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DISC REVIEW

Overseas

Former Lives

Benjamin Gibbard

Former Lives

言わずと知れたDEATH CAB FOR CUTIEのフロントマンでありソングライター、そしてPOSTALSERVICEとしても活躍するBen Gibbardの初のソロ・アルバム。今まで書き溜めていた曲を作品。前述の2つのプロジェクトとは一線を画した、牧歌的とも言えるほどに装飾を取り払ったアレンジにより“Ben”のソングライティングの能力の高さが非常に浮き彫りになっている。旧知の仲であるというEARLIMARTのAaronのスタジオで録音された本作は、全編非常にリラックスしたムードが音にもそこはかとなく漂い、聴く場所を選ばず常に寄り添える作品になっている。バンドとしての活動も楽しみだが、今後もソロとして音源の発表、そして来日を望みます!

ESP

ESP

ESP

Aska、Seiya、Bobbyから成る、LAで結成された3ピース・バンド、ESPの日本デビュー盤。AskaとSeiyaは日本人の兄弟だという。日本での知名度はまだほとんどないが、アメリカではレッチリのFleaに絶賛されたり、MAROON 5にラヴ・コールを送られて、彼らの武道館公演のオープニング・アクトに抜擢されたりと、かなりバズが起こっている。しかし音を聴けばそれも納得の、実にミステリアスでチャーミングなサイケデリック・ポップ。全体的にリヴァーヴがかった音のヴェールの中を、Askaの少し舌足らずなヴォーカルとエキゾチックなメロディが揺らめいていくのを聴いていると、まるで白昼夢の中にいるような気持ちよさに覆われる。陰鬱として恍惚とした文学性が、モダン・サイケデリアとなって花開いている。

Out Of The Black

BOYS NOIZE

Out Of The Black

00年代クラブ・シーンを代表するドイツのカリスマ、BOYS NOIZEの3rdアルバム。エレクトロ・クラッシュやニュー・レイヴなどのダンス・ムーヴメントと共振し、常にその中心にいながらも、ロック系アクトのリミックスやプロデュース業もこなす幅広い活動で独自の立ち位置を築いてきたBOYS NOIZE。本作は、彼のエネルギッシュでチャーミングな"BOYS NOIZE節"がより高次元で結実した作品である。そもそもの持ち味である攻撃的なトラックはさらなる洗練を見せ、その中にキャッチーさや叙情性を忍ばせることも忘れない。もはや堂々とした貫禄すら見せつけている。Track.12にはSNOOP DOGGも参加。先日SKRILLEXとのユニット、DOG BLOODとして楽曲を発表したりと、やはりこの男からは目が離せない。

Melody's Echo Chamber

MELODY'S ECHO CHAMBER

Melody's Echo Chamber

南フランス出身の女性アーティストMelody ProchetがMELODY’S ECHO CHAMBER名義でリリースするデビュー・アルバム。名義がそのままサウンドを示しているようなドリーミー・ポップがベースだが、サイケデリックやエレクトロニカ、そしてクラシックの要素まで感じられる幅広いサウンドに仕上がっている。そんなサウンドに乗る彼女の歌声は柔らかかったりけだるかったり、力強かったりととても魅力的。時折聴こえるフランス語も楽曲によく馴染んでおり、神秘的な雰囲気を演出している。全体的にとても聴きやすく、可愛らしい彼女のルックスも相まって、商業的な成功も見込めるのではないだろうか。一聴するとシンプルに聴こえる楽曲でもじっくり聴き込むと複雑な音作りになっており、何度もリピートしてしまう中毒性を生んでいる。

Jiaolong

DAPHNI

Jiaolong

CARIBOUとして広く知られるカナダのエレクトロニカ・アーティストDan Snaithが別名義のプロジェクトDAPHNIとしてアルバムをリリース。シングル5曲に新曲4曲を追加した本作は、自身が金曜の夜にDJをする時に掛ける曲を考えながら作ってしまうというほどダンス・フロア仕様の楽曲が満載。しかしとてもバラエティ豊かな内容で、アフリカン・ミュージックからチル・ウェイブ、テクノや流行りのダブステップまでを網羅している。ダンス・ミュージックの歴史を感じつつもモダンな音に仕上がっており、今欧米でメインストリームを圧巻しているEDMと呼ばれるエレクトロ・ハウス、派手目のダブステップ等の音とは一線を画している。FOUR TETとのスプリット・シングルにも収録された「Ye Ye」も本作に収録されており聴き応えたっぷりだ。

