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DISC REVIEW

Tokyo Aventure

BimBamBoom

Tokyo Aventure

中国ツアーも大成功となったBimBamBoomが、"東京"の看板を背負い世界に向けて放つ3rdアルバム。表題曲では"雷門"、"スカイツリー"と東京の名所が登場、ラスト・トラックのタイトルには日本の象徴"富士山"も。TVCMタイアップ曲も収録され、インストながら親しみやすいキャッチーさを持ち合わせつつ、そのファンキーなサウンドは攻めに攻めまくっている。ドラムの張りきったスネアが甲高くパリッとしたビートを刻み、いきいきと躍動する小気味よいベース。新メンバー 矢元美沙樹(T.Sax)がもたらす新たな色はもちろん、より音色の幅を広げたキーボードやギター、キュートさにクールさも加わったコーラスなど、厚みを増したバンドの進化が随所に。ジャンルの壁も国境も痛快に越えていく彼女たちに注目。

Shinzo BakuBaku

BimBamBoom

Shinzo BakuBaku

ユニークなオルタナ・ファンクを鳴らすインスト・バンドの2ndアルバムは、ご機嫌な雰囲気はそのままに、前作に比べより骨太な印象に仕上がった。どっしりと地面を揺らすようなベースとドラムの上で、ハードなギターと歌い叫ぶようなサックスが暴れ回り、さらにその上を軽やかに浮遊するシンセサイザー。初っ端からガツンと鳴らす「Shinzo BakuBaku Ochokochoi」では、エッジィなサウンドと人懐っこいコーラスのコントラストがメリハリを効かせている。ゴリゴリなサウンドを響かせたかと思えば、「Keeping It Hustle」ではグルーヴィ且つトリッキーなドラムとメロディアスなサックスが小洒落たムードを醸す。カバー曲も収録され、遊び心満載のバラエティ豊かな9曲に心躍る。

TIGER ROLL

BimBamBoom

TIGER ROLL

山口美代子(Dr)を中心に結成され、"フジロック"への出演も話題となった女性5人組インスト・バンドのデビュー・アルバムは、いい意味で肩の力が抜けた独自のオルタナ・ファンクを軽やかに鳴らしている。洒落が効いたタイトルのオープニング曲「O.E.C. Tiger roll」で鍵盤、ギター、ドラム、ベース、サックスと軽妙なソロ回しを披露しさらっと自己紹介を済ませると、「ChinPunKanPunBimBamBoom」の一緒に口ずさみたくなる語感のいいコーラスが生む親しみやすさでリスナーを虜に。そしてアメリカのファンク・バンド PEOPLE'S CHOICEやTHE METERSのカバーをメドレーで収録するなど、やりたいことを詰め込んだ奔放さと自由さ。純粋な"音楽の楽しさ"にワクワクが止まらない。

切り傷

sajou no hana

切り傷

前作から約半年というスパンで到着した新作で、3人はまた新たな扉を開いた。タイトル曲は、TVアニメ"ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ 深章 厄災篇"のエンディング・テーマ。同シリーズとタッグを組んだシングルはこれで3枚目となるが、今回の表題曲はバンドにとって初となるスロー・バラードだ。ピアノやストリングスをフィーチャーした柔らかなサウンドと、儚くて繊細なsanaの歌声がなんとも映える美麗曲に仕上がった。一方「メーテルリンク」は、エモ/ポストロック的な雰囲気のあるバンド・サウンドを力強く押し出したアップテンポ・ナンバー。sajou no hanaの原点的な雰囲気を纏った楽曲を添えることで、バンドが持つ振り幅であり、可能性を改めて提示する快作になっている。

1440

Arika

1440

声優の夏吉ゆうこ(Vo)と、コンポーザー/ギタリストの大和による音楽ユニットの1st EP。朝、昼、夕方、夜と1日の流れを描いた全4曲はダウナーで、アンビエントで、アトモスフェリックなエレクトロ・サウンドが大半を占めていて、ポップなキャラソンやヘヴィでラウドなロック・ナンバーといった、これまでふたりが携わってきたものとは正反対と言っても過言ではないほど、異なる表情を持った楽曲たちが収録されている。中でも、声楽を幼い頃から学んできた夏吉が、「からたち」のラストで聴かせるハイトーンは圧巻のひと言。今はジャンルを定めずに楽曲を作っていきたいと話していることもあり、ここからさらなる広がりを見せていくと思われるが、その出発点として強烈な個性と圧倒的な存在感を提示した1枚になった。

