DISC REVIEW
ハ
-
-
プルモライト
World's End
札幌在住の4ピース・バンドの1stミニ・アルバム。全6曲に共通するテーマは"嘘"。自分を庇うため、あるいは相手を傷つけないために嘘をついていく人間が持つ多面性を、様々な表情を持つ女声ヴォーカルを筆頭に色彩豊かなサウンドで表現。心の葛藤を疾走感溢れるサウンドに乗せた「世界は嘘で出来ている」、歌謡曲の色香を漂わせる「歌うカメレオン」、ストリングスを取り入れてポップに振り切れた「ほころび」、などなど。感情の起伏を歌と楽器でどのように表現していくかに苦労したとのことだが、その努力が良い形で実っているということが聴いていてよく分かるし、今後への大きな伸びしろを感じる。初の全国流通音源は、バンドの持つキャラクターを凝縮させた充実の1枚となった。
-
-
ヘンリーヘンリーズ
ポップンブルース
2011年に未だ10代半ばという若さでデビューし話題となった4ピース・ロックンロール・バンド、ヘンリーヘンリーズの2ndアルバム。初期衝動性の強かった前作から1年半と言えども、メンバーはまだ10代。そう簡単に変わるはずもないだろうと思いきや、かなり印象が変わった。サウンドは一本調子なロックンロールだけでなく幅と深みを感じさせるようになったし、言葉も、アルバム・タイトルが示すように“ブルース”を感じさせるようになった。この時代、この国で生きる少年たちの赤裸々な痛みと悲しみと喜びと夢が、シンプルな言葉と文学的な詩情を持って綴られている。無力な日々に、若者たちは何故ロックンロールを選んできたのか?――その理由が凝縮された10曲。才能が無邪気に、だが強かに爆発した傑作だ。
-
-
ヘンリーヘンリーズ
ヘンリーズ革命、後の
RCサクセションやユニコーンにも10代の頃があったんだよなぁ、などとぼんやりと考えてしまった。80年代を匂わせるロックンロールに、忌野清志郎を思わせるヴォーカル。どこか懐かしい人生賛歌。16、7歳の少年たちが集ったヘンリーヘンリーズは、結成わずか2年にして異様な程の早熟さを見せる。昨今のバンド・シーンが、OKAMOTO’Sや黒猫チェルシー、The SALOVERSを始め低年齢化している勢いの中、彼らの王道な古臭さは新鮮に響く。キャッチーなサウンドをかき鳴らし、どこか愛らしい情けなさを爆発させる。同時に、“ロックンロール”という命題に対しては、“理想論で現実見ていなくてもかっこいいからしょうがないのさ”と言ってのける。主義主張をこねくり回す必要なんかない、真っすぐであれ。ロックンロールとは真っすぐな意思だからかっこいいのだ。
-
-
ベイビーレイズJAPAN
THE BRJ
デビュー5周年を記念し、全曲新曲で構成されるキャリア初のミニ・アルバム。5人が5年間で蓄えた実力を活かす楽曲が揃い、全曲において堂々としたヴォーカルが聴ける作品になった。TOTALFATのKubotyが作曲を手掛けたTrack.4は最年少メンバーの渡邊璃生が作詞に初挑戦。10代の彼女だからこそ抱える闇や不安が、サビのがむしゃらで力強い言葉を際立たせる。Track.5は初期から彼女たちに楽曲提供をし、バック・バンドとして参加することもあるPENGUIN RESEARCHの堀江晶太が作詞作曲を務めている。メンバーそれぞれがベイビーレイズJAPANにいる理由を通して彼女たちの歩みが見えるソングライティングもさることながら、ライヴ並みに感情的で熱い歌声も圧巻だ。
-
-
ベイビーレイズJAPAN
ニッポンChu!Chu!Chu!