Ultraviolet Catastrophe

HATEM

Ultraviolet Catastrophe

スペイン発4人組ニュー・ウェーヴ・バンドHATEM(アテム)の2ndフル・アルバム。哀愁漂うメロディと懐かしいシンセの音色が独特の浮遊感を演出する今作には、夏の終わりのノスタルジックな気持ちを思い起こさせる珠玉のナンバーが詰まっている。それはリード・トラック「They Won't Let Me Grow」の美しいギターとキャッチーなコーラスからも存分に味わうことができる。80’sテイストが強い「You Know We Found New Words」のダンス・ビートは日本人の琴線に触れること間違いなしだろう。そして随所に垣間見えるシュー・ゲイザーのごとく壮大なサウンドの展開が、とても良い塩梅で作品への深みを与えているのも秀逸。

Tesco

WISHMOUNTAIN

Tesco

Matthew HerbertがWISHMOUNTAIN名義で14年ぶりにリリースする最新作。英の大手スーパーマーケットTescoでの売上上位10品目の商品からサンプリングされた音によって制作されたというユニークな作品で、ほとんどの楽曲が1つの商品から録音された8つの音から構成されている。スポーツ・ドリンクからミルク、コーラまで日常的に身近なものの音がひとつの楽曲を形作っているというのがとても興味深く、馴染みのある音だからかとてもクセになる。また昔ながらのダンス・ミュージックを作りたくなったと語っていた彼の発言通り、オーソドックスでどこか懐かしい感じのするダンス・ミュージックに仕上がっているが、それが逆に新鮮に聴こえるのは今のダンス・ミュージック・シーンを物語っている気がする。

Mmoths

MMOTHS

Mmoths

アイルランドのウィッチハウス/チルウェイヴの新星ビート・メイカー、MMOTHSのデビューEP にボーナス・トラックを加えた日本企画盤。MMOTHは若干18歳のプロデューサー、Jack Colleran によるソロ・プロジェクト。全体的に荘厳で深遠なアンビエンスに支配され、神々しいまでの深みと、そこをたゆたうメランコリックなメロディが彩を加える。ヴォーカルをフィーチャーしたTrack.2の「Summer」、Track.4の「Heart」は声の輪郭がはっきりしすぎて個人的には好みではないが、トラック・メイクのセンスは雰囲気でごまかされがちなアンビエント・エレクトロニカのシーンにおいて異彩を放っている。今後どういった方向にこの恐るべき才能が転んでいくのか楽しみだ。

And That

THE D.O.T.

And That

THE MUSICのフロントマンであるRob Harveyと、THE STREETSことMike Skinnerによるニュー・プロジェクトTHE D.O.T.。今年6月に日本限定でEPをリリースした彼らが公式音源を世界に向けて初リリースする。自身のSoundCloudで発表した楽曲と新曲を収録した今作は、実に多面性のある作品に仕上がった。どこかに転がって消えてしまいそうな危ういビートは音の中を自由に飛び回り、心地の良いエレクトロ・サウンドを作り出す。そこに入るストリングスやドラム、ギターなどの生楽器と憂いのあるメロディと歌声が奥行きをつけ、まだ見ぬ世界へと迷い込ませてくれるのだ。メランコリックの中に宿る希望と力強さ、それを彩る繊細な音色に陶酔。疲れた心に優しく沁みる。

Boracay Planet +

BLACKBIRD BLACKBIRD

Boracay Planet +

2011年にリリースした『Summer Heart』がロング・セラーとなった、ドリーム・ポップ・ワンダーキッド、Mikey Maramag こと、BLACKBIRD BLACKBIRDの新作、元々はEPの作品をにボーナス・トラックを加え、日本のみアルバム仕様のボリュームにてリリース。このアーティストの魅力はなんといっても楽曲によって次々と色を変えるメロディと縦横無尽に脈を打つビートだ。個人的にはTrack.4の「Keep It Up」のリフレインするヴォーカルと心臓の音のように規則的に刻み続けるビートの絡みがシンプルながらこのアーティストのポテンシャルを表しているように思う。今作でWashed OutやJames Blakeの文脈から頭1つ抜け出ることができる存在になるだろう。

