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DISC REVIEW

Overseas

Mgmt

MGMT

Mgmt

「Your Life Is A Lie」のMVが先行配信された際に感じた遊び心、かつてスタイリッシュ代表だった時期とは違うユルさが感じられるジャケを見た際の驚き。それはあながち内容とも無関係じゃなかった。前作『Congratulations』ほど内向的ではない。ふるいにかけられた10曲は似たものはなく、おのおの彼らが今感じていることをあの独特なフェティシズム、サイケデリア、悪夢的なイメージに沿う音と音の組み合わせで表現しきっているのだと思う。これまで同様、夢と現の境界線はボンヤリしているのだけど、不穏と甘美を奏でるエレクトロニクスのレイヤーにやられる「A Good Sadness」などはかなりの大作。不安の中にも喜びや煌めきを発見したり、逆もまた然り。現実世界を映す鏡のような作品だ。

From The Hills Below The City

HOUNDMOUTH

From The Hills Below The City

HOUNDMOUTHはインディアナの4人組。イギリスの老舗インディ、ROUGH TRADEがALABAMA SHAKESに続いてデビューさせたアメリカのルーツ・ロック・バンドだ。ROUGH TRADEと契約して以来、注目されてきた彼らが満を持してデビュー・アルバムをリリース。ALABAMA SHAKESの“弟バンド”なんて紹介されてはいるものの、R&Bの熱気をストレートかつパワフルに表現した彼らとは違い、こちらは黄昏や茫漠を表現した演奏やスワンプ・ロックと言うほど粘っこくない軽やかさが魅力。男女ヴォーカルが曲ごとにリードを分け合う歌にハーモニーを重ね、じわじわと盛り上げるスタイルも彼らの持ち味になっている。確固たるスタイルを印象づけながらなお感じさせる伸びしろが今後を期待させる。

Play With Fire

THE REIGN OF KINDO

Play With Fire

前身バンドではピアノ・エモ、インディー・ロック・サウンドを奏でRUFIOやOVER ITと来日公演をしていたが、このバンドではメンバーそれぞれのルーツにあるジャズやポップス色を濃厚に、グルーヴィなアンサンブルを聴かせる。ピアノ、パーカッションを擁したメンバー5人のほか、トランペットやサックスなどの管楽器もフィーチャー。シックな雰囲気も匂わせてはいるけれど、ドレス・コードなしでフレンドリーに踊らせたり、シンガロングもできるようなキャッチーなメロディも肝としているあたりは、多くのロック・バンド、パンク・バンドとステージを分かち合ってきたがゆえか。MAROON 5を思わせる軽やかなソウルも忍ばせて、ハイ・エナジーなバンド・サウンドでぶっ飛ばしていく風が爽快なアルバム。

Big Flash

WILD HONEY

Big Flash

マドリード発、Guillermo Farreのソロ・プロジェクト、WILD HONEYの2ndアルバム。STEREOLABのTim Ganeをプロデューサーに迎えた今作は、ソフト・ロック、60’Sポップへの憧憬やリスペクトを高い純度のまま譜に落とし込んで、そのサウンドを慈しむように甘いメロディやコーラスでリボンをかけた。白昼夢的でとろりと濃密な西海岸サウンドも、爽やかさにモンドな香りを忍ばせた北欧ポップの面白さも併せ持っていて、心地好くも刺激的。フォーキーなサウンドながら、広々とした音空間を漂う感覚で、スペイシーな音響やフィルや遊びのアクセントなどカラクリたっぷりで楽しませてくれたりと、Timとの作業でポップないたずら心も増した模様だ。マジカルなポップ世界はTAHITI 80ファンにも薦めたい。

Outsides

John Frusciante

Outsides

元RED HOT CHILI PEPPERSのギタリストであり、シンガー・ソングライターでもあるJohn Fruscianteの3曲入り高音質Blu-spec CD2が日本先行リリース。日本盤はボーナス・トラックが1曲収録され、メディアの取材を一切受けない彼のロング・インタビューを読むことが出来る。Track.1「Same」は、ギター・ソロを全面にフィーチャーした10分を超える大曲。決して派手ではなく淡々としたバック・トラックと、Johnの奏でる緊張感のあるギター。その音色は恍惚としつつもどこか物悲しく、獲物を探すようなはりつめた空気を纏う。深層心理の奥の奥まで突き進むような感覚は、ただの爆音では行き着くことの出来ない境地だ。前衛的な姿勢と独創的な世界。Johnの非凡な才能を目の当たりにする。

