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DISC REVIEW

Overseas

Everything Not Saved Will Be Lost Part1

FOALS

Everything Not Saved Will Be Lost Part1

"SUMMER SONIC 2019"への出演が決定し自ずと期待値が上がる新作は、2019年秋にリリース予定の後編との2部作前編。スタジアム・バンドとしてのスケールに見合うプロダクションを獲得した前作以降、バンドはベース・ミュージックや今のエレクトロニックなサウンドと対峙したのだろう。近未来を想像させるメランコリックなオープニングや、持ち味である民族性とエレクトロニックなポスト・パンクは、本作を象徴する1曲「Exits」で1音の輪郭をより明確にし、新鮮な音像を獲得している。全体的にシンセを効果的に用いながらも、80's風にもドリーミーにもならない。「Cafe D'Athens」ではトラップを高速に再解釈したようなビートも。我流且つ古くならないバンド、FOALS面目躍如の1枚。

Feral Roots

RIVAL SONS

Feral Roots

LAの4人組 RIVAL SONSの、"Atlantic Records"移籍第1弾となる6thアルバム。70年代を想起させるブルージーなサウンドは今作でも健在で、ダイナミックなビートにキャッチーな歌メロで魅了するTrack.1、ドラム・イントロが圧巻のTrack.3と、前半は攻撃的な曲がひしめく。後半はJay Buchananの艶のある歌声を引き立たせた楽曲群が並び、ゴスペル調のコーラスにヴォーカルが映えるラスト・トラックに至るまで、今までとは異なった新たな側面を見せている。自身の"野蛮な根源"を振り返りつつ、バンド独自のサウンドに昇華させた本作は、盛り上がりを見せるクラシック・ロック・リバイバルの中でも彼らが一歩抜きん出た存在であることを示している。

Why Hasn't Everything Already Disappeared?

DEERHUNTER

Why Hasn't Everything Already Disappeared?

設立40周年を迎えた英国のインディー・レーベル、4ADを代表するDEERHUNTERが提示するバンドの新たな可能性。タイトル"Why Hasn't Everything Already Disappeared?(なぜすべてが消えていないのか?)"とアートワークを目にしたあと、本作を聴いて、まずその一文が頭に浮かんだ。カオティックな歌詞とテーマでありながら、華麗で儚いサウンドを調和させ、独自の世界観を形成してきた彼ら。今作の軸に据えるのはクラウト・ロックだが、ハープシコードやストリングス、ピアノが加わり、その音の鳴りはナチュラル且つクラシカルだ。このポスト・モダン的な手法により洗練された世界観はさらに深度を増し、美しさで空間を支配する。創意に満ちた1枚。

Outer Peace

TORO Y MOI

Outer Peace

2010年のデビュー時には、チルウェーヴ、エレクトロ・シーンのパイオニアとして注目を集めたTORO Y MOI。これまでにサイケやアンビエント、R&Bやファンク、ソウルなどを取り入れながらその音楽性を深く、広いものへと更新してきた。今作は約1年半ぶり6枚目のアルバムとなるが、ダンス/ディスコ・ミュージックを基調とした別名義、LES SINSでの活動の影響が色濃く反映されており、また先述した多岐に渡るジャンルを回遊しながらも、ダンサブルなシンセ・ポップでまとめ上げられた作品となっている。その中でも異彩を放っているのは、ダーク・アンビエントでアジアン・テイストな「Miss Me (Feat. ABRA)」。アルバムのアクセントとして機能し緊張感を与える楽曲だ。いい意味でらしくない今作の白眉。

Head Above Water

Avril Lavigne

Head Above Water

言わずと知れたポップ・ロック・シーンの歌姫 Avril Lavigneが、約5年ぶりとなる新作をリリースする。音楽シーンの表舞台から遠ざかっていた間、難病と闘っていたことを告白した彼女だが、今作にはそんな彼女の生命力が満ち溢れており、復活シングルともなった「Head Above Water」をはじめ、生きるためにもがき闘う姿が力強く描き出されている。また、「Tell Me It's Over」のようなソウルフルな楽曲や、ポップに振り切った「Dumb Blonde」などでは、ロックやバラードにとどまらない表現力の豊かさや、幅広い歌唱アプローチといったテクニックも発揮。キュートなロック・プリンセスは、人生の荒波を乗り越え、貫禄たっぷりの女王へと進化を遂げたようだ。

