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DISC REVIEW

Overseas

Comedown Machine

THE STROKES

Comedown Machine

2000年を境に明らかに"THE STROKES以前・以降"のシーンを形成した当の本人たちは、この5作目でもすこぶるクール。象徴的なのがリヴァーブ感のない音像や、それがもたらす低体温感。1stや2nd時から続くシンプルかつ緻密に組み上げられたリフをさらに客観視し、まるで自分たちの特徴をエディットするような洗練を随所に感じる。そこに乗る、鬼の高低差を誇るJulianのヴォーカルの艶たるや......。「Slow Animals」でのウィスパーと地声のダブルなんてもう、声そのものがアートである。アルバム・タイトルの世界観に近いと思しき「80's Comedown Machine」も80's的なプラスティックなサイケデリアを表現。具体的な熱量ではなく、ロックンロールに潜むフェティシズムでエモーションを喚起する見事な手さばき。

Discipline

ELECTRIC ELECTRIC

Discipline

2005年に結成されたフランス出身の3ピース・インスト・ダンス・ロック・バンドELECTRIC ELECTRICの4年振りとなる2ndアルバム。ダンス・ミュージックをバンド・サウンドで表現するバンドは数多くいるが、彼らはよりダイナミックで疾走感のあるタイプ。力強くパーカッシヴなリズムのドラムと、テクニカルでサイケの入ったギター・サウンド。そこにミニマルでサイケデリックなシンセが加わる。BATTLES等の直系と言って良い圧倒的で肉体的なグルーヴに持っていかれる。そしてCANやNEU!を彷彿とさせる様なクラウト・ロックの要素が入っているのも魅力的だ。独自のセンスと確かな技術が凝縮された人力ダンス・ミュージック。ヘッドフォンで聴くのも良いけれどこれはライヴで体験してみたい。

Machineries Of Joy

BRITISH SEA POWER

Machineries Of Joy

ポップ・ミュージックという大海原を優雅に航海する、BRITISH SEA POWER。一貫した"文明と自然の調和"な文学性、英国伝統的なギター・サウンド、さらに敬意あるマーキュリー・プライズにノミネートされるなど、UKインディー・ロックの良心となる存在感を帯びた彼らから、約2年振り通算5枚目となる新作が届けられた。前作で大胆に取り入れたエレクトロ・サウンドは影を潜め、原点回帰のようなトラディショナル・ミュージック色が出されているが、モチーフとなるは昨年リリースされた6枚のEPシリーズ。トータル33曲もの音源から発展させたものが本作となったが、純粋にやりたいことをクリエイトする姿勢が垣間見える。聴き込めば、波間にたゆたうような心地良さが......。

Truly Alive

MITZI

Truly Alive

オースラリア出身のポスト・パンク・バンドMITZIの1stアルバムがリリース。オーストラリアと言えばCUT COPY等が在籍するレーベルModularや昨年のNME誌で年間ベストに輝いたTAME IMPALAなど良質なインディー・ダンス・バンドを輩出しているが、彼らもそれに続く期待の新人と言えるだろう。きらびやかなディスコ・サウンドもありながらRAPTURE等を彷彿とさせるようなポスト・パンクの要素もあり多彩でとても楽しい。今作のエンジニアにはKLAXONSやMETRONOMY等を手掛けたAsh Workmanが参加しバンド・サウンドを取り入れたグルーヴィー且つダンスフルなサウンドが展開される。美しいメロディとハーモニーがありそして踊れる1枚だ。

Understated

Edwyn Collins

Understated

死の淵から生還した者だけが表現できる、喜びと憂いの甘さと苦味を併せ持った味わい深いヴォーカル、そして繊細で心地良いメロディ……穏やかな暖かさに抱きしめられるアルバムだ。音楽都市グラスゴーの名産といえばORANGE JUICEだが、そのフロントマンで知られるEdwyn Collinsが約2年半振りに通算8作目となるソロ・アルバムをリリースする。2005年に脳出血で倒れた以降は長いリハビリ生活を余儀なくされるが、2007年の『Home Again』での復活作からこうして新作がコンスタントに届けられるとは嬉しい報せだ。ゲストも豪華にLITTLE BARRIEのBarrie Cadogan、SEX PISTOLSのPaul Cookなど。世代を越えて愛される男である。

