート、リフで表現。歌詞はCMの映像にも登場する"欲張りな女の子"と彼女に翻弄されつつ、眩しげに見つめる男の子が目に浮かぶ、楽しくも青春が輝く内容に。カップリングは「ウォーリーヒーロー」から続く同質のテーマを持った、ソリッドで強い「watch!!」、アルバム『TIME』ラストの「パレード」のさらに先を歩いて行く自分たちや友達を歌った「タイムトリッパー」。これから起こるどんなことも楽しんでいこうとする彼らの今の強さがわかる。
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KANA-BOON
TIME
怒涛のフィルが時間に追われながらも全力で走る決意をタフに表現するオープニングの「タイムアウト」から、時間をテーマにしたアルバムの大きな意志に巻き込まれる。90年代後半以降の"ザ・日本のギター・ロック"な「ターミナル」の孤独と自由。雨音のイメージを増幅するギター・フレーズが美しい「スコールスコール」や、谷口鮪がパーソナルな心象を都会のどこにでもありそうな情景に溶け込ませて歌う「愛にまみれて」のバンドにとっての新生面。特に「愛にまみれて」にうっすら漂うノスタルジーを表現するコーラスの美しさはレコーディング作品ならでは。攻めの前半からメロディや歌詞の新しさにはっとする後半への流れそのものが聴き手にとっても"生きている今"になるような強い作品。
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KANA-BOON
シルエット
4カウントとギター・リフのおなじみのイントロの次に展開する開放的な8ビートが作る、KANA-BOONの新しいスタンダード、「シルエット」。思期から青春期を走りぬけ、覚えてないこともたくさんあるけれど、ずっと変わらないものを教えてくれた人たちのことを思うヴァースはライヴでも大きなシングアロングが起こりそうだ。カップリングはインディーズ時代から存在していた「ワカラズヤ」と、最新曲の「バカ」。すれ違う気持ちが一層ジリジリする恋心を浮かび上がらせる「ワカラズヤ」の愛らしさも、エッジーな16ビートに乗せて谷口のラップも交え、フラストレーションの吐き出し先のない自分のめんどくささを歌う「バカ」にも、いい意味で肩の力が抜け、曲作りに対してタフになった今の4人が見えてくる。
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KANA-BOON
生きてゆく
清涼飲料水のタイアップがついてもおかしくないような、夏らしい眩しさの中で描かれるのは、バンドで生きていくことを決めた自分が、別の道を行くことになる"キミ"との距離を描きながら、最終的には自分の決意。事実から生まれながら、長くKANA-BOONが音楽や自分と向き合うときに思い出される大切な曲になりそうな予感もある名曲だ。毎回、表題ともアルバム収録曲とも違うチャレンジングな一面を見せるカップリング。今回もこれまでにない変則的なビートが印象的なダンス・ロック「日は落ち、また繰り返す」、ドライヴ感に加えてグラマラスな印象さえある「ロックンロールスター」の2曲は、無意識のうちにも彼らが洋楽のエッセンスを吸収していることを実感。ライヴの楽しみ方の幅も広がりそうなシングルだ。
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KANA-BOON
フルドライブ
ソリッドなギター・リフ、四つ打ちのなかに部分部分でヒネリの効いたスネアが入り、谷口鮪のリリックは意味より破裂音や韻の快感を重視しているような「フルドライブ」。リスナー側がスリリングなチェイスに身をおいているような感覚が新しい。Track.2「レピドシレン」は魚ながら肺呼吸をしなければならない魚を比喩に用いたことで、焦燥と疾走を同時に焚き付けられるような仕上がりに。特に古賀のギターは全編、カオティックな曲のバックグラウンドを形成するサウンドスケープを担う出色のアレンジ。Track.3「夜のマーチ」は、まさに夜の色と空気感が立ち上がるような映像喚起力抜群の聴感。マーチングのリズムを主体に変化していくリズムが、歌詞での心の動きとシンクロするアレンジもいい。
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KANA-BOON
結晶星
逞しささえ感じるリズムと澄んだ空気を感じさせるギターのフレーズが好対照を描くタイトル・チューン「結晶星」。やめたいことはやめればいいし、やりたいことをしっかり結晶させればその輝きで、これからを変えていけるというメッセージが、今の彼らの経験値やスキルで鳴らされていることに大きな意味がある。新しい季節を迎えるあらゆる人の心に穏やかだが確かな火をつけてくれる1曲。「ミミック」は前作『DOPPEL』収録の「ウォーリーヒーロー」にも似た、顔の見えないSNSのコミュニケーションに対する問題提起。「桜の詩」は「さくらのうた」から時間が経過し、女性目線で描かれたアプローチが新しい。まったく異なるニュアンスとテーマを持った、挑戦的な1枚。
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KANA-BOON
DOPPEL
人懐こいサビにも、思わずステップを踏みたくなるビートにも、もちろん、想いを遠くに投げかけようとする谷口鮪の声にも、"音楽があったから今、僕はここにいる"、そんな切実さが横溢している。ライヴでもなじみのインディーズ時代からの「ワールド」「MUSiC」「東京」「目と目と目と目」はアップデートされたアレンジ、演奏と音像で収録。現在のライヴ・シーン、ひいてはSNSでのコミュニケーションについて谷口の思うところが、鋭いギター・リフや性急なビートとともに表現された「ウォーリーヒーロー」をはじめ、デビュー・シングル「盛者必衰の理、お断り」などの今年の楽曲から成る、1stフル・アルバムにしてKANA-BOONの存在証明的な1枚。10代に圧倒的な人気を誇る彼らだが、現状に息苦しさを感じるあらゆる人に響くはずだ。
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KANA-BOON
盛者必衰の理、お断り
彗星の如く、という言葉が相応しい快進撃を続ける、大阪は堺から現れた4ピース・バンドKANA-BOON。初の全国流通盤『僕がCDを出したら』から約5ヶ月というインターバルでメジャー・デビューという異例のスピードも、現在の彼らの注目度と楽曲のクオリティやライヴ・パフォーマンスを考えれば当然のことだ。そしてデビュー曲である「盛者必衰の理、お断り」はKANA-BOONの持つ抜群のセンスが冴え渡る楽曲。抜けの良いヴォーカル、思わず口ずさみたくなる語感の良さと人懐こいメロディ、ヒーロー感のあるギター・リフ......非凡な展開でありながらもストレートさを感じさせるのは、彼らが素直に自分たちの気持ち良い音を鳴らしているからなのだろう。10月にリリースされるフル・アルバムにも期待が高まる。
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KANA-BOON
僕がCDを出したら