Best Hits: Major Lazer

MAJOR LAZER

Best Hits: Major Lazer

M.I.A.、Beyoncéらのプロデュースを手掛けたマルチ・クリエイター DIPLO率いるユニット、MAJOR LAZER。2019年にデビュー10周年となった彼らが、全キャリアから22曲を集めたベスト盤をリリース。Justin BieberやCamila Cabello、Ariana Grandeら人気アーティストたちとのコラボを重ね、レゲエ、ラテン、アフロビートなどの要素をエレクトロと掛け合わせた革新的なサウンドを誕生させた功績は計り知れず、00年代ダンス・ミュージック、EDMブームを語るうえで欠かすことはできない。そんな彼らの『Best Hits: Major Lazer』は、ここ10年の世界の音楽シーンにおける総括と言っても過言ではないだろう。

Love In Tokyo

COLDPLAY

Love In Tokyo

2015年発表の『A Head Full Of Dreams』を引っ提げ、世界各国で計122公演を行ったツアーから、2017年の東京ドーム公演を含む全14曲を収録したライヴ・アルバム。タイトルは日本のファンのためにリリースされた作品だからだが、ここには世界中のファンとバンドが育んできた愛が詰まっている。それを物語るのが全曲で聴こえるファンのシンガロングだ。バンドが煽っているわけでも、あからさまなシンガロング・パートがあるわけでもない。でも全曲で歌うんだから、それを愛と言わずしてなんと言う? バンドのアンサンブルはEDMやモダンなR&Bを昇華したものに変化したが、誰もが歌わずにいられない曲の良さという意味では、彼らの魅力はまさに不変。それが不動の人気の理由だ。

Olympus Sleeping

RAZORLIGHT

Olympus Sleeping

フロントマン Johnny Borrellが"ロックンロールへのラヴ・レター"だと語る10年ぶりのニュー・アルバムは、FAT WHITE FAMILYやSHAME、DREAM WIFEら新鋭の登場で盛り上がりを見せるロンドンのインディー・ロック・シーンにとっても、愛のメッセージであるに違いない。THE LIBERTINESに続くアイコンとして人気を博したRAZORLIGHTのデビュー当時も同じく、ガレージ・ロック・リバイバル・ムーヴメントによるUKロック再興の最中であった。そんな彼らの復活作は、原点回帰とも言える色彩豊かな疾走感溢れるガレージ・ロック、ロックンロールを展開。青春時代を切り取ったような瑞々しい1枚に、先述の若手バンドたちも心揺さぶられるだろう。

Simulation Theory

MUSE

Simulation Theory

MUSEの通算8作目となるアルバムは、ロック路線の前作『Drones』とはガラリと変わって、某SF映画を思わせるアートワークが示すとおり、80年代風のシンセを大胆に取り入れた異色作となった。TIMBALANDがプロデュースを手掛け、マッシヴなベースとR&B調の歌メロを融合させたTrack.4や、トラップとロックを掛け合わせたTrack.7など、全体的にはこれまでになくポップに。一方で3rd、4thアルバムのヘヴィなギター・サウンドに回帰したようなTrack.8、9も配されており、ロックもポップもエレクトロもすべて呑み込み、ダイナミックで劇的なMUSEらしいサウンドに昇華しようとする新たな試みが感じられる。彼らの真骨頂であるライヴでどう披露されるか楽しみだ。

Greatest Hits

SUGAR RAY

Greatest Hits

00年代前半にロック・シーン最前線で活躍したSUGAR RAYの数々の楽曲の中から14曲を厳選。レイドバックしたサーフ・ロックというイメージが強い彼らだが、音楽性はハードコアからパワー・ポップ、そしてJoe Jacksonのカバーまで、ミクスチャー・バンドの呼び名に恥じない多彩さを誇る。そんな振り幅の広さをポップに打ち出したところが彼らの真骨頂。レア・トラックは収録されていないものの、彼らの代表曲を知るには便利な1枚だ。フロントマンのMark McGrath(Vo/Gt)がテレビの司会業も楽しみながらマイペースな活動を続けている彼らだが、10-FEETのTAKUMA(Vo/Gt)との共演を含む『Music For Cougars ~復活の常夏番長~』(2010年)以来となる新作をそろそろ聴きたい。