模造生活

群咲

模造生活

声優の木村千咲と作曲家のラムシーニによるユニット、群咲の4thシングル。木村の実体験がもとになって生まれたという「模造生活」は、これまでの比較的内省的な印象を与えるサウンドではなく、強烈なまでの怒りをぶちまけ、自分は自分の思うように生きていくと宣言する刺々しさもあるアッパー・チューンだ。そんなメッセージは、"今日も映えない、明日こそ映えたい私たちへ"というユニットが掲げているテーマ通り、日頃押し殺している感情を肯定し、鼓舞してくれる力強さも。カップリングの「君が嫌い」は、ど直球なまでのセンチメンタルなラヴ・ソングで、こちらでも新たなベクトルを提示。ユニットとして新たな1歩を踏み出したことを強く感じさせる1枚になっている。

柊

小林柊矢

21歳の等身大をラヴ・ソング、ライフ・ソングにダイレクトに昇華した13曲+ボーナス・トラックからなる1stフル・アルバム。メジャー・デビュー曲「君のいない初めての冬」や1st EP収録曲の「死ぬまで君を知ろう」、そのあとの配信楽曲「白いワンピース」、「名残熱」といった既発曲がアルバム曲と並び、より立体感を伴い、時間の経過も感じさせるアルバムらしいアルバムへと結実した。堂々たるJ-POP~ロック・ソングであるリード曲「愛がなきゃ」や、まず笑うことのいい伝播について歌う「笑おう」など、小林が心底願うパワーが歌声になり希望的な歌詞に説得力をもたらしている。鳥山雄司、本間昭光、トオミヨウら、世代の違うポップ・シーンきってのアレンジャーを迎えたことで多彩な色合いが実現した。

UPSIDE DOWNTOWN

あるくとーーふ

UPSIDE DOWNTOWN

前作『サイファールーム』から1年と少々という時間は、あるくとーーふにとってこれまで以上にクリエイティヴな時間となったようだ。高校の同級生でバンドを始め、"未確認フェスティバル"でファイナリストになるなど、10代のうちから抜きん出たポップ・センスで同世代の心を掴んできたバンドだが、今作でそのファン・ベースはより裾野を広げると思う。エネルギーを存分に内包したバンド・サウンドのムードはそのままに、洗練された音作りや構築的なアンサンブルが、奔放な利佳子のヴォーカルの自由度や歌心を広げて曲に心地よいグルーヴを生んだ。引き算で作り上げたサウンドは感覚的だと言うけれど、余韻や余白をも演奏で表現しているのが大人っぽくバンドの新たな横顔も覗かせる。バンドがきらめく瞬間を捉えたマジカルなEPだ。

完ペキ主義なセカイにふかんぜんな音楽を2

バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI

完ペキ主義なセカイにふかんぜんな音楽を2

バンもん!の約4年ぶりとなるフル・アルバムが完成。文句なしに素晴らしいし、間違いなく自信作だろう。10周年を迎えますます自由度と純度を増していくのは、それぞれの人生に責任を持ち、それをしっかりと受け入れているからこそ。アイドルなのに人間臭くて、アイドルなのにリアルで、それでいてとことんハッピーへと導いてくれる姿は、まさに人生そのもの。今作ではメンバーそれぞれがプロデュースした曲も収録され、6人の個性や人間性もよりいっそう浮き彫りになっている。誰もが理想や完璧を求めてもがき、その不様さに気づいてはまた落ち込んだりして。そんな人生を美しいと讃え、生きる力に変えてくれる魔法のようなリアルがこの1枚には詰まっている。そしてバンもん!の新たな旅がまたここから始まる。

CHANGEMAKER

Hinano

CHANGEMAKER

劇場版"DEEMO サクラノオト~あなたの奏でた音が、今も響く~"の歌姫オーディションで、世界中の応募者の中から当時14歳でグランプリを獲得したシンガー、Hinanoの3rdシングル。これまではミディアム~スロー・ナンバーが多い彼女だったが、本作では初のアップテンポなロック・チューンに挑戦した。持ち前の美しいハイトーンを繰り出しながらも、要所で飛び出すがなり声が新鮮且つ楽曲に力強い熱を与えている。そんなパワフルな楽曲から一転、カップリングの「Never Ever」は、温かなサウンドながらも切なさを帯びたスロー・ナンバー。柔らかで包容力のある歌声が抜群に心地よく、その表現力の振り幅でシンガーとしての確かな実力を感じさせる1枚に仕上がった。

ohashiTrio collaboration best -off White-

大橋トリオ

ohashiTrio collaboration best -off White-

デビュー15周年を迎えた大橋トリオが12のアーティストと共演した曲を収めたコラボ・ベスト・アルバム。JQ from Nulbarichがフィーチャリング参加だけでなくプロデュースも務めた「La La La」は、これまでの大橋トリオの素朴で温かな印象とは違う独特の浮遊感と開放感があるし、新鋭SSW りりあ。らの起用も彼の探求心が窺える。斉藤和義、矢野顕子などの参加ナンバーをはじめ、コラボ相手のらしさも感じさせつつ、オリジナル曲とは違う魅力に溢れていて、それぞれが参加する意味と向き合ったことが想像できるような、気合の入ったナンバーがずらり。個人的にはBONNIE PINKとのジャジーなラスト曲が新鮮でお気に入りだ。繊細な音づくりが詰まった本作。ぜひいい音質で隅々まで楽しもう。

