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DISC REVIEW

Overseas

Death Rattle Boogie

THE DATSUNS

Death Rattle Boogie

2002年にデビュー。世界同時多発的に巻き起こったロックンロール・リヴァイヴァルの波の一端を担ったニュージーランドの4人組、THE DATSUNS。当時のバンドの中にはもはや表舞台から姿を消してしまったバンドも数多くいるが、彼らは本作が4枚目。着実に、自分たちのキャリアを築いている。そもそもがハード・ロック譲りの暴力的なまでにヘヴィなリフを武器に、当時の有象無象のバンドたちとは一線を画す個性を放っていたバンドだが、声変わりし損なった少年のような高音ヴォーカルと、疾走感するハードなギター・サウンドは相変わらず。随所に現れるねちっこいギター・ソロには、渋みと貫禄すら備えるようになった。たまには“牛丼特盛汁だく”みたいにハイ・カロリーなロックも聴きたくなるというあなたに、ぜひおススメ。

Wonderful, Glorious

EELS

Wonderful, Glorious

EELSが3部作以来、2年半ぶりの新作をリリース。先行公開されている「Peach Blossom」のようにどでかいドラム&ベースからスウィートなメロディに展開するような鮮烈なナンバーは全体の3割ほどで、他はEならではの内省的で美しいメロディが、ローファイなフィルターを通したグッド・アメリカン・ロックやブルースと融合する、聴くほどに味わい深い楽曲が大半を占める。もちろん、前作『Tomorrow Morning』でも聴けたエレクトロニックなエッセンスもより大胆に導入。今回はE以外のメンバーも曲作りに参加していることも手伝ってか、そうした組み合わせの妙も有機的かつダイナミック。心にしみる哀感と未知の音像がナチュラルに同居するなんてEELS以外、成し得ないだろう。

Rage Against The Machine 20th Anniversary Edition

RAGE AGAINST THE MACHINE

Rage Against The Machine 20th Anniversary Edition

衝撃的なジャケットと革新的な音楽性と直接的なメッセージで世界に強烈な印象を残し全世界で500万枚ものセールスを記録したRAGE AGAINST THE MACHINEの1992年のデビュー・アルバムが新たに20周年アニヴァーサリー・エディションとなって登場。今でも全く色褪せない衝撃と驚きを与えてくれるモンスター・アルバムだ。DISC2には貴重なデモ音源とDVDには当時のMVとライヴ映像が収録。初期のエネルギッシュなライヴ・パフォーマンスはファンならずとも圧倒されるだろう。彼らが創り出したメタリックなギター・リフとヒップホップとファンクの融合は、後のミクスチャー・ロック、オルタナティヴロックに多大な影響を与えた。血が煮えたぎる1枚。

Generation Terrorists 20th Anniversary Edition

MANIC STREET PREACHERS

Generation Terrorists 20th Anniversary Edition

昨年アジカン主催のNANO-MUGEN FESで来日するなど日本での人気も抜群の、英国の国民的ロック・バンドMANIC STREET PREACHERS。1992年にリリースされたデビュー作『Generation Terrorists』の20周年を祝して、リマスター、デモ音源や未発表音源、ドキュメンタリーDVDなどがひとつのセットになった記念盤が登場。“デビュー作を世界中でNO.1にして解散する”と宣言し世に送り出された歴史的1枚とも言える。今よりハード・ロック・テイストなサウンドと胸に突き刺さるメロディは圧倒的な熱量を放つ。ラフだがクールなデモ音源も魅力的だ。そしてDVDは貴重なドキュメンタリー映像とMVがトータルで3時間収録されている。バンドの初期衝動が再確認できる1枚だろう。

Fade

YO LA TENGO

Fade

2012年11月には東京で"Q&Aセッション"という貴重なライヴを行った彼ら。リクエストでもなくファンとの対話からインスピレーションを得たオリジナルやカバーを演奏するなんて、やはり3人の音楽的造詣と愛情の深さを感じずにいられない。そのライヴでも披露されていた新曲も収録した14作目のスタジオ・アルバムは、初めてTORTOISEのJohn McEntire がプロデュースを担当。そのせいばかりではないだろうが、グッド・ミュージックを独自のサイケ、ノイズ、ドリーミー・ポップへと位相を転換する構造は不変でありつつ、サウンドスケープの質が豊饒な光のかたまりのような印象に変化。US郊外都市の光と影、荒涼とした中にある温かさという彼らの魅力を損なうことなく、同時に実験も行った新鮮な1枚。