Solace

RÜFÜS DU SOL

Solace

オーストラリアはシドニーのエレクトロニック・トリオの3rdアルバム。1年かけてカリフォルニアのヴェニスで制作されたという本作は、その地の荒涼とした砂漠や海岸線をモチーフにしているそう。基本的にアンビエントなムードの中、メランコリックで控えめなエモーションが特徴的なヴォーカルが沁み入る。5曲目の「No Place」は先行シングルとしてSpotifyのグローバル・バイラル・チャートで2位を獲得。すでにUK、USではライヴ・バンドとしても人気の高い彼らだが、曲の力で世界各地の評価が上昇している印象だ。ハウシーな四つ打ちもごく控えめで、チルアウトにもしっくりくるし、エレポップ・テイストもある。映像喚起力も抜群で、思い思いに広大な情景を浮かべながら聴きたい作品。

The Skeptic

TILIAN

The Skeptic

DANCE GAVIN DANCEのヴォーカリスト、Tilian Pearsonによる3作目のソロ・アルバム。EMAROSA、SAOSINの作品にも参加するなど、ポスト・ハードコア・シーンに足跡を残してきた彼が、ここではバンドというフォーマットから解放され、存分にハイトーン&パワフルな歌声をアピール。エレポップ、R&B、ハウス・ミュージックのエッセンスを取り入れたサウンドメイキングからは、彼なりに現代のポップ・ミュージックに挑戦するというテーマがあったことが窺える。そんな試みとギター・ロック・サウンドが見事溶け合った「Handsome Garbage」、「Hold On」はそのうち日本のバンドが真似し始めるのでは(笑)。前者で聴かせる力強いシャウトにゾクゾクさせられる。

Applause Of A Distant Crowd

VOLA

Applause Of A Distant Crowd

甘美なヴォーカルと、モダン・プログレッシヴ・メタル~70年代プログレッシヴ・ロックにエレクトロニック、アンビエントを織り交ぜ、メロディアスなサウンドにまとめ上げた前作『Inmazes』。本作は、それから2年ぶり2枚目となるニュー・アルバムだ。今回もその手法やスタイルにこそ著しい変化は見られないものの、コーラス・ワークに磨きをかけ、アンビエント感を増したサウンドは、よりヴィヴィッドで立体的な音像に。持ち味のドラマチックな展開も健在で、へヴィでダークなギター・リフを温かなシンセ・ポップで包み込んでいくグラデーションが心地いい。同郷、デンマークの至宝と呼ばれるMEWをも飲み込んでしまうようなさらなる深化を見せつけてくれた。

Mi Vida Local

ATMOSPHERE

Mi Vida Local

USのアンダーグラウンド・ヒップホップ・デュオの新作を聴いて、ジャンルに拘泥せず、むしろ哀愁に満ち、ハードボイルドで洗練された普遍的な作品なので広く聴かれてほしいと感じた。1989年結成というキャリアを持ち、メロウ・グルーヴな「Sunshine」など、曲の良さで日本にもファンを持つMCのSlugとDJ/プロデューサー Antのふたり組。今作は"Mi Vida Local=俺たちの現地生活"と題され、決して明るく緩いムードはない作風から、彼らの地元ミネアポリスのサウスサイドもアメリカの混沌の中にあることが察せる。ユニークなのは、今やラップ・ミュージックでほぼ聴けないギター・サウンドをブルージーな感覚で多用していること。ピュアに音楽に対峙する彼ららしい。

In The Drink

Justin Courtney Pierre

In The Drink

2016年より無期限活動休止中のポップ・パンク・バンド MOTION CITY SOUNDTRACKのフロントマン、Justin Courtney Pierreが初のソロ・アルバムを古巣Epitaph Recordsからリリース。プロデューサーにバンド・メイトのJoshua Cain(Gt)を迎えた本作は、MCSの持ち味であったどこか懐かしく切ないメロディをしっかりと継承しながら、Justinの優しさと哀愁を帯びた歌声もさらに引き立った作品に仕上がっている。今回Justinはドラム以外の全パートを演奏しており、エモーショナルなギター・ワークのみならず、ベース・プレイも聴きどころ。MCSのファンはもちろん、まだ聴いたことがないという人にもおすすめだ。

