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DISC REVIEW

Overseas

Walking Like We Do

THE BIG MOON

Walking Like We Do

各地で絶賛された前作から約3年。ロンドンを拠点に活動する、4人組ガールズ・インディー・ロック・バンド THE BIG MOONが、2作目となるニュー・アルバムをリリースした。今作はKAISER CHIEFSやDEERHUNTER、M.I.A.など幅広いアーティストを手掛けるBen H. Allenをプロデューサーに迎え、より丸みのあるポップなサウンドへと進化。独特の気だるい雰囲気とノスタルジックな印象はそのままにサウンドの厚みが増して、さらに全方位的に楽しめる作品となった。目の前に情景が広がるような物語性のある楽曲の数々は、まるで青春映画のサウンドトラックのようだ。ワールド・ツアーを経て彼女たちが歩んできた濃密な音楽体験が凝縮されている。

Seeking Thrills

GEORGIA

Seeking Thrills

新世代のエレクトロ/シンセ・ポップ・クイーンとして注目を浴びているGEORGIAが、ニュー・アルバムをリリース。「Started Out」や「About Work The Dancefloor」といった先行シングルなど、ここ日本でもすでにシンセ・ポップ好きの中では話題となっている楽曲をはじめ、ポップでレトロ感のある楽曲は妙に中毒性がある。アナログ・シンセなどの機材にもこだわった80年代風のビートや、ダンス・フロアを意識したアンセミックな曲調も、マニアックなのに親しみやすい。彼女自身がもともとドラマーということもあって、様々なリズムをナチュラルに乗りこなし、都会的なビートから野性的なビートまで、自分色の浮遊感のあるお洒落サウンドに完成させるセンスはさすが。

Divinely Uninspired To A Hellish Extent

Lewis Capaldi

Divinely Uninspired To A Hellish Extent

2019年に最も売れたSSWと言えばこの人、Lewis Capaldiだろう。スコットランド人アーティストとして38年ぶりの全米シングル・チャート1位獲得も、大きな話題となった。それにしても、このぽっちゃりした地味な青年がこんな奇跡の歌声を発するなんて。若さに見合わぬ激渋ヴォイスと自虐も交えたユーモア溢れるSNSでの振る舞いという、ギャップ萌えキャラにハマってしまう方も多いのでは。フォーク・ロックをベースとした素朴なメロディと語り掛けるような歌唱。そこにスケール感のあるアレンジが加わり、テンションが上がっていくハスキーで力強い歌声もグッとくる。良曲の教科書のような聴いても歌っても気持ちのいいバラードが詰まった今作は、きっと多くの人の記憶に残るだろう。

The Juice

G.LOVE

The Juice

ヒップホップとブルースを融合させた"ラグ・モップ"のオリジネーター G. LOVEの、ソロ名義としては約9年ぶり4作目となる新作。自身のバンド、G. LOVE & SPECIAL SAUCE名義でリリースされた近作は、ヘヴィなロックンロールの要素も持ち合わせたスタイルだったが、グラミー受賞のブルースマン KEB' MO'や、名だたるスティール・ギタリストなどのコラボレーターを迎えた今回は、代名詞と言うべきブルージーなサウンドに満ちた、キャリア25周年を総括する内容に。ゴスペル調のコーラスが美しいTrack.1や、アッパーなグルーヴに思わず頭を揺らしてしまうTrack.4、ブルース・ハープが染みわたるTrack.7など、肩肘張らずにまったりと楽しめる1枚だ。

Girl

GIRL RAY

Girl

HOT CHIPやTHE DRUMSらを輩出した"Moshi Moshi Records"の秘蔵っ子、ノース・ロンドンのガールズ・ポップ・バンド GIRL RAYが2ndアルバムをリリースした。今作は、デビュー作で見せたインディー感バリバリのローファイ・サウンドから、一歩も二歩も進化して、上質な大人のシンセ・ポップに。しかしながら、いい意味でのノスタルジックなインディー感はしっかりと残っているし、華美な装飾がまったくない余白のあるサウンドも彼女たちらしい。サブカル臭プンプンだった個性派オシャレさんが、都会派になって帰ってきたみたいな不思議な感じだが、インディー・ポップmeets R&Bの世界観に表現の幅が格段に広がったことで、より多くのリスナーにリーチするだろう。