Water On Mars

PURLING HISS

Water On Mars

フィラデルフィア出身のギタリストMike Polizzeを中心に活動するサイケデリック・ロック・バンドPURLING HISSのニュー・アルバムがリリース。ファズの強いブルージー且つ骨太のガレージ・マナーのギター・サウンドは男なら胸を熱くさせるものがある。ただラウドでヘヴィなだけじゃなくツボを押さえたフックと極上のメロディ。それがこのアルバムにとても聴きやすさとポップさを生んでいて、より特別なものにしている。ローファイ感ある独特なサウンドも彼の個性を際立たせる要因だ。彷彿とさせるのはやはり男臭さ全開の一時期のPRIMAL SCREAMか。男泣きのギターと爆発力あるガレージ・ロックンロールが炸裂する大注目の1枚。

Bloodsports

SUEDE

Bloodsports

90年代、UKブリット・ポップを彩った輝きは現在も色褪せず。Brett Anderson率いるSUEDE、実に11年振りの新作である。まさにSUEDE節としか形容できないゴージャス&アップリフティングに美しいギター・メロディ、ドラマティックなスケール、そしてアンセミックなヴォーカルに身を委ねると、あの狂乱の時代が甦ってくるようだ。それもそのはず、プロデューサーはバンドの初期3作を手掛けたEd Buller。このSUEDE節に大きく貢献した人物であり、新作は原点回帰の意味合いもあるという。まるで彼らの時間が止まっていたかのような瑞々しさを痛感するが、Brettの容姿も当時とあまり変わっていないことにも驚く。"UKロックLive Forever"な存在だ。

Les Revenants

MOGWAI

Les Revenants

MOGWAIの緊張感と内省的な世界観を愛するファンにとっては、今回の轟音ギターこそ鳴り響いていないこの作品もバンドのDNAをより集中して堪能できるという意味で味わい深いのではないだろうか。SONIC YOUTHがサントラを手がけた映画「Simon Werner A Disparu」の監督が脚本を手がけるフランスのTVドラマのために書き下ろした新曲からなる本作の特徴は、生ピアノ、エレピ、キーボードをメインに据え、曲によっては精査され尽くした単音のギター・フレーズや控えめなドラムが配置されている点で、中にはチェロとギターのアンサンブルも。また、逝去したJack Roseへのトリビュートとして録音した「What Are They Doing In Heaven」のカヴァーでのシンプルなフォーク・テイストも慈愛に満ちて美しい。

Exile

HURTS

Exile

80sのシンセ・ポップ、DEPECHE MODEやTEARS FOR FEARS並みの美メロとキャッチーさを10年代型にアップデートした『Happiness』で一躍ブレイクしたHURTS。世界ツアーで疲弊しきったという彼らは、なんとまた出会った当時に似たマンチェスターのアパートに半年籠もりっきりで2ndアルバムを作り上げた。幻惑的でめまいを呼び起こすような耽美さは若干後退し、ギターからの曲作りが多かったことも影響したのか、同じダークで哀感を湛えたメロディでも、トライヴァルだったりエクストリームなサウンドが支えている楽曲が増えた。顕著なのが1stシングル「Miracle」であり、「The Road」のヘヴィネス。また、グルーヴやコード感にR&Bのニュアンスを感じる「Sandman」も新鮮。

Untogether

BLUE HAWAII

Untogether

BRAIDSのヴォーカリストRaphaelle Standell-Prestonとトラック・メーカーAlex Cowanによるカナダのモントリオールのエレクトロニック・ドリーム・ポップ・デュオ初のフルレングス・アルバム。2010年に8曲入りのEPをリリースして以来約2年の歳月を経てサウンドも進化しており、ビート・ミュージックのエッセンスが至るところに感じられるバリエーション豊富なリズムと、幻想的且つ神秘的なRaphaelleの歌声の融合がとても印象的だ。Pitchforkでベスト・ニュー・ミュージックを獲得した「Try To Be」は多重コーラスのループと多彩なビートの一体感が心地良く、繊細でドリーミーな楽曲。そこから組曲的な構成の「In Two」と「In Two ll」へ続く流れは必聴。一聴しただけでは拾いきれない様々な要素が組み込まれており、聴くたびに新たな発見ができる楽曲が詰まった作品だ。

