Japanese
cinema staff × アルカラ
Skream! マガジン 2018年09月号掲載
2018.08.03 @LIQUIDROOM ebisu
Writer 沖 さやこ
互いの音楽活動をリスペクトし、レーベルの壁を越えてスプリット盤『undivided E.P.』をリリースしたcinema staffとアルカラ。その2組による全国14ヶ所にわたるスプリット・ツアーの初日が恵比寿LIQUIDROOMにて開催された。バックドロップには2組のロゴが青字と赤字で書かれ、赤い照明が当たると青字でcinema staffのロゴが、青い照明が当たると赤字でアルカラのロゴが浮き出るという開演前の演出も小粋だった。
先攻はアルカラ。「はじまりの歌」からライヴをスタートさせ、ユーモアと緊迫感でじわじわと攻め入る。それぞれのプレイヤーが出す1音1音の強さ、そこで存在感を失わない鮮やかなヴォーカル――ロック界の奇行師は、音色もリズムもメロディも奇術のように巧みに操った。稲村太佑(Vo/Gt)がツアーについて"夏の花火のように甘く華やかでリトル酸っぱいツアーにしたいと思います"と語ると、「サースティサースティサースティガール」など3曲を演奏。曲中ではソロ回しを兼ねたメンバー紹介を組み込んだり、cinema staffと台湾ライヴに行ったときに空港で購入した音の出るおもちゃの音声を流したりと、ポップな側面も欠かさない。飄々としているのにエモーショナルで、かわいげがあるのにひりついたサウンドスケープはたちまち会場すべてを掌握した。
6曲演奏し終えたところで稲村は言葉を巧みに操りテンポよくMCを展開。cinema staffが岐阜出身であることから織田信長にかけて"「泣かぬなら殺してしまえホトトギス」にならんように、しっかりいい音鳴らしていこうと思てます"と言うと、観客からも大きな歓声が起こった。ラストは「アブノーマルが足りない」など5曲を畳み掛ける。途中cinema staffの楽曲「シャドウ」を挟み込むと、それに触発されたcinema staffの辻 友貴(Gt)がステージ袖からフロアに飛び込む場面も。デッドヒート感や暴動感もありながら冷静さを感じさせるところにアルカラのクレバーさが光っていた。
後攻cinema staffは、EPでアルカラがカバーした「great escape」でライヴをスタートさせる。食らいつくようなライヴをすることが多い彼らだが、この日は頭から最後までずっと無邪気にこの日を楽しんでいた。華やかなヴォーカル、繊細なコーラス、細やかでありながらしなやかでダイナミックなリズム隊の音像などが隅から隅まで晴れやかに響く。そのあとも自分たちの歴史をダイジェストのように見せるセットリストを届ける。
久野洋平(Dr)は"今回は2バンドとみなさんで贅沢な大人の遊びをさせてもらっていると思っています"と語り、飯田瑞規(Vo/Gt)も"このツアーは楽しむことに身を委ねたいと思っています。あなたたちとも一緒に楽しみたい、ついてきて!"と観客へ呼び掛ける。三島想平(Ba)が"アルカラに愛をこめて!"と叫ぶと、EPにも収録されているアルカラの「チクショー」のカバーを披露。気合が漲った演奏にリスペクトが溢れていた。そのあともアッパーな楽曲を立て続けに奏で、熱を切らさぬまま「first song(at the terminal)」で本編を締めくくった。
アンコールではメンバー全員がそれぞれ"夏のビーチに行くなら?"をテーマにしたレジャーの装いで登場。稲村の奔放なトークを中心に笑いだらけの漫談を繰り広げたあと、最後にコラボ曲「A.S.O.B.i」をハッピー感たっぷりに披露した。それぞれのワンマンでは見ることができない、親交のあるツーマンだからこその光景だらけのスプリット・ツアー初日。ファイナルの岐阜ではとんでもないグルーヴが生まれているかもしれない。
