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INTERVIEW

Japanese

アルカラ

 

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Member:稲村 太佑(Vo/Gt) 田原 和憲(Gt) 下上 貴弘(Ba) 疋田 武史(Dr)

Interviewer:吉羽 さおり

結成15周年を迎えた"ロック界の奇行師"アルカラが、アルバム『KAGEKI』をリリース。全12曲、そしてボーナス・トラックでもちょっとしたトリックが仕掛けられており、15年、何かの型にはまることなく、奇天烈にしてキャッチーなロックを生んできた、彼らの自負みたいなものが詰まっている。3コードのロックをやっても、どういうわけか想像を超えたところに着地したり、突然のハードコア・ナンバーがあったり、BPMが曲中で劇的に変わったり、かと思うと詩情的で美しい曲でも射抜く。めくるめくとはこのことで、そのサウンドや世界観で聴き手を虜にする。そんな"KAGEKI"なアルバムが完成した。

-結成15周年にして、これが初のフル・アルバムだという『KAGEKI』が完成しました。充実した内容なのはもちろんですが、これが初のフル・アルバムだったというのは、意外というか驚きでした。

稲村:そうですね、いつもは8曲プラス1曲という感じやったんです。去年はアルバムというもの自体を出していなくて。同じように今までとやってしまってもな、というところもありながら。一応録る前に、8の倍で16曲はさすがにやから、1.5倍の12曲というのはどうかという──普通、アルバムは曲数を決めて録り始めないですけどね。誰が言い出したか、なんでそうなったか今思えば全然覚えてないんですけど。

-(笑)

稲村:12でいこうやみたいな。勝手に青写真と風呂敷だけ広げてやり始めたのが、今回でした。

-これまでの8曲入りも、アルカラの場合、十分にフル・アルバムと言っていいくらいのボリュームで濃い内容でしたけどね。

稲村:内容的に今までも、あっさりしている曲というよりは、こってりしている曲が多いなと。アレンジにしても、そこは曲が伝わる方向を選んだ方がいいんじゃないかというところも、むしろ詰められるところは詰めて、引き算するところは引き算して、足し算と引き算の醍醐味を感じてもらおうみたいな。音楽的な、ドラマチックな展開であるとかを意識していたんです。だから8曲でも、ボリューミーだったなという気はしていたんですけど、今回ただ同じように8曲で、プラス4曲ねとやってしまうのは違うし。僕らが聴いて育ってきたアーティストは、30周年とか40周年とかもいるんですけど、15周年で、ようやくそこの仲間入りの一歩目ができたと思うならば、今までやってきた定番、アルカラってこうだよねっていうことをやり続けるのと、新鮮さを織り交ぜていけるのが、ミソかなというのがありながら12曲という形になりました。

-結果的に、今回どのくらい曲を作ったんですか。

稲村:プラス5、6曲はあったかな。

下上:そうやね。

稲村:ウクレレ・ベースを使ったりとか、みんながいろんなアコースティック楽器を持ち寄った感じでやろうかっていう曲が最終日までずっとありながら、結局その曲が出てこなかったり(笑)。そういう感じで、曲という形まではいかなくとも、ワンフレーズだけというのもいくつかありましたね。前作、前々作くらいから作ろうとしていて、全然作らん曲があったり。アルバムなので、ある程度ひとつの作品としての雰囲気というか、ストーリー性があるようにしたいと考えると、入らない曲があったり。ちょうど半年前くらいがアニメの曲をやらせていただいた時期やったんですけど(アニメ"ドラゴンボール超"エンディング・テーマに起用された「炒飯MUSIC」)。シングルを出したら、そのシングルがアルバムにも入ってきて、例えばシングルが3枚出てアルバムみたいな流れがあるじゃないですか。そういう考えでいけたら、アルバムってもっと簡単なんやろうなと。そういうのがまったくなかったから。

疋田:なかったな(笑)。

-そのなかで今回の12曲は、どの曲から形になっていったのでしょうか。

稲村:頭の4曲、「3017」、「HERO」、「キリギリスのてんまつ」、「如月に彼女」に関しては、ある程度あったんじゃなかったかな。この4曲を最初のターンで録って。全12曲なんですけど、もう弾切れなので前のシングルに入れた「LET・IT・DIE」という曲がアルバムに合いそうだし、時間が余るから録っておいていいですかみたいな感じだった気がします(笑)。

-この頭4曲はアグレッシヴで、アルカラというものを勢いよく出していますね。

稲村:そうですね。前のシングルがアニメのテーマ曲で、アルカラのファンシーな部分、おちゃらける部分、音楽ってここもOKなんだよっていう部分と音楽性の掛け算というか。よく聴くとこのコード感って絶対ないやんっていうのを、自分らなりに編み出しながらやっていたんですよ。でも今回は逆に、もっとロックにというか。BRAHMANの新曲が出る前日に、打ち上げの会場で(ドラムの)RONZIさんに会って、"これ、いい曲だろ"って話をしていたら、RONZIさんが、"アルカラは「チクショー」っていう曲なんだよ!"って言うんですよ。「チクショー」(2008年リリースの2ndシングル表題曲)って3コードの勢いある曲で、最初にアルカラでコピーするなら誰もがやりやすい曲なんですけど、"アルカラは「チクショー」だよ"ってRONZIさんに延々と言われたので、そうかなと思って。この頭らへんの曲は何も考えずに、こうだろうなって思うやつを作ってますね。

-思わぬところからのインスパイアでした(笑)。こういう曲は形になるのも早いんですか。

稲村:とりあえず鼻歌と仮歌を入れるのは早いんですけど、曲調と最終的な歌の方向性が決まるまでは暫定アレンジになるので、もう100曲近く書いとったら、何歌ったらええかよくわからなくなってくるんですよね。同じような歌ばかり歌ってもしゃあないなって気持ちになって。わかりやすく、聞こえやすくやろうというのも一番でしたけど、今回はなるべく"こんな歌詞書かんやろうな"というところを選んでいこうと頭に置きながらやっていましたね。あとは、12曲あるので、1月から12月までを自分なりの裏テーマにしながら、季語とかを調べて、季節感を感じられる文学的なところも織り交ぜてはいます。

-そんな細かな仕掛けがあったとは。

稲村:ただ、12ヶ月でひとつひとつ季語を調べていったら、2月の季語といっても2月と限定できるものと、1〜3月くらいのことをいうんだよっていうのがあったりとか、話が深すぎて。にわか俳句野郎にはできへんなと途中でわかったので。季節感を感じられる、春夏秋冬でいこうと途中で変わっていきました。