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INTERVIEW

Japanese

ASIAN KUNG-FU GENERATION

2018年10月号掲載

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Member:後藤 正文(Vo/Gt)

Interviewer:石角 友香

シングルとしては『荒野を歩け』以来、およそ1年半ぶりのリリースとなるが、オリジナル・アルバムに先行するという意味では2015年3月の『Easter』、つまり前作アルバム『Wonder Future』で展開したひとかたまりの世界観のその先が、今回の『ボーイズ&ガールズ』と言えるだろう。取材時はまさにアルバム楽曲のレコーディングやミックスの追い込み中。サウンドの更新で、いかに今のアジカンを表現するか? に腐心する後藤正文は、"ひとりで取材を受けるとそのことばかり話してしまう"と苦笑していたが、このシングルで最も惹きつけられるのもその部分だ。近年とはまた違うバンドへのスタンスを、アルバムの予告編的な発言から感じ取ってほしい。

-絶賛アルバム制作中にシングルの取材となりましたけども、よろしくお願いします。

そうですね。新しい音像を作ろうとしてるので、既存のところに飛び込んでいくと不具合が出てて。今回はちょっと悩みが深いんですよね(笑)。曲や詞には一切出てないんですけど、サウンド面の悩みが深くて。楽曲自体はすごくヘルシーに聴こえるはずなんですけど。

-今回は久々にアルバムに先行する形のシングルですよね。

そうです。でも、もうちょっと行きたかったっていうのはあって。だからアルバムでは自分たちのやりたいサウンドっていうのをもっとくっきり届けるべく努力中ですね。

-サウンドなんですね。

『Wonder Future』(2015年リリースの8thフル・アルバム)以降の自分の活動っていうのはサウンドの違いについての答え合わせというか。(『Wonder Future』をレコーディングした)FOO FIGHTERSのスタジオで、"ナッシュビルに来たらどうしてこんなに音がいいんだろう?"って思って、その答え合わせから始まってるので、そこに辿り着きたいからやってるところは大きいですね。

-アルバムのことを考えるタームに入ったのはいつごろですか?

そこが難しい問題で。ほんとはベスト盤(2018年3月リリースの『BEST HIT AKG 2 (2012-2018)』、『BEST HIT AKG Official Bootleg "IMO"』、『BEST HIT AKG Official Bootleg "HONE"』)の段階でアルバムは出るはずだったんですけど、もう少し時間が欲しくなったというのはあって。実はそのぐらいの時期から曲が書け始めたんですよ。そこまではまず僕自身が録音の環境をとにかく整えたくて、自分のスタジオのアップデートに勤しんでたんですけど、そのあたりの筋道がついて、(リリースを)もう少し延ばしてもらえたら、もっと完成度の高い、今やりたいと思ってることができるなって。例えば"3月に納期が来たんで"って感じで出しちゃったら、そのアルバムを持って1年ツアーして、なんなら海外も含めたら2年とかツアーして、次のアルバムは3年後かと思うと、ここは1回、ちゃんと自分側に作品を引き寄せてしっかりやらせてもらわないと自分自身が後悔するなっていうところはすごく大きくて。

-話は変わるんですが、先日mabanuaさんの取材をしたときに、今、若い人が自分のバンドをやるだけでなく、プロデュースやエンジニアリングとか、後藤さんのスタンスに憧れているであろうという話になったんですよ。加えて、もちろん作詞作曲者なので、彼は今回初めて日本語詞を書いたけど、"ゴッチ(後藤)さんの域には及びませんが"って言っていました。

そんなことないと思いますよ(笑)。

-後藤さんはいろんなことと並行してアジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)のことをやってるわけで。でも今回のシングルを聴くと、アジカンで新しいことをやってやろうという意欲を感じたんですよね。