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バンドが始動して10年の歳月が流れた。その間には数々の喜怒哀楽があり、挫けることも少なくなかったかもしれない。だが彼らはどんな時代でも自分たちに嘘をつかず、抱いている想いをそのまま音と歌にし、そのときの最高水準の音源を作り続けてきた。前作『望郷』はそのモニュメント的作品とも言える。そんな大作を作り上げたバンドが手に入れたのは確固たる自信。今作『Drums,Bass,2(to) Guitars』にはそれが満ち満ちた音しか鳴っていないのだ。美しく高らかに鳴り響く4人の音色と、情感豊かな飯田瑞規のヴォーカルは、聴き手を大きく巻き込むポジティヴで晴れやかなパワーがある。サンバ風のリズムや、エレクトリック・シタールを用いたりなど、随所に挟まれる人懐こい遊び心も痛快。大きなバンドになった。本当に。(沖 さやこ)
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4月2日にリリースされるメジャー2ndフル・アルバム『Drums,Bass,2(to) Guitars』に先駆けて、リード曲を先行配信。同曲は「great escape」をプロデュースした亀田誠治と再びタッグを組んで制作された。ものすごい手数で果敢に攻め込むダイナミックなドラミングに、瑞々しく響く2本のギター、ソフトなコーラスが一足早い春の訪れを告げるようだ。亀田誠治のプロデュースにより、いままでcinema staffが積み上げてきたものを更に大きくこじ開ける、洗練された音色になった。いつ帰ってくるかわからない"あなた"を待ち続ける主人公のボルカ。だが4人の音と飯田瑞規の包容力と説得力のある歌声は、そんな悲しみや不安を吹き飛ばすように鳴り響く。ここに存在するのは笑顔と強い希望だけだ。(沖 さやこ)
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バンド初の書き下ろしタイアップ曲であり、初のプロデューサー起用曲はテレビアニメ版"進撃の巨人"の後期エンディング・テーマ。インタビューで三島想平(Ba)が"ヒーローがたくさんいるような曲にしたかった"と語ってくれたように、速く鋭く感情的に突き進むギター、メロディアスなベース、音全体を引き締めるドラム――全てが各々の輝きを発っており、攻勢的でハードでありつつも非常に開けた楽曲になっている。主人公エレン・イェーガーの心情や物語の持つ勢いや団結力を反映させつつ、実にcinema staffらしいサウンド・メイクだ。上京してからの2年間で感じた思い全てを込めたフル・アルバム『望郷』という、ひとつの到達点を迎えた今だからこそ作り上げることが出来た、実験的かつ挑戦的なナンバー。(沖 さやこ)
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cinema staffがシングルを2枚を2222枚完全限定で2月20日に同時リリース。そのうちの1枚である『小さな食卓』はCDに同曲を収録。タイトルとLOSTAGEの五味岳久が描くジャケットにもあるように、"食卓"をテーマに歌った同曲。何度もリフレインするギターは流線型を描くように広がり、躍動感のあるドラムはダイナミックに炸裂。緩急のあるベースは包容力を生み出す。4人の阿吽の呼吸が生み出す絶妙なアンサンブルは、家族の風景そのものにも思える。飯田瑞規のヴォーカルも、よくある日常風景をあたたかく優しく、何より明るく響く。身近にいる掛け替えのない人々への愛情と感謝の気持ちに満ちた曲。(沖 さやこ)
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新曲2曲と過去の代表曲4曲によって構成されたメジャー・デビュー作にして、音楽的にもcinema staffに新たな季節が到来したことを告げるEP。表題曲「into the green」はまさに、ここ数年の彼らが緩やかに、しかし確実に描いてきた音楽的な進化が昇華された改心の1曲だ。バンド最大の特徴であった飯田の透明感のあるヴォーカルに導かれるように流麗な旋律を描くギターは、時にシューゲイザーのような感傷的なサイケデリアを宿しながら、じわじわと聴き手を包み込む。怒りとも悲しみとも喜びともつかない、この独特なエモーションを表現するサウンドは、彼らがスピッツやsyrup 16gに連なる、この国の偉大なるオルタナティヴ・ロックの系譜にあるバンドであることを告げている。(天野 史彬)
