DISC REVIEW
Overseas
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BONES UK
Bones UK
あの天才ギタリスト Jeff Beckが認めたシンデレラ・ガールズということで、大注目の女性オルタナティヴ・ロック・デュオ BONES UKがデビュー作となるフル・アルバムをリリースした。世の中のトレンドなどまったく眼中にないような、我が道を行くスタイルで、ヘヴィでダークなインダストリアル・ロックをかき鳴らす。ポップな要素もあるが、エッジの効いたブルージーなギターやRosie Bonesの気だるい歌声など、泥臭いロックンロールが色濃く出ているため、打ち込みのビートをふんだんに使っていても、彼女たちはエレクトロ・デュオではなく、ロック・バンドなんだなと納得できる。中性的でロック・スターっぽい、尖ったファッションや佇まいも、堂々としていてクールだ。
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Melanie Martinez
K-12
タレント発掘番組"The Voice"への出演をきっかけに、前作『Cry Baby』(2015年)でデビューした、シンガー・ソングライターのMelanie Martinez。お人形のようなルックスと、おもちゃの楽器などを使用したアーティスティックなポップ・サウンドに加え、少し毒のある"本当は怖い童話"的なほの暗い世界観で、"グロかわ"などとも表現された彼女だが、2作目となる今作でもその方向性は貫いている。ヒップホップやR&B的表現も、ソウルフルというよりは夜空に浮遊する魂というようなフワフワした感触だ。ドリーミーなのにそれでいて描いているのは現実の暗闇なのだから、これはまた多くのティーンエイジャーを闇に突き落としそうな、甘い甘い毒入り綿菓子だ。
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!!!
Wallop
お馴染みニョーヨークが誇るディスコ・パンク・バンド、!!!が通算8枚目となるニュー・アルバムをドロップ。前作『Shake The Shudder』で推し進められたダンス・ミュージックへのアプローチは、今作ではさらに強化された印象だ。80年代ポップを思わせるキャッチーなTrack.5やファンクネスが光るTrack.9から、エレクトロ・ハウスのニュアンスが垣間見えるTrack.1、トラップを思わせるブラス使いが印象的なTrack.11まで、多様なスタイルを咀嚼した、これまで以上にバリエーションに富んだ作品に仕上がっている。エネルギッシュなフロアの熱量も、チルなムードも併せ持った本作がライヴでどう披露されるのか、10月から行われるジャパン・ツアーにも期待が持てそうだ。
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RIDE
This Is Not A Safe Place
2014年に19年ぶりの再結成、進化を証明した復活作『Weather Diaries』、復活後日本で最初のステージとなった"フジロック"でも、"90年代シューゲイズ・バンドの代表格"をアップデートし、現役感を証明したRIDE。今作には、メランコリックなギター・アンサンブルと美しいハーモニーのRIDE節なTrack.2やTrack.5もあれば、中期YMOを解釈した感の生音によるテクノ・フレーバーなTrack.3(メンバーによるとバスキア展からのインスパイアだそう)や、ソリッドなポスト・パンクのTrack.4、サイケデリックなアシッド・フォークのTrack.9など尽きることのない表現欲に驚く。タイトルは"ここは安全じゃない"の意だが、この音像は筆舌に尽くしがたく心地よい。
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THE REGRETTES
How Do You Love?