Everything Not Saved Will Be Lost Part 2

FOALS

Everything Not Saved Will Be Lost Part 2

前/後編からなる2部作の後編は、ダンス色濃い前編に対して、ビッグなリフをガツンと鳴らしたロック色濃い作品に。デビューから10年、インディー・ダンス・ロックの新星からUKロックを代表するスタジアム・ロック・バンドに成長したFOALSの軌跡を、今一度、2枚のアルバムでダイナミックにアピールする格好となったわけだが、FOALSが持つロック・バンドとしての魅力がぎゅっと凝縮しながら、同時に新境地も印象づけているところがポイント。その意味では、オープニングを華々しく飾るソウルフルなロック・ナンバー「The Runner」、FOALS流のブルース・ロックと言える「Like Lightning」が一番の聴きどころ。ROYAL BLOODやTHE BLACK KEYSのファンにも薦めてみたい。

Love More

Maxim

Love More

THE PRODIGYのフロントマン、Maximが約14年半ぶり3作目となるソロ・アルバムを日本先行でリリースする。共にフロントマンとして活躍した盟友で、2019年3月に亡くなった"Keef"ことKeith Flintへと捧げられた今作は、反骨精神だけでなく、"今を懸命にハッピーに生きる"というポジティヴなメッセージも込められている。トラックはレゲエのヴァイブスが色濃く反映されており、女性VoをフィーチャーしたTrack.3、4や、過去作に通じる攻撃的ヒップホップのTrack.2、モダンなトラップ・チューンのTrack.8など、様々なジャンルのエッセンスを凝縮。THE PRODIGYのような派手さはないものの、Maximのパーソナリティが伝わってくるような作品だ。

Magdalene

FKA TWIGS

Magdalene

アルバム・デビュー作『LP1』(2014年)が注目を浴び、翌年には"フジロック"のWHITE STAGEでヘッドライナーを務めるなど、一気に世界的人気アーティストとなったFKA TWIGS。アーティスティックな楽曲そのものはもちろんのこと、ダンサー出身の彼女らしい身体表現や、抜群のスタイルを生かしたファッション・アイコンとしての存在感も含め、MVなど優れたヴィジュアル表現でも話題となった。そんな彼女が5年ぶりとなる新作アルバムをリリース。今作は個人的につらい時期を乗り越えたことが楽曲に投影されているらしく、光を失わないピュアな歌声、そして電子サウンドに交じった木管楽器の温かな響きなど、彼女が見いだした希望が投影されたような、力強さと優しい輝きに満ちた作品となった。

No Holiday

THE MUFFS

No Holiday

ハスキーな歌声と力強いシャウト、かき鳴らすギター、そして、ワイルドな音楽性でも隠しきれないチャーミングなパーソナリティ。今年10月、ポップ・パンク/パワー・ポップ・シーンのレジェンド、THE MUFFSのフロント・ウーマン、Kim Shattuckが亡くなった。遺作となった今作には、結成からKimが病気の進行により手足の自由が効かなくなるまでの間、彼女が書き溜めてきた楽曲が収められている。GREEN DAYをはじめ多くのバンドに影響を与えたTHE MUFFSらしい、激しくもポップでもあり、新しくてノスタルジックなこのアルバムには、ALSという難病と闘いながらも、ラスト・アルバムのプロデュースを諦めなかった彼女の、生命力や音楽に対する愛がたくさん詰まっている。

New Hell

GREET DEATH

New Hell

ミシガン州出身の3ピースによる2ndアルバム。2017年の1stアルバム『Dixieland』では轟音のシューゲイズ・サウンドで高い評価を受けた彼らだが、今作ではそれに加えて、エモ/ポスト・ロックのダイナミズムと構築美が備わった作風に。ヘヴィ・ロック/スラッジにも肉薄する重々しさにサッドコアの繊細さが同居したアンサンブルと、それぞれ表情の異なるふたりのヴォーカルによる、憂いを帯びたメロディを紡ぐコーラス・ワークが織り成す音世界は圧倒的。途方もないカタルシスを生む長尺のTrack.4、9は息を呑むほどの美しさだ。CONVERGEのJacob Bannon(Vo)が主宰する"Deathwish"からのリリースというのも頷ける、闇と美を湛えた傑作。