Grace/Confusion

MEMORY TAPES

Grace/Confusion

デビュー以降、グローファイ/チルウェイヴの旗手として評価されてきたMEMORY TAPES。チルウェイヴがUSインディの一大潮流となった去年リリースされた『Player Piano』は、シーンの動きとも相まって、大きな話題になった。チルウェイヴというジャンル自体は今年に入り様々な形に細分化されていったが、このMEMORY TAPESも、本作で新たな顔を見せている。全6曲約40分と長尺曲が並んだ本作は、それぞれの楽曲で浮遊感漂うアンビエントや、ドラマチックなエレ・ポップ、躍動感のあるトライバル・ビートなど様々なエッセンスを盛り込み、音楽的に多彩な、実験性の高い仕上がり。しかし、そんな混沌としたサウンドを、流麗なメロディ・センスと構成力でむしろエンタメ性の高い作品へと昇華している点は、流石のひと言。

Bish Bosch

Scott Walker

Bish Bosch

1960年代にTHE WALKER BROTHERSとしてデビューし、UKを中心に様々なアーティストに影響を与え続けるシンガー・ソングライター、Scott Walkerの約6年振り通算14作目となるニュー・アルバム。イギリスに2つしかないチューバ・サックスを始めとし、淡水平巻貝といった古代の天然楽器など、世にも珍しい楽器が多く使用されているという長尺の楽曲たちは、かなり前衛的で只者ではない空気を醸し出している。迫り来るリリックとヴォーカル、怪しげに響くリズムと不思議な音色は、どれも異次元的なスケールを放ち、それらが持つ“違和感”が全身にまとわりついてくるようだ。常に一歩先をゆく彼の感性の豊かさを感じられる非常に濃密な作品。終始漂う緊張感に息を呑む。

Eleventh Trip

ALPHA

Eleventh Trip

UKのトリップ・ホップ/エレクトロニカのユニットALPHAの新作。90年代のブリストル・サウンドの象徴的なアーティストとしてMASSIVE ATTACK、PORTISHEAD、TRICKYと並んで根強く支持されている。今作は3名の男女ヴォーカルを楽曲ごとにフィーチャリングしているのがとても効果的で、それぞれの楽曲にフィットした、しなやかな歌声が豊かな色彩を与えている。電子音にこれだけ温かみを感じられるのはその歌声と美しいメロディの相乗効果だろう。叙情的でメランコリックなサウンドがベースとなっており、全編を通してどこかにトリップしていってしまうようだ。人工的に作られた音で自然的な場所に連れて行かれるような感覚になるのがなんとも皮肉だが、細部に至るまで音が巧みに練られており、聴くたびに新たな発見がある。

Piramida

EFTERKLANG

Piramida

エレクトロニックにオーケストレイションを融合、かつ洗練された歌メロで現在進行形のポップを前作『Magic Chairs』で作り上げた彼らの約2年ぶり4枚目のアルバム。ノルウェイと北極の間にある棄てられた集落での古びたピアノや木道を走る音、燃料タンク、通気口を通した声など1000以上に及ぶフィールド・レコーディングを素材の一部として用いているのがトピックだが、飽くまでそれらの音は楽器やシンセと限りなくシームレスに現れる。"かつてそこにあった世界"を想起しながら創作したアルバムだけに曲のテイストは儚さや切なさといった感情から民族的なビートや音など具体的なサウンドまで様々なもので溢れているが、個々の楽曲はシンプルな構成で、音のレイヤーそのものに浸りたくなる心地よさだ。

People Get Ready

PEOPLE GET READY

People Get Ready

USインディーの聖地NYブルックリンからまたひとつ刺激的な才能が開花。PEOPLE GET READYとは、David Byrneとのコラボレートで有名なソングライター&振付師のSteven Rekerを中心に、元YEASAYERのLuke Fasano、A SUNNY DAY IN GLASGOWのJen Goma嬢、SLOW GHERKINなど多彩な活動を誇るJames Rickmanと、錚々たるツワモノが集まったバンドだ。振付師らしい全身から発する肉感性高いビートでVAMPIRE WEEKENDやDIRTY PROJECTORSの系譜に連なるアフロ・ポップ。昨今のインディー・トレンドいいとこ取りかもしれないが、そのセンスはやはりオンリー・ワン!