ライヴで大合唱が起こる人気曲「ないものねだり」でアッパーにスタートし、大きなステージに立っているアーティストと入れ替わる感覚をアレンジでも表現したユニークな「クローン」、ギター・リフのソリッドさと、聴き手ひとりひとりにダイレクトに放たれるストレートなメッセージが痛快な「ストラテジー」「見たくないもの」、アルバム・タイトルのフレーズも含まれる「眠れぬ森の君のため」。そして、ヴォーカルの谷口鮪にとっての歌や思い出の重みや、それゆえの切なさが胸に迫るラストの「さくらのうた」の全6曲。歌詞カードなしでも飛び込んで来る言葉の鮮明さと歌に沿った演奏の音楽的な破壊力。"僕がCDを出したら"その先は......野心と不安のバランスに大いに共感。
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Mrs. GREEN APPLE
ANTENNA
活動再開後、初となるフル・アルバムは初めてタイトルをあらかじめ決めず、感受性を信じ、自由に生み出した曲を緻密に制作で形にしていったアルバムだ。現在進行形のミセスのフル・コースであり、ドーム・ライヴへの期待が否応なく高まる完成度とスケールの大きさが実在している。ハード・ロック・ギターが響き渡る「ANTENNA」もケルト音楽を彷彿させる楽隊調の「Magic」もどちらもドーム・アンセムのスケールを持っているのが今のミセス。宇多田ヒカルにも通じるようなR&Bの先鋭的な構造を持つ「Blizzard」、藤澤涼架(Key)がストリングスとホーンのアレンジに参加している「ケセラセラ」のオーケストレーションの楽しさ、メンバー3人の演奏がメッセージでもある「BFF」など、ブラッシュアップのひと言に止まらない自由な現在地が鮮烈。
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Mrs. GREEN APPLE
Soranji
"我らは尊い。"という言葉は非常に危うい側面も持つと思うが、それが生死の境目にいる人を生の側に繋ぎ止める言葉だとしたら、と想像する。目の前の人にも遠くにいる人にも伝わるか確信がないとき、魂を振り絞って"そらんじる"ことを、壮大なようでいて勘違いをさせない控えめな品性も伴ったアレンジで仕上げたことが、「Soranji」最大の留意点だったのではないだろうか。映画"ラーゲリより愛を込めて"のどんな場面で響くのか期待が募る。2曲目は"フェーズ2"のキックオフに作られたという、Adoに提供した「私は最強」のセルフ・カバー。自身を鼓舞するニュアンスも含まれたまさにアンセムだ。3曲目はミセスがプロデュースするフレグランスが持つ"香階"にあたる音階から誕生。ポップ且つ幻想的な新たな仕上がりだ。
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Mrs. GREEN APPLE
Unity
『Variety』から7年。同作と対になる部分も散見されるフェーズ2の1作目。サビへの飛翔やビート感にらしさを窺わせながら間奏で若井滉斗(Gt)、藤澤涼架(Key)共にブラッシュアップしたリフの応酬を聴かせる「ニュー・マイ・ノーマル」、ホーン・アレンジやカウンター・コーラスやギター・カッティングが鮮やかな「ダンスホール」、高速BPMでasmiとスリリングな掛け合いをする「ブルーアンビエンス」、アトモスフェリックなSEがモダンな印象を添えながら、幹になるバンド・サウンドは骨太な「君を知らない」、「インフェルノ」を洗練させたようなソリッドなマイナー・チューン「延々」、90年代的なピアノ・バラードに大森元貴(Vo/Gt)の本音が刻まれた「Part of me」。再開に相応しい6つの表明と言えそうだ。
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Mrs. GREEN APPLE
5
日本のミレニアルズ~Z世代の不安と理想を映し出しつつ半歩先を走ってきたミセス、結成からの7年を集約。初期の高速BPM且つ情報量の多い「StaRt」や「Speaking」。人間としての成長がおおらかなサウンド・プロダクションに着地した「どこかで日は昇る」、音楽のエンターテイメント性を積載した「Love me, Love you」。ミセスがミセスたる所以とも言える、人の摂理や矛盾にフォーカスする「パブリック」と「アウフヘーベン」という一対の曲。さらに、生身の音を聴かせる新曲「アボイドノート」。初作品収録で今回再録した「スターダム」が冒頭を飾り、ラストにまったくの新曲「Theater」を配置したことにも注目。バンドという概念を更新し続けてきた、"フェーズ1"を凝縮した初ベストだ。
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Mrs. GREEN APPLE
Attitude
オーケストレーションやエレクトロ、R&Bなどウィングを前作で広げ、そもそもミセスがどんな態度=Attitudeで音楽を奏でているかを証明するかのようなアルバム。ギター・ロック成分に驚いた「インフェルノ」やエクストリームな「Ke-Mo Sah-Bee」、より素直なギター・ロック「嘘じゃないよ」、ロマ風の弦のアレンジと日本語に聴こえないAメロがユニークな「Viking」、ヴォードヴィル的な華やかさの中にQUEENを想起させる大仰な転調が盛り込まれた「lovin'」。展開の多さでは「ロマンチシズム」も共通するニュアンスが。また、大森元貴の歌と藤澤涼架のピアノのみで展開する「Circle」のシンプル故の個性。そして、ありのままを定着させた理由は楽曲「Attitude」で確かめてほしい。
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Mrs. GREEN APPLE
ロマンチシズム
2019年第2弾シングルは資生堂"SEA BREEZE"のCMへの書き下ろし。が、CMで流れるパンキッシュなブロックの次にキモになる"愛を愛し"という威風堂々としたサビが登場する。そのあともめくるめく展開を見せるあたりが『ENSEMBLE』以降の曲構成といった印象。加えてラヴ・ソングにも取れるが、根っこには倫理観がしっかり根を張っているのは大森元貴(Vo/Gt)らしい。「How-to」はアグレッシヴなエレクトロとエッジの効いたギター・リフ、トリガー的なドラム・フレーズが拮抗する仕上がりが痛快だ。そして「月とアネモネ」は2014年にすでにあった曲を今回完成させたもの。キメの複雑なポスト・ロック的なパートや大森と山中綾華(Dr)のAOR的なデュエットも聴きどころだ。
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Mrs. GREEN APPLE
僕のこと
2019年第1弾リリースは、大森元貴(Vo/Gt)が"勝負やスポーツに対して曲を書いたことがない"なかで、彼ならではのスタンスで"第97回全国高校サッカー選手権大会"のために書き下ろしたナンバー。そのタイトルが"僕のこと"なのは、自分がどう生きているかを歌うことでしか、エールを送ることができないという意味なのではないだろうか。静かな歌い出しから、ストリングスやホーンも加わったスケールの大きなサウンドが立ち上がるアレンジは、顔を上げると仲間やライバルのいるスタジアムを想起させ、ラストは静かに閉じる。見事な構成だ。アッパーななかに切なさが溢れるミセス節と言えそうな「灯火」、サンプリング的な感覚を生で演奏し、ピアノが存在感を示す「Folktale」も新章を示唆している。