感情特急

Little Parade

感情特急

約1年ぶりとなるミニ・アルバムには全5曲を収録。軽快で賑やかな「最後の友人」では創作する日々の葛藤が滲み出ていたり、躍動感とまどろみ感たっぷりに繰り広げられる「煩悩グラインド」では、便利になっているのにどこか心が満たされないある種の現代病を描いていたりと、太志の視点を通しながらも、今を生きる多くの人たちの毎日の生活の中でふとした瞬間に湧き起こる感情や感覚に寄り添う言葉たちが、柔らかく、丁寧に紡がれている。物憂げなピアノから始まりながらも、徐々に視界が開けていくかのように景色が鮮やかに色づき、ドラマチックに広がっていく「感情ターミナル」で始まり、喪失感を抱えながらも、前に進んでいく姿を美しい歌声で紡いだ「晩秋のトロイメライ」で締めくくる流れも見事。

SINDERELLA

Mori Calliope

SINDERELLA

"ホロライブプロダクション"傘下の英語圏グループ"hololive English -Myth-"に所属しているVTuber、Mori Calliopeのメジャー1stフル・アルバム。"10個の大罪"をコンセプトに、THE ORAL CIGARETTESの山中拓也(Vo/Gt)、JP THE WAVYというロック・シーン/ヒップホップ・シーンの最前線を走るふたりや、Moriが多大な影響を受けた日本のネット・ラップ・シーンからはFAKE TYPE.を招聘しつつ、"死神ラッパー"の異名の通り、"魂ちょうだい"と叫ぶアッパーなダンス・ポップ「soul food」や、静謐でメランコリックな「glass slipper」など、自身がリリックを綴ったものも収録している。ラップ・ミュージックに軸足は置きながらも、様々なジャンルの架け橋にもなりうる強力な全10曲。

しるし / ℃

ラックライフ

しるし / ℃

今年結成15周年を迎えるラックライフの両A面シングル。それぞれアニメのタイアップということで作品に寄り添ってはいるものの、間違いなくこれらは彼らの歌として存在する。ここにいる意味をくれた喜びを歌うミドル・バラードの「しるし」("文豪ストレイドッグス"第4シーズンED主題歌)、そしてお互いの"らしさ"を手のぬくもりで表す爽快なバンド・サウンド「℃」("ツルネ -つながりの一射-"OP主題歌)。不器用だけど人が好きで好きでたまらなくて、超がつくほどまっすぐで。後悔も迷いも悔しさも何もかもを正直に曝け出してきた彼らだからこそ、そしてすべてが本当の気持ちで本当の姿だからこそ、こんなにも強く心を動かされる。迷いない2曲、ここにはただ"あなた"へと向けた愛があるだけだ。

わたしのノクターン

カネヨリマサル

わたしのノクターン

青春ロックを追い続ける3人組ガールズ・バンドが、ついにメジャー・デビューを果たす。本作には、恋人への思いを不器用に綴った「二人」、"毎日コンテニュー"して新しい日々を生きていく「ゲームオーバー」、オール英語詞のサビが新鮮な、過去の恋愛を吹っ切るアップ・チューン「I was」、ピアノのまっすぐな音色に乗せて"君の事が好き"と歌う初のバラード「ピアノのうた」、"涙を死ぬ程流して歌う"大きな失恋を描いた「26」など、思いに耽る夜に綴られた日記のような11曲を収録。青春の甘酸っぱさを纏ったピュアな歌声と歌詞、心の変化を丁寧に描く表情豊かなバンド・サウンドに、胸の奥がぎゅっとなる。大切な誰かに思いを馳せる夜、明日への不安を抱きしめて眠る夜、そんな夜に寄り添い背中を押す彼女たちなりの"夜想曲"だ。