1stアルバム『自虎紹介』から2年ぶり、ベイビーレイズJAPANへ改名後初となるフル・アルバムが完成。5枚のシングル曲はもちろん、前山田健一との初タッグ曲や、すでにライヴではお馴染みのBSジャパン "世界女子ソフトボール選手権"の中継テーマ・ソングに起用された新曲「シンデレラじゃいられない」など全12曲が収録されている。勢いのあるラウドロック・ナンバー、きらきらな真夏ソング、シンセが効果的なギター・ロック、軽やかなミディアム・ナンバーなど、どの楽曲も"日本を元気にする"というテーマに即しエネルギッシュ。言葉を大事に噛みしめて歌う5人のヴォーカルはとてもピュアで、笑顔に溢れていて瑞々しい。この先彼女たちはさらに広いジャンルの音楽を歌えるヴォーカル・グループに成長するのでは。
-
-
ベランパレード
スクラップ イン マイ ルーム
前作収録曲「海へいこう」のMVで彼らを知った身としては、まず"変わったなぁ"と思った。ギターの音色からしてかなり違うし、中性的な印象のあったヴォーカルは男らしくなった。ライヴで鍛えられ強固になったグルーヴが前面に出ているため、全体として泥臭くなったような印象があるのだ。メンバーの楽しそうな表情が目に浮かぶような生き生きとした演奏。そこにもともとのこのバンドの持ち味である、甘酸っぱいソングライティングが掛け合わさったらどうなるか......。本作のタイトルは"スクラップ イン マイ ルーム"。"部屋を見れば住む人のことがわかる"とよく言うが、雑多な生活感と捨てられない思い出とを一緒くたにし、キラキラと輝かせる全7曲は、とても愛らしい姿をしている。(蜂須賀 ちなみ)
ベランパレードが2年ぶりのミニ・アルバムを完成させた。ポップでソリッドに響くサウンドと、歌王子あび(Vo/Gt)の優しさを感じさせる歌や歌詞。心地よい声と持ち前のポップ・センスにより、心の引っかかりがある曲たちは、ダイレクトに胸に飛び込んでくる。また、半径5mを嘘のない言葉で歌った曲たちは、どれも愛に満ちたラヴ・ソングで、退屈な日常も優しく、温かく、そしてキラキラと輝かせて映し出してくれるのだ。"抱きしめたい 抱きしめたい"のフレーズが耳に残る表題曲、先行無料試聴で話題を集めた「風邪のビリア」、あびとKota Kamimura(Gt/Cho)の共作で、ゆりえちゃん(Ba/Cho)もヴォーカルに加わるラスト・ナンバー「パン」など、最新型の彼らが見える楽曲からは、バンドの明るい未来も見えてくる。
-
-
ペロペロしてやりたいわズ。
ローカリズムの夜明け
広島発の男女4人組、ペロペロしてやりたいわズ。の1stフル・アルバムがついに完成! しかも"やっと1作目が完成した"と自分たちで言ってしまうほど本気度100パーセント!な今作は、今のペロペロを詰め込んだ1枚。前作よりかなり音が洗練されているうえに、捻くれて尖っていた部分が丸みを帯びたポップスに変化して畳み掛けてくる。JUDY AND MARYを彷彿させるバンド初期作であり未発表曲の「海で会えたら」、"最期まで愛し抜くことはできない"と切なくまっすぐに歌うペロペロ代表曲にして名曲の「暮れる」、ラストには新曲「朝がくるから」で"エブリシングイズオーライ!"と笑顔を見せて今作を締めくくるのも最高だ。"ローカリズム"の向こう側にはいったい何が見えるのか? 今後の成長が楽しみだ。
-
-
ペロペロしてやりたいわズ。
ペロペロしてやりたいわ
