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DISC REVIEW

Overseas

Suckapunch

YOU ME AT SIX

Suckapunch

UKを代表するロック・バンドのひとつである、YOU ME AT SIXの2年ぶり7枚目となるアルバム。前作『VI』ではポップ・ミュージックへの接近を見せていた彼らだが、今回はさらにダンス/エレクトロニック路線へと歩を進めた作品に。最新型デジタル・ロックとでも言うべきヘヴィ・サウンドを鳴らすTrack.3、四つ打ちとレイヴィーなフレーズが高揚感をもたらすTrack.5、トラップ・ビートを取り入れたTrack.11など、様々な要素が大胆に楽曲へと反映されているが、全体を貫く陰りのあるトーンや、キャッチーなメロディ、そして自在に表情を変えるJosh Franceschiのヴォーカルによって、一本筋の通ったサウンドに仕上がっている。キャリアの転換点となりそうな、挑戦的な1枚。

Cyr

THE SMASHING PUMPKINS

Cyr

オリジナル・メンバーのBilly Corgan(Vo/Gt)、James Iha(Gt)、Jimmy Chamberlin(Dr)での復活作から2年、今回はさらに、長きにわたりギタリストを務めるJeff Schroederも制作に合流。しかし、Track.1からどちらかと言えばBillyのソロに近いシンセ・ポップや、トラック的なナンバーが続き、現行のR&Bアーティストが80'sに接近した音像を作っている印象にも近いものが。アコギと電子パッドの組み合わせがユニークなTrack.4や、ラウドな音の壁が立ち上がるTrack.11といった曲もあるが、誰もが想起するグランジ色の強いスマパンはここにはない。本作はダークでメランコリックなスマパンの、コンテンポラリー・サイドのアウトプットというのが妥当な見方かも。

No Fun Mondays

Billie Joe Armstrong

No Fun Mondays

GREEN DAYの最新アルバムを引っ提げた、日本公演を含むワールド・ツアーが延期になってしまったなか、外出自粛を余儀なくされる世界中のファンへDIYのカバー曲を届けてきたBillie Joe。一連の楽曲をコンパイルした本作は、John LennonやTHE BANGLES、Johnny Thundersなど彼のルーツ・ミュージックや、新型コロナウイルスにより亡くなったAdam Schlesinger(FOUNTAINS OF WAYNE)へのトリビュートなど、バラエティに富んだ14曲を収録。オリジナルへのリスペクトも感じさせつつ、"らしい"ポップ・パンク・アレンジもさすがだ。原曲をチェックすることも含め、"No Fun Mondays"というタイトルとは裏腹に音楽を聴く楽しさを改めて教えてくれるような作品。

Odin's Raven Magic

SIGUR RÓS

Odin's Raven Magic

SIGUR RÓSが2002年にオーケストラとコラボレートした演奏が、実に18年の歳月を経てアルバムとなった。今作は、古エッダの形式で書かれたアイスランド語の詩"オージンのワタリガラスの呪文歌"を題材としているのだが、北欧神話の世界は、詩的でアンビエントなサウンドを紡ぎだすSIGUR RÓSにぴったりの題材と言えるだろう。オーケストラの重厚な響きと物悲しいメロディは、ラグナロク(神々の滅亡)を描きながら、美しいアイスランドの自然に迫る環境破壊の危機を示唆する。伝統歌謡の歌い手 Steindór Andersenの語り部的な滔々とした歌唱と、神話に登場する神々を思わせる神秘的なJónsiのファルセットの対比も素晴らしい。壮大で儚い美しさに満ちた至極のアルバム。

Future Nostalgia (Bonus Edition)

Dua Lipa

Future Nostalgia (Bonus Edition)

UKの新世代ポップ・クイーンの大ヒット・アルバム『Future Nostalgia』が、大物アーティストたちによるリミックス盤『Club Future Nostalgia』とセットに! 80'sディスコ・サウンドへのリスペクトと、最先端のエレクトロ・サウンドを掛け合わせたオシャレなダンス・ミュージックには、幅広い世代を虜にする力がある。Christina Aguileraにも負けない迫力満点の歌唱力と、Kylie Minogueにも通じるポップネス、そしてアイドル性もある抜群のルックス。まさに全方位型の歌姫! リミックス作品ではMissy ElliottやMADONNA、Gwen Stefani(NO DOUBT/Vo)、Mark Ronsonらに加え星野源が参加したことも話題に。