Waiting For The Dawn

THE MOWGLI'S

Waiting For The Dawn

キャンプファイアを連想させる合唱で大いに盛り上がる、ロサンゼルスの8人組のメジャー・デビュー・アルバム。ネオ・ヒッピー的な大所帯の編成による楽団風の賑やかさは、その先駆者とも言えるARCADE FIREやアイスランド出身ながら米英でブレイクしたOF MONSTERS AND MENを思わせるものの、こちらはロサンゼルスの青い空と燦々と降りそそぐ太陽の光をイメージさせる溌剌とした明るさが魅力だ。男女デュエット、口笛、ニュー・ウェイヴ調の煌きなど、曲ごとに趣向を凝らしたアレンジを楽しませつつ、全体のイメージとしては彼らが持っているユーフォリックなヴァイブを印象づけるものになっている。観客を巻き込み、みんなで盛り上がるに違いない彼らのライヴの光景が眼に浮かぶようだ。

Mockingbird

Kendra Morris

Mockingbird

昨年、アルバム『Banshee』でデビューしたNYのシンガー・ソングライター、Kendra Morrisの新作は、David BowieやLou Reed、Isaac Hayes、PINK FLOYDやRADIOHEAD等のカヴァー・アルバム。音楽一家で育ち、ソウル・ミュージックのレコードを教科書にヴォーカルを磨き表現力を培ってきた彼女らしく、どんなアーティストの曲にも深くダイヴして、その精神を掴みとろうとする姿勢がうかがえる。真摯なアプローチでインプットした曲を、自身の感情で翻訳して解き放った歌声は、静かに熱を帯びながら心に広がって、胸を締め付ける。エアリーに響くヴォーカルだが、歌の終わりには痛みや切なさや、哀しみが、ふつふつと沸く爪痕を残していくようだ。ソウルフルなアレンジでデジャヴにも似た、記憶に心に響くカバー集。

Thr!!!er

!!!

Thr!!!er

ニョーヨークのディスコ・パンク・バンド、!!!が約3年ぶりにリリースした5作目のアルバム。これまでジャム・セッションで曲を作っていた彼らは今回、初めて組んだプロデューサー、Jim Enoのサジェスチョンによって、しっかりと曲を書き上げてからレコーディングに臨んだそうだ。最強・最凶と謳われてきたライヴ・バンドによるそんな挑戦は、ポップ・ソングとしてアピールできる曲を作るポテンシャルをとことん高め、このアルバムをきっかけに彼らが新たなファン層を開拓したことは想像に難くない。それが物足りないという昔からのファンもいるようだが、ライヴにおける彼らが何も変わっていないことは7月の来日公演が証明した。バラエティーに富んだ粒揃いの曲の数々とクールなトラック・メイキングがバンドの成熟を印象づける。

The Signal And The Noise

ASIAN DUB FOUNDATION

The Signal And The Noise

今年結成20年目を迎えるASIAN DUB FOUNDATION。この記念すべき年に、創設メンバーであるDr.Dasなどオリジナル・メンバーが復帰したアルバムが完成した。ヘヴィなベース、アグレッシヴなバングラ・ビート、そこにノイジーで印象的なギター・フレーズやテンションの高いヴォーカルがのっている。90年代、彼らが登場したときの衝撃や高揚感にもう一度触れる感覚を味わいながら、よりグルーヴィーに、音楽地図を広げ深化を遂げた、ノリの気持ちよさを体感するアルバムだ。言わばADFによる、もっともADFらしいアルバム。曲のフックはもちろん、メンバーのバックボーンや精神、情熱を、音楽のなかで共存させる無二のサウンドを極めている。ステージへの期待が否が応でも高まる1枚だ。

Settle

DISCLOSURE

Settle

noneイギリスは南ロンドン出身の兄弟エレクトロ・ダンス・デュオ、DISCLOSUREの1stアルバム。兄のGuyは21歳、弟のHowardは18歳とかなり若いユニットだが、実際、このふたりの作る音楽からは、若さゆえの瑞々しさとロマンティシズムが溢れている。90年代のクラブ・シーンからの影響を強く思わせる音作りながらも、昨今のR&Bに通じるしっとりとした甘さ、インディー・ロックとも通じる力強いポップネスも放出するこの音像は唯一無二。この無邪気さとキャッチーさは、イギリスにおけるtofubeatsのような存在と言えるかもしれない。ALUNAGEORGEやJessie Wareといった客演との相性のよさ、その華やかさも手伝って、本国のチャートでは初登場1位を獲得。9月に来日も決まっており、この夏をより熱くすること必至。

(天野 史彬)