一聴して新しい感覚を持った世代だな、と思わされた。この"ペロペロしてやりたいわズ。"という広島出身の4人組ロック・バンドは、00年代以降のガレージ・ロック、ポスト・パンク/ニュー・ウェイヴやファンクをべースにした音楽を、2010年代以降のポップ感で描き出す。大森靖子を通過したムカイダー・メイの縦横無尽なヴォーカル・ワーク、あららぎの、時に硬質で時にロマンティックでメロウなギター、ヤマシタ帝国のファンキーなベースと、なおきさんのタイトなドラムにより生み出される生々しいグルーヴにハッとさせられる。ソリッドなギターのカッティングが際立つダンサブルな「Bless you!」で幕を開け、SF的世界観でムカイダーの内面世界が垣間見える「デストロイ・ガール」、独特な軽やかさとファンクネスで魅せられる「high wave」など全6曲を収録。不敵な4人が世に打って出る1枚。
-
-
ペンギンラッシュ
皆空色
収録曲3曲が先行配信され、少しずつその全貌が見え始めたメジャー・デビュー・アルバム『皆空色』。予測不能な曲展開は健在。だが決して振り回される感覚ではなく、ジャンルの垣根を悠々と行き来する軽やかな足取りにむしろ惚れ惚れする。ハスキーで成熟した魅力を持つ望世の歌い回しも多彩になり、とりわけ柔らかなヴォーカリゼーションは今作で新たに花開いた印象だ。さらに、「色彩」のエッセイの中で"便利すぎる時代は/情報の雨の中にいるようだ"と表現したように、今の時代風景を秀逸に捉え文学的に昇華させているところも、ファンが音楽通だけに留まらない理由のひとつだと思う。スキル、センス、好奇心、探求心、etc.を詰め込み、彼女たちは威風堂々メジャー・シーンへ船出する。
-
-
ペンギンラッシュ
七情舞
ニューオーリンズで生まれたパレード音楽であるセカンド・ライン。そのビートが持つ華やかさとは対極にある、冷ややかでしっとりとした鍵盤のマッチが生む心地よい違和感や、決定的な色気や強さを感じるメロディと声が放つ唯一の輝きに魅せられる。人との関わりで感じるノイズを包み隠さず吐き出した歌詞が刺さる。MVが公開された「悪の花」は、バンドの明るい未来を確信させるほどの個性と強さを持った曲だ。時代の流れに惑わされず、愚直に己と向き合うピュアな冒険心を迷うことなく発信するアクション。それは無数の情報に溢れ、もはや王道のセオリーも埋もれてしまう現代において、新たなポップの夜明けを切り拓く重要な鍵なのかもしれない。だとすれば、ペンギンラッシュこそ今最も聴くべきバンドだ。
-
-
ペンギンラッシュ
No size
あなたは無関心に見られている。とでも言っているような、視線が合わない多くの目が描かれたジャケットがなぜか気になって、何度も何度も見てしまったあなたは、この作品を手に取って間違いないだろう。ポップスの視点から見たジャジーでもファンキーでもなく、ジャズやファンクをポップスのフィルターを通して解釈したものでもなく、既存のジャンルを指す用語では割り切れない音楽。とはいえ、それぞれの歴史にあるマナーは突き詰められたうえで、混ざっている。そんな独特のクロスオーバー感覚と、日常に感じる妙な居心地の悪さが綴られた歌詞がシンクロし、"曖昧な何か"が強い力を持つ。人の心はそんなに整っていない。そういう意味では最もリアルなポップの形が、ここにあるのかもしれない。
-
-
黒子首
ペンシルロケット