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Mrs. GREEN APPLE
青と夏
ミセスが3rdアルバム『ENSEMBLE』からわずか3ヶ月半でニュー・シングルをリリース。本作では、久々にバンド・サウンドに回帰している。映画"青夏 きみに恋した30日"の主題歌として書き下ろした表題曲は、疾走感溢れるアッパー・チューンで、同映画の挿入歌「点描の唄(feat.井上苑子)」は、しっとりとしたデュエット・ソング。3曲続けて聴くと「ア・プリオリ」だけが異色に感じられなくもないが、前2曲が体現する夏および青春特有の儚い煌きは、大森元貴(Vo/Gt)に"ア・プリオリ"な視点があるからこそ描くことができるものだ。尖った曲だけでなく、多くの人に対して開かれた曲の中でここまで彼らが裸になれたのは、今回が初めてではないだろうか。
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Mrs. GREEN APPLE
ENSEMBLE
音楽そのもので夢や希望や理想を表現すること、それがMrs. GREEN APPLEの指標だったと、そもそもの彼らの志向が実現したことに快哉を叫びたくなる。ミュージカルを思わせる「Love me, Love you」に始まり、1曲の中で楽器編成が変わり、ストリングスも含めすべての楽器が歌うような「PARTY」、ヒップホップやビートに新世代ジャズ的な面白さまである「REVERSE」、MONGOL800のキヨサク(Vo/Ba)を迎えた「はじまり feat. キヨサク from MONGOL800」など、多彩を超えて1曲ごとの強度が凄まじい。そこにこれまでのミセス節が残るシングル群やEDMナンバーも加わり、さながら音楽のアミューズメント・パークが出現。なんとも体験的だ。
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Mrs. GREEN APPLE
Love me, Love you
前作『WanteD! WanteD!』、そしてデジタル・シングル「WHOO WHOO WHOO」でバンドが表現するEDMの究極まで振り切ったミセス。2018年第1弾はまた異なるベクトルに振り切ってきた。まず表題曲の「Love me, Love you」はホーンが煌びやかで、ダイナミックに展開するミュージカルのようなビッグ・バンド・サウンドに驚く。だが、大森元貴(Vo/Gt)の脳内に広がる希望の世界を表現するために、このサウンドスケープや世界観は必然なのだろう。早くライヴで自由にリアクションしたい曲だ。2曲目の「Log (feat.坂口有望)」はドラマ"僕たちがやりました"のサントラも作曲している注目のキーボーディスト/プロデューサー Kan Sanoとシンガー・ソングライター 坂口有望が参加。また「春愁」も初音源化して収録。
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Mrs. GREEN APPLE
WanteD! WanteD!
メジャー・デビュー2年で早くも5枚目のシングルとなる本作。タイトル・チューンの「WanteD! WanteD!」はコミック原作のドラマ・テーマならではの荒唐無稽さもありつつ、"このままでいいのか?"という10代の焦燥感はドラマ"僕たちがやりました"と自然とリンクする内容。大げさに言えばポスト・トゥルースの時代を君はどうやってサバイヴするのか? という命題をエレクトロ・ファンクやモダンなR&BなどUSのトレンドとも符合するタイトなアレンジに昇華したのが新しい。「On My MiND」は随所にデビュー当時からの代表曲「StaRt」をアップデートしたような仕上がりで、過去と今の対比が最もわかるナンバー。加えて大森元貴(Vo/Gt)が中3のときに書き、ついに音源として完成した「光のうた」の明らかな"祈り"のような優しさにも驚かされる。
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Mrs. GREEN APPLE
どこかで日は昇る
ツアー真っ只中のミセスから早くも4作目のシングルが到着。2ndフル・アルバムから「鯨の唄」が新たなスタンダードとして脚光を浴びる今、今回のリード曲「どこかで日は昇る」もスロー・テンポでストリングスが効果的に施されたアレンジなど、"聴かせる"ミセスの真骨頂だが、名曲的なムードに収まり切れないサビでの違和感のある転調や、大森元貴(Vo/Gt)の振り切れるエモーションに彼らの個性を見る。売れない女漫才師が主役の映画"笑う招き猫"主題歌としてもしっくりくる仕上がりだ。打って変わってアッパーで踊れる「スマイロブドリーマ」は、生音とエレクトロニックのいずれもがソリッド且つポップで突き抜けた仕上がり。ビートのアプローチがユニークな「SwitCh」も含め、バンドがどんどんタフになっていく過程を体感できるシングル。
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Mrs. GREEN APPLE
Mrs. GREEN APPLE
これまでの10代の壊れやすくて柔らかい心を誰よりも理解し、並走してきたミセスのエモーショナルな部分はもちろん残しながら、より日本のロック・シーンのトレンドに拘泥することなく、純粋にポップ・ミュージックとしての完成度を圧倒的に上げてきた2ndアルバム。プログレッシヴな展開を持つ「絶世生物」での楽器隊の成長、ストリングス・アレンジも決して大仰に聞こえない歌と演奏のダイナミズムが堪能できる「鯨の唄」や「umbrella」、エレクトロ・サウンドでヴォーカルも全編オートチューンのダンサブルな「うブ」、どこか海外ドラマのワンシーンを思わせる「Just a Friend」など、アルバムの中でピーク・ポイントが何度も訪れる。シングル曲「サママ・フェスティバル!」、「In the Morning」も絶妙な流れで配置されている。
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Mrs. GREEN APPLE
In the Morning
シンセ・ポップの手法を勢いのあるアレンジで消化したサマー・チューン「サママ・フェスティバル!」の明るさから、硬派なメッセージを歌うバンドとしてのMrs. GREEN APPLEの第2章、そんな胸騒ぎがするのが今回の表題曲「In the Morning」だ。よりピアノ・ロック感が増した印象は、他の楽器の音数も曲に必要なものかどうかを吟味したからだろう。楽しいばかりじゃない、むしろちょっとしんどい朝の始まりに、無理矢理笑顔になることなく心を強く前向きに持てる、そんな1曲だ。Track.2の「ツキマシテハ」での思いを言い放つような強い調子の言葉や、ラストの大森元貴(Vo/Gt)の絶唱は表題曲とは対照的だが、対にして聴いてみてほしい。Track.3の「Oz」は寓話的な展開を様々な楽器の打ち込みで膨らませた音像もまさにマジカル。
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Mrs. GREEN APPLE
サママ・フェスティバル!
