DISC REVIEW
Overseas
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CSS
Planta
ブラジル出身のガールズ・バンド、CSSの4枚目『Planta』は、彼女たちのダークに振切れた一撃が痛快な意欲作。サンパウロ出身という肩書きから、全世界の男共のラテン娘に対する勝手な幻想の犠牲となってきた(あるいはそれを上手く利用してきた)彼女たちだが、唯一の男性メンバーであったAdrianoが抜け、本当の意味でのガールズ・バンドになったことも影響しているのだろう、今作はアルバム名が示す様に、彼女たちのナチュラルで赤裸々な有りの侭の姿が記録されている。サウンドは打ち込みの比重が高く、ダークでエレクトロ感を全面に出した内容に。クラブでの男漁りにも飽きた、そろそろ私たちを適当に扱ってきた男たちに復讐をしてやりたい……そんな怒りすら感じさせる凄みのある作品だ。
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YOUNG WONDER
Young Wonder + Show Your Teeth
エレクトロ・デュオといっても特段、難しいところはなく、ポスト・ダブステップ、チルウェイヴ、ドリーム・ポップというような昨今流行の音楽ジャンルを通過しつつも、ロック・ミュージックの方法論をコード・ワークや、アレンジ等の曲作りの核に利用した、非常にポップな仕上がり。しかしながら、コンピューター・ミュージックにありがちな、音源とエフェクトを弄ってたら出来ちゃいました、というような安易さはなく、サンプリングやヴォイス・コラージュ、サウンド・エフェクトなど楽曲の細かい部分まで、ディテールをこだわりにこだわり抜いている。THE AVALANCHESやBjorkのような先鋭的なセンスと音楽マニアっぷりを兼ね備えた先達のように、自らのポップネスをしっかりとコントロールしていることがわかる
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EDITORS
The Weight Of Your Love
レッドブルをキメながら机に齧り付いて書き狂っているような、そんな呪われた職業を冠したバンド名とは裏腹(?)に、EDITORS、4枚目のアルバム『The Weight Of Your Love』は、ヘヴィで大きなスケール感をもつ作品だ。哀愁漂うフォーキーなメロディを主軸に据え、70~80年代のハード・ロックからの影響を感じさせるアレンジが、大仰なミュージカル風の歌唱やストリングス、ホーンなどの煌びやかなトッピングと相まって、アリーナ向きのビッグで重厚感のあるサウンドを生み出している。しかし、性急になりすぎず、あくまでも落ち着いたペースで物語を紡いで行くのが、EDITORSの流儀。夕方の高速道路を流しながら聴きたい、ロックを素直に鳴らした快作。
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Petter Carlsen
Clocks Don't Count
ノルウェーのシンガー・ソングライターPetter Carlsenの2ndアルバム。日本デビュー作でもある本作は、Petter自身が立ち上げたインディー・レーベルからのリリースであり、彼の感性が色濃く表現された内容になっている。北欧ポップならではといったメランコリックなメロディを主にしつつ、オルタナティヴな感性が織り交ぜされたサウンドは、壮大な物語のようにドラマティックに展開されていく。中でもリード・トラックの「Spirits In Need」は、聴きごたえのある力強いロック・チューンで、彼の音楽性の幅広さが感じられる。楽曲を美しく彩る、女性のようにしなやかで繊細さを感じられる透き通った彼の歌声を、ぜひ聴いていただきたい。
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PEACE
In Love
UKを揺るがす話題の新人だが、ハイプと侮るなかれ!バーミンガム出身の4人組、PEACEのデビュー・アルバム『In Love』。キャッチーなメロディにトライバルなリズムを駆使し、まるでFOALSとHAPPYMONDAYSが融合しかつてのマッドチェスターを再燃するかのようなグルーヴが持ち味だが、THE BEATLESにTHE SMITH、さらに90’sブリット・ポップ勢のエッセンスを感じ、英国伝統的なギター・サウンドの潮流を軽やかに渡っているようなおもしろさがある。現代っ子ならではのジャンルに囚われない雑食性とクラブ・シーンで感化されたという身体性には、ありそうで他にはマネできない、唯一のオリジナリティとして成立している。今夏SUMMER SONICでその真相を窺おう。
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KODALINE