今年2月にメジャー・デビューを果たした黒子首が、待望のメジャー1stアルバムをリリース。新世代SSW、泣き虫 とのコラボ曲「やさしい怪物 feat. 泣き虫 」を筆頭に、バンド初となるタイアップ・ソング「おぼえたて」など、彼女たちにとって名刺代わりとなるであろう話題性の高い楽曲が収められている。生活感の滲む描写が散りばめられた「インスタントダイアリー」、コインランドリーにフィーチャーした「ランドリーランド」などに見られる、日常風景をユーモラスに描く堀胃あげは(Vo/Gt)の言葉選びが斬新で楽しい。トロピカルで瑞々しいサウンド満載の最新デジタルEP『ぼやぁ~じゅ』の4曲も収録。アコースティック・サウンドを基調としつつも表現の幅をさらに拡大した、全15曲のフル・ボリュームな1枚だ。
-
-
黒子首
骨格
堀胃あげは(Gt/Vo)が作り出す憂いを帯びた楽曲が独特の世界観を生み出す3ピース・バンド、黒子首。2018年7月の結成から4年目で完成された1stアルバム。アコースティック・ギターの音色を大切にしたジャジーなサウンドを基調に、ホーン・アレンジが煌めきの夜を彩る「magnet gum」、キレ味鋭いシンセが駆け抜けるファンキーなダンス・ナンバー「Driver」、印象的なエレキ・ギターと共にメルヘンチックな物語を紡ぐ「マーメイド」など、様々な楽器を取り入れた新しい黒子首のポップ・ミュージックを切り拓いた。悲しみとの決別を歌う「エンドレスロール」にはじまり、アルバム全体に孤独な気配が漂うが、決して悲壮感はない。寂しさをあっけらかんと歌に仕立てる堀胃の言葉選びがユニーク。
-
-
星野源
YELLOW DANCER
このアルバムがバカ売れするかと思うとワクワクする。時を得た作品ならではの醍醐味! そもそも星野源の作品は"わかるわかる! 共感する!""感動した!"みたいなことから遠い。あるとしたら"この名状しがたい感情をよくぞ曲にしてくれた"ということだ。さて、4枚目のアルバムである今作。真似しようにもできないブラック・ミュージック。フェイクしようとしてもできないソウルの歌唱。しかし確実に自分の音楽体験として存在し、体内に取り込まれた"クロいグルーヴ"をこれまでのアシッド・フォークやエキゾ同様に、"星野源味"の出汁で仕込みそれが全体の基調に。同時にTrack.1「時よ」や弾き語りのTrack.6「口づけ」、細野晴臣とのインストTrack.8「Nerd Strut」といった"異彩"が一筋縄ではいかないツボを形成している。
-
-
星野源
Crazy Crazy/桜の森
跳ねたジャズ・ピアノではじまり軽快なビートで踊り続ける「Crazy Crazy」、70年代のダンサブルで煌びやかなソウル・ミュージックを下地に詩的な歌心をのせた「桜の森」、そしてブルースやジャズを都会的に、かつリラックスしたナイト・ソングへと仕立てた「Night Troop」。今回のシングルは、いずれの曲もタイプは異なれど心地好いグルーヴや、軽やかな空気感が流れていて、自然と手拍子が出たり、体を揺らしたり、リズムを刻んだりしてしまうようなサウンドが肝であり現在のモード。一方、スムーズに流れるメロディとスモーキーな歌声にのせて、想像を掻き立てるような言葉や意味深な言葉がフッと刺さる。アッパーなリズムやサウンドでも突飛でなく、どこかに憂いや湿度を含んでいて、すんなりと肌になじむ音楽が優しい。
-
-
星野源
STRANGER
シングル「フィルム」「夢の外へ」「知らない」も含む、約2年ぶり、3枚目のアルバム。生き急ぐような膨大な言葉数とテンポ感に圧倒される「化物」で鮮やかに幕を開け、立て続けにアッパー・ナンバーが3曲続く驚き。そして彼流のソウル・ミュージックをシンプルな3人編成で構成した「季節」、誰かに伝えるでもない独白とサウンドでなんともいえないサイケデリアが立ち上る「レコードノイズ」など多彩な全12曲。だが、単にバラエティ豊かというよりは、星野の生きるスピード感や欲望が、ポップ・ミュージックとしてはカオティックなバランスで、ギリギリの切っ先に立っているような曲が目立つのが新しい。「知らない」の歌詞じゃないが、知らないことがあるからこそ生きるのは楽しいし、楽しいことを見つけたくなる。