151A

KISHI BASHI

151A

全米iTunesチャート急上昇中の注目株である日系アーティスト。“151A”と書いて“一期一会”と読むデビュー・アルバムには、まさしく出会えたことに感謝したくなるような独特でいて壮大な音の世界観が描かれていた。本人がヴァイオリン奏者だけあり作品全体からはクラシックにも通じる深みを感じることができるが、それらを形作る要素は雑多なほどバラバラである。冒頭の「Intro/Pathos,Pathos」からエレクトロの匂いがしたかと思えば、Track.3「Bright Whites」では賛美歌のような明るいリズムとメロディのなかに奇妙な日本語まで含まれている。まるで彼の頭の中を覗き見ているかのような感覚すら覚える楽曲たちから、新たな癒しや刺激を受けること請け合いである。

North

MATCHBOX TWENTY

North

10年ぶりとなる通算4作目のフル・アルバム。1996年のデビュー作が1300万枚を売り上げた実績を持つアメリカを代表するロック・バンドから放たれるサウンドは、まるで彼ら自身が音楽の魅力を改めて楽しんでいるかのようにフレッシュでいて爽快な響きに満ちている。今作は真骨頂ともいえる深みのあるヴォーカルを堪能できる「Parade」からはじまる。そしてTrack.4の痛快なまでのダンス・チューン「Put Your Hands Up」から「Our Song」へと続く流れは、いまのバンドの充実ぶりと新たなスタート地点へ立つことに成功した清々しいまでの勢いを存分に感じとることができるだろう。もはやジャンルすら超越してみせた圧倒的な曲の力そのものに感動。

Rave Age

VITALIC

Rave Age

近年David GuettaやJUSTICEで盛り上がりを見せるフレンチ・エレクトロ・シーン。DAFT PUNKに続き、そのシーンを支え続けていたVITALICから、3年振りとなる3rdオリジナル・アルバムがリリースされる。自宅スタジオで地中海に思いを寄せながら制作し、パリでミキシングを行ったという同作は、アルバム・タイトルに相応しい非常に開放的で自由に満ちたサウンド。個性溢れる様々なヴォーカリストを招いた楽曲はポップでキャッチーなメロディが耳に優しく、ドラマティックな展開を見せるインスト・ナンバーはリズムとビートがリスナーの踊りたくなるツボを程よく刺激する。アラビアン・ミュージックを彷彿させる楽曲なども収録されるなど、様々なアイディアが詰め込まれた意欲作。

Meat And Bone

THE JON SPENCER BLUES EXPLOSION

Meat And Bone

ジョンスペ、8年振りの新作となる『Meat And Bone』。シンプルなタイトルそのままに、ギミックのないストレートなブルース愛とプリミティヴな衝動に溢れている。過去にはBECKやCHUCK Dをフィーチャリングするなど多彩なゲストを招いていたが、本作はゲストなし。特別な絆で結ばれた3人ががっぷりと組み合い制作されたものだ。キャッチーでヘヴィなギター・リフに彩られた「Black Mold」のオープニングから一気に駆け巡るジョンスペ・ワールド。「Boot Cut」や「Danger」のパンキッシュな熱情、「Ice Cream Killer」や「Strange Baby」のファンキーなジャムと、数多いハイライトと彼らの多彩な引出しに舌を巻く。ブルースをパンクのように壊し、またはヒップホップのように組み立ててきたルーツを辿り見つめた新たな原点。オッサン侮るなかれ!

Come Home To Mama

Martha Wainwright

Come Home To Mama

シンガー・ソングライター、Martha Wainwright。彼女は70年代にフォーク・シンガーとして活躍したLoudon Wainwright III とKate McGarrigleの娘であり、あのRufus Wainwrightの妹である。生粋の音楽サラブレットはこれまでもその才能を見事に表現してきたが、まだまだ底知れぬ存在と言いたい。通算4枚目となる今作。高低から強弱の巧みなヴォーカリゼーションで魅せるハスキー・ヴォイスは、やはり圧倒的で不変的な声の力。その魅力を支える豪華なゲスト陣も毎回話題となるが、本作はCIBO MATTOの本田ゆかプロデュース。加えてギタリストはWILCOのNels Cline、ベースは夫でありプロデューサーとしても活動するBrad Albetta。さらにドラムはDIRTY THREEのJim Whiteというから驚きだ。インディー・ファンは無視することなかれ。