ダンス・ミュージックとは即ち、絶え間のない変化の連環の中で、万物は微かな軋みと共にゆっくりと位相していく、という定理を分かり易く示す1つの行為である。それは"はじまり、やがて、おわる"というサイクルの中に生きる人間存在の縮図でもある。本来、Settle(定着)という言葉、概念は存在し得ない。このロンドン出身の兄弟デュオの作品はその理を見事に体現している。ステディなビートの中に入れ替わり立ち替わり現れる、昨年から今年にかけてポップ・ミュージックの地平を一変させたアーティストたち。門戸を多くの人々に開きながら、DISCLOSUREは1つの真理を教えてくれる。冒頭の牧師の説教にあるように"すべてはいつか変わってしまう"のだ。だから、僕らは今、踊る。

Wish To Scream

TRIBES

Wish To Scream

代表曲「We Were Children」が同郷のMYSTERY JETSにカヴァーされるなど、登場時に何かと話題を呼んだロンドン、カムデン出身のインディー・ロック・バンド。そのシンプルでメロディ・オリエンテッドな音楽性がむしろイマドキのバンドにはない王道感を漂わせてはいるものの、本人たちは純粋にグッド・ルーツ・ミュージックが好きで演奏したいのではなかろうか。この2ndもピアノとアコギがトラディショナルな印象のナンバーや、古くはTHE ROLLING STONES、90年代にブルースやソウルに傾倒した頃のPRIMAL SCREAM、そしてTHE BEATLESからOASISまで綿々と続くザ・英国な美メロを想起させる曲が並ぶ。時代性を強調するようなトピックはない。でも懐古趣味でもない。今の人間の体温と血の通った太文字のロックだ。

Juveniles

JUVENILES

Juveniles

フランスはブルターニュ地域圏の首府レンヌ出身のデュオ、JUVENILES。彼らのデビュー・アルバムとなる今作は、同じくフランスよりエレクトロ・ミュージックの新鋭YUKSEKが一部プロデュースを手掛けており、お互いのポップ・センスが魅力的な化学反応を起こしている。そこにエレガントなヴォーカルが甘く溶け合うことで、程良い上質さを匂わせる仕上がりに。この作品から感じ取る高揚感や憂鬱感は、まさに思春期から成年の間をさまよう“Juveniles=青少年”のようである。子供のような無邪気さと、大人びた顔色を唐突にのぞかせ、聴き手はエキセントリックな世界観に惹きこまれていく。体の力が抜けるような浮遊感に満ちたこの作品は、眠れぬ夜に特におすすめしたい1枚だ。

Music For Cars EP

THE 1975

Music For Cars EP

THE 1975は、夜の闇に隠れてロックで踊る。マンチェスター出身のこの不良たちの音楽は“ロックの復権”なんて安っぽい言葉で片付けられない大きな希望に満ちている。ちょっと学が足りなさすぎるんじゃないの……なんて下手したら勘違いしそうになる歌詞やギター・フレーズの執拗なまでの反復は、エレクトロやクラブ・ミュージックの快楽性を切り取ったものだし、ポップなメロディの隙間に顔を覗かせるマンチェスターの工業地帯の荒涼とした夜を思わせるサウンドスケープは、SIGUR ROSや各種のシューゲイザー・バンドを思い起こさせる。しかし、その実験の成果が「Chocolate」のような素直なポップに結実しているのが彼らの可愛いところであり、また大きな可能性を感じさせる部分だ。大期待。

Ep

CHVRCHES

Ep

異常にファンキーなトラックに乗っかって、ババーン☆と飛び出す、Lauren Mayberry(Vo)のキッチュさときたら堪らないよ!トラック・メイク出来る現代版BOYS TOWN GANGといった出で立ちの彼らは、キーボーディストの男が2人にディーヴァが1人という編成。因にグラスゴー出身である。ダブステップ、チルウェイヴ、ディスコを咀嚼してモダンなポップ・ミュージックに還元したトラックの上で、爽やかに薫る歌メロには確かにグラスゴーの夏風が吹く。この夏にはSUMMER SONICでの来日も予定されているが、照りつける太陽の下、エゲつなく下半身を刺激する低音をバックに、振り絞る様に歌うLaurenちゃんをみてると妙な気持ちになってきちゃうかも......へへ。

The Maze

CHATEAU MARMONT

The Maze

新世代パリ・シーンを代表するフランス出身の3人組。人気レーベルInstitubes、Kitsuneからのシングル・リリースを経て、自主レーベル“Chambre404”を立ち上げたバンドのデビュー・アルバムは、1作目にして大傑作に仕上がっている。70年代のシンセ・ポップ、プログレッシヴ・ロックなども感じられる洗練されたタイトなサウンドは、以前に、KENZOやCHANELといったラグジュアリー・ブランドのキャンペーン用のサウンドトラックを手がけたことも納得できる新感覚のエレクトロニック・ロック。モダン・フレンチ・ポップ的な「Wind Blows」を始め、キャッチーでメロディアスなサウンドが凝縮された本作は、多くの人々の心をくすぐるはずだ。

Arts & Crafts 2003-2013

V.A.