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初のフル・アルバム『KAGEKI』を引っ提げて開催された全国ツアーのファイナル、Zepp DiverCity TOKYO公演の模様を収めた映像作品。"ツアー前に起こったKAGEKIな出来事"により、会場に集まった人の多くが不安を抱えていたであろうこのライヴだが、1曲目「3017」の1音目でその不安を払拭してのける様が痛快。サポート・メンバー 為川裕也(Gt/folca)のサウンドメイクが原曲に寄り添っているところには、アルカラへの愛とリスペクトが感じられる。事前に出演が告知されていた9mm Parabellum Bulletの滝 善充(Gt)に加え、菅原卓郎(Vo/Gt)とHEREの武田将幸(Gt)も乱入し、カオスなお祭り騒ぎとなったアンコールも必見。アルカラというバンドがなぜこんなにも愛されているのか、その答えがここに詰まっている。(大木 優美)
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おいおい!どうなってんだ!?やはり"ロック界の奇行師"を自称するだけに、思いもよらない展開をしてくれるぜ!前作『フィクションを科学する』から約7ヶ月という驚異的なスピードでアルカラが新作『こっちを見ている』をリリースする。フロントマン稲村太佑の脳内だだ漏れ状態か?この猪突猛進がさらなる高みへの鮮やかなステップ・アップであり、激エモな楽曲の疾走感にも反映しているようだ。映画『アベックパンチ』の挿入歌にも決定した「半径30cmの中を知らない」を中心に繰り広げる大胆かつ繊細なアルカラ・ワールド。奔放すぎておかんの声からピー音(放送禁止に使うアレ)まで入るとは、ホント馬鹿だな~(褒め言葉!)。これはライヴ映えする力もハンパないから、借金してでも生を体感するべし!(伊藤 洋輔)
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嘘か真か、インタビューで語ったように"心で歌う"姿勢がそうさせたのか。アルバムとして3枚目の今作は、これまでの圧倒的なハイテンションで突っ走るような勢いを緩め、メロディアスな世界観を強調した作風となった。9mm Parabellum BulletとSyrup 16gの中間に位置付けられそうで、疾走感を期待するとやや肩透かしを食らうかも。だがしかし、この変化で露わとなったのは、聴けば聴くほど旨みが増すような、するめいか状態の味わい深い叙情性。「大久保のおばちゃん」や「はてない」に印象的だが、メロディアスなサウンドと日常のささやかな心情を掬う文学的な詩世界が絶妙に相まり、いつかの原風景を引き出すだろう。全体をみるとストレートなロックン・ロール「キャッチーを科学する」は軽いご挨拶って感じで、ニクイね!(伊藤 洋輔)
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神戸出身の四人組、アルカラの2ndアルバム。尚、同時に1stアルバム「そうきたか」も再プレス&リリースされている。"ロック界の奇行師"と呼ばれているだけあって、確かに変わったことしてるな~という印象。「マゾスティック檸檬爆弾」では、2ビートを久々に聴きました。そこからの展開もめちゃくちゃ面白いし。プログレッシブというんじゃないんだけど、複雑怪奇なバッキング。その割に、ヴォーカルラインは覚えやすくてフックが満載なところも、賢いというか、狡猾というか。王道的バラードもいい曲ではあるんだけど、やっぱり(いい意味で)"変"だな~っていう曲の方が輝いて聴こえてきます。普通のロックに飽きちゃったんだよねっていう気持ちがバシバシ伝わってくるだけに、今後の更なる飛躍に期待が出来そうです。(杉浦 薫)