白飛びするような夏の光と解像度の高い情景が、"サママママ・フェスティバル!"という若干突拍子もない歌い出しとともに、すごいスピードで描き出されるミセス流の夏曲が登場。シンセ・ポップ寄りのアレンジだが、スピード感は加速した印象。加えて、シングルでは各々独立した濃い意味合いを持つ楽曲を収録するというスタンスから、ピアノや弦楽四重奏が効果的に配置された「umbrella」は、大森がいつかのライヴで話していた"音楽を作らずにはいられないが、作ることによって苦しみもする"という心情がうかがえる。もう1曲はライヴでも場面転換的な曲として人気の「ノニサクウタ」が音源化。ミセスの特徴のひとつである"音楽隊"としての魅力を表現した、オーガニックなアンサンブルが楽しめる。
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Mrs. GREEN APPLE
TWELVE
テクニカル且つ踊れるビートのTrack.1「愛情と矛先」や先行シングルのTrack.2「Speaking」で鮮やかに聴き手を受容。そしてライヴのラストなど重要な位置で演奏してきたTrack.3「パブリック」もついに音源化したことから、今のミセスの覚悟が窺える。また、スローなピアノ・バラードに明確に舵を切ったTrack.6「私」の新鮮さ、ミセス流のグランジとも言えるTrack.8「ミスカサズ」のヘヴィネスとソリッドさなど、美しさも黒い感情も振り切ったサウンド・プロダクションで表現。明るくスタートし、徐々に内面に潜り、終盤では未来を見据えるような前向きなニュアンスが訪れるという"体験型"のアルバム構成だ。テン年代ロックの未来を19歳の大森元貴という才能が描いたという意味でも記念碑的。
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Mrs. GREEN APPLE
Speaking
空気を読めるようになるとか、SNS上で尖った言葉にも傷つかないように殻を作ることは本当の強さだろうか。シンセや同期が鮮やかに弾けると同時にこれまで以上に重心の低い太いベース・ラインが心臓が脈打つような印象を残し、サビの"僕には話してよ"から繋がるラテン・テイストなコーラスも相まって、大森元貴(Vo/Gt)の"届け、気づけ"という祈りは音楽的にとてつもない情報量をまとったキャッチーさへ昇華されている。メジャー1stシングルとしてもミセスの声明としても最強だ。Track.2「恋と吟(うた)」は曲作りを始めたころの楽曲で、思いの吐き出し先が音楽にしかない苦しさと表現者の宿命すら感じさせる切実さも。Track.3「えほん」は絵本を通じて無償の愛に包まれたころの記憶と自分もそれを持ち得る微かな光が見える。
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Mrs. GREEN APPLE
Variety
遊園地もしくは高速チェンバー・ポップなTrack.1「StaRt」は些細なことでも幸せと気づけないんならスタートに戻ろうという、ミセスの所信表明。続く「リスキーゲーム」は最も古い曲ながら3度目のRECで最新型に。深い海の底に沈むようなイントロが孤独という本質と"Love Person"の存在を示唆する「L.P」。"鈍感vs繊細"という単純な図式に回収できない自分の命の濃さに翻弄されるような「VIP」、ボロボロになった気持ちにそっと毛布をかけてくれるような「ゼンマイ」、そして"こんな世界を未だ憎めないのは何故か"という歌詞の一節をリスナー自身で見つけるようにラストに用意されている「道徳と皿」の平熱のポジティヴィティ。避けては通れないリアルな心情を変幻自在なポップ・ソングに結晶させた新たな世代の1枚。
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Mrs. GREEN APPLE
Progressive
家族、恋人、友人、同僚、クラスメイト、その他数え切れないほどの人、人、人。不特定多数の人との繋がりの中で傷つき、転がり、そして救われていくことで自分がやっと見えてくる。感情を共有するから喜怒哀楽が生まれる。Mrs. GREEN APPLEは、初の全国流通盤となる今作でそういった大切なことを歌った。作詞/作曲/編曲すべてを手がける18歳のフロントマン大森元貴の鋭いアンテナでキャッチされた混沌とした不安や孤独、敏感な心で感じる大切な人への願いは、5人の眩しい衝動によってすべて音に刷り込まれている。「WaLL FloWeR」で歌われる"素晴らしいと思えるように醜いと思ってみよう"という言葉の通り、肯定する強さを持った彼らの音は燦々と眩しく光っている。
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cinema staff
海底より愛をこめて
ライヴを主軸に音楽活動という名の航海を続けてきた彼らは、突如猛威を振るった新型コロナウイルスにより、その船から大海へと投げ出された。そんな彼らが"海底"から放つ、暗闇の中に光を見いだす本アルバム。先の見えない深海でもがく1曲目「海底」から始まり、"想像力で地上へ"というテーマのもと愛という明かりを頼りに進んでいく。荒波のように激しく緊張感漂うナンバーから穏やかに広がる大海原のように雄大な曲まで、様々に表情を変え展開する挑戦的な楽曲群。そして夜明け前の丘の上で始まりを歌う「はじまりの場所」にたどり着く。コロナ禍をともに彷徨い苦しみながらも乗り越えてきたすべての人々を、素直な感情を吐露した歌詞と深みを増したサウンドで抱きしめる、愛に満ちた12曲。
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cinema staff
白夜/極夜 E.P.
"極夜"とは太陽が昇ることのない状態。逆に"白夜"は太陽が沈んでも暗くならない状態を指す。真逆の現象をタイトルに冠し、陰と陽の心境をメタファーで表現したcinema staffの2021年初となるスタジオ音源。緩急を行き来する緻密なアレンジで激しくも悲しいワルツを描く「極夜」と、新しい一歩を踏み出す意志をエネルギッシュな歌に託した「白夜」は、サウンド面でもバンドの魅力を両軸から浮き彫りにする。バンド初期に演奏していた「DAWN」をソリッドにリアレンジした「NEWDAWN」も含めて、太陽をテーマにしたような統一感のある収録曲が印象的だ。さらに、CD盤には学生時代に、飯田瑞規(Vo/Gt)が作曲を手掛けた初々しい楽曲を収録。バンドの過去と現在が詰まった1枚。
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cinema staff
BEST OF THE SUPER CINEMA 2008-2011/2012-2019
2008年全国デビュー、2012年メジャー・デビューという経歴の中での初のオール・タイム・ベスト。収録されている新曲「新世界」は伸びやかなメロディとソフトなヴォーカルの相性を最大限に生かしつつ、バンドの地に足のついた音像を聴かせる晴れやかな楽曲。冷静に未来を見据え邁進する4人のモードを実感できる。もう一方の新曲「斜陽」は盟友、高橋國光(ex-the cabs/österreich)との共同制作。両者の尊厳と個性が美しく混ざり合った、繊細で慈愛と情熱に満ちた楽曲が生まれた。彼らの音楽人生を描いたであろう高橋の綴る歌詞も、ひとつひとつがパンチラインとして響く。様々な痛みと喜びと迷いに翻弄されながらも、自分の音楽を磨き続けることをやめなかった人間たちの、情操の結晶だ。
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cinema staff
Name of Love
「great escape」以来約6年ぶりにTVアニメ"進撃の巨人"のEDテーマを手掛けるcinema staff。嵐のようなギター・リフが生むカオスの中で、手探りで道を見つけていくような前回のダークなサウンドに対して、「Name of Love」は静謐なピアノと歌で始まる。今回描いたのは"絆"。強くも脆くもある目に見えないものを手にして進んでいく、美しくドラマチックな曲だ。構築的に細部を積み上げながらスケールの大きな曲を描いていく4人の手腕が生きた曲で、アニメの世界観や根底に流れるものを掬い取った内容となった。今作では「great escape」のニュー・ミックスの他、「OCEAN」、「さらば楽園よ」とアニメを思わせる曲を収録。重厚で充実感のあるシングルだ。
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cinema staff×アルカラ
undivided E.P.