-
-
ホフディラン
2 PLATOONS
前作から約3年振りとなるニュー・アルバムが到着。「欲望」「極楽はどこだ」などのヒット曲を持つ2人も昨年で15周年。それぞれのソロ活動が活発になったとはいえ、2人が揃ったときの爆発力はまだまだ衰えてはいない。それはポップで瑞々しいこのアルバムを聴けば分かるはずだ。大先輩であり親友でもあったという忌野清志郎に贈るメッセージ・ソングやキュートで楽しいインスト・ナンバーなど、彼らのポップ職人としてのセンスが発揮されバラエティに富んだ本作は、従来のファンも初めて彼らに触れるという人にも最適の1枚。小宮山雄飛、ワタナベイビー、それぞれの色がコントラストとなって絶妙なバランス、そして楽しさを生み出している。
-
-
ホロ
Everlasting
"関西代表 和製轟音ギターロックバンド"を掲げるホロが、前作から2年ぶりとなる4枚目のミニ・アルバムを完成させた。彼らの持ち味である叙情的なギター・ロック「桜花に吹かれて」(Track.1)から、唸るようなギターと変拍子のイントロが突き刺さる「アレグロ」(Track.2)、さらにドラマチックな「梟、睨ム」(Track.3)といった、怒濤の"ホロ節"を展開。一転して透明感のあるミディアム・ナンバー「掌」(Track.4)、ディレイを巧みに使用し壮大な世界を表現した「ウレイノハナ」(Track.5)など、彼らが鳴らす楽曲の幅広さに唸らされる。ラストを飾る「輝く星となって」(Track.7)は、聴く者の心にスッと届いてくるような優しさに溢れている1曲。彼らの"現在"を感じることができる作品だ。
-
-
ホロ
輝く星となって
サポート・ドラマーの竹川真矢を正式メンバーとして迎えて初めての、そしてシングルとしても初めての音源リリース(TOWER RECORDS一部店舗での発売)。2作連続シングル・リリースということで、今作はその第1弾となる"星"をキーワードとした2曲を収録。夜空に散りばめられた星のように左右前後に広がる楽器の音を従えて情感たっぷりに歌われる「輝く星となって」(Track.1)、冒頭の歌い出しからグッと惹きつけられるミディアム・テンポのバラード「死にゆく星をみていた」(Track.2)では後半に進むにつれ爆発するような演奏がよりいっそう歌の情緒を際立たせ、煌びやかなディレイ・サウンドによる長いアウトロが深い余韻を残す。轟音を奏でながら"歌メロ至上主義"を標榜するバンドの魅力をダイレクトに伝えるシングルだ。
-
-
ホロ
この世界を愛する
関西を拠点に活動し、徐々にその名を全国区に広めているホロの、約2年ぶりの全国リリースとなる3rdミニ・アルバム。アクシデントによる活動休止とその後のドラマー脱退を乗り越えての新作とあって、速射砲のようなリズムで始まるTrack.1「道化師が泣く」を始めとする収録曲はひたすら前へ前へと迷いなく突き進んでいく印象だ。新たな挑戦だったというラテン調のリズムを取り入れたTrack.4「突き刺す秒針、枯れる花」、1stデモの音楽性を再現したTrack.8「暁の唄」など、凝ったアレンジでありながらしっかりと歌が聴こえるところが彼らの特徴。ひと際キャッチーな旋律のTrack.3「この世界を愛する人へ」では時間の経過とともに心が前を向いていく様子が描き出され、再び走り出すまでの彼らの心象風景を感じることができる。