Mainly Mute

BELLMAN

Mainly Mute

ノルウェーのシンガー・ソングライターArne-Johan RauanのプロジェクトBELLMAN。中国や韓国のフェスティバルへの出演も決定しており、アジア圏全土で注目されている彼のデビュー・アルバムが、日本でもようやくリリースされる。北欧ならではの透明感溢れる空気が全編を通して漂っており、叙情的且つメランコリックなポップ・サウンドを主体に、時折クラシック・ロックの影響も感じさせる。すべての楽曲がどこまでも続く大自然を進んでいくようなスケール感を持っており、静かな前半から徐々に高まり後半にかけてどんどんドラマティックに展開していく様はエモーショナルで、美しい歌声も相まってとても幻想的。SIGUR ROSやMUM、KYTE等のファンは一聴の価値あり。

Ruled By Passion, Destroyed By Lust

THE ASPHODELLS

Ruled By Passion, Destroyed By Lust

DJ/プロデューサーのAndrew Weatherallの最新プロジェクトがこのTHE ASPHODELLS。インディー・ダンス・ユニット、BATTANTに所属し、ロンドンやドイツの名門クラブを筆頭にヨーロッパ中でプレイする予定のTimothy J. Fairplayを今回のパートナーに選び、原点回帰とも言える純粋なエレクトロニック・サウンドを作り上げた。重いビートにしなやかなで妖艶なメロディが乗っかり、時折ヘヴィ且つサイケデリックに鳴り響くギター・サウンドも実に印象的だ。ロックとダンス・ミュージックのクロスオーバーを実現してきた彼だからこそ行き着いた、エレクトロニックとサイケデリックの見事な融合。飽和状態のダンス・ミュージックに新たな始まりを予感させる1枚だ。

Celabrasion

SLEEPER AGENT

Celabrasion

2008年にアメリカのケンタッキー州で結成された、まだ10代のメンバーも在籍しているという6人組ガレージ・ロック・バンドのデビュー・アルバム。60’sや70’sのガールズ・ポップを髣髴とさせる甘いメロディを、青さを隠し切れないラフなガレージ・サウンドに乗せて走り抜けていく。近年のバンドだとTRIBES辺りとリンクするのは間違いないが、この若きバンドのメロディ・センスはTHE CRIBSすら凌いじゃうんじゃないの!?ってくらい突き抜けたキャッチーさを持っている。クソ生意気そうにクールに歌うAlex嬢と、頼りないJack Whiteみたいなヴォーカルを披露するTonyのツイン・ヴォーカルのバランスも最高。是非邦楽ファンにも聴いていただきたいバンドだ。

Medicine

POP LEVI

Medicine

Jonathan James Mark LeviのプロジェクトPOP LEVI。Noel Gallagher、Jarvis Cocker、KASABIANらの錚々たる面子が彼の才能に賛辞を贈っているが、音を聴くとそれがなるほどと納得できる面白さが詰まっている。ロック、ブルース、サイケ、ファンク、ポップ等の全ての要素を飲み込み、彼流に吐き出したとでも言えるようなカラフルで魅力的な楽曲が満載。全曲シングル・カットできるクオリティで、キラー・リフが炸裂するロック・ナンバーから美しいバラードまで幅が広く、あっという間に1枚を聴き終えてしまうほどの取っ付き易さも素晴らしい。タイトな8ビートに畳み掛けるシャウトがかなりカッコいい先行シングル「Strawberry Shake」をまずは聴いてみて欲しい。

Total Loss

HOW TO DRESS WELL

Total Loss

2010年のデビュー・アルバム『Love Remains』がPitchforkなどのメディアで大きな評価を集め、ここ日本でも昨年来日公演を成功させたHOW TO DRESS WELLの新作が早くも到着。メランコリック且つドラマティックでストーリー性のある美しいサウンドやファルセット・ボイスはSIGUR ROSを彷彿とさせるが、R&Bや近年のベース・ミュージックを吸収したビート主体の楽曲もあり様々な表情をみせる。ただ核になっているのはメロディや歌。THE XXの1stを手掛けたRoddy Mcdnaldを共同プロデュースに迎え、美しいサウンドスケープはそれをより鮮明に浮かび上がらせる。ジャンルを横断した彼の底知れない才能を見せつけられたような圧巻の作品。

