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DISC REVIEW

Where Do We Go?

OKAMOTO'S

Where Do We Go?

フィジカル・パッケージのシングルはなんと2016年の『BROTHER』以来となる本作は、人気漫画を原作とするTVアニメ"Dr.STONE"第3期エンディング・テーマとして書き下ろした新曲だ。作曲はアルバム『KNO WHERE』以降最強タッグになったオカモトショウ(Vo)とオカモトコウキ(Gt)で、彼らのレパートリーの中でもファンクとロック両方の旨味と哀愁を混交した世界観。いわば"レッチリDNA"をここまで極上のアンサンブルで落とし込めるバンドは、国内外を見渡してもいないのではないだろうか。石器時代から現代まで一気貫通する冒険譚に漂うスケール感と人間愛を、普遍的な人生の物語として歌詞に落とし込んだショウの歌は、奇しくも先の見えない現代とシンクロする。ライヴでもほぼそのままの音像なので現場でも確認してほしい1曲。

逆光備忘録

PENGUIN RESEARCH

逆光備忘録

多数のアニメOPテーマに加え、透き通るコーラスと差し込む光のように煌めくピアノが美しい「FORCE LIGHT」や、タイトなドラミングとスラップ・ベースがファンキーなグルーヴを生む「フェアリーテイル」、まさに"熱狂"を音にしたような演奏と叫ぶヴォーカルの爆発力が凄まじい「FEVER」、初夏の爽やかさを閉じ込めたバンド初の神田ジョン(Gt)作曲楽曲「クジラに乗って」など、ポップからハード・ロックまで多彩な全12曲を収録。コロナ禍を経てリリースとなる約3年半ぶりのフル・アルバムは、"バラードなし全曲勝負"の聴き応え十分な1枚となった。また制作面では、これまでより堀江晶太(Ba)以外のメンバーのアイディアに委ねられた部分も大きかったといい、よりチャレンジングなサウンドに。そんなバンドの変化も感じられる意欲作だ。

DOG

シンガーズハイ

DOG

昨年6月に配信リリースした「ノールス」がSNSで話題を集め、急速に注目度を上げているシンガーズハイの新EP。リード・トラック「Kid」は、耳に残るイントロのリード・ギターと内山ショートのハイトーン・ヴォイスが光るナンバー。"自称"バンド好きへの皮肉が抜群に効いている歌詞がなんとも爽快だ。疾走感があって曲名通り少し危なっかしい雰囲気の「飛んで火に入る夏の俺」や、一変して落ち着いた曲調で人間味のある失恋ソング「Soft」など全5曲を収録。ギター・ソロへのこだわりが伝わるサウンドはぜひともライヴで聴いてみたいし、日常を切り取って彼らの世界観で綴るリアルな歌詞に共感してしまうような節もある。技術や歌詞に音楽への愛が散りばめられたこの作品は、ロック・ファンに刺さること間違いなし。

死にたい彼女と流星群

それでも世界が続くなら

死にたい彼女と流星群

他紙のインタビューで知ったことなのだが、彼らの独立はソングライターである篠塚将行の声帯手術のせいというより、機材車が大破し経済的に続行が難しいと判断したものの、彼以外のメンバーが存続のためにクラウドファンディングを発案したことにあったようだ。その際受け取ったファンからの存続を希望するメッセージが今作の動機なのだろう。相変わらず生きることは苦しいし困難なことではあるけれど、自分が作って鳴らす音楽を必要とする人がただ生きていてくれることが嬉しいという篠塚の独白は、100パーセント真実で、それを伝えるためにだけあるようなこのアルバムの純度は他の何ものにも変え難い。ファンでなくても"生きてるだけでいい"という言説が嘘くさく思えるとき、ここにひとつの根拠があることを思い出してほしい。

Heavenly Heavenly

polly

Heavenly Heavenly

2022年にギタリストとベーシストが脱退し、志水美日(Key/Cho)を迎えて3ピースになったpollyの新体制初EP。前作同様"別れと再会"をテーマにしつつ、前作よりも"別れのあとの自分のリアルタイムな想い"にフォーカスしたという本作は、引き続きシューゲイズ・サウンドを基調にしつつ、「ごめんね」に顕著な、地声に近い歌声をあえて使うといったヴォーカリゼイションの変化があり、「Snow/Sunset」では女性コーラスの新規参入により物語性の奥行きも増していて、新たなpollyのシューゲイズが感じられる仕上がりになっている。特に「K」は越雲龍馬(Vo/Gt/Prog)が初めて母への気持ちを歌にした温かなナンバーで、歌心がこもった近作の彼らのひとつの到達点のように感じられる。

