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LIVE REPORT

Japanese

KANA-BOON

Skream! マガジン 2014年06月号掲載

2014.05.17 @新木場STUDIO COAST

Writer 石角 友香

"全国ワンマン・ツアー回れないバンドなんてバンドじゃないと思ってるので"と、ライヴ終盤に谷口鮪が発した言葉。1年前のインディーズ盤『僕がCDを出したら』の時点ですでに人気は急加速、前回の東京、大阪初ワンマンの時点ではメジャー1stアルバム『DOPPEL』がオリコンウィークリーランキング初登場3位を記録と、すでに機は熟しまくっていた。初の全国ワンマン・ツアーの初日である新木場STUDIO COASTに充満する期待感とエネルギーはもちろん、"ようやくスタート地点に立った"ことを誰より体感しているのは、当然だがステージ上のメンバーだ。気持ちと身体の状態が合致したとでも言おうか。初日にいきなり2000人キャパの会場というのもすごいことだが、そのスケールやファンの熱気に気圧されることなく、4人は1曲1曲を心の底から演奏していた。


ツアーが始まったばかりなので詳細な記述は避けるが、まず選曲の傾向で言えば、初ワンマン時以降、シングル『結晶星』がリリースされていることによるチョイスの幅が広がったことでブロックごとのカラーを打ち出すこともでき、照明とも相まってドラマティックな印象を残す場面も何度もあった。最初のブロックからさらにソリッドに研ぎ澄ました部分と厚みを増したアンサンブル、時には音源にはないアレンジを加えた古賀隼斗のギター・フレーズなどで、おなじみのナンバーをブラッシュ・アップして臨んできた。特に小泉貴裕のテクニカルな成長には正直驚いた。BPMの高い楽曲も曲ごとに細かく速さの違いがあり、四つ打ちの中にもバリエーションがある。いわばバンドの心臓部であるリズムの痛快感は、彼の進化によるところがかなり大きいと見た。そういえば鮪と飯田祐馬のMCの中で"こいちゃん(小泉)はリハや取材後、毎日、CD屋、楽器屋、大型家電店に必ず行ってる"(鮪)と暴露。"行けへんときとか、ちょっとプルプルしてるもんな?"(飯田)というほどだから、人一倍、音楽漬けな生活を送っているのだろう。彼が制作した音源が流れる場面もあるのでぜひ楽しみにしてほしい。そんな小泉のストイシズムはもちろん、KANA-BOONらしいいい意味でのユルさは相変わらず。ツアー・タイトルに偽りなしというべきか、ツアーのスペシャル・ブログ"KANA-BOONのご当地グルメブログ"でも公開されている本物のグルメ・ツアーも並行。ついでに言うとステージのバックドロップもおよそ新進気鋭のロック・バンドというには関西ローカルの番組収録現場のような趣きで笑ってしまった。


演奏もMCも完全にマイペース。そして鳴らされるすべての曲に対するファンの理解がステージにフィードバックされて、さらに有機的な空間を作っていく。「MUSiC」や「1.2. step to you」のようにアッパーかつ確実なキメで快感のツボを押す曲では、一斉にハンド・クラップが起こり、2階席まで揺れるほどのジャンプも起きるが、「東京」(改めて名曲!)では広い会場全体が眼と耳になったと錯覚するほど、フロアは聴き入っている。鮪のヴォーカルのエモーションが増し、バンドがオーディエンスを牽引する音楽的筋力も目の当たりにした。具体的な曲目は書けないが、何の説明もなく時間の経過を体現する選曲のブロックがあったり、これまた特に説明することなく新曲が披露される場面も、求心力のある演奏そのもので、いい緊張感が会場を満たした。そして特に今、不安や悩みを抱えながら、全力で自分の力を放出しているファンの気持ちに「結晶星」という楽曲が寄り添っていることは、曲の進行によって変化していくフロアの盛り上がりに見て取れ、"人気"というものの本当の意味を思い知る。バンドをやってなかったら何者でもなかった若者4人を前に、まだやりたいことが見つかってない人も、見つけた先の不安を抱える人も、KANA-BOONの身近で、かつ強い信念が心から好きなのだ。


ツアー初日の前日にはミュージックステーションへの初出演も発表。"僕らが出るなんて放送事故レベル"と笑わせながら、"遠くに行っちゃうとか、寂しく感じる人もいるかもしれませんけど、僕らは変わりませんから。これはいろんな人に知ってもらえるチャンスだと思ってます"と鮪。この発言は第1章をともに作ってきたファンへの感謝であり、自分たちのままで大きな存在を目指す意思の現れだろう。まだまだアレンジや展開に磨ける余地も満載な初日だったが、だからこそ今後1本1本のライヴが楽しみだし、7月のファイナルでどれだけ化けて戻ってくるか?はちょっと想像できないくらいなのだ。

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