Ode To Joy

WILCO

Ode To Joy

"俺が作る最高の曲を、お前ら、どれだけぶっ壊せるんだ!?"というフロントマン、Jeff Tweedyの挑戦に経験豊富な名うてのミュージシャンたちが応え、バチバチと火花を散らしていたWILCOも今は昔。Tweedyのソロ活動を挟んで、3年ぶりにリリースするこの11作目のアルバムは、作品を重ねるたびごとに強まっていった歌志向がついに頂点に達したことを思わせる。まるでTweedyのソロを、WILCOのメンバーと作ったみたいだ。最初に聴いたときは、ボソボソと歌うTweedyのヴォーカルの印象のせいか、あんまり地味でびっくりしたが、聴いているうちに味がしみるいわゆるスルメ盤。Tweedyが屈指のメロディメーカーであることを改めて実感。バンドの演奏はちょっとTELEVISIONを思わせるところも。

Hey, I'm Just Like You

TEGAN AND SARA

Hey, I'm Just Like You

10代でデビューしたカナダのオルタナ・フォーク・ロックの双子デュオもキャリア20年余。本作は自伝"High School"の執筆のために資料を探していた際、発見したキャリア初期のカセットが制作の発端にあったのだとか。自伝と対になっている印象のある本作。現在ではアップデートした大人のエレポップを聴かせるふたりが、THE SMASHING PUMPKINSやPAVEMENTを想起させる、オルタナティヴなギター・ロックとエレクトロニックなアレンジをミックスしているのが楽しい。ただ、そこで歌われているのはティーンエイジャーならではの悩みや手に負えないほどの夢。アルバム・タイトルが示唆しているように、誰もが通ってきた青春期の思いを作品化することで肯定するような印象だ。

Leaving Meaning.

SWANS

Leaving Meaning.

NYエクスペリメンタル・ロックの重鎮による15thアルバム。2010年の再結成以降の活動スタイルであった6人編成を、前作『The Glowing Man』をもって解散させたSWANSだが、今作ではフロントマンのMichael Giraを中心に、エレクトロ・ノイズの鬼才 Ben Frostや、豪州の即興演奏バンド THE NECKS、さらには元メンバーなど、Giraが性格面まで考慮して選んだという30名以上のアーティストが参加している。近作に比べるとポスト・ロック的な轟音ノイズはやや控えられ、ネオ・フォーク/ゴシックのオーガニックな質感が増しているが、Giraの呪文のような歌唱と、反復しながら展開していく暗黒のグルーヴは実にSWANSらしい。美と混沌を湛えた、奥深い1枚。

Lilac

THE EARLY NOVEMBER

Lilac

THE EARLY NOVEMBERと言えば、90~00年代に多くのポップ・パンク/エモ・バンドを輩出したDrive-Thru Records全盛期のバンド(そのシーンの衰退と共に活動を休止)というイメージが大きいが、実は2011年に復活を果たしている。Rise Recordsと契約し、復活3作目となる今作は、彼らの持ち味であるエモーショナルなメロディはそのままに、しっとりとした大人の魅力も加わり、バンドの成長と成熟が感じられる。厚みを増してスケール感のアップしたサウンドも、バンドの実力を表しているだけでなく、今っぽさがあっていい。また、女性受けのいいAce Endersの爽やかで甘い歌声も、表現力がアップし、リスナーの心をグッと掴む強力な武器となっている。

You Deserve Love

WHITE REAPER

You Deserve Love

アメリカ ケンタッキー州ルイビルを拠点に活動しているガレージ・パンク・バンド、WHITE REAPERの3枚目のフル・アルバム。もともとは3ピースだったが、『White Reaper Does It Again』(2015年)はキーボードを迎えた4人編成でリリースし、今作ではさらに5人になってパワーアップした姿でのリリースとなる。今作では、よりキーボードの存在感も増し、パワー・ポップ的な軽やかさが加わっている。ロックンロール・リヴァイヴァル系のバンドの裾野あたりから、さらに踏み込んだアプローチで広いリスナー層に受け入れられるサウンドに進化したが、決して日和見なわけではなく、シンプルな音作りと粗削りな部分を残した彼ららしいスタイルには好感が持てる。