顔がいい! センスいい! そしてめちゃくちゃ若い! 1st EPでメジャー・レーベルの目に留まったのも納得の次世代ガールズ・パンクの星 THE REGRETTESの2ndアルバムがこちら。「California Friends」や「I Dare You」のMVを観てもわかるけど、メンバーみんな仲が良さそうだし、本当に楽しそう。ローファイ・インディー・ロック、サーフ・ロック、70'sパンク、パワー・ポップ......ノスタルジックなのにとってもイマドキ。ファッション・アイコンとしても注目のフロントマン Lydia Nightのスモーキーで大人っぽい歌声とかわいらしい見た目とのギャップも最強! 日常にエネルギーを吸い取られてカラカラの大人たちも、瑞々しい彼女たちの夏の贈り物を受け取って、心を潤して。
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Ed Sheeran
No.6 Collaborations Project
Ed Sheeranは時代の空気を読むのがうまい。というか彼自身がもはや時代の空気そのものなのかも。2011年の『No.5 Collaborations Project』リリース時は、ADELEなど歌唱力の高いSSWが台頭すると同時に、ヒップホップやEDM系の尖ったアーティストたちがヒットを飛ばしていたが、彼はそんなトレンドに片足引っ掛けながらも大衆に媚びすぎない音楽で支持された。そして今作。Justin BieberやBrunoMarsをはじめとしたスーパー・スターを迎えてはいるが、売れ線コテコテのいやらしさはなく、自然体な姿勢が見て取れる。この10年で音楽の消費のされ方は劇的に変化したが、そんななか気軽に消費される完璧なシングル曲を集めて、語り継がれるアルバムを作るというのは奇跡だ。
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NEW ORDER
∑(No,12k,Lg,17Mif)
前身バンドであるJOY DIVISIONの結成40周年を迎えようとしている17年7月、そのJOY DIVISIONがレコード・デビューするきっかけを掴んだとも言える地元マンチェスターのスタジオで、NEW ORDERが行ったライヴを収録した2枚組ライヴ・アルバム。ライヴでは30年以上演奏することがなかったJOY DIVISION時代の「Disorder」を始め、全キャリアから選曲した曲を新たなアレンジで披露している。多くのメディアから大歓迎されたメモリアル・ライヴを追体験しながら、ゴシックでインダストリアルでディスコ・ポップな、ポスト・パンク/ニュー・ウェーヴの先駆者の真骨頂を堪能できるという意味で、聴き応えは満点。危なげない演奏にバンドの円熟を改めて感じられる。
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THE BLACK KEYS
Let's Rock
ロックは流行らないと言われて久しいアメリカの音楽シーンにおいて、爆発的ヒットを飛ばし続ける稀有な存在、THE BLACK KEYS。アメリカの田舎によくいそうなくたびれたおじさんふたり組なのに、ぶっ飛んだロック魂とセンスの持ち主で、そのギャップもまたいい。今作は、ブルージー且つ軽やかなギター・サウンドで、古き良きロックに回帰した趣を前面に出しつつ、独特のウィットに富んだポップネスも混ぜてタイムレスな作品に仕上げている。簡潔で遊び心があり、飽きの来ないサウンドというのは、主義主張が強すぎてもなさすぎても作れない。そんな絶妙なバランス感覚でシーンを俯瞰する現代のロック・スターは、人々に忘れ去られた音楽の楽しみを"Let's Rock"と言って無造作に投げて寄こすのだ。
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PLAGUE VENDOR
By Night
パンク・シーンの名門 Epitaph Recordsから、正統派パンクと名高いPLAGUEVENDORのニュー・アルバムがリリース。衝動的で攻撃的なスタイルで人気の彼らだが、今作はそんな彼ららしさがよく表現されている。ST. VINCENTの作品も手掛けたJohn Congletonをプロデューサーに迎え、外部を遮断したスタジオにこもってレコーディングした今作。ノイズの生々しい質感や轟音の荒々しさまで見事に生きた音作りが実現した。そして、なんと言ってもフロントマン、Brandon Blaineの存在感がすごい! アンダーグラウンドな香りのするサウンドはもちろん魅力的だが、こういう危うい雰囲気を纏ったパンク・ロック・スターは今、絶滅危惧種なので今後も要注目だ。
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YONAKA
Don't Wait 'Til Tomorrow
この"YONAKA"という日本語のバンド名が気になって聴いてみたって方も多いのではないか。たしかに"夜中"っぽいしっとりとした暗さや澄んだ空気感が、彼らのメロディにはある。ダークでポップな要素もあるオルタナティヴ・ロックということで、QUEENS OF THE STONE AGEの影響も感じるが、ズバ抜けた歌唱力のあるTheresa Jarvisの、ジャンルにとらわれない表現力のあるヴォーカルは、今よりロックだった頃のPARAMOREのHayley Williamsを少し彷彿させる。流行り廃りのなさそうなエモくて激しいサウンドも悪くない。モデルのようなルックスのTheresaをはじめ見た目もイケてるメンバーが揃っているので、日本でもこれから人気に火がつくかも!?