行

5kai

京都で結成、現在は東京を拠点にツイン・ドラム編成で活動をしている彼らによる、4年ぶりとなるアルバム。DTM的に音を構築した「four flowers」や、フィールド・レコーディングで様々な音を取り込んだタイトル・トラック、奇怪なビートが鳴り響くなかで囁き声と強烈な低音が蠢く「obs」に、10分を超える大作の「ロウソク」など、バンド・サウンドを主体としながらも、エモやポストロック、アンビエントやミニマル・テクノなどを独自に昇華した全11曲を収録している。ダウナーでありながらも美麗な音像は、孤独にそっと寄り添い、心の奥深いところまで染み込んでいくようで、中毒性も抜群だ。特に理由がないのに悲しく、やり切れなさばかりが募る日々の中で、どっぷりと浸ってほしい。

LYCORisALIVE

TOKYOてふてふ

LYCORisALIVE

前シングル『ash.』から約1年ぶりのニュー・シングル。レーベルメイト、かわぐちじゅんた(じゅんちゃい/Made in Me./Cho/Gt/Syn)作曲によるエネルギッシュなバンド・サウンドは勢いがあって、キャッチーなメロディとポエトリー、ラップなどドラマチックに歌い紡がれていく構成は時にカオティックな心模様を覗かせつつも、これまでにも増して感情を露にした5人のヴォーカルは透徹した意志の強さを感じさせる。メランコリーを帯びた儚さ、美しさが繊細に表現されていたTOKYOてふてふ作品だったが、今回は現実世界に1歩踏み出て、能動的に歩んでいく確かさが声に、歌に乗っている。2021年1月にデビューし、コロナ禍を暗中模索で進んできた約2年。その軌跡と、先に見据える未来が繋がっていることを感じる1曲になっている。

Mori Calliope Major Debut Concert "New Underworld Order"

Mori Calliope

Mori Calliope Major Debut Concert "New Underworld Order"

"死神ラッパー"として話題を集めているVTuber、Mori Calliope。昨年7月に豊洲PITで開催されたメジャー・デビュー記念ライヴであり、彼女にとって初の単独公演となった一夜が待望の映像化。TeddyLoidをDJに迎えたアグレッシヴな展開や、彼女が所属している"hololive English -Myth-"のメンバーたちがサプライズ登場した「The Grim Reaper is a Live-Streamer」をはじめ、豪華ゲストたちとの共演もあって見どころばかりだが、その中でもやはり強烈に残るのは、彼女のラップであり、歌だ。時に滑らかに、時にハードに、モードを巧みに切り替えながら言葉を捲し立てていく姿は、何よりも華がある。日本語と英語を交えたMCから伝わってくる真摯な想いにも胸を打たれる圧倒的な110分。

kyo-do?

私立恵比寿中学

kyo-do?

新メンバー 桜井えま、仲村悠菜が加入し新体制となった私立恵比寿中学が、グループとしては約4年ぶりのCDシングルを完成させた。表題曲「kyo-do?」は、"世界一かわいい音楽"を作る音楽プロデューサー ヤマモトショウ提供のハッピーな極上ポップ・ソング。楽曲のテーマになっている"キョウドウ"の言葉遊びがふんだんに盛り込まれた歌詞は、読んでいるだけでも楽しめる。CDの形態によって収録されるカップリング曲は異なるが、いずれも個性溢れる10人の歌声を堪能できる仕上がりに。その中でも、昨年エビ中を卒業した柏木ひなたの卒業前ラスト新曲を"New style ver."として収録した「ボイジャー (New style ver.)」は、新体制の門出を感じさせる必聴の1曲だ。

xANADU

ExWHYZ(ex-EMPiRE)

xANADU

昨年2022年11月に1stアルバム『xYZ』をリリースしたばかりのExWHYZが、早くも2ndアルバムを世に放った。本作は、ExWHYZ楽曲としては初めてシャウトを取り入れた都会的でスタイリッシュな「BLAZE」や、超重低音のドロップで全身をビリビリしびれさせる「ANSWER」ほか、前作に引き続き粒揃いなダンス・トラックを中心に構成されている。その一方で、洋楽ライクで爽やかなロック・ナンバー「FIRST STEP」のように、聴き手の意表を突く楽曲も収められ、自由度の高い作品に仕上がった印象だ。制作時期や、オーバーチュアから2曲目へシームレスに繋がる流れなど、1stアルバムと対をなす存在になっているので、2枚組のアルバムのように楽しむこともできる。太鼓判を押します!