長く親交を温めてきた cinema staffとアルカラによるスプリットEP。書き下ろしの新曲、それぞれのカバー、コラボ曲の全5曲が収録された。cinema staff新曲「first song(at the terminal)」は、ソリッドで高いテンションのドラミングと多展開のドラマチックなサウンドを、伸びやかな歌が包み込む。キャッチーで温かいメロディにただ行儀よく収まらない、アンサンブルのパッションが惹きつける。アルカラの新曲「サースティサースティサースティガール」は、爆発的なオープニングからサビでファンクに急展開するトランスフォームっぷり、先の読めなさ、オチのつけ方で唸らせる。この2バンドが互いをカバーし、コラボする曲は、もちろん技もネタも巧妙に仕掛けられていて、味わい、楽しみが尽きない。
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cinema staff
熱源
前作『eve』は初めてプロデューサーを立て、cinema staffの武器である歌、鋭さ、キャッチーさを洗練させた作品を生んだ。今回の6thフル・アルバムは再び自分たちの手で完結した作品だが、そこではこれまでの経験値を駆使したより鋭利な曲と、馬力のあるサウンド、構築的で変化に富んだアンサンブルへの知性が光る。グッド・メロディと幾何学的なサウンドが、ギリギリのところで接着している初期のスリルに引き込まれた人も、歌心や寓話的な物語性の高さに心揺さぶられた人も、爆発的なロック・バンドとしてのスケール感にやれらた人も、満足する作品。その、それぞれのポイントの高いハードルを超えたアルバムだ。"熱源"という果てることのない、マグマのように煮え立ったバンドのクリエイティヴィティを見せつける。
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cinema staff
Vektor E.P.
「エゴ」、「返して」、「ビハインド」の3曲からなる最新EPは、cinema staffのアンサンブルの妙味と歌とのハーモニーをより洗練し、大きく響かせたアルバム『eve』とはまた違った4人の味を引き出している。勢いの面では、初期のころの、互いに一歩も引かずに音のバトルを繰り広げ、せめぎ合う音が刹那な火花を散らすエネルギーがある。それが沸々としたカオス的な暴発感でなく、メロディを際立たせ、微妙な言葉の温度感を伝える繊細な火力を持ったサウンドとなっているのがとても美しい。「エゴ」ではサビのメロディ、肝のフレーズが猛烈な切迫感で耳に飛び込み、「返して」ではもう二度とないかもしれない甘い景色を、その音で痛切に心に刻み込む。叙情的な風景が、閃きのように脳内に広がる1枚だ。
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cinema staff
eve
前身バンドから数えれば、10数年に渡る年月をこのバンドで過ごし、ミニ・アルバムは5作、フル・アルバムとしても4作リリースしてきたcinema staff。5枚目のアルバムは、彼らのキャリアの中でも、より意識的に変化を求め、実践していった作品だ。それぞれが主張の強いフレーズをぶつけ合うアンサンブルと、展開の多い曲構成、泣きの要素で心を掴む叙情的なメロディ、これを絶妙の絡みで聴かせるのがシネマ節。アルバムに繋がるEP『WAYPOINT E.P.』収録の「YOUR SONG」では、シネマ節を超王道のバラードへ昇華した。その過程で培った曲を洗練させる手法が、アルバムの端々に活きている。各曲のチャーム・ポイントたる場所を、最大限引き出して響かせていくアレンジが、バンドのポップ性とヒリヒリとした尖りを露わにした。
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cinema staff
SOLUTION E.P.
リード曲「YOUR SONG」が大きな反響を得た前作『WAYPOINT E.P.』と対をなす今作。彼らのメロウな歌心を最大限強く、且つシンプルに引き出した前作、そして今作のバンド・アンサンブルの妙が織りなす"動"のドラマ、この両極がcinema staffの面白さだ。今作のリード曲「切り札」では、飯田瑞規(Vo/Gt)の上昇していく鮮やかなメロディ・ラインと並走し、デッドヒートを繰り広げる辻友貴(Gt)のメロディアスなギター・フレーズが肝。メロディの両輪がサウンドのスピードを上げ、風を生んでいく爽快さがある。サウンドはラウドでアグレッシヴだけれど、ビートもフレーズもデコラティヴになりすぎず、鋭く磨き洗練されている。プロデューサーを迎え、1曲を徹底してブラッシュアップし、4人の個の音を明快に編み上げたアンサンブルとなっている。
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cinema staff
WAYPOINT E.P.
自分たちの表現を護り、育み、磨き続けてきたcinema staffが、大きな一歩を踏み出した。アレンジをプロデューサーの江口亮へ一任し、それを自分たちなりに消化して作り上げた表題曲「YOUR SONG」。NHK岐阜放送局開局75周年を記念して制作されたドラマ"ガッタン ガッタン それでもゴー"のために書き下ろした主題歌だ。ドラマの世界観に自身の現況や心情を重ねたミディアム・テンポのバラードは、彼らが持っている誠実さ真摯な姿勢を混じり気なくこちらに届けてくれる。様々な人の力を借りて手に入れた方法論を、彼らは今後自分たちのものにするだろう。そのとき彼らはどんな音を鳴らすのか――。それは今はまだ曖昧なヴィジョンかもしれないが、未来は見えないからこそ面白く、自らの手で開拓してこそ喜びがあるのだ。
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cinema staff
blueprint
過去最高に歪んだギター、より地に足の着いたベースとドラム、そしてその4つの音の上で強く響くヴォーカル。"自分たちにしか鳴らせない音楽"を大事にしてきた4人の、活動と年齢を重ねたうえでの変化の結晶がこの『blueprint』、彼らの"未来予想図"である。"今の自分たちが何をするべきなのか"という冷静な視点と、"大好きな音楽/バンドを長く続けていきたい"という純粋な気持ちが作り上げた音と言葉は、ひとつひとつに高い熱量が宿り、4人の気迫が絶え間なく突き刺さる。しっかりと未来を見据えることができた、現在のcinema staffのモードがそのまま結実したアルバムだ。実に清々しく、実に夢とロマンに溢れたダイナミックなリアリズム。そんな勇敢な音色に、心が突き動かされるのは必然なのだ。
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V.A.
