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LIVE REPORT

Japanese

cinema staff

Skream! マガジン 2014年01月号掲載

2014.01.18 @SHIBUYA-AX

Writer 沖 さやこ

月並みな言葉で恐縮だが、素晴らしいライヴだった。三島想平(Ba)はMCで、去年発表された新バンド・ロゴの頭にある、4つの三角形が作り出す正方形には"代え難い4人"という意味が込められていると語った。三島、辻友貴(Gt)、飯田瑞規(Vo/Gt)によりバンドが始動し、今年度で10年目。自分たちが信じる道を選び取り、もがき悩み苦しむことも少なくなかったかもしれない。だが彼らは揺らぐことなく、着実に、堅実に歩んできた。このSHIBUYA-AX単独公演はその証とも言える、特別な夜になったのではないだろうか。

広いAXのステージに、普段通りの4人のセット。開演前のBGMには辻が運営するレーベルlike a fool recordsからリリースされたばかりの、MEMORY MAPのアルバム『The Sky As Well As Space』が流れていた。暗転すると普段通り、Climb The Mindの「萌える傘の下」がSEとして鳴り響く。バックにある4つの白熱灯の照明が作る荘厳な空間に、メンバーが登場。ゆっくりと音を重ね徐々に厚みを出してゆくと、ソールド・アウトした満員のフロアも少しずつ前方へと押し寄せる。1曲目「KARAKURI in the skywalkers」。久野洋平(Dr)は手数や音量を巧みに操り緩急のあるリズムで魅せ、辻はステージのきわまで身を乗り出しギターを衝動的に鳴らす。何よりまず驚いたのが、飯田の歌だった。もともと歌唱力があるヴォーカリストであるが、この日はより深く強い意志が内包された透明感のある歌を聴かせる。もしかしたらこのライヴはとんでもないものになるのでは......と思っていると三島の"岐阜県から来ましたcinema staffです、よろしくお願いします"という、これもいつも通りの挨拶から「great escape」が投下。同時にバックにはバンド・ロゴをあしらった巨大なバックドロップが降りてきた。三島のベースはサウンドを牽引するように鋭く攻め、辻は背中から転倒するもそんなことは物ともせずギターを弾き続ける。凄まじい緊張感。その張りつめた空気の原因は"歓喜"でしかなかった。ここに辿り着いたことへの歓喜、いま目の前にいる人々への感謝、そういうポジティヴなエネルギーしかここには存在していなかったのだ。

轟音にも埋もれない飯田の開放的で堂々としたヴォーカルが胸を抉る「想像力」。三島と久野はアイ・コンタクトを取りながらリズムでより音の箔を付ける。フロアに向かって嬉しそうに"アックス~!"と叫んだ飯田が"どんどんやります、ついてきて"と続けると「AMK HOLLIC」「白い砂漠のマーチ」。エッジィでありながらもしなやかに展開していく美しさ。安直な言葉であるがこれはもう"格好いい"としか言いようがない。cinema staffが積み上げてきた、cinema staffなりの、cinema staffでしかできない美学が成立していた。

三島は、約6年前に150人キャパの新栄Club Rock'n Rollからスタートした"two strike 2(to) night"が、その10倍でもある規模で開催できたこと、それがソールド・アウトしたことに感謝を伝えた。「into the green」「バイタルサイン」「salvage me」では、戦い続けた人間だからこそ放てる切実な強い光で多幸感を生み、飯田がエレアコを抱えた「制裁は僕に下る」「daybreak syndrome」では、琴のような繊細なその音色と辻の幻想的なギターがドラマティックに響く。4人全員が誰も引かない、その光景に暫し魅惑された。辻の破壊的なリフからスタートした、ふくよかさと尖りが同居したスピード感のある新曲「dawnrider」で、よりシンクロしてゆく4人の音色に貫録が生まれる。フロアからシンガロングとクラップが起こった「ニトロ」から、「奇跡」「優しくしないで」「西南西の虹」とエモーショナルに繋ぐと、高校時代に書かれたというバンドの歴史の始まりの曲「AIMAI VISION」へ。この曲の演奏前に三島は改めて"岐阜県から来ました、cinema staffです"と告げた。ここを根幹に10年間、彼らは奇跡に頼らず、一歩一歩踏みしめてきたのだ。普段通りのなかから生まれる新しさが、煌びやかに花開いていた。

アンコールで「dawnrider」を含めた3ヶ月連続の配信リリースと、ニュー・アルバム『Drums,Bass,2(to)Guitars』のリリース、全国ツアーの開催とファイナルがZepp DiverCity TOKYOであることも発表された。上京後に感じ、考えたこと、故郷への特別な想いが込められたアルバム『望郷』、その充実感と達成感で迎えた全国ツアー、より存在を知らしめた『great escape』、地元岐阜で開催した自主企画"OOPARTS 2013"、そしてこのSHIBUYA-AX単独公演――"2014年来るバンド、cinema staffです"という飯田の言葉通り、バンドはこの先も変わらぬ激情でより広い世界へ、それこそ"地図にない場所"へも突き進んでゆくだろう。

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