-
-
ホロ
耳を澄ませて
大阪の若き侍4人衆ホロが、2ndミニ・アルバムで全国に殴りこむ。"今1番うるさい歌ものバンド"と掲げる彼らの今作は、轟音ギターをただ勢いよくかき鳴らすだけでなく、歌詞に沿ったように優しく繊細にギターのアルペジオが彩る「通り雨」や、大切な人への思いを朗々と歌った「心臓」など絶妙なバランスで成り立っている。そこに"和"の要素を感じさせるメロディやギター・リフが加わることで唯一無二のホロ・サウンドとして個性を確立させている。日本語で伝えることに重きを置いた彼らの言葉はどこまでもまっすぐに深く突き刺さり、いつまでもじわじわと胸に疼きを残していく。『耳を澄ませて』という大きな武器を持って、自らを奮い立たせながら彼らは躍進していくのだろう。
-
-
本棚のモヨコ
TOMORROW NEVER KNOWS
THE BEATLES中期の傑作『Revolver』の最後に収録された「Tomorrow Never Knows」という曲は、テープの逆回転やループを駆使した超絶サイケな1曲で、THE BEATLESの実験的且つ野心的な活動を象徴する1曲だ。札幌出身の5人組、本棚のモヨコは1stフル・アルバムにその曲と同じ名を冠した。つまり彼らもまた、明日へ踏み出すことを恐れていないということである。シューゲイザーや60'sガレージからの影響を感じさせるノイジーなバンド・サウンドに、砂糖菓子のように甘いメロディ。筋肉少女帯~神聖かまってちゃんの系譜を継ぐ、日本語ロックの畦道をいく森脩平の歌詞世界は、夢と現実の狭間で揺れながら、しかし大人に悪戯をしかける子供のように不遜な笑みを見せる。すべてのわがままな子供たち(実年齢は大人でも可)に捧ぐ痛快なロックンロール。
-
-
暴動クラブ
撃ち抜いてBaby,明日を撃てLady
平均年齢21歳と思えないグラマラスなパフォーマンスや類稀なセンスで見る者のハートを射抜いてきた暴動クラブ。このたび発表したEPには、初恋の甘酸っぱさを思い出すようなリリックと、釘屋 玄の張り裂けんばかりの歌声が胸を締め付ける「撃ち抜いてBaby,明日を撃てLady」、不良少女の苦悩や満たされない日常を描いた「あばずれセブンティーン」(浜田省吾カバー)等全4曲が収録された。ダウンロード/ストリーミング配信が一切なく、CDでのみリリースするという挑戦や、懐かしさを感じさせる純粋なロックンロール・サウンドでリスナーの心を鷲掴みにし、現代のロック・スターとしてその道を突き進む彼等。今後の活躍からも目が離せない。
-
-
暴動クラブ
暴動クラブ
デジタル主流の現代音楽シーンに、ロックンロールで宣戦布告! 平均年齢20歳の若きロックンロール・バンドがぶっ放つ、渾身の1stアルバム。MR.PAN(THE NEATBEATS/Gt/Vo)をプロデューサーに迎え、オール・アナログ機材によるスタジオでモノラル・レコーディングされたこだわりの今作。熱量を直に感じるざらざらした音質で鳴らされる「とめられない」から、ノンストップで走り抜ける全11曲は激アツで痛快! BO DIDDLEY「Road Runner」やTHE ROOSTERS「C.M.C.」のカバーが収録されているように、ロックンロールの魂を継承しつつ、高い演奏スキルとむき出しの感情で"圧倒的な現在"を鳴らす彼らの音楽。"こんなバンドを待っていた!"と歓喜する人も多いはず。若い世代も必聴!