残響record Compilation vol.4
全15バンドが新曲を録りおろした残響recordレーベル10周年記念コンピレーション。好きなバンドだけ聴ければいい、なんて思ってるかたはその考えを改めることをお勧めする。なぜなら、もしこの15バンドにあなたが好きなアーティストがいるならば、間違いなくそれ以外の楽曲もあなたのアンテナに触れるはずだから。それこそが残響recordが10年間でリスナー、そしてアーティストと積み上げた"信頼"だ。ポスト・ロックやエレクトロニカの音楽性を持ち、どこか人を寄せ付けない孤高の輝きを放つ危険性、神聖さを持つアーティストが集うという、事件とも言うべきロマンチシズム。残響recordの看板でもあるcinema staff、People In The Boxをはじめ、全アーティストが独自の色を研ぎ澄ました攻めの新曲を投下している。
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cinema staff
Drums,Bass,2(to) Guitars
バンドが始動して10年の歳月が流れた。その間には数々の喜怒哀楽があり、挫けることも少なくなかったかもしれない。だが彼らはどんな時代でも自分たちに嘘をつかず、抱いている想いをそのまま音と歌にし、そのときの最高水準の音源を作り続けてきた。前作『望郷』はそのモニュメント的作品とも言える。そんな大作を作り上げたバンドが手に入れたのは確固たる自信。今作『Drums,Bass,2(to) Guitars』にはそれが満ち満ちた音しか鳴っていないのだ。美しく高らかに鳴り響く4人の音色と、情感豊かな飯田瑞規のヴォーカルは、聴き手を大きく巻き込むポジティヴで晴れやかなパワーがある。サンバ風のリズムや、エレクトリック・シタールを用いたりなど、随所に挟まれる人懐こい遊び心も痛快。大きなバンドになった。本当に。
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cinema staff
borka
4月2日にリリースされるメジャー2ndフル・アルバム『Drums,Bass,2(to) Guitars』に先駆けて、リード曲を先行配信。同曲は「great escape」をプロデュースした亀田誠治と再びタッグを組んで制作された。ものすごい手数で果敢に攻め込むダイナミックなドラミングに、瑞々しく響く2本のギター、ソフトなコーラスが一足早い春の訪れを告げるようだ。亀田誠治のプロデュースにより、いままでcinema staffが積み上げてきたものを更に大きくこじ開ける、洗練された音色になった。いつ帰ってくるかわからない"あなた"を待ち続ける主人公のボルカ。だが4人の音と飯田瑞規の包容力と説得力のある歌声は、そんな悲しみや不安を吹き飛ばすように鳴り響く。ここに存在するのは笑顔と強い希望だけだ。
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cinema staff
great escape
バンド初の書き下ろしタイアップ曲であり、初のプロデューサー起用曲はテレビアニメ版"進撃の巨人"の後期エンディング・テーマ。インタビューで三島想平(Ba)が"ヒーローがたくさんいるような曲にしたかった"と語ってくれたように、速く鋭く感情的に突き進むギター、メロディアスなベース、音全体を引き締めるドラム――全てが各々の輝きを発っており、攻勢的でハードでありつつも非常に開けた楽曲になっている。主人公エレン・イェーガーの心情や物語の持つ勢いや団結力を反映させつつ、実にcinema staffらしいサウンド・メイクだ。上京してからの2年間で感じた思い全てを込めたフル・アルバム『望郷』という、ひとつの到達点を迎えた今だからこそ作り上げることが出来た、実験的かつ挑戦的なナンバー。
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cinema staff
望郷
楽曲の中核を担う三島想平(Ba)は、ライヴで観客に向かい"岐阜県からやってきましたcinema staffです"と挨拶をする。それは彼らが上京してからも変わらない。『望郷』に収録されている楽曲は全てバンドが上京後に考えたこと、作り出したもので構成されているとのことだ。この作品はcinema staff史上、最も不安定な音像かもしれない。だが最も4人の生々しい心情が音と言葉に溢れた、非常にダイナミックな作品である。故郷への特別な想い、故郷を離れてでも追いたい理想、そして葛藤――。ここには環境と心境の変化がもたらした"進化"が現在形で集約されている。何より、感情的な4人の音色がとにかく包み込むようにあたたかいのだ。泣きながら人の涙を拭うような不器用な優しさに、何度も涙腺が緩んだ。
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cinema staff
西南西の虹
cinema staffのダブル・シングルのうちの1枚である『西南西の虹』は4曲入り。タイトル・トラックは昨年からライヴでも演奏されているが、音源で聴くと鋭利な部分だけではなくそこから生まれる優美さがより浮き彫りに。両極端なものが自然と地続きになるのも彼らの魅力のひとつだ。特にリード・ギターの切れ味と速度は目を見張るものがあり、何度も突き刺されるような感覚。スケールのあるメロディも楽曲の持つ力強さを引き出している。つんのめるような疾走感が光るシネマ節とも言える「A.R.D」、ギターの弦を押さえる指の音も優しく響くアコースティック・ナンバー「発端」、バンドの新章を予感させる言葉が耳に残る「いらないもの」。着実に歩んできた彼らの現在位置を示すシングルと言えよう。
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cinema staff
小さな食卓
cinema staffがシングルを2枚を2222枚完全限定で2月20日に同時リリース。そのうちの1枚である『小さな食卓』はCDに同曲を収録。タイトルとLOSTAGEの五味岳久が描くジャケットにもあるように、"食卓"をテーマに歌った同曲。何度もリフレインするギターは流線型を描くように広がり、躍動感のあるドラムはダイナミックに炸裂。緩急のあるベースは包容力を生み出す。4人の阿吽の呼吸が生み出す絶妙なアンサンブルは、家族の風景そのものにも思える。飯田瑞規のヴォーカルも、よくある日常風景をあたたかく優しく、何より明るく響く。身近にいる掛け替えのない人々への愛情と感謝の気持ちに満ちた曲。
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cinema staff
SALVAGE YOU
メジャー・デビュー作である前作『into the green』から3ヶ月弱で届けられたミニ・アルバムは"救い"がテーマ。聴き手を意識するようになった4人の音はより柔らかく、ダイナミックなスケール感を帯びており、バンドがネクスト・ステージに上がったことを如実に表している。明確な意思を発するポップな「奇跡」から、鋭さと激しさとミステリアスが交錯する「her method」、フィクションとノンフィクションの狭間を描く抽象画のような「warszawa」「小説家」へと、どんどん心の奥底へと4人の音が浸透していく。その鮮やかでドラマティックなストーリー展開は、夢なのか現実なのか分からなくなるほどに我々を音の中へと取り込んでしまうのだ。更に振り幅を増し成熟してゆくcinema staffの音像に息を呑む。
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cinema staff