Arts & Crafts 2003-2013

"役に立たないもの、美しいと思わないものを家に置いてはならない"民芸運動(アーツ&クラフツ)の父、William Morrisが生活と芸術の密接な関係を提示し、アート の未来を一変させた様に、2000年トロントの小さなベッドルームで誕生したインディー・レーベルArts & Craftsもまた、音楽の風景を変えてしまった。BROKEN SOCIAL SCENEや、LOS CAMPESINOS!、数え歌ソングで有名なFEISTなど、アコースティック・サウンドを基調とした、生活に馴染む人肌のポップ・ミュージックを提供してきた彼 らの歩みはそっくりそのまま、昨今の全世界的なネオ・フォークの流行に繋がっている。今、我々が求めて止まない温かな響きの1つの源泉がここにある。

Damage

JIMMY EAT WORLD

Damage

エモの第一人者とも言えるJIMMY EAT WORLDが8thフル・アルバムをリリース。前作『Invented』から3年振りとなる本作は、Jim Adkins(Vo/Gt)いわく"大人の失恋"をテーマにしているとのこと。そのテーマ通り、大人の落ち着きがありながらも非常に甘酸っぱいナンバーが並ぶ。エモい音色にアコースティック・ギターを大胆に取り入れることで楽曲は更に膨らみを増し、煌びやかに。そして何より、軽やかだが涙腺をくすぐる泣きメロも、ひとつひとつに丁寧に熱が込められた音も、ひたすらにフレッシュだ。まさか活動20周年を迎える節目である2013年に、こんな作品を届けてくれるとは!リアルタイムで彼らを追い続けているリスナーにもそうでない世代にも、優しく、新鮮に響く1枚だ。

Be

BEADY EYE

Be

デビュー・アルバムとなった前作『Different Gear, Still Speeding』から約2年半、BEADY EYEから待望の2ndアルバムが届いた。TV ON THE RADIOのマルチ・プレイヤー、Dave Sitekをプロデューサーに招いた今作はどの曲も非常に音の抜けが良い。シングル曲の「Flick Of The Finger」も「Second Bite Of The Apple」も大々的にホーン・セクションが導入されているが、まったく違うキャラクターになっているところはさすがの手腕。どの曲も様々な表情でリスナーを歓迎してくれる。Noel Gallagherについて歌われている「Don't Brother Me」(訳:兄貴面するな)は愛とユーモアが込められた穏やかでキュートなナンバー。どうやらOASIS再結成を待っているのは、リスナーだけではないのかも。

Seven Year Setlist

THE VIEW

Seven Year Setlist

2007年発表の1stアルバムが全英No.1ヒットになり、シーンの最前線に躍り出た4人組、THE VIEW。5作目のアルバムは過去7年のキャリアから選曲したヒット曲の数々に新曲を加えたベスト盤と言っても差し支えない作品だ。英国情緒あふれるロックンロールをパンキッシュに、いや、クソガキらしい向こう意気とともに奏でてきた4人組の魅力をギュッと凝縮。曲の良さは同時に、しっかりと根っこを持ったバンドの力強さを思わせる。それぞれに異なる魅力をアピールしている新曲3曲も聴きどころだ。フォーク・ロック調の「Standard」は、THE LA’Sをちょっと連想させる。日本盤はAmy Winehouseのカヴァーを含む10曲を収録したボーナス・ディスクをカップリング。入門編としてこれを聴いておけば、まず間違いない。

Omens

3OH!3

Omens

アメリカはコロラド州発のエレクトロ・ポップ・デュオ3OH!3。1stシングル『My First Kiss』が全米で大ヒットした彼らのニュー・アルバムはノリの良いラップと、クラブ、ダンス・チューン、エレクトロ・サウンドの融合センスがひたすら光る作品となった。まるでハリウッド映画のアクション・シーンを観ているかのようなハラハラ感のTrack.2、Track.11は圧巻。楽しくて思わず飛び跳ねたくなるような衝動を与えてくれるTrack.6は最高だ。攻撃的なサウンドから、開放感溢れるサウンドまで、全てがキャッチ―ど真ん中。しかし、そのどれもが巧妙なアプローチで、一切飽きの来ない聴き応え抜群の作品となっている。体がリズムを刻まずにはいられなくなる1枚だ。