-
-
ぼくのりりっくのぼうよみ
Noah's Ark
待望の2ndフル・アルバムのテーマは"救い"。聖書のエピソードになぞらえたストーリーが綴られ、"1枚の大きな絵を描くつもりで制作した"という言葉のとおりアルバムのトータル性の美しさはお見事だ。1stよりも音楽的な幅も広がり、カラフル且つさらにジャンルレスに。抽象性の高かった歌詞もテーマゆえか彼にしては明確なものが多く、言葉を立たせたヴォーカリゼーションによってさらにそれが際立っている。音と言葉が自由にたゆたうような歌声はメロディの真髄へと潜っていくようで、Track.8のユーモアとニヒルが融合したアプローチも効果的だ。彼のアーティストとしての手腕が発揮された渾身の1作。曲の持つ瑞々しさと豊かさ、冷やかさや感傷性は、涙の海に溺れるような感覚で切なくも心地いい。
-
-
ぼっちぼろまる
GARAKUTA
"ひとりぼっちロックバンド"として活動をするSSW、ぼっちぼろまるの1stアルバム。昨年12月に投稿され、約1ヶ月半で10万再生を突破したアップテンポな未練ソング「嘘つき犬が吠える」をリード曲に、哀愁漂うスタイリッシュな音像に失恋の孤独を綴った「ひとりぽつり」、進歩のない逡巡だけで終わってしまう1日を温かみのあるメロウなヒップホップで表現した「1day」、おもちゃ箱のような賑やかなサウンドが取るに足らない人生を祝福する「ガラクタ讃頌」など、次々に表情を変える楽曲群は聴き手の感情を揺さぶる。一見、黒歴史に見える思い出や感情こそ今の自分を形作る。そう教えてくれる全7曲は愛すべきダメ人間へ、ぼっちぼろまるが捧げる人生讃歌だ。
TOWERamazon
-
-
ボンジュール鈴木
Sweetie Sweetie
自身で作詞、作曲、編曲を手掛け、心の内に広がる、秘密のファンタジックな異郷を繊細なサウンドで生み出しているボンジュール鈴木。3作目となるこのEPでは初めて4人のトラックメイカーとのタッグを組み、新たなアプローチやキャッチーさを加えることで、彼女自身が描く濃密な世界への橋渡しができる作品となった。普段クラシックや、幼心に刻まれてきた欧州文化や、教会音楽的な要素が色濃くその曲に反映していたが、今回は作曲段階からJ-POP的な構成やコード進行等を意識。またそのことで、ボンジュール鈴木の個性とも言える、ウィスパー・ヴォイスでの儚くアンニュイな陰影のある歌や、詩的表現、愛らしさと毒っぽさとが引き立ったようにも思う。エアリーであるけれど、どこか危険な香りも纏ったポップスだ。
-
-
ボールズ(ex.ミラーマン)
SEASON
バンド名をミラーマンから改め、メジャー・デビューから1年が経ったボールズの2ndアルバム。"初恋""死別""将来への不安"など、誰しもが青年時代に経験するテーマを歌った楽曲たちは、普遍的でありながらも一瞬の輝きを切り取ったような切なさを感じさせる。山本剛義(Vo/Gt)の微妙にかすれたような歌声とストリングス・アレンジの組み合わせがこみ上げる気持ちを煽る「STEP」を始め「ファンタジア」、「魔法」など、清涼飲料水のCMになりそうな甘酸っぱさを携えたメロディはまさに極上のポップス。ミュートされたカリカリなギター・リフは今の音楽シーンで活躍するギター・ポップ・バンドを象徴している音色だ。
-
-
ボールズ(ex.ミラーマン)
スポットライト
昨年秋にインディーズでリリースしたミニ・アルバム『ニューシネマ』が、TOWER RECORDS渋谷店の年間ベストに選出され、自主企画イベントも好調のミラーマン改めボールズが遂にデビュー・アルバムをリリース。日本の70年代のロック/ポップスの芳醇なまろやかさを持ったメロディ・ラインと、光景が浮かび上がってくる歌心で懐かしさを呼び起こし、また軽やかなサウンドは風のように肌をなでる。ブルージィなギター・ソロや、BUILT TO SPILLなどを思わせる空気感たっぷりのギターの音色もアクセント。想像の世界や深い物思いの時間に、じんわりと浸らせてくれるような時間を生みだす、そんなスイッチになる音楽。関西発のこの5人組、20代前半というとても若いバンドだけれども、聴かせるツボを心得たウマさがある。