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CHON
Chon
マス・ロックやメタルを土台にしつつ、ジャズやフュージョン、さらにはトリップ・ホップやエレクトロまで取り入れた、テクニカルながらクリーンなサウンドで人気を博す、アメリカは西海岸サンディエゴ出身のインスト・バンドによる3rdアルバム。前作『Homey』のヒットを受け、"Coachella"や"フジロック"など大型フェスへ出演を果たすようになった彼らは、大観衆の前でプレイすることを念頭に置いて今作を制作したとのことで、過去作に比べるとよりシンプルで明快なサウンドに変化している。とはいえ、バンドの持ち味でもある多彩な表現力や、フレーズから伝わってくるエモーションは健在。圧倒的なテクニックから生み出される爽やかなグルーヴの波に身を任せたくなる、この夏におすすめの1枚だ。
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SYML
Syml
シアトルのインディー・ロック・バンド BARCELONAのフロントマン、Brian Fennellによるソロ・プロジェクト SYMLが、初のフル・アルバムをリリースした。バンドとしてのアプローチや個人名義でのアプローチとも違う、SYML名義ならではのシンプル且つエレクトロニカをふんだんに用いた表現で、センスの良さが光る。アップテンポでちょっとレトロなインディー・ロック臭のするTrack.1「Clean Eyes」はキャッチーな掴みで、全体的には、ゆったりとしたテンポ感でアンニュイなサウンドが漂う。囁くようなBrianのヴォーカルも心地いい。シンガー・ソングライターで、マルチ・プレイヤーで、プロデューサーというBrianの才能が凝縮された1枚。
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THE HEAD AND THE HEART
Living Mirage
2016年リリースのメジャー・デビュー・アルバム『Signs Of Light』がUSビルボード・チャートでトップ5に入るという大ヒットを飛ばした、シアトルのフォーク・ロック・バンド、THE HEAD AND THE HEARTによる最新作。シンプルなピアノとギターで綴るメロディの美しさとキャッチーなコーラスが際立つ、フォーク・ロックらしい楽曲ももちろん素晴らしいが、重低音が響くグルーヴ感たっぷりの楽曲やシンセで装飾された楽曲には、ポップスとしても楽しめる大衆性がある。THE FRAYやTHE SCRIPTなどの美メロ系オルタナティヴ・ロック・バンドが好きな方、男女ツイン・ヴォーカル、ソフト・ロック好きな方など、幅広いリスナーに聴いてもらいたい。
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SPINN
Spinn
母国イギリスで高い評価を受け、ここ日本でも2018年10月に初ライヴを行い早耳リスナーから注目を集る、リヴァプール出身の4人組インディー・ロック・バンドが待望の1stフル・アルバムをリリース。あどけなさの残る歌声にドリーミーなシンセとコーラスを絡めた、甘酸っぱさを纏ったギター・ポップは、UKロック・ファンの琴線に触れるサウンドに仕上がっている。踊ってしまうようなビートにキャッチーなフレーズが心地よい「Bliss」や「Sunshine」、歌うようなベース・ラインの「Shallow」など、メロディ・センスの良さも垣間見えるし、アコギに乗せて"君は天からの贈り物だ"と切なく歌い上げる「Heaven Sent」も秀逸。これからの躍進に期待できそうな1枚だ。
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CAGE THE ELEPHANT
Social Cues
USケンタッキー発の6人組、CAGE THE ELEPHANTによる約3年ぶり通算5作目のフル・アルバム。グラミー賞の最優秀ロック・アルバム賞に輝いた前作『Tell Me I'm Pretty』は60~70年代のヴィンテージ・ロックに接近していたが、今作ではそこに彼らの持ち味であるガレージ・ロック・サウンドも組み合わせ、さらに奥行きのある作品を作り上げた。BECKがゲスト参加しているTrack.4ではレゲエ調のトラックに挑戦した一方で、オーケストラを携えじっくりと聴かせるTrack.8や、アルバムを締めくくるバラードのTrack.13など、静と動の二面性がエモーショナルに表現されている。デビューから10年以上を経たバンドの円熟味を堪能できる作品だ。
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WALLOWS