No Tourists

THE PRODIGY

No Tourists

90年代初頭からビッグ・ビートのパイオニアとして後発バンドに多大な影響を与え続けるTHE PRODIGYが、約3年ぶり7枚目のアルバムをリリースする。一聴してそれとわかる"THE PRODIGY節"とでも言うべきサウンドは健在で、先行シングル「Light Up The Sky」や「We Live Forever」などミドル・テンポの"らしい"曲はもちろん、"Fuck You"のヴォイス・サンプルとともにマッシヴなシンセが殴り掛かる「Boom Boom Tap」のようなアッパーで攻撃的な曲も。トラックメーカーのLiam Howlett(Prog/Key/Syn)が"バンド・アルバム"と語るように、ライヴでの光景が目に浮かぶような、フロア対応型の力強いグルーヴに満ちた作品だ。

Natural Rebel

Richard Ashcroft

Natural Rebel

昨年はTHE VERVEの名作『Urban Hymns』の20周年記念デラックス・エディションがリリースされ、名曲「Bitter Sweet Symphony」を再び若い世代が知る機会になった。最近ではLiam Gallagherとライヴで共演するなど、90年代ブリットポップの盟友は今も仲のいいところを見せる。前作から約2年ぶりに届けられたソロの5作目は聴き疲れしない大人のロックだ。Richardの声との相性で言うとこれぐらい引いたアクのないブルース&カントリー感はアリかもしれないが、リズムの単調さは否めない。ただ、哀愁と粘りが同居した声が生きるドラマチックな「We All Bleed」などはファンを納得させるだろう。ストリングス・リフが似合う世界観は健在。

Art Of Doubt

METRIC

Art Of Doubt

カナダのシンセ・ポップ/ロック・バンド、METRICの7thアルバム。冒頭の「Dark Saturday」は、夜の都会の路地裏が情景として浮かぶ1曲で、ダーク且つ耳馴染みがいい音の上に、気怠そうながら色気のあるEmily Hainesの歌声が乗ることで生まれるスリリングな空気感が、本作の世界へ聴き手を引き込む。表題曲「Art Of Doubt」は、感情の起伏の激しいヴォーカルとそれに呼応するように展開していくディープなサウンドが文句なしにカッコいい。また壮大なミドル・チューン、「Underline The Black」では美しいメロディにうっとりさせられる。懐かしさを感じさせるニュー・ウェーヴ的なサウンドながらも、決して古さは感じさせない円熟味のある1枚。

Mirror Master

YOUNG THE GIANT

Mirror Master

レーベルをElektra Recordsに移籍しての4thアルバム。テン年代初期には「Cough Syrup」がドラマ"Glee"で使用されたことが話題になった彼ら。だがそれ以上に、メンバーが様々なバックボーンを持ちつつ、オレンジカウンティ出身という、インディー・ロックの中でも多様性を孕む要因を内包していることが魅力だ。本作では、ヒップホップのビート感の、生音でのシャープな解釈が全編に敷かれ、「Superposition」ではその上をマンドリン風の弦が、「Brother's Keeper」ではメランコリックなコーラスがセンシュアルに響く。西海岸のドライなサイケデリアもUK的なメランコリーも味わえるオリジナリティを持ったバンドに成長した印象だ。

A Walk Through Jackson County

ARLINGTON

A Walk Through Jackson County

南カリフォルニア・オルタナティヴ・ロックを掲げる3人組、ARLINGTONが奏でるのは、ポスト・ハードコアというRise Recordsのイメージを、いい意味で裏切るモダンなガレージ・ロックだ。メンバー自ら影響を認めるJack White、THE STROKES、KINGS OF LEONを思わせる演奏やフレーズが、曲によっては出すぎるきらいはあるものの、どの曲からも感じられる人懐っこいポップ感覚と、音数を削ぎ落としながら閃きに満ちた演奏は、なかなか魅力的。もちろん、このままでも十分に聴き応えはあるが、楽曲の根底にあるブルースやR&Bの影響がさらに滲み出てくれば、ハスキーなヴォーカルと相まって彼らならではと言えるユニークさも際立ちそうだ。この機会に名前を覚えておいてもきっと損はない。