into the green
新曲2曲と過去の代表曲4曲によって構成されたメジャー・デビュー作にして、音楽的にもcinema staffに新たな季節が到来したことを告げるEP。表題曲「into the green」はまさに、ここ数年の彼らが緩やかに、しかし確実に描いてきた音楽的な進化が昇華された改心の1曲だ。バンド最大の特徴であった飯田の透明感のあるヴォーカルに導かれるように流麗な旋律を描くギターは、時にシューゲイザーのような感傷的なサイケデリアを宿しながら、じわじわと聴き手を包み込む。怒りとも悲しみとも喜びともつかない、この独特なエモーションを表現するサウンドは、彼らがスピッツやsyrup 16gに連なる、この国の偉大なるオルタナティヴ・ロックの系譜にあるバンドであることを告げている。
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cinema staff
cinema staff
03年結成の4ピースバンドcinema staffの1stフル・アルバム。セルフ・タイトルを冠した本作は、まさにデビュー作というに相応しく、"海"という生命の源、始まりの場所を目指す希望に満ちた旅を描いている。そのジャケットの通り、冒頭曲「白い砂漠のマーチ」で夜の砂漠から旅は始まり、目指す"始まりの場所"は"海"。そう――これは、始まりへの旅路なのだ。未だ見ぬ生命の源、船出の場所へと近付くにつれて、光と潤いの色が徐々に加わっていく本作の流れ。と同時に、曲が進むにつれ、その足どりがより強くなっていくかのように、より強く、凛と響いていくヴォーカルもじつに勇ましい。そして、ラスト・ナンバー「海について」で約7分にわたり描かれる希望と歓びは、これ以上ない最高の"始まり"を描いている。
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cinema staff
水平線は夜動く
ここ2年間の彼らの活躍には目を見張るものがある。リリースを重ねるごとに、音が一回りも二回りも膨らみを増し、洗練されていくのだ。前作から半年振りのリリースになる今作は"線"をテーマにした4曲入りのコンセプト・シングル。彼らが切り取る4つの情景はどれも一貫として、張り詰めた早朝の真冬の空気に零れる吐息のように柔らかであたたかく、闇の中で深々と降り注ぐ粉雪のように繊細で凛としている。白と黒のコントラストを感じさせる静寂と轟音で彩られた彼らの音は独特なリズムを刻み、どこまでも切なく、どこまでも美しく響き渡る。慢性的な不満を抱えた現実世界に"夢"という魔法を掛けるようなドラマティックな空気感に、完全に飲み込まれ抜け出せなくなった。目を閉じて聴き入りたい、そんな音。
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cinema staff
Blue,under the imagination
社会へと足を踏み出したcinema staffの溢れる衝動は、ひどい熱量を放ちつつも冷静さを内包している。彼らがいわゆる"激情系"を逸脱したのは、その凄然とした冷静さ故だと思う。『Blue, under the imagination』では、深層心理をを丸裸にし、非常に叙情的で完結された形で世界を切り取っている。3枚目にして、触れれば血が噴出しそうな鋭利さは磨きがかかり、より一層の純度が増した。内でうねる心の震えが激情へと高ぶりを見せ、石を投げ込まれた水面の波紋のように破壊力が広がりを見せるのだ。そこには衝動だけで語ることのできない、彼らのドラスティックなまでの確かな意思がある。彼らは知っているのだ。「想像力」こそが、未来へ向かう原動力であり、現実を作りだしていることを。そして、現実に対峙する唯一の手段であることを。"想像力"はやがて"創造力"へと変貌を遂げる。世界はまだ始まったばかりだ。
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ゲスの極み乙女
ディスコの卵
約4年ぶりのフル・アルバムは、ディスコ="踊る"ことがテーマ。彼らの曲は以前から踊れるものだったが、改めてそこに向き合って生んだナンバーたちは、実に洗練されている。それでいてチルなだけでもクラブ音楽でもなく、バンドの持ついい意味の違和感も毒っ気も失わず、彼らにしか作れないディスコ・チューンを届けてくれた。程良く力が抜けた「Funky Night」("Baby I love youの歌メロで/くるりと回った"の詞も嬉しい)、切なく胸を締めつけるメロが美しい「シアラ」、初期の彼らの香りも感じさせつつ今の演奏技術に唸る「歌舞伎乙女」、また「晩春」での"あと何年歌えますか"や「ハードモード」のリリックなど川谷絵音(Vo/Gt)の独白のような言葉も印象的。メンバーそれぞれ活躍の場を広げながらも新作を作り上げた、その熱量に乾杯。
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ゲスの極み乙女
丸
すでにアナウンスされている通り、結成10周年記念のベスト・アルバムは、ゲスの極み乙女。を象徴する名曲25曲のトラックを解体、再構築した35分51秒の1トラック。ちゃんMARI(Key)を中心にこの大工事を行ったそうだが、ほぼ一定のBPMで踊り続けられるダンス・ミックスのようでもあり、四つ打ちにジャズ、ファンク要素を導入したこのバンドの革新性を見せたり、歌メロとは異なる伴奏にあたるトラックを切り貼りしても新たにらしさが生まれたりして、完全にベスト・アルバムの概念自体を転覆させてくれるのだ。加えて、ダークなニュアンスの「青い裸」、アグレッシヴな「発生中」と通常尺のベスト選曲29曲と、mabanuaやSTUTS、PARKGOLFらのリミックスからなるベスト・アルバム『丸』も同時配信。
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ゲスの極み乙女
ストリーミング、CD、レコード
"ここから新しいゲスの極み乙女。が始まります"。今作から「人生の針」を先行公開した際、川谷絵音(Vo/Gt)はこう宣言。そして、またも唸らせられるほど鮮烈な1枚が到着した。「私以外も私」、「キラーボールをもう一度」という代表曲をセルフ・オマージュした曲もだが、音の面ではロック然とした部分が減り、ストリングスを取り入れたり、曲ごとにジャズ、ヒップホップをフィーチャーしたりして、バンドを塗り替えている。それは複数のバンドを同時に動かす川谷ならではのギアの入れ方で、川谷、ほな・いこか(Dr)の歌の表現力、ベース・マエストロとでも言うべき休日課長の豊かなベース・ライン、そしてちゃんMARI(Key)のラップ(!)を含め、4人の音がより研ぎ澄まされたものに。聴き応えしかない。
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ゲスの極み乙女
戦ってしまうよ
天晴、お見事と言うべき完成度。表題曲はアクション・ゲーム"クラッシュ・ロワイヤル"CMソング。歌詞の"3分間"はゲームのルールから引用されたもので、楽曲自体も3分で終結するだけでなく、その間に各メンバーの個性がフィーチャーされた怒濤の展開が詰め込まれている。これだけのアンサンブルをJ-POPとして成立させるという大胆で鮮やかな手腕、メロディと歌詞の相乗効果が生むセンス、これぞ"ゲス乙女の凄み"だと見せつけられるようでもあった。ポップだが緊迫感が漂うTrack.2、シンセと打ち込みのビートが効いたシックなトラックメーカー的サウンド・アプローチのTrack.3、Spotifyでの投稿を機に世界から注目を集める覆面の日本人アーティストAmPmによるリミックスと、c/wも充実。