In A Perfect World
アイルランド出身の4人組、KODALINEのデビュー・アルバム。叙情的で壮大なメロディが何よりも特徴的なバラード・ロックで、音楽性的にCOLDPLAYと比較されることは避けられないだろう。だが、ここ数年、COLDPLAYが音楽的実験を推し進めながら重量感のある作品を作り続けているのに対し、このKODALINEのデビュー作にあるのは、とても瑞々しく、繊細なメロディの輝きである。ある意味、COLDPLAYが失ってしまったものがここにあると言ってもいい。タイトルの『In A Perfect World』とは皮肉か、願望かはわからないが、このどうしようもない日常にも輝くものはあるのだと、このバンドが描く美しいメロディは伝えているようだ。今、UKロックが再び日の目を浴びているが、こういうバンドの存在も必要なのだ。
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VAMPIRE WEEKEND
Modern Vampires Of The City
3作目にふさわしい飛躍を印象づけるブルックリンの4人組の新作。求められるものの大きさを思えば、もっとややこしい作品になっても不思議ではなかった。それがこれほど天真爛漫な作品になったところにバンドの器の大きさが窺える。2013年を代表する1枚になることは必至の傑作。人懐こいメロディを持った軽快なロックンロールを、バロック、ダブ、ヒップホップ、アフロ・ポップの手法を使い、極めて現代的なポップスに作り上げるという意味では前2作の延長。そこにアンサンブルや音の響かせ方のおもしろさが加わり、バンド・サウンドが3D的にスケールアップした印象だ。アフロ・ポップの要素が後退したと言われているようだが、後半、その魅力をたっぷり楽しめるので、それを求めている読者はご安心を。
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THESE NEW PURITANS
Field Of Reeds
前2作がミュージック・シーンに衝撃を与えたロンドンの新世代ポスト・パンク4人組、THESE NEW PURITANS、3年ぶりとなる新作だ。暗黒という言葉がふさわしいその世界は変わらないものの、彼らのサウンドを特徴づけていた執拗なまでのビートは影を潜め、今回、アンサンブルの主役となるのはピアノとホーン。そのせいか、これまでその影響が指摘されてきたクラシックよりもジャズに近い印象もあるが、同時にゴス色も一気に増した。うめくようなヴォーカルに混じる子供の声。オルガンの執拗なリフレイン。魂を抜かれたような女性ヴォーカル。教会音楽を連想させる荘厳なコーラス……。怖い。これは怖すぎる!!犯罪映画やサスペンス映画よりもむしろオカルト映画のサントラにぴったりだ。
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SAVAGES
Silence Yourself
ダークで、タイトな血の匂いのするサウンド。眼差しは鋭く、挑発的。ロンドンの4人組女性ポスト・パンク・バンド、SAVAGES。Pitchforkなど多くの音楽メディアからデビュー前にも関わらず既に手放しの賞賛を獲得した彼女たちが、遂に待望の1stアルバムをリリースする。彼女たちがこのアルバムでポスト・パンクという形式をとりながら対峙しているものは、"他者"そのものである。「Husband」において、それは"男(him)"という象徴的な形をとる。彼女たちはそれを手に入れることを強く望んでいる。そして、その欲望が楽曲のエネルギーとなりドライヴ感を生んでいる。しかし、彼女たちの乾きは恐らく癒えることはない。なぜならば、渇望こそがSAVAGESの音楽そのものであるからだ。
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Kate Nash
Girl Talk
デビュー・アルバムが全英チャート1位でプラチナム・アルバムを獲得、FUJI ROCK FESTIVALで来日、続く2ndも好セールスを残す等、順調にキャリアを築いているシンガー・ソングライター、Kate Nashの3年振りの新作。イギリス国内の学校を回り自ら女の子の悩みや望みに耳を傾けた経験を元に制作されたという本作は、「Fri-End?」「Death Proof」、さらにSuzi Quatroばりのアバズレ・ロック・ヴォーカルを聴かせる「Sister」など、パンキッシュでローファイな楽曲の仕上がりが目立つ。それだけにけだるいサウンドの「Labyrinth」、アカペラから壮大なエンディングを迎える「Lullaby For An Lnsomniac」等、耳元で囁くようなメロウな曲の印象度も高い。まるで女の子の感情の振り幅を見せつけられているような、男性には勉強になる(笑)、傑作アルバム。