Holy Fire

FOALS

Holy Fire

この作品を作れるようになるために前2作を作ったようなものなんだ"とギターのJimmy Smithが語るように、この3rdアルバムは彼らの確実な進化を決定づける作品となっていると言っていいだろう。『Holy Fire』というタイトルの由来はわからないが、リード・シングルにもなっているTrack.2「Inhaler」はジリジリと熱を孕み、緻密で煌びやかな細工が施されたギター・サウンドはまさに"聖なる炎"を感じさせる崇高な光を放っている。アルバムを通してフィジカルさはグっと増し、彼らのアーティスティックなサウンドにハッキリとした輪郭を与えたことにより、ロック・バンドとしての強度はグっと増している。既に世界的な評価を得ている彼らの更なる飛躍を予感させる作品だ。

Honeys

PISSED JEANS

Honeys

ノイズ・ロック/ハードコア・パンク・バンドPISSED JEANESの約4年ぶりとなる通算4枚目のスタジオ・アルバムが完成。80年代のハードコアやポスト・ハードコアに多大な影響を受けており、本作でもそれがはっきり感じ取れる。先行曲「Bathroom Laughter」からノイジーでハードコアの象徴のような曲のオン・パレード。速い曲はもちろん、「Cafeteria Food」のようなスローでヘビーな曲も魅力的。ヴォーカルを含めて各楽器の自己主張が強すぎてとにかく熱い。ぐいぐい勢いで押していく、聴き終わった後に体温がぐっと上がったように感じられるほどで、尚且つこんなに爽快な気分になれる作品も久しぶりだ。ライヴの評判もとても良いようなのでぜひ体感したい!

New Moon

THE MEN

New Moon

爆笑してしまった、最高の賛美として。ブルックリンのシーンにおいてMGMTやDIRTY PROJECTORSらとは違い、むき出しの熱量でガレージ・パンクやサイケを1つの鍋に放り込んできた彼らが、今回は山奥にガレージをおっ立てたようなアプローチを展開。特徴はラップ・スティール・ギターやピアノ、マンドリン、ハーモニカなどの素のサウンドが醸すアメリカン・ルーツ・ロックの匂い。が、そこは一筋縄でいかないこのバンド。Neil Young & Crazy Horseの曲が初期SONIC YOUTHのメンタリティを通したような「I Saw Her Face」とか、ホワイト・ブルースっぽいギター・ソロがありつつ、質感はガレージ・サイケな「Supermoon」とか。ローファイで生々しいサウンドでありつつ、ライヴじゃ体験できないスタジオ盤ならではのプロダクションも魅力。

No World

INC.

No World

Cee Lo Green、Pharrell Williams等のスタジオ・ミュージシャンとして活動していた、ロサンゼルス出身のAndrewとDaniel Aged兄弟によるユニットのデビュー・アルバム。R&B、ポップ、ソウル、ヒップホップと様々な要素を巧みに融合させ、耳馴染みが良いのと同時にとても深みのあるサウンドに仕上がっている。静かながらもソウルフルで聴き応えのあるAndrewのヴォーカルと卓越したギター・プレイ。そしてDanielの滑らかなリズムを奏でるベース・プレイ等今までのスタジオ・ミュージシャンとしての経験が大いに反映されているのではないだろうか。深い低音が心に沁み渡り、全編を通して幻想的な雰囲気を醸し出している楽曲が並び、別世界へと連れ出してくれるようなアルバムだ。

Between Illness & Migration

YOUR FAVORITE ENEMIES

Between Illness & Migration

キャリア初のフル・レングス・アルバム。タイトなボトムのいかにもエモ/オルタナティヴ・ロックでありつつ、全編を悲しみ、慈しみが漂う物語性の高い仕上がり。日本人女性の語りを導入した「A view from within」、シューゲイザーやポストパンク寄りのサウンドが聴ける「I Just Want You To Know」、ピアノのフレーズが祈りのように響く「Little Sister」、カオティックなフィードバック・ギターとノイズの中を様々な言語が行きかう「Muet aux Temps des Amour」など、全曲マイナーキーでダークだが曲の求心力が、単に“ダークなエモ”で終わらない強さをかもし出す。洋楽好きはもちろん、the HIATUSやONE OK ROCKなど日本の高次元な雑食系バンドが好きなリスナーにもおすすめしたい世界観。