そうですね(笑)。それはあります。自分にとってもちゃんとモチベーションがないと続けられないことなんだなと思って。アジカンはアジカンであればいいのかなと思っちゃうところも時々あるんですけど、"あ、このメンバーと音楽したら楽しいな"っていうのはやっぱりあって。青春の延長じゃないけど、ほんとに仲のいい友達だから。(アジカンは)自分がやってるあらゆることの中で一番多くの人と接してる活動なので、ここで一番面白いことをやらないとダメなんじゃないかっていう気持ちがやっぱりあってね。そうじゃないとこれを続けられないな、みたいな。ただ曲を書いて漠然とみんなで演奏して、漠然と録音して、"あぁ、良かったね"っていうのじゃ嫌だなっていうのがあって。

-はい。

とはいえ、すごく新しい音楽をやるのか? っていうとそういうわけじゃなくて、オーセンティックなギター・ロックであることはあんまり変わんないし。特別"こんな音楽聴いたこともなかった"っていうものを作りたいバンドでもないというか。そういうものとはまた角度の違う新しさを自分たちは求めてる。でも、"録音"って考えたらもっとできることがあるなっていうのは自分の興味として広がってきていて。だからそこで面白いことをやって、"アジカンのこの音楽をこういうふうに録音するっていうことは日本でやってなかったよね"っていう音楽ができればいいかなと思ってるんですけどね。例えば、ALABAMA SHAKESの『Sound & Color』って、何度聴いても変で、誰に聞いても"どう録ってるのかわかんない"って言うんだけど、でもあれってまったく新しい音楽じゃなかったのに、まったく新しい音像だったんですよね。で、(今作で目指すべきところは)"これかな?"みたいな。

-だから前作までとは後藤さんの意識が全然違う気がしたんですかね。アジカンという存在がありがたいというのをまた超えてきた感じがしました。

そうですね(笑)。みんな優しいんで、付き合ってくれるんですよね。山ちゃん(山田貴洋/Ba/Vo)とかもね。僕が言ってることをすごい理解してくれるし。

-基本的なことを聞くんですけど、レコーディングは"Cold Brain Studio"(※後藤のプライベート・スタジオ)でやってるんですか?

ミックスはCold Brainですね。最近は録音もギターとか上モノをCold Brainに移してやったり、Cold BrainじゃないときもCold Brain方式というか、喜多(建介/Gt/Vo)君と隣り合わせで座って、すごく近い距離でギターをバンバン録っていくとか、エフェクターも俺が都内のスタジオにがっつり担いでいっぱい持っていったりして。いつもの演奏でいつもの音にしない、横着しないっていうことはやってますね。でもふたりの距離が近いと、フレーズの話も、お互いギター持って"え、こっちじゃないかな"って言ったり、解説できたりするんです。エンジニアリング的な考え方で。音が被ってたら聴こえないから、とかそういう話もすごく近くでできて。距離感って意味では、今回は一番近い距離でギターのレコーディングができましたね。それは、自分がこれまでいろんなバンドをプロデュースして、この距離感でやるのが一番面白いなと思った距離だったんです。

-後藤さんのプロデュースの体感をアジカンにフィードバックしてるという?

そうですね。それでもアジカンのレコーディングはのんびりしてますけど、のんびりできるっていうのはいいことでもあるし。その中でもちゃんと"このくらいが一番スムースだな"っていうスピード感をいろんな活動で掴んだので。喜多君は悩んでる時間が多いけど、たぶん声を掛けてほしかったんじゃないかな? って思うときもあるんですよね。悩んでるときに誰かのアイディアがあったら発展できるのに、っていうことは自分にもあるから。例えば、"(ギターの)このポジションで広げてほしいな"って言ったらすぐにフレーズができたり。必要だったのは、もうちょっと近くて早いコミュニケーションだったのかもな、みたいな。どういうふうにコミュニケーションを取ればいいものが録れるかっていうのが、今回ですごくわかったというか。

-Cold Brainで録ることも含め、新しいアプローチですね。

でもこれ、進退問題なんです。今回のアルバム、今僕がちゃんと気合入れてやってるんで、たぶんみんな黙ってるんですよ。僕の仕事っぷりを見てるから。特に潔(伊地知 潔/Dr)とかね。で、潔の考えてる今までのサウンドの哲学と違うことをしようとしてるんで、完成して彼に"いいアルバムできた"って言わせないと、ちょっと影響力が落ちちゃう。"プロップスが下がる"って言うんですかね(笑)。