Nothing Happens
俳優としても活動するDylan Minnette(Vo/Gt)を中心とした、南カリフォルニア出身の3人組インディー・ロック・バンド、WALLOWS。2017年にリリースしたシングルがバイラル・チャートでヒットし、注目を集めていた彼らが、待望の1stアルバムを完成させた。ポスト・パンクの影響が垣間見えるビートに、気だるげな歌声とドリーミーなシンセ、そして青春の甘酸っぱさを具現化したような衝動と混沌がミックスされたサウンドは、独特の雰囲気がある。女性SSWのCLAIROをフィーチャーしたTrack.4、歌うようなベース・ラインが際立つTrack.9、壮大なサウンドスケープを描くTrack.11と引き出しの多さも感じられ、これからの活躍にも期待が持てそうだ。
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BAD SUNS
Mystic Truth
カリフォルニアのインディー・ロック・バンド、BAD SUNSが3枚目となるフル・アルバムをリリースした。80年代のUKポスト・パンク/ニューウェーヴからの影響はありつつも、2000年代以降のアメリカのインディー・ロックらしいカラッとした響きもあり、懐かしさと今っぽさの共存するバンドだ。こういうセンスのいい音楽は、スタイルのいいイケメンがやっていると逆に興ざめしちゃうんだけど、BAD SUNSはいい感じにダサくてもさっとしているのになんだかオシャレで、そこがまたいい。こういうサウンドだと、高音質の機材で聴いてライヴ感を味わうのもいいが、あえてカセット・テープに落として、よく晴れた日に足元に置いたラジカセで聴きながら洗濯したりするのが最高な気がする。
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WEEZER
Weezer (Black Album)
思いついたら形にせずにいられない多産なバンド、WEEZERが13枚目となるアルバム(6枚目のセルフ・タイトル!)をリリースした。WEEZERと言えば、なぜか同じくセルフ・タイトルにしてしまったカバー・アルバムを発表したばかり。全体的にネタ元だけでなく、サウンドもノスタルジックな印象だったカバー作と比べると、こちらは冒頭の「Can't Knock The Hustle」、「Zombie Bastards」の流れで一瞬にして現代に引き戻される感じだ。R&Bも取り入れたダンサブルなポップ・ソングが目を引くが、ただところどころにはサウンドメイキングなどにノスタルジックな香りを残してある。Rivers Cuomo(Vo/Gt)の今の気分なんだろうな。
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CIRCA WAVES
What's It Like Over There?
今年で4度目となる"SUMMER SONIC"への出演も発表されたCIRCA WAVESが、来日を前にニュー・アルバムをリリースする。前作『Different Creatures』で、それまでのやんちゃでポップなインディー・ロックの殻を脱ぎ捨て、よりゴリっとしたオルタナ・サウンドに変化し、ダークな一面も見せた彼ら。今作では、その内面の激しさは引継ぎつつも、効果的にシンセを取り入れ、ポップ感やダイナミクスが増した印象だ。ひとつひとつ大人の階段を上るように深みのあるサウンドに進化していく彼らの、無限のポテンシャルを感じる作品となった。ライヴハウスの似合う泥臭いインディー・サウンドもいいが、アリーナ級の伸び伸びとしたサウンドを奏でる彼らを生で観るのもいいだろう。
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VÖK
In the Dark
アイスランドのスタイリッシュ美女美男グループ、VÖKが2枚目となるアルバムをリリース。ルックスがスタイリッシュなら、サウンドもめちゃくちゃオシャレである。気だるいビートもダンス・フロア向けのアッパーなビートも器用に乗りこなし、アンビエントでありながら、大衆的なポップさも持った不思議な雰囲気を纏った作品だ。紅一点 Margrét Ránのアンニュイなヴォーカルや、透明度の高い浮遊感のあるシンセ・ポップは、この手のジャンルが好きな人にはたまらないはず。また、ネオ・ソウルっぽいセクシーな響きもあり、"アイスランド的な"だけでない、無国籍な香りのするグルーヴも持ち合わせている。空気の澄んだ自然の中の野外フェスで、星空をバックに聴いたら気持ちいいだろうな。
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