Japanese
アルカラ
Skream! マガジン 2012年12月号掲載
2012.11.04 @渋谷O-EAST
Writer 大島 あゆみ
バンド初のワンマン・ツアーのファイナル、渋谷O-EAST。場内は2階席までびっしりと観客が詰め寄せ、いまにも炸裂しそうな熱気が漂っていた。
橋本潮の「ロマンティックあげるよ」をSEにメンバーが登場すると、タイトルの“ドラマティックあげーるよ”に歌詞を替えてカヴァー。のっけからガッチリと観客の心を鷲掴みにすると、稲村太佑(Vo/Gt/Vn)がタンバリンを首にかけ準備万端の表情で“イエーイ!渋谷!ついにこの日が来たぞー!”と叫び、「いびつな愛」からスタート。客席はまるで1つの生命体のように一体となって脈を打つようにうねり、「踊れやフリーダ」では割れんばかりのクラップが起こり、「チクショー」「癇癪玉のお宮ちゃん」でダイバーが続出。序盤から狂喜乱舞状態の絶景が広がるなか、その熱量に応えるように渾身のプレイを見せるリズム隊と稲村と田原和憲(Gt)のフリーキーなギター・アンサンブルは、ますますエッジィでスリリングな音となって場内に轟かせていった。
「キャラバンの夜」では、稲村はシルクハットを被りヴァイオリンを構えて登場。「380」と2曲を演奏し、ジャジーかつシンフォニックなひと味違った粋なパフォーマンスを披露しつつ、ゲストで登場した元ピストルバルブ、現lie down a secondのジェニ(Vn)とfolcaの為川裕也(Gt)を“僕のおとんです!おかんです!”と紹介。稲村は終始とんちの効いたトークで会場を沸かしていたが、ムードたっぷりのメロディにのせてシュールな子供心を歌った「授業参観」へと続くと一転してディープで独創的な世界観でオーディエンスを魅了する。「ミックスジュース」ではステージ前面に出て会場一体となって盛り上がり、シリアスかつエモーショナルなバラード「扉の前にて」から、終盤を一気に駆け抜けていった。“最後に未来の歌を”と言って演奏されたのは、「ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト」。かき鳴らす音とともに歌詞を口ずさみながらプレイする姿は、今回のツアーに込めた思いと募らせてきたパッションで満ちていた。
アンコールでは、ベレー帽を被り首にバンダナを巻いたボーイスカウト・ルックの稲村が“ドラマチックあげるよって言いながら、もらったのは俺たちのほうでした!”と語り、O-EASTでライヴをすることへの思いを赤裸々に話す場面もあった。そしてkatyushaのえつこ(Key)と為川をステージに招き「ボーイスカウト8つの掟」をプレイ。カラフルでハッピーなメロディで観客の胸をくすぐり、大団円のなかライヴを終える。それでもなお鳴り止まないアンコールのなか、ひょいっとステージに表れた稲村。“暴れたあとは柔軟体操やろ!”と叫ぶと、知る人ぞ知る“ポキポキダンス”を踊って満足げに去っていった。
最後にステージ脇に、ツアー初日からの裏側と各会場でのライヴのハイライトが映し出される。その充実の内容に、まだまだエネルギーに満ちた客席からはライヴの終わりを感じさせない熱を放っていた。同時にその熱は、本公演がバンドにとって節目でありシナリオの一部分であることの証のようだった。まだまだ続くアルカラのドラマに、今後も注目したい。
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