Orange

カメレオン・ライム・ウーピーパイ

Orange

Chi-によるソロ・ユニット、カメレオン・ライム・ウーピーパイから1stフル・アルバム『Orange』が届いた。本作には、中毒性抜群のトラックにキャッチーなフレーズが散りばめられた、"らしさ全開"のリード・トラック「Stand Out Chameleon」をはじめ、EAST ENDを彷彿とさせるオールド・スクールなヒップホップ・ナンバー「LaLaLa」、パンキッシュなビートを放つ「Love You!!!!!!」、チルいウエディング・ソング「Skeleton Wedding」、トラックメーカー PARKGOLFとのコラボ曲「Indie Slime」など全17曲を収録。ポップ・ミュージックというフィールドを遊び倒した、実にカオティックなポップ・アルバムに仕上がっている。

SHUTTLE

FINLANDS

SHUTTLE

FINLANDSとしての活動10周年を2022年に迎え、その先の2023年にベスト・アルバムではなく、初期楽曲や前身バンド THE VITRIOLの楽曲も包摂して再録するのは塩入冬湖(Vo/Gt)にとって、初期衝動にとどまらない音楽の普遍性を自ら実感したからなのだと思う。サポート・メンバーの変遷はあれど、現在の研ぎ澄まされたアンサンブルにブラッシュアップできている彼らとのアレンジが音源で聴けるのは嬉しい限りだ。若さゆえの残酷さが大人な音像でむしろ際立つ「あそぶ」や、情景や温度が喚起される「April」など、原曲の色褪せなさが証明されるし、ライヴで演奏され続けてきた「ゴードン」がリアルタイムの演奏で聴ける嬉しさも。さらに新曲「SHUTTLE」は過去と現在を接続するようなテイストなのも聴きどころだ。

OUR PARADE

GANG PARADE

OUR PARADE

"どんな困難があったとしても/楽しもう"と歌うオープニング・トラック「ENJOY OUR PARADE」は、今の彼女たちのテーマ・ソングとも言える1曲で、ここに至るまでたくさんの壁にぶつかってきた彼女たちが歌うからこそグッと来る。メンバーが"今の13人体制のギャンパレですごく大事な曲になっている"と語る「INVOKE」では、前身グループ POPからのメンバーであるヤママチミキとユメノユアによる共作の歌詞と、エモーショナルなサビメロが相まって、聴いているだけで目頭が熱くなった。そんな熱く滾る要素もあれば、頭を空っぽにして楽しめるパーティー・ソングもあり、新たな試みであるユニット編成曲も収録。ギャンパレらしい部分と新たなチャレンジが同居するアルバムに仕上がった。

New Neighbors

Homecomings

New Neighbors

Homecomingsが、2年ぶりとなるアルバム『New Neighbors』をリリース。本アルバムには、TVアニメ"君は放課後インソムニア"EDテーマ「ラプス」をはじめ、TVドラマ"失恋めし"主題歌「アルペジオ」、TVドラマ"ソロ活女子のススメ2"EDテーマ「i care」などのタイアップ・ソングを含む全12曲が収録されている。HomecomingsらしいUSインディーやギター・ポップに加えて、「光の庭と魚の夢」ではストリングスを導入。そのアレンジを同郷の岸田 繁(くるり/Vo/Gt)が手掛けるなど、音楽性の幅をさらに広げた作品に仕上がった。そして、フェミニズムやシスターフッドといったテーマに切り込んだ福富優樹(Gt)の歌詞も本作に重要な奥行きを与えている。

春めく私小説

クジラ夜の街

春めく私小説

コンセプチュアルなライヴが想像できるような語りと、2曲目のタイトルコールにもなっている「時間旅行 (Prelude)」に始まり、メロディは素朴だが、楽器のアンサンブルにマス・ロック的な抜き差しとスリルが宿る「時間旅行少女」に接続。リード・トラックの「BOOGIE MAN RADIO」ではラジオのノイズから始まり、怪盗モノを思わせるストーリーが展開される。音楽性も2ビートやファンクが盛り込まれた目眩い展開が楽しい。場面転換的なインタールードを挟んで、ループするギターと転がるピアノのフレーズが印象的な「ハナガサクラゲ」へと、場面も視点も変わっていく。ラストは一人称が宮崎一晴の視点に移るプレデビュー曲「踊ろう命ある限り」へ。シンガロングがバンドの"旅"=これからを彩るような、始まりに相応しい仕上がりだ。