Death Of An Optimist

GRANDSON

Death Of An Optimist

シングル曲「Blood // Water」が早耳リスナーから注目され、Mike Shinoda(LINKIN PARK/Vo/Gt/Key)のソロ・アルバムに参加したことも話題となった、カナダ系アメリカ人アーティスト GRANDSONの1stフル・アルバム。このデビュー・アルバムでは、そんな彼の豊かな才能をじっくりと味わうことができる。全体的には、気だるいトーンで彩られているが、その内に秘めた激しい感情が露わになる瞬間に思わずハッとさせられる。メッセージ性の強いリリックのパワーはもちろんあるが、繊細なメロディと、語り掛けるようなラップのどこか切ない響きがクセになる。激しくてグルーヴィなラップ・ロックとシンプルなインディー・ロックの間を行きかう、自由度の高さも今っぽい。

This Place Sucks Ass

PUP

This Place Sucks Ass

2019年のアルバム『Morbid Stuff』が数多の音楽メディアで年間ベストにリストアップされるなど高い評価を得た、トロントの4人組ポップ・パンク・バンド PUP。彼らが、同作のアウトテイクに新曲を加えたEPをリリースした。エネルギッシュなTrack.1、破天荒な展開をみせるTrack.2、疾走感溢れるショート・チューンのTrack.6など、内省的なムードが漂っていたアルバムに比べると、本作ではバンドの持つ狂騒的で豪快な部分を増幅させたようなサウンドを披露していて、アルバムと好対照をなす作品と言えるだろう。映画"28日後..."で使用されたGRANDADDYの「A.M. 180」を轟音でカバーしたTrack.3も、混迷の時代に寄り添うようで趣深い。

Hey U X

BENEE

Hey U X

ニュージーランド出身、Z世代の新星シンガー・ソングライター BENEEが初のアルバムをリリースした。TikTokでダンス・チャレンジ動画が投稿され世界的ブレイクのきっかけになったTrack.4は、華やかなディスコ・トラックに乗せて(失恋の)孤独を楽しく嘆く楽曲で、ロックダウン下の人々に刺さったのも納得のキラーチューン。かねてよりファンだったというGRIMESとコラボしたレイヴィなTrack.3、自粛期間中に観察していたカタツムリから着想を得たラップ・ナンバーのTrack.5、ダウナーなロック・サウンドにファルセットが心地よいTrack.8など、自由度の高い歌唱スタイルと楽曲でオルタナティヴなポップ・ワールドを展開。自身の恋愛経験に基づいた、赤裸々なリリックにも注目だ。

Hello, It's You

BEARINGS

Hello, It's You

カナダ発のポップ・パンク・バンド、BEARINGSの2年ぶり2枚目となるアルバム。GOOD CHARLOTTEや5 SECONDS OF SUMMERなどを手掛けたCourtney Ballardをプロデューサーに迎えた今作は、前作で披露した切なさと耳馴染みの良さを併せ持つメロディを引き継ぎながら、グッとメジャー感の増したサウンドに。イントロからポジティヴなヴァイブスを漂わせるTrack.1に始まり、80s風なシンセで甘酸っぱいフレーズを奏でるTrack.3、トラップ・ビートにアコギを絡ませたTrack.8と、挑戦的なアレンジもハマっている。ストレートに感情を乗せたラスト2曲も素晴らしく、ポップ・パンク直撃世代からエモ/オルタナ系のリスナーまでおすすめしたい1枚だ。

Young Dumb Thrills

MCFLY

Young Dumb Thrills

2016年のツアー以降バンドを休止し、ソロ活動などそれぞれのキャリアをスタートさせたUK発ポップ・ロック・バンドが再集結。オリジナル・アルバムとしては10年ぶりの作品が完成した。先行してリリースした、軽やかできらめきを詰め込んだポップ・チューン「Happiness」や、BLINK-182のMark Hoppus(Vo/Ba)をフィーチャリングした「Growing Up」など、全12曲が収録。ロック感の強いパワフルな曲が多かった印象だが、一呼吸置いて改めて4人のバンドで放つサウンドはアレンジの自由度が広がって、エバーグリーンなメロディを生かすような芳醇でマジカルなものとなっている。ボーイズ・バンドという荷を自然に下ろして、大人の佇まいや、ほど良く力が抜けた感じが音にも映る。