Good Don’t Sleep

EGYPTIAN HIP HOP

Good Don’t Sleep

2010年突如としてシーンに登場し、出身地であるマンチェスターの系譜を受け継ぎながら同世代のダンス・ミュージックを吸収し新たなシーンを担う才能として、当時DELPHIC等と共に注目を集めた彼ら。もうアルバムは出ないんじゃないかという不安もあった中、2年の沈黙を経て今作は届けられた。今作はJames Blake等を発掘したR&Sからのリリース。より洗練されたサウンドとTALKING HEADSを彷彿とさせる様な複雑なリズムとポップ感。リード・トラックである「Syh」は刺激的で今の彼らの魅力を詰め込んだような渾身のトラックだ。ヴォーカルもまた艶やかに魅力を増している。期待のさらりと上回りそしてまた新たな可能性を感じさせてくれる2012年を代表するアルバム。

The Fear of Missing Out

THENEWNO2

The Fear of Missing Out

George Harrisonの息子であるDhani Harrisonがフロントマンをつとめるオルタナティヴ・ロック・バンドの2ndアルバム。1stアルバム『You Are Here』をリリース後に出演した“Coachella Valley Music and Arts Festival”では“最も素晴らしいデビュー・パフォーマンス”と評される。生音とエレクトロ・サウンドを絶妙にブレンドさせた、非常に振り幅の広い作品に仕上がっている。1stシングルの「Make It Home」で垣間見せるサイケデリアは、Gergeの息子だからというわけではないが、THE BEATLESを髣髴とさせるような物憂げなミドル・チューン。偉大な父の名前を借りずとも、今後更なる飛躍を期待できる作品だ。

Madonna

...AND YOU WILL KNOW US BY THE TRAIL OF DEAD

Madonna

11年ぶりの来日を"Hostess Club Weekender"で果たし、予定通りであればこの1999年作の名盤『Madonna』全曲セットでフロアを湧かせてくれるであろうテキサスの至宝。今回は来日を記念してその傑作がBlu-spec CDとして再発。ノイジーなものからメロディアスなものまでイマジネーション溢れるギター・リフとカッティングのアンサンブル、タイトでありつつシンプルにも呪術的にも展開するリズム、エモの括りに押し込められないどこか冷静で鋭利なアプローチは、発表から10年以上を経た作品とは思えないセンスに貫かれている。最近のバンドならCLOUD NOTHINGSを想起させるむき出しの衝動とも共振するし、形式を越えたポスト・ロックとも言える創造的な音響など、どこを切っても刺激的な1枚。

Metz

METZ

Metz

西村賢太の『苦役列車』を読んだ時、"この感じ、久しぶりだな"と思った。自堕落な主人公と、自堕落な生活。悪意と自嘲。正論より本音を描かんとする覚悟と優しさ。私小説。学生時代に読んでいた太宰や安吾を思い出したりもした。で、このSUB POPのニュー・カマー、METZの1stアルバムを初めて聴いた時の感覚は、そんな『苦役列車』の後読感に近かった。暴力的にノイジーなギター。硬質なビート。喉から血が出そうなほどの咆哮。「Headache」や「Negative Space」といった曲名から感じ取れる内省的な世界観。グランジ。かつてのNIRVANAがそうであったような、本音で世界と渡り合おうとする、あまりに愚かで愛おしい衝動がここにはある。"正しい音"はいらない。"本当の音"を鳴らす新世代グランジの傑作。

Tinsel & Lights

Tracey Thorn

Tinsel & Lights

90年代オルタナティヴ・ポップ・シーンを中心に活躍したEVERYTHING BUT THE GIRLのフロントマンTRACEY THORNの2年ぶりとなるフル・アルバム。今作は本人が制作を切望していたというクリスマスの名曲をカヴァーしたコンセプト・アルバムとなっており、その優しくも甘い歌声を存分に楽しめる内容に仕上がっている。加えて待望のオリジナル曲「Tincel&Lights」「Joy」も収録。またクラシックなナンバーだけではなくTHE WHITE STRIPESなどのロック・アーティストをセレクトするところにも心憎いセンスを感じさせる。クリスマスという神聖なテーマと、彼の癒しともいえる魅力と世界観が見事に合わさった至高の一作。