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LIVE REPORT

Japanese

稲村太佑(アルカラ) / 柴田隆浩(忘れらんねえよ)

Skream! マガジン 2021年09月号掲載

2021.08.10 @下北沢LIVEHOLIC

Writer 秦 理絵 Photo by 清水舞

開口一番、あいさつ代わりの"セックス!"で始まった、忘れらんねえよ柴田隆浩(Gt/Vo)のソロ・ステージ。"あ、声は出せないですよね、本当は大爆笑ですよね"。フランクに喋り掛けながら、1曲目の「バンドワゴン」を歌い始めた。立ったまま、エレキ・ギターをかき鳴らす柴田の弾き語りのスタイルは、醸し出す雰囲気も、訴える感情も、バンドのときとまるで変わらない。「この街には君がいない」も、「北極星」も、そうだった。美しいメロディにのせたストレートな歌詞が、ざわざわとした気分を代弁して、心の真ん中にストンと落ちてくる。
"あんたが生きてるそれだけ それだけでいいから"と、目の前にいる人たちの味方であることを歌った優しいナンバー「世界であんたはいちばん綺麗だ」は、柴田にしか歌えない中盤のハイライトだった。さらに、夢に好きな人が出てきたことを書いたという未発表の新曲をライヴで初披露すると、"またその人の歌じゃん"と言いながら、「なつみ」に繋いだ。

MCでは、この日の対バン相手であるアルカラ稲村太佑(Vo/Gt)について、"最初は怖かったんですよ、髪型が"と笑いをとりつつ、ツアーに呼ばれたことをきっかけに交流を深めたことに触れ、"超後輩思いで優しい"と熱い口調で語った。ラスト2曲。彼らのライヴには欠かせない「この高鳴りをなんと呼ぶ」のあと、"テレビをつけても、SNSを見ても、文句言ってるやつばっかり。そんなことより楽しいことをやりますから、ライヴハウスに来てください"と届けたラストの「忘れらんねえよ」では、シンガロング部分で、"心の中で歌って!"と訴え、伴奏を止めた柴田。会場が静まり返るなか"ほら、かっこいじゃん。大丈夫だよね、俺らね"と、確かめ合うように訴えた言葉に胸が熱くなった。

アルカラ稲村は浴衣姿でステージに現れた。アコースティック・ギターをスタンバイすると、「振り返れば奴が蹴り上げる」と「ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト」から、ライヴが始まった。ギターのボディをパーカッションのように叩き、到底ひとりで演奏しているようには聴こえないテクニカルなプレイで、一瞬にして会場をアルカラの色へと塗り替えていく。"夏だからこの曲をお届けします"と、「阿弥陀ワルツ」へ。怪しげな照明を浴びながら、不気味に揺れる3拍子。首に掛けたタンバリンを叩き、口笛を吹き、ギターを身体の一部のように操りながら、真夏の怪談ショーのような空間を作り上げた。
中盤は、コロナを機に自身のYouTubeでカバーにも挑戦していることに触れて、まさかのBTS「Butter」を弾き語りでカバーした。今、韓国の文化にハマっているという稲村は、"愛の不時着"に出演していたヒョンビンがお気に入りだという。それまでとは一変、フロアをダンス・フロアに変えるクールなカバーを歌い切ったあと、"「楽しい」は自分で作るものなんでね。「自分で」って、人の曲だけど(笑)"と稲村。こんな時期だからこそ、ひとりひとりの"楽しい"を大切にしようと訴える想いは、先ほどの柴田にも通じるものがあったように思う。
"「サイレス」(※ゲーム"ファイナルファンタジー"の相手を沈黙させる魔法)をかけられた状態のみなさんに楽しんでもらう方法を考えました"と、グーチョキパーのジェスチャーで会場を一体にした「交差点」のあと、ラスト・ソングは「夕焼いつか」だった。どこか懐かしさを感じるミディアム・テンポにのせて歌い上げるのは、前にしか進まない時間の中で汗を流し、誰かを愛しながら、やがて訪れる終わりを思い、生きるということだ。それは様々な表情で魅了したステージの締めくくりに相応しい、あまりにも美しく、生命力に満ちた名演だった。

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