Big Vibe

SEAWAY

Big Vibe

カナダはオンタリオ州出身、2017年には初来日を果たしたSEAWAYの3年ぶり4thアルバム。これまで、ハードコアに出自を持つポップ・パンク・バンドらしいカラッとした質感のエネルギッシュなサウンドを鳴らしていた彼らだが、今作ではWEEZERチックなオルタナ/パワー・ポップ要素が増加。粘り気のあるギター・サウンドと哀愁を感じるエモーショナルな旋律が組み合わさって、一歩成熟した印象を受ける1枚に仕上がった。明るい歌メロとミッドテンポのビートが爽快なTrack.2、熱量と切なさを併せ持ったTrack.6、ヒップホップ調のラフな譜割りが心地よいTrack.9など、持ち前のグッド・メロディを生かした楽曲群は、これまでよりもさらに幅広い層へと刺さりそうな予感。

Song Machine: Season One - Strange Timez

GORILLAZ

Song Machine: Season One - Strange Timez

バーチャル・バンド GORILLAZが2020年初頭にスタートした音と映像のコラボ・プロジェクト、"Song Machine"の"シーズン1"を総括するアルバムがリリースされた。Robert Smith(THE CURE/Vo/Gt)が耽美な歌声を披露するTrack.1を筆頭に、今回が中心人物 Damon Albarn(BLUR)と初コラボのBECKや、ST. VINCENT、そして御大 Elton John(MVではカートゥーン化!)と、豪華ゲストが登場。日本から唯一参加のCHAIがJPEGMAFIAとピースフルなトラックを作り上げる「MLS」も面白い。ゲストの魅力をしっかりと引き出し、いい意味で雑多さを残しつつ1枚のアルバムとしてまとめあげたDamonの手腕はさすがのひと言。

Moral Panic

NOTHING BUT THIEVES

Moral Panic

前作『Broken Machine』が過去最高の全英チャート2位を記録し、2015年のデビュー以来快進撃を続けているNOTHING BUT THIEVES。前作と同じくプロデューサーにMike Crosseyを迎えた3年ぶり新作では、ソリッドなギター・リフとそしてConor Masonの歌唱力という武器に磨きをかけつつ、アリーナ・クラスのダイナミックなサウンドへと破格の進化を遂げている。ラウドロック並みの圧力を持ったTrack.1、10から、ドラマチックな情景を魅せるTrack.4、11まで、緊張と美意識を湛えた圧巻のロックを展開している。比較されることが多い先輩 MUSEの『Absolution』のように、大躍進の3rdアルバムになる可能性は十分だ。

Strange Days

THE STRUTS

Strange Days

コロナ禍の中、プロデューサー Jon Levineの家に泊まり込み10日で10曲RECしたバンドの勢いと調子の良さが反映されたパッシヴなR&Rアルバム。ゲストも話題で、THE BEATLES的なメロディを持つ有機的なミディアム・チューンの表題曲にはRobbie Williamsが、電話口の会話から始まるアイディアも楽しいナンバーにはDEF LEPPARDのJoe ElliottとPhil Collenが切れ味鋭いギターで参加。ヘヴィな曲をブラッシュアップしたのはTom Morello(RAGE AGAINST THE MACHINE etc.)、軽快な8ビート・ナンバーにはTHE STROKESのAlbert Hammond Jr(Gt)が客演。ゲストの資質が様々でも仕上がりは抜けが良くドライヴするR&R。先の見えない状況で不可能を可能にしたバンドの痛快さが作品化した印象だ。

Use Me

PVRIS

Use Me

ONE OK ROCKやcoldrainとも共演し、オルタナ・ロックというジャンルの垣根を越えてその知名度を増しているPVRIS。Warner Records移籍作となる3rdアルバムは、フロントウーマンのLynn Gunnが作詞作曲はもとより、演奏やプロデュースなどクリエイティヴ面の多くを担った、心機一転の作品になった。退廃的なエレクトロ・サウンドに気だるいLynnの歌声が絡むTrack.2、ハード・サウンドでEDM的な高揚感を生み出すTrack.5、アコギ・サウンドに美しいコーラスが染みわたるTrack.8など、持ち前のエモーショナルなオルタナ×エレクトロのスタイルを進化させながら、メインストリームにも接近。さらにサウンドの自由度を増したアルバムだ。