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THE NATIONAL
Trouble Will Find Me
2010年に全世界的なブレイクを果たした、ブルックリン発の兄弟バンド、THE NATIONAL、待望の6thアルバム。“危険が僕らを見つける”という神経症的なタイトルとは裏腹に、今作はリラックスして、開放的なサウンドを志向したとか。確かにここに収められた13曲はどれも非常に伸びやかで、構築されたタイトなバンド・サウンドというよりは、音を演奏すること自体を楽しんでいるように思える。ため息をつきながら歌っているような、諦観に満ちた歌声は、隠遁した老人のそれのようだ。どこまでいってもわかりあえない人間同士、それでもどうにかして希望を見つけ出したい、そんな彼らの想いが込められたこのアルバムは前作同様、多くの人々の共感を呼ぶだろう。
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WAVVES
Afraid of Heights
プロデューサーにM.I.A.、Rihannaを手掛けたJohn Hillを起用という意外性や先行シングルがPitchforkのベスト・ニュー・トラック獲得など、リリース前から話題のローファイ・パンク・バンド、WAVVES 3年振りの4thアルバム。冒頭の「Sail To The Sun」からドリーミーなキラキラ・サウンドが飛び出したかと思いきやすぐさまそれを“冗談、冗談”と笑い飛ばすパンキッシュなベース・ラインが炸裂。淡々と頭の中を引っ掻くようなアコギが印象的な「Dog」、“わからない”と連呼する「Paranoid」、警官殺しをテーマとした「Cop」など、情緒不安定な歌詞と開き直った演奏の対比が面白い。アレンジに凝りながらもローファイな質感は変わらず、最後まで飽きさせずに聴かせる良作。
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ALICE IN CHAINS
The Devil Put Dinosaurs Here
この力強いサウンドには説得力がある。ノイジーで重厚かつ粘着的なギター・リフは、唯一無二のALICE IN CHAINS節。約4年振りの通算5枚目のスタジオ作だ。絶対的なカリスマ性を持ったフロントマンLayne Staley亡き後、William DuVallを迎え再始動した前作『Black Gives Way To Blue』は世界中で大ヒットしたが、古参ファンからの批判もあったという。しかしどうだろう、本作はメンバーが過去に囚われず新たな扉を切り開いた勇気が漲っている。この強さに、誰だろうと納得せざるを得ない。「Hollow」、「Stone」、そしてラストの「Choke」まで、身もふたもない表現だが、気持ち良いほどALICE IN CHAINSだ。
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THE D.O.T.
Diary
Mike SkinnerとRob Harveyによるデュオ、THE D.O.T. のデビュー・アルバム『Diary』に詰まった12曲のキャンディーみたいに甘酸っぱいポップ・ソングは確信に満ちている。清涼感のある2人の歌声と狂気的なまでにダンサブルなビートのコンビネーションが心地よい。リズムからハーモニーに至るまでクリシェをも厭わず、自由な発想でポップ・ミュージックを彼らは恐れることなく再構築していく。SIMON & GARFUNKELにせよ、CARPENTERSにせよ年月を経ても色褪せることなくクラシックとして残り続けるポップスと、日々数限りなく生産され続ける音楽ゴミとも言うべき大衆ソングを区別する、音楽の魔法=ポップ・ソングの力を信じて疑わないという意思の力が、ここには確かにある。
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DEERHUNTER
Monomania
新しいアーティスト写真を見て驚いた人は、それ以上の衝撃をこの作品から受け取るだろう。フロントマン、BradfordがATLAS SOUNDの3rdアルバム制作後に陥ったパラノイアックでパーソナルな状況は混沌としたボーカリゼイションに、相反してバンド・サウンドは開放的で、思いつきをそのまま反映したようなノイジーかつノクターナル(夜の)ガレージで、むしろ無邪気なまでに開放的。これまでが半覚醒の睡眠導入音楽だったとしたら、今回は鬱屈し傷ついた魂を吐き出した生きるための音楽。ちなみにBradfordはLou Reedの『Metal Machine Music』が精神病を患う少年たちになぜか人気が高いことにインスピレーションを受けたのだとか。破綻寸前のアンサンブルも愉快で気高く聴こえるのもそのせいだろう。傑作。
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ATOM TM