A Long Way To Fall

Ulrich Schnauss

A Long Way To Fall

ドイツ出身で現在はロンドンを拠点に活動しているシューゲイズ・エレクトロニカの代表格Ulrich Schnauss。2007年リリースの前作『Goodbye』が音響/エレクトロニカ作品としては異例の大ヒットとなっており、本作は約6年ぶりのソロ作品。その場で新しいアレンジを作ることができるエイブルトンという音楽ソフトのおかげで、変化に富んだ多彩なライヴ・パフォーマンスができるようになったようで、ドリーミーなサウンドと高揚感のあるエレクトロニック・サウンドを中心に、型にはまった曲の構成ではなく、自由でとても広がりのある楽曲が詰まっている。リミキサーとして多くのバンドにリミックスを提供し、別のプロジェクトやプロデューサー、DJ等多くの顔を持つ彼は、このアルバムで更に独自のサウンドを確立した。

180

PALMA VIOLETS

180

英老舗レーベル、ラフ・トレードの共同経営者が1曲を聴いただけで即契約、デビュー前からNMEの表紙に抜擢など話題の、今UKで最もブレイクが期待されているロンドン出身の4人組バンドのデビュー・アルバムが到着。NMEの昨年の年間ベスト・トラックに選出された冒頭の「Best Of Friends」からラストまで、一気に駆け抜けていくような若さ溢れるエネルギッシュ且つとても英国的なロック・ナンバーが満載。オルガンの音が印象的でポップな彩りを添えているのも魅力的だ。楽曲に見合うようにライヴも相当エネルギッシュとの噂で、初来日となるHostess Club Weekenderでのライヴも大いに盛り上がったのではないだろうか。今後のロック・シーンの活性化のためにもビッグになってほしいバンドだ。

Let It All In

I AM KLOOT

Let It All In

90年代後半、UKシーンでひっそりと起こった“ニュー・アコースティック”なるムーブメントがあった。アコギを主軸にした流麗なメロディを持ち味に、このI AM KLOOTはじめKINGS OF CONVENIENCEやBADLY DRAWN BOY、そして含まれていたことに驚くほど世界的にブレイクしたCOLDPLAYなどで括られながらも、いまひとつ盛り上がりに欠けあっさりと消えてしまったこの動き。しかし今振り返ると、各アーティストはそんな“枠”に囚われることなく真摯に歌と向き合い、オリジナリティを拡げる充実したアルバムをリリースしていったのはおもしろい。前作で商業的な成功を収めるまでになったKLOOTだが、新作も負けず劣らず、深遠で、暖かく、美しい、崇高な音楽が溢れている。

Beat By Beat

KLEIN

Beat By Beat

スペイン出身の3人組エレクトロ・ポップ・ユニット、KLEINのタワーレコード限定デビューEP。紅一点ヴォーカルであるMonica Vazquezのキュートな存在感もあってか、去年、日本でも話題になったNYのエレクトロ少女、COMPUTER MAGICと比較されることもあるようだが、KLEINはCOMPUTER MAGICに比べてよりダイナミックでストレート。3人組ということもあって、COMPTER MAGICのような宅録的メランコリーはないが、ロック・バンド的な爆発力は凄まじい。とにかく、アガる。Katy Perryなどの高性能アイドル・ポップのファンや、FOSTER THE PEOPLEやPASSION PITといったエレクトロ・ロック・バンドのファンにもアピールできる力を持っている。これはブレイクの可能性も大いにあると思う。

Graffiti On The Train

STEREOPHONICS

Graffiti On The Train

ウェールズ出身のロック・バンド、STEREOPHONICSの8作目のフル・アルバム。とにかく生真面目にキャリアを築いてきたバンドだが、前作までのリリース元であるV2 Recordsから離れ、自身のレーベルであるStylus Recordsを設立しての第1作目ということもあってか、本作は、今までのアグレッシヴさよりも、むしろキャリア相応の渋みと貫禄を感じさせるアルバムに仕上がっている。もちろん、ハード・ロックを主体とし、ブリットポップ的な大仰さも兼ね備えた骨太なサウンドは相変わらず。だが本作では、フォークやソウルも飲み込んだKelly Jonesの多彩なソングライティングが一層の洗練を見せているところが、何より興味深い。常に第一線にいたバンドだが、どこか肩の荷が下りたような清々しさが、そこに宿っている。