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INTERVIEW

Japanese

ゲスの極み乙女。

2014年10月号掲載

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Member:川谷 絵音 (Vo/Gt)

Interviewer:沖 さやこ

とんでもない名盤が生まれてしまった。ゲスの極み乙女。の1stフル・アルバム『魅力がすごいよ』は、日本のロック・シーンだけでなく、音楽シーンに大きな革命を起こしうる作品だ。8月にリリースされた1stシングル『猟奇的なキスを私にして』でそのポップ・センスをさらに拡張した彼らだが、あのシングルに収録された3曲はその序章にすぎない。研ぎ澄まされつくした音色とアンサンブル、川谷絵音の心の奥に佇む素直な心情が綴られた歌詞、そして素朴で非凡なメロディ――巻き起こったゲス旋風は一過性のものではないことを堂々と証明する。川谷が言う通り、この作品はまさしく"金字塔"である。

-『魅力がすごいよ』、素晴らしいアルバムですね。8月に生出演されていたTV番組を拝見したとき、絵音さんが"東京ドーム公演は絶対やりたい"とおっしゃっていましたが、近い将来ゲスの極み乙女。はそれを実現させるのではないかと思いました。

ありがとうございます。

-各パートの見た目の濃さがそのままトレースされた音像で。バンドらしさとポップ要素がより強度を増して、爆発している。ロックという範疇に収まりきらない、広い意味での"音楽"を鳴らすエンターテイナーとしてのセンスが溢れています。

そういうアルバムを狙って作ったんですよね。『みんなノーマル』を出したときに次はどうしようかなと考えて。やっぱり目指す方向がバンド・シーンではないので、その時から"こういう感じにしよう"というイメージは頭の中にはあって。要は......バンドとポップスの中間で1番いい作品を作ろうと思って。"これこそポップスだ"というのをやりたかったんです。

-でも今までのゲスの作品で、1番ロックだとも思います。

そうですね。(ロックとポップスの)バランスは意識しました。僕がスタジオに行ってメンバーの前に行けば自然に曲が作れるとはいっても、ギターをもうちょっと弾いたりとか――今回、僕今までで1番ギター弾いているんですよね。今まではピアノだけで押してた部分はあったんですけど、そこにギターを足してみたりとか。ピアノ・ロックとかではなくて、普通に、4人のバンドとして――もちろん今までもそういうつもりで僕はギターを弾いていたんですけど、だから今回もその気持ちのまま、それで音を足したり。だから新しいことをしたというよりは、もともと自分が持っていたもので作っていきました。

-各パートのアンサンブルもいちいちユニークなので、ひとつひとつ突っ込んでお聞きするときりがないくらいの情報量で。それをポップにまとめられるのは、リフにフックがあることと同じくらい、メロディの威力も大きいと思います。

僕の中に"自分が気持ちいいメロディ"というのがあるんですよ。いろいろ考えて歌って"あ、これだ"って見つけるんですよね。今回は特にレコーディングして、そこでメロディを書き換えることが多かったんです。メンバーはレコーディングしたらとりあえず外に出て、スタジオで練習とかしてもらって。僕だけレコーディング・スタジオに残って、ひとりで(楽曲制作中に)スタジオで作ったものとは全然別のものにしたりとか......今回は僕が納得いくまでひとりで作業したんです。ほぼ1から10までメロディも歌詞も変えた曲もあって、メンバーが聴いて"これどの曲ですか?"って言うこともあったりして......(笑)。

-へえ、そうだったんですか。実際レコーディングして"もっとこうしたい"と?

もともと気持ちいいメロディはできていたんです。でも、レコーディング中に"もっといいメロディできるな"と思って、その場で全部消して。勢いで書き直して。そしたらすごくいいものができたので。......今回そういうものが多いですね。サウンドに関しても、3人をブースに入れて、コントロール・ルームに僕が入って、そこからマイクで"ベース・ラインこうして""鍵盤こうして"みたいに指示をして、1から変えていったり。だから制作過程はいつもと結構違いますね。いつもよりさらに僕のパーソナルな部分が曲に反映されています。

-それはなぜ?

今回のレコーディングは時間があんまりなくて"続きはレコーディング・スタジオで作ろう"と、曲作りのスタジオではふわっとしていた部分も多かったんです。それがレコーディング・スタジオで作ったらうまくいって。好きなようにできるし、歌もレコーディングで変えたって別にいいし、寧ろ変えたほうがいいというパターンが多くて。「crying march」と「サリーマリー」は全部変えましたね。「デジタルモグラ」も、サビのメロディは最初全然違うもので。

-そういうきわきわの状況だからこそ、ひらめくものがあるのでしょうか。

というよりは、全部楽器をレコーディングしてみた状態のほうが、それに合ったいいメロディを思いつきやすいなって。

-ああ、メンバーの皆さんが演奏したインスピレーションがそういうものをもたらしたと。

そうですね。それとあと......レコーディング・スタジオでひとり、という環境がより良かったのかもしれないですね。レコーディング初日が歌録りで、メンバーがスタジオにいることに対して僕がちょっとイラっとしたというか、勝手なんですけどひとりにして欲しくて(笑)。

-へえ......なんでイラッとしちゃったんですか?絵音さんはメンバーと一緒に制作するの、お好きなんでしょう?

今まではこのアルバムよりもわちゃわちゃした曲が多かったんで、全員で作る意味が大きかったんです。でも今回は歌詞にも自分のパーソナルな部分が増えて、サウンドも自分が主導を取って――とにかく"ひとりになりたい"という気持ちが特に多くて。でも今回はそれが実際うまくいって、ひとりでやってうまくいくことも増えたというか。