HD
細野晴臣とのコラボレーション経験も持つドイツの電子音楽家、Uwe Schmidtの、ATOM TM名義での新作。2月に新作をリリースしたばかりのJamie LidellもTrack.3にヴォーカルとしてゲスト参加。音楽的には実験性の高いエレクトロニック・ミュージックなのだが、耳障りはかなりポップ……というか、キュート。ビートも、上音も、基本的には極端に上がったり下がったりもせず、アルバム全体的に一貫したトーンを保っているが、時折、パワフルな衝動性や人を食ったようなユーモアが顔を出す。Track.4などはノイジーでロッキンなアグレッシヴさがあるし、THE WHOの名曲「My Generation」をエレクトロに再構築したTrack.8なんて、かなりの飛び道具的な面白さ。こういうアルバムは、何度聴いても飽きが来ない。
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DAUGHTER
If You Leave
THE XXが、都市の暖かな暗闇に生きる若者たちの代弁者だとすれば、Daughterはそんな彼らの祈りを体現する巫女だ。ロンドン出身のElena Tonra(Vo/Gt.)を中心として結成された3人組の奏でる内省的なサウンドは、フォーク・ロックとも広義の意味でのシューゲイザーとも形容出来るような、ある種の神々しさを纏っている。Elenaのパーソナルな経験を元にした歌詞は時折、個人的な信仰体験を匂わせながら、普遍的な若さ故の痛みを歌う。音楽フェスSXSWで注目を集め、イギリスの名門レーベル“4AD”との契約後、ようやく待望のデビュー・アルバムを発表! という位置付けの今作であるが、期待を裏切らない。FUJI ROCK FESTIVAL '13への出演も決まっており、聴くなら今だ。
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Jo Mango
Murmuration
David Byrne、Devendra Banhart、TEENAGE FANCLUBなどとのコラボレーション経験や音楽学の博士号を持つ、グラスゴーを拠点に活動中のSSW、Jo Mangoの2ndアルバム。ギター、ピアノ、カリンバ、オムニコード、グロッケンなど様々な楽器を用いた今作は、もともと4曲入りEPの予定だったが、アイディアが収まり切らずフル・アルバムになったとのことだ。プロデューサーのAdem Llhanと共に3年掛けて熟成されたサウンドは、留まることなく流れる川のせせらぎのような心地良さと美しさ。彼女の唇の動きまでも近くに感じられる歌声を聴いているときだけは、日常の喧騒や世の中に蔓延る不条理さえも忘れられる。淡い音色の中に飛び込み、夢うつつの旅に出かけよう。
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THE LEISURE SOCIETY
Alone Aboard The Ark
FLEET FOXESやGRIZZLY BEARへのUKからの回答と称された前作『IntoThe Merky Water』と比較すると、さらに時代を超えて英国ポップ・ミュージックの至宝的な哀感と素朴さに満ちたメロディに浸されるこの新作。Ray DavisとBraian Enoの寵愛を受けるバンドと言われても若いリスナーにはピンとこないだろう。ざっくり言えば、MUMFORD & SONSが歌い手の内的リズムでバンドを引っ張るアンサンブルにも似て、人間の生身の心地よいグルーヴに則っている。大きな違いは、英国作曲家協会主催の音楽賞にノミネートされるその作曲センスは、情動や情熱よりポップのメソッドによるということ。だからといってしかつめらしい部分はなく、往時のBLURやネオアコ好きにも訴求しそう。新英国主義の一品。
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RHYE
Woman
Milosh名義で活動してきたシンガー、プロデューサーMike Miloshと、様々なユニットで活躍後、2011年にEP『Bobby』でソロ・デビューを飾ったRobin Hannibalが新たに結成したソウル・ユニット、RHYEのデビュー・アルバム。タイトルの通り女性的で柔らかくしなやかなシルクのような手触りのアーバン・ポップを聴かせてくれる。Track.2「The Fall」のリフレインするピアノや流麗なストリングスや続くTrack.3「Last Dance」のとにかく耳障りの良いギター・カッティング、Track.9「Hunger」のミディアム・テンポのアダルトなディスコ・ファンクなど流石のキャリアを経ているユニットだけに全編において非凡なクオリティに仕上がっている。ジャンルを超越した極上のポップ・ミュージック。
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