ウィンターランド

フリージアン

ウィンターランド

関西のライヴハウス・シーンを中心に注目を集めるバンド フリージアンが、初のクリスマス・ソングを誕生させた。聖夜の煌びやかな情景を描き出すような壮大なアレンジは影を潜め、あくまでマエダカズシの歌を中心に据えるかたちで練られたサウンドメイクが潔い。"サブスクでギター・ソロが飛ばされる時代"に抗うように大サビ前で轟くエッジーなギター・サウンドには、彼らが数々のステージで放ってきたとびきりの熱量と勇敢さが滲む。表題曲では"光の差す場所"、カップリング曲「ムーンパレス」では"光は射して"と共通して"光"という単語が登場。何より"希望"に目を向けポジティヴに歌う、求心力に長けたバンドなのだろう。寒い冬は続くが、ド直球な歌声とバンド・サウンドが聴く者の鼓動を加速させ、身体の芯まで温めてくれそうだ。

メンバー募集"1"でワンマンTOUR

挫・人間

メンバー募集"1"でワンマンTOUR

2022年まで9年間在籍したギタリスト 夏目創太のラスト・ツアーより、渋谷CLUB QUATTRO公演を収めた本作。夏目最後のクアトロ公演を見届けようと集ったファンで会場はソールド・アウト、熱気でレンズが曇ってしまいそうなほど、その熱狂ぶりもひとしおだ。キレッキレの演奏(とダンス)が光るオールタイム・ベスト的セットリストで、メンバーの脱退という現実に悲しむ隙も与えずアッパー・チューンを次々に投下。目まぐるしい展開に瞬時に反応していくフロアも一体感抜群だ。ラストを飾った「マジメと云う」では、応援歌のようなシンガロングとギター・ソロの応酬に胸が熱くなること間違いなし。泣きのギターがエモーショナルに鳴り響くも、終始涙を吹き飛ばすほど笑いに溢れていた、臨場感たっぷりの濃密な137分間は必見。

無限の終わり

原因は自分にある。

無限の終わり

ロック・バンドのサウンド、ボカロP楽曲の複雑さ、哲学的で深読みできる歌詞で群雄割拠ののダンス・ヴォーカル・グループ・シーンで異彩を放つ"げんじぶ"の3rdアルバム。相変わらず複雑で言葉数の多い歌詞やラップを見事に7人で繋げ、超絶的なトラックと組み合わさるカタルシス満載の「無限シニシズム」や、四つ打ちの邦ロック的アプローチの「原因は君にもある。」、ハード・ロック×デジ・ロックな「Lion」などや、デビュー時からの持ち味であるピアノ・ロックに青春時代の情景を投影する「青、その他」や10代トラックメーカー、izkiとの出会いの曲であり素直な歌詞が刺さる「キミヲナクシテ」、モーツァルトのピアノ・ソナタを下敷きにした「545」など"げんじぶ三部作"も収録している。グループのスケール・アップを印象づける多彩な14曲。

ニホンバレデンセツ

FES☆TIVE

ニホンバレデンセツ

新メンバーの辻 こはるが加入した"お祭り系アイドルユニット"FES☆TIVEが、新体制初のCDを完成させた。タイトルからしておめでたい表題曲の「ニホンバレデンセツ」は、半ば強制的に頭をポジティヴに切り替えてくれるハッピー・ソング。終始ハイテンションでわちゃわちゃした、これぞFES☆TIVEの真骨頂と言えるお祭りソングだ。カップリングには今作も形態によって異なる楽曲を収録。和楽器の効いたダンス・ミュージックの「ジャパニーズOROCHI」(TYPE-A)、胸を締めつけるような歌唱が聴きどころのロック・ナンバー「あの日のファンファーレ」(TYPE-B)、キラキラしていて、ガーリーでかわいらしい「No more 煩悩!」(TYPE-C)と、表情の異なる楽曲が揃った。

Flowers

OKAMOTO'S

Flowers

OKAMOTO'Sのコラボレーション・アルバムとはいったい? と妄想していたら、相手はメンバー。4人が曲のプロデューサーとなって自由にアイディアを出したことで、音楽的なキャラクターが明快に。「Gimme Some Truth」の90s UKロック~THE BEATLESを彷彿させる大展開、オカモトレイジ(Dr)とオカモトコウキ(Gt)作曲のアルバム・タイトル曲は、コウキの声に似合うネオアコっぽいメロとトリップ・ホップのビートやネタの差し込みが新鮮。ハマ・オカモト(Ba)のスラップが前面に出た「いつも、エンドレス」は、AOR歌謡的なアレンジに。他にもストレートすぎてこれまで着手していなかったコード進行も、腹の底からパワーが出そうな音像も、彷彿どころか"OASISじゃん!"な曲も、むしろ4人のバンド・サウンドが際立つ高度な仕上がり。