Shiver

Jónsi

Shiver

アイスランドが誇るポスト・ロック・バンド SIGUR RÓSのフロントマン、Jónsiによる10年ぶり2枚目のソロ・アルバム。CHARLI XCXのクリエイティヴ・ディレクターを務めるA. G. Cookとタッグを組んだ本作では、Jónsiがこれまで築いてきた有機的な音像とは正反対とも言える、硬質でノイジーなエレクトロニカを大々的にフィーチャー。だが、それが彼の繊細な歌声と絶妙にマッチしているし、楽曲の根幹に流麗な歌メロが据えられていることで、混沌の中でどこか安らぎと幸福感を覚えるようなサウンドスケープを生み出している。Elizabeth Fraser(COCTEAU TWINS)やスウェーデンのシンガー ROBYNというゲストVoとのハーモニーも聴きどころ。

Between You And Me

SAN CISCO

Between You And Me

紅一点ドラマーも歌う男女ツイン・ヴォーカル・スタイルがナイスなオーストラリアの3人組が3年ぶりにリリースした4thアルバム。アルバム・チャートの3位を記録した本国のみならず、今回もまた、日本のインディー・ポップ・ファンの気持ちを鷲掴みにすることは必至。80年代のUKポップをバックボーンにネオアコからダンサブルなエレポップまで、曲ごとに趣向を凝らす彼らのサウンドは、これまで以上にR&B/ファンク由来の跳ねるリズムを強調したことで、昨今のシティ・ポップにもリンクしはじめると同時に、さらにユニークなものになってきた。中には「Messages」をはじめ、これまでのように80年代、UKというキーワードではくくれない曲も。ある意味、より日本人好みになったという印象もあり。

Imploding The Mirage

THE KILLERS

Imploding The Mirage

2019年の"Glastonbury Festival"など世界的フェスのヘッドライナーを務め、日本でも2018年に武道館公演を実現させたTHE KILLERS。約3年ぶり6thアルバムは、持ち前のきらびやかでどこか切ないオルタナ・ロックを軸に据えつつ、さらなる音楽性の拡張を自然体且つ自由に行っている印象だ。ホーリーなクワイアが絡んで壮麗さを感じさせるTrack.2、ハンマー・ビートから熱狂的なアメリカン・ロックへとなだれ込むTrack.3、WEYES BLOODを迎えたシンセ・ポップのTrack.8など、恍惚のメロディをスタジアム・バンドらしい堂々たるスケール感を備えたアンサンブルで奏でている。普遍的な魅力を持った楽曲が揃い、長く愛される1枚となりそうだ。

The Kingdom

BUSH

The Kingdom

90年代のポスト・グランジ・シーンで人気を博し、2010年の再結成以降もコンスタントに活動を続ける、Gavin Rossdale(Vo/Gt)率いるBUSHの8作目。ザラついたギターに物憂げな歌声を乗せた基本スタイルは変わらずだが、プロデューサーに映画音楽を多く手掛けるTyler Batesや、ラウドロック界隈で活躍するErik Ronを迎えたことで、作品全体がソリッドでヒリついた空気感に。重々しいビートを叩きつけるTrack.2、緊迫感のあるギター・リフが刺さるTrack.6から、ピュアなバラードのTrack.8まで、円熟の境地に達したサウンドを堪能できる。グランジからヘヴィ・ロック、オルタナ・メタルまで、重めなサウンドが好きという人にハマるであろう1枚。

True Love Waits

THE CORONAS

True Love Waits

2003年結成、母国アイルランドでは15,000人規模の動員を誇るロック・トリオの6thアルバム。バンド名と同じウイルスが猛威を振るう困難な状況にも負けず、"いま世界一不幸なバンド名だ"、"THE VACCINESと名前を交換したいよ"と明るくジョークを飛ばしていた彼らだが、今作にも前向きで希望に溢れたサウンドが詰まっている。ピアノやブラスも取り入れた生楽器と、染み渡るような優しい響きのヴォーカルが溶け合ったアンサンブルはぬくもりのある質感で、さりげなく挿入されるエレクトロニクスも絶妙に心地いい。これらを壮大な構築美でまとめあげた楽曲群は幻想的な世界を描いていて、特にラスト・トラックは圧巻。こんなご時世、そしてこの名前だからこそ聴いておきたい、心洗われる作品だ。