i my me mine

nolala

i my me mine

"元彼のことを曲にする"という言葉通り、実体験から紡ぎ出される言葉の数々はリアルで、何より純度が高い。そんなnolalaの1stフル・アルバムには、これまでの"元彼"との恋愛をはじめ家族のこと、自身のこと、彼女たちの人生そのままを歌った12曲を収録。本音とほんとを曝け出し、この3人ならではのツイン・ヴォーカルとコーラス・ワークを武器に、時に切なく時に瑞々しく、"飾らない私"で勝負する。バンドの決意表明とも取れる「明日が最後でもいいと思えるように」から、そのままの自身を愛し、愛されたいと願う「6畳1Kとジャズマスター」までに現れるいろんな"私"。そのすべての"私"を丸ごと抱きしめ、この先へと進んでいこうとする姿には、もう希望しかない。nolalaの未来を表す1枚が完成した。

STAY FREE

Machico

STAY FREE

人気TVアニメ"この素晴らしい世界に祝福を!"の前日譚であるスピンオフ作品"この素晴らしい世界に爆焔を!"オープニング・テーマである「STAY FREE」。どこかFOO FIGHTERSを想起させるスケール感と生音のロック・サウンドがヴォーカリスト Machicoの新たな可能性を引き出している。スキルフルでハイトーンの突き抜ける歌唱がこれまでの彼女の魅力だとしたら、本作では抑えたトーンで静かに燃えるようなAメロが特に新鮮な響きに溢れ、従来のリスナー以外にもリーチしそうな大人っぽいニュアンスと力強さも。カップリングの「星の旅は夢うつつ」はシティ・ポップ・テイストだが、それにとどまらず転調で変化をつけた構成で耳が楽しい仕上がり。"声のプロ"の次なるフェーズを感じさせる。

last aurorally

凛として時雨

last aurorally

TK(Vo/Gt)には自身と345(Vo/Ba)、ピエール中野(Dr)だけで作れ、且つ自分のギター・サウンドに劇的な発明がない限り、凛として時雨の新作を作る理由がなかったのだろう。故に約5年ぶりのこのオリジナル・アルバムは、どこを切っても時雨のストイックな狂気と正気のせめぎ合いのアップデート"しか"ない。Track.1で明快に聴こえる歌詞にこれまでを超えてきた確信を得、畳み掛けるようにTrack.4まで、"このカオスから逃げ切れるのか?"という音が作る迷宮、壮絶な体感に投げ出される。"劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE"主題歌でもあるTrack.6は、"自分でありたい"VS"自分を超えたい"という感情の相克を、映画を1本見せるようなカロリーで展開。またも時雨は3ピースの限界を超えた。

君にEP

琴音

君にEP

SSW、琴音の約1年7ヶ月ぶりとなるオリジナルのフィジカル作品には、"資生堂アネッサ ドラえもんデザインCM"楽曲となる表題曲「君に」に新曲2曲をプラスし、さらには今年1月公開の映画"金の国 水の国"の劇中歌として話題を呼ぶ3曲の全6曲が収録された。光のような暖かさで力を与える「君に」、彼女の故郷である新潟県長岡市の景色が浮かぶような郷愁漂う「ライト」、彼女そのものを表しているかのように神秘的な「波と海」。透明でありながらも意思の強い歌声で、ひとつひとつの言葉に命を宿らせている。劇中歌の「優しい予感」、「Brand New World」、「Love Birds」の力もあいまってかまるで1本の映画のような仕上がりに。それは間違いなく彼女の歌唱力と表現力の賜物。繊細さとたくましさを併せ持つ不思議な魅力を存分に感じてほしい。

answer

おいしくるメロンパン

answer

聴き手への届きやすさという意味で節目になった前ミニ・アルバム『cubism』のさらにその先にある7thミニ・アルバム。先行配信曲「マテリアル」にある、触れられるものの有限さとそれが記憶になったとき永遠を信じられるという気づきなど、ナカシマ(Vo/Gt)の生の捉え方もグッと力強くなった印象だ。アレンジの風通しの良さは、1曲目の「ベルベット」での愚直なまでにストロークで疾走させていく痛快さ、マーチング・リズムが印象的な「波打ち際のマーチ」の音数が少ないがゆえにアンサンブルの意図が明解に伝わるあたりに顕著。さらにそのことでポップになったメロディがスッと耳に入る。ナカシマの書くどこか孤高な君と僕の物語も情景と心情を高い解像度で掬い出し、瑞々しいまま届けてくれる。3ピースの豊かさのひとつの到達点。