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ゲスの極み乙女
達磨林檎
達磨は男性、林檎は女性を示すのだろうか。漢字3文字"両成敗"の次は"達磨"と"林檎"を繋ぎ合わせた漢字4文字のタイトル。アルバム全体で東京を舞台にしたラヴ・ストーリーを様々な角度から照射するような作りで、達磨と林檎の共通点である"赤"を彷彿とさせる言葉を始め、"アルコール"と"酒"や"マンション"と"物件"など異なる曲同士にリンクするワードも多く登場する。情景と心情描写に長けたサウンドスケープはさらに艶やかに、プレイはより繊細でテクニカルに。不可思議なパズルのようなアンサンブルは気品高く、川谷絵音(Vo/Gt)+4人の女性によるヴォーカル・ワークも効果的だ。その場の匂いまで立ち込めるような生々しさと、洗練された画角と鮮やかな色味の長編映画を観ているような感覚の両方を味わえる。
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ゲスの極み乙女
両成敗
前作『魅力がすごいよ』が大きな音楽的進化を遂げたアルバムならば、今作『両成敗』はゲスの極み乙女。が元来持っていた遊び心やユーモアを取り戻した作品とも言える。だがそのユーモアの表現方法は『魅力がすごいよ』で得た方法論。プレイヤーとしてのフレージングのパターンも増えてアンサンブルの強度は増し、耳に残る印象的な言葉を抜群の譜割りで乗せるというシングル3作でも立証されていた彼らの個性を磨き上げた楽曲が揃う。ギター弾き語りを基盤にした曲や余韻の残る歌が印象的な曲など一筋縄ではいかないミディアム・テンポ系の楽曲も充実。それは全17曲という曲数だからできることでもあるが、このボリュームでも中だるみを感じさせず聴き心地の良さもある。彼らの音楽性の集大成でもありながら、新たな工夫も散見する意欲作だ。
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ゲスの極み乙女
ロマンスがありあまる
2ndシングルを今年4月にリリースしたばかりのゲスの極み乙女。が早くも3曲入りの3rdシングルを発表。前作も個々のスキル向上やバンドのアレンジ力に驚いたが、今作もそれを凌駕する勢いだ。今作はそれに加えて、ソングライターである川谷絵音の等身大の姿が今までで最も歌詞に投影されている。Track.1は心の内に潜む彼の素直な部分をそのまま音にしたような繊細なメロディと、焦燥感とロマンティックさが混在するバンド・サウンドと合わさり、涙が零れ落ちる瞬間のような美を作り出す。Track.3はシリアスで緊張感のあるギターと鋭いラップが前面に躍り出たスリリングな楽曲。だがサビはトンネルを抜けた瞬間に見える青空のような爽快なポップ感があり、そのユーモア・センスには舌を巻くばかりだ。
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ゲスの極み乙女
私以外私じゃないの
2014年10月にリリースされた『魅力がすごいよ』に続き、バンドの急成長に面食らった。バンドのアンサンブルの強度の上昇はもちろん、各プレイヤーの表現力と音色の拡張が目覚ましい。表題曲は美しいピアノとストリングス、ゴスペル調のコーラスで幕を開けて4人の音が入る瞬間の華やぎ具合は新しい価値観以外の何物でもないのだ。難解で、ある種屈折した展開がこれだけポップに響くのは、プレイヤーのスキルとメロディとサウンドの歯車が噛み合っていることが絶対条件。これをやりこなしてしまう、やはり彼らはとんでもないバンドだ。大きなうねりを見せる流麗なTrack.2、過去曲のリアレンジというよりは別曲とも言えるTrack.3、打ち込みと生ピアノが織りなす幻想的なTrack.4はヴォーカルも新しい。全曲が圧倒的である。
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ゲスの極み乙女
魅力がすごいよ
ゴールデン・タイムに放送された地上波のTV番組で、ゲスの極み乙女。について紹介しているVTRが流れた。そのTVはこう言っていた。"このバンドの最大の魅力は毒っ気の強い歌詞"。世間が評価した"魅力"を磨き続けることを選択する者が多い中、このバンドは更なる高みを求めるために、自身の思う"完璧"なフル・アルバムを作るために、新たな場所へと飛び立った。そしてこの皮肉めいたタイトルを証明し、凌駕する作品を完成させたのだ。等身大の川谷絵音の心情が映し出された歌詞と、初夏のそよ風のように頬を撫でるメロディ、そして4人それぞれの持ち味やキャラクターを爆発させた、それこそロックがもたらす化学反応と衝撃――この作品にはそれらが溢れている。ジャンルを超越した彼らの音楽は、まさしく芸術だ。
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ゲスの極み乙女
みんなノーマル
ゲスの極み乙女。というバンドのバズの起こり方は、他者の力を強く感じるものだった。ネットや実際の口コミにより、たちまち彼らの名前はロック・シーンへ拡散。四つ打ちを取り入れたダンス・ビートという"主流"に、ラップ、ジャズやクラシックのテイストを感じさせるピアノの音色、4人のキャラクターなど、主流からの"ズレ"を次々投入した彼らの音楽は間違いなく新感覚だった。そしてバンド3作目となる今作は、ロック・シーンという狭い枠を飛び抜けるポップ・センスが炸裂。緩急と音の隙間を巧みに操るサウンド・メイクも、4人の顔が浮かぶような人間味のあるそれぞれの音色も、シュールでひりついた川谷絵音のラップも、全てに自信とより羽ばたこうとする覚悟が漲る。これからのバズは彼ら自らが起こしていくのだ。
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ゲスの極み乙女
踊れないなら、ゲスになってしまえよ
今年は彼らの名前をよく聞いた。ゲスの極み乙女。最近は日本語のバンド名が増えているとはいえ、"ん?"と一瞬耳を疑うネーミングセンス。しかも、これがindigo la Endのヴォーカルの別ユニットと聞いてもっと驚いた。本作は、前作『ドレスの脱ぎ方』から9ヶ月ぶりの2ndミニ・アルバム。レーベル資料には"ヒップホッププログレバンド"という言葉が書かれているが、正直、このバンドの音楽性はそれだけではちょっと言い表せない。ヒップホップ、プログレ、パンク、ニュー・ウェーヴ、J-POP、もちろん最近の国産ロック的な要素も入っている。様々な音楽的アイデアが、まるで大喜利でもするかのように無邪気な遊び心で噛み砕かれ、編集され、完成度の高いポップスとして再構築される。まさに新世代的なセンスの塊。脱帽です。
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ゲスの極み乙女
ドレスの脱ぎ方
なんとも救いようがない名前のバンド“ゲスの極み乙女。”indigo la Endの川谷絵音ことMC.Kを中心に休日課長(Ba)、ちゃんMARI(Key)、ほな・いこか(Dr)で結成されたバンドなのだが、音はindigo la Endのそれとは完全に別物。ファンクやヒップホップなどを通過した硬質なグルーヴと、柔らかなメロディが同居した唯一無二の“ヒップホップ・プログレ”なサウンドに仕上がっている。全パート自由度の高いアプローチを一聴すると好き勝手にぶつけているようにも感じるが、しっかりとまとめあげるセンスに脱帽。踊らせるだけのダンス・ミュージックとも、共有するためだけの作為的なフックに満ちたロックとも一線を画したただただ遊び心に溢れた最高に“ゲス”な作品。
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