Miracle Pill

GOO GOO DOLLS

Miracle Pill

"アメリカン・ロックの良心"ことGOO GOO DOLLSの12作目となるフル・アルバム。30年以上活躍しているバンドだというのに、オヤジ臭さがまったくないのが本当にすごい。暑苦しさ、説教臭さなど皆無のポジティヴ・ポップ・ロック。GOO GOO DOLLSと言えば、ちょっと切ないロック・バラードやエッジの効いたオルタナティヴ・ロックというイメージも強いが、今作は、30周年を記念した前作のシンセやコーラスを使った豪華な音作りを踏襲しつつ、さらにポップな圧倒的光属性へと進化。軽やかで優しいメロディは、気負わず耳を傾けることができ、爽やかな新緑の香りを運んでくれる初夏の風のよう。まさにタイトルの通り、聴く者の荒れた心や疲れを癒してくれる"奇跡の薬"だ。

Under Your Sky

THE SHERLOCKS

Under Your Sky

Crook、Davidsonの2組の兄弟で構成されたUKシェフィールド発の4人組バンドが、2ndアルバムをリリース。同郷ARCTIC MONKEYSの後継者とも目されたデビュー作から約2年、プロデューサーにJames Skelly(THE CORAL/Vo/Gt)を迎えた今作では、前作の衝動こそ薄れているものの、そのぶん一歩成熟したサウンドを展開している。歌メロに寄り添うようなフレーズのTrack.2、スリリングなリフが印象的なTrack.4など、直球のギター・ロックがベースだが、ソフトな空気感が心地いいTrack.5や、壮大なサウンドスケープを描くTrack.11など、持ち味であるグッド・メロディをさらに生かすアレンジが秀逸。着実なスケール・アップを感じさせる。

Surviving

JIMMY EAT WORLD

Surviving

エモの代名詞としてシーンを牽引してきたJIMMY EAT WORLDが、ついに今年デビュー25周年を迎えた。四半世紀という年月は、デビュー当時に生まれた赤ちゃんが、もう立派に社会人していて、なんなら子供がいてもおかしくないほどの長い年月だが、このJIMMY EAT WORLDというバンドの瑞々しさはどうだろう!? ほとんど奇跡に近いんじゃないか。10枚目となる今作は、様々なチャレンジを見せた前作と比べ、ストレートなロック・ソングが多く、ファンを驚喜させるJEW節のキャッチーでピュアなメロディが満載。さらに、人生経験を積んだ彼らにしか描けないメッセージや、音楽的ギミックも伴って、変わらぬスタンスで輝き続けるバンドの実力を再確認させられる作品となった。

Six60

SIX60

Six60

母国ニュージーランドでのシングル・セールスがこれまでに100万枚を超え、全世界での総ストリーミング数は2億を突破している、まさに同国を代表するロック・バンドによる3rdアルバム。R&Bやポップ、エレクトロ、レゲエなど多彩なジャンルを飲み込んだバンド・アンサンブルに乗せ、フロントマン Matiu Waltersが親しみやすいグッド・メロディをソウルフルに歌い上げる楽曲は、即効性抜群の普遍的な心地よさで、年代や国境を超えた幅広い層に支持されるのも納得。現行音楽シーンのトレンドをキャッチアップしつつ、マオリの民族楽器をモダナイズして用いた、洗練されたアレンジも印象的。アルバム全体でチルな雰囲気を湛えつつも、世界に自らのルーツを知らしめるような野心的な1枚だ。

The Blue EP

DEATH CAB FOR CUTIE

The Blue EP

7月に行われた"フジロック"では豪雨の中でのパフォーマンスで観客を魅了したデスキャブが、新体制初のアルバムとなった前作『Thank You For Today』から約1年ぶりの音源となるEPをリリースした。前作で見せた生バンドとエレクトロニクスの融合を保ちつつ、より深い憂いを湛えた5曲を収録。ダイナミックなビートとフィードバック・サウンドが印象的なTrack.1、1999年に地元ワシントン州ベリンガムで起きた爆発事故で亡くなった少年たちを偲ぶ、ポップだが陰のあるTrack.2と、冒頭から癖のある楽曲が並び、バンドのプロデュースによるバラードのTrack.3、ドリーミーなクローザーのTrack.5と、約20分の中に魅力を凝縮。現体制での充実した創作意欲が垣間見える1枚だ。