I Know What Love Isn't

Jens Lekman

I Know What Love Isn't

音楽が資本主義から解き放たれていく昨今、もはやポップ・ミュージックの“ポップ”という言葉をセールスやチャートのみで定義づけることはできない。今や音楽の価値は貨幣価値だけでなく、アーティストとリスナーの間で自由に形作られていく(まぁ、本来音楽とはそういうものだと思うが)。そんなことを考えていた最中、スウェーデンの天才SSWから届いた5年ぶりの新作は、何にも変えがたい音楽の価値を私に見出させてくれた。アコギやピアノを主体としたアコースティックなサウンドは芳醇なワインのように味わい深く、その歌声は大切な友人から届くメールのような親密さに溢れている。1音1音が語りかけてきて、この作品を聴いている間、自分が音楽と結ばれるのを実感する。個人的には年間ベスト級の大傑作。

Pink

FOUR TET

Pink

RADIOHEADのThom Yorkからも絶大な信頼を得ているフォークトロニカのパイオニア的存在のFOUR TETが前作『There Is Love in You』以来約2年ぶりとなる新作をリリース。今作はFOUR TET自身のレーベルとなるText Recordsから、過去2年間に渡りアナログのみでリリースされていた作品をまとめ、新曲2曲を収録した内容となっている。非常に彼らしい彩色豊かなメロディと、各楽曲が様々な色を織り成すエレクトロニカ・サウンド。全体的にミニマルな構成の中に必ずFOUR TETらしさの垣間見えるメロディであったり、展開が見え隠れしており、実験的というよりは非常にリラックスしながら作った様子がうかがい知れるスタンダードな作品。

Early Birds

MUM

Early Birds

アイスランドの雄MUMが、01年のデビュー作をリリースする以前、98年~00年の間に録り溜めていた未発表曲や入手困難なデモ・トラックなどを収めたレア音源集。本作を聴けばこのバンドの出発点も、BECKが体現したサンプリングという自由、もしくはPAVEMENTらが表現した価値観としてのローファイなど、90年代のポップ・ミュージックにおける音楽的革新なのだということがよくわかる。打ち込みのビートやサンプリング音、フルートやアコーディオンといった可愛らしい生楽器の音色など、あらゆる音が無邪気に飛び交っている初期楽曲たちの完成度はまだまだ高いとは言えない。だが、すべての楽曲から滲み出る音と戯れることに対する喜びと、メロディの端々から零れ落ちるメランコリーは、今と決して変わらない。

Strapped

THE SOFT PACK

Strapped

逞しく成長した姿に、“これはギークからジョックへの痛快な反撃だ!”なんてキャッチ・コピーを捧げたい。あっ、彼らがギークかどうかわからないけどね……。カリフォルニアのヤンチャなインディー・ロッカー、THE SOFT PACKが約2年振りの新作『Strapped』をリリースする。ヘロヘロっとした脱力ヴォーカルにパンキッシュなギター・メロディの疾走感そのままに、グラム・ロックとアメリカーナの中間を突くような新境地はこれまたクセになる。どちらかというとアーシーな方向性だが、アコギやシンセにホーン・セクションを取り入れたネオアコ風味も交え、ワクワクする自由奔放さが最高なんです。ちなみにレコーディング時はDENIMにLee HazlewoodやGrace Jonesをよく聴いていたとか。マジか?!と疑っちゃうけど、このポップ感覚はそういうことね。

Body Parts

DRAGONETTE

Body Parts

カナダ出身の3ピース・エレクトロ・ポップ・バンド、DRAGONETTE(ドラゴネット)の3rdフル・アルバム。その洗練されたハイ・センスな楽曲が評価され、今までに数多くのコンピや大物アーティストの作品へ参加を果たしている実力派。中でも世界的なヒットを記録したMartin Solveigの「Hello」へフィーチャーされたことにより一躍知名度を上げただけに、今作はフロア・ラヴァーズ待望のリリースといっていいだろう。リード・トラック「Let It Go」の華やかなシンセ音とキャッチーなメロディはクラブ・ファンのみならずロック・リスナーの心も踊らせるはず。作品全体に含まれた80’sのメトロ感やダークな要素も絶妙なダンス・アルバムの新スタンダードを楽しもう。