-
-
ポタリ
ポタリの3
ポタリの約1年ぶりのアルバムは、鈴木奈津美(Vo)いわく"いつだって進化し続けていたい! と思えるような作品"。爽快でキャッチーなサビが心地よいリード曲「途切れた呼吸」は、そんなアルバムを象徴するように、聴き手をポジティヴな気持ちにさせてくれる1曲だ。続く「bestie」のように、同性の共感を呼びそうなストレートな歌詞と明るいメロディで見せるガールズ・バンドらしい魅力もあれば、「限りなく赤」や最新シングル「MONSTER」の"Album ver."のようにロック・バンドとしてのカッコ良さを存分に見せつける一面も。個人的にオススメしたいのは、ポタリ流ダンス・ロック・ナンバーの「それでも」。和メロで踊れるこの曲はライヴ映えすること間違いなし。
-
-
ポタリ
MONSTER
ガールズ・バンドとしてではなく、ロック・バンドとしての理想を追求した渾身の2ndアルバム『ポタリの2』をリリースして以降、文字どおり全国のライヴハウスを駆け回っていたポタリから、バンドの次の一手を示すニュー・シングル『MONSTER』が届いた。彼女たちのシングルには珍しく、ダークでソリッドな表題曲は、自分の心の中にいるモンスターとの葛藤をリアリティ溢れる筆致で綴っている。"あたしは何にでもなれる 可能性のモンスター"という泥臭いフレーズが、このバンドによく似合う。カップリングの「チクタク」は、一転して、鈴木奈津美(Vo)の澄んだ歌声がよく映える、センチメンタルなメロディが印象的なポップ・ナンバー。どちらも今までありそうでなかったポタリの意欲作だ。
-
-
ポタリ
ポタリの2
ポタリがロック・バンドとしてのかっこ良さを追求した2年ぶりのフル・アルバム。先行シングル「君とアワー」や「ナイショ ナイショ」に代表されるように、恋する女の子の心情をまっすぐに綴るキュートでポップな持ち味はそのままに、骨太でエッジの効いた「scratch」や「AGFG」といった楽曲にライヴ・バンドとして急成長中のバンドの今を刻む。メンバー全員が曲作りに参加して、4つの個性をマッシュアップするような制作方法でありながら、すべて"ポタリ"の歌として成立するのは、くっきりとメロディの輪郭を描く鈴木奈津美(Vo)のクリーンな歌の力が大きい。体当たりで未来へと向かうラスト・ソング「走る」のポジティヴなエネルギーは、まるでポタリそのものを表すようで清々しかった。
-
-
ポタリ
夏の言い訳
ここ1年は5ヶ月に1枚のハイペースでシングル・リリースを重ねている愛知・豊橋発の4人組ガールズ・バンド、ポタリ。前作シングルでは春らしさを全開にした『ハルノカゼ』で新たな季節の訪れを表現した彼女たちが、初めての夏ソングに挑戦した。表題曲の「夏の言い訳」は中西詠美(Gt)が奏でる伸びやかなギターから幕を開けると、そこに広がるのはセンチメンタルな夏の終わりの景色。蝉の声、溶けかけのアイス、鮮やかな花火......そんな賑やかな夏の思い出を辿りながら、その終わりに誰もが感じる寂しさが丁寧に綴られている。一方、カップリングの「Summer Magic」は夏真っ盛りの"浮かれた恋心"を弾けるようなポップ・サウンドに乗せたハイテンションな1曲。夏の両極を描いた1枚にふたつのポタリが詰まっている。
-
-
ポタリ
ハルノカゼ
前作『ナイショ ナイショ』から5ヶ月ぶりにリリースされるポタリのニュー・シングルは、誰もが新たなことにトライしたくなる始まりの季節=春にぴったりの爽快なロック・ナンバー。疾走感溢れる8ビートに乗るリード曲は、少しずつ膨らんでゆく桜の蕾と重ね合わせるように大切に愛を育んでいくラヴ・ソング。だが最後に"花は咲く"という結末を描き切らないところにポタリらしい余白がある。カップリングには、軽快なポップ・ロックに乗せて"今 明日へ向かって飛んで行け!"というストレートなサビのフレーズが耳に飛び込んでくるエール・ソングを収録。2曲共にあえて奇をてらわないシンプルなアレンジに徹することで、鈴木奈津美(Vo)のピュアな歌声とメロディの良さが際立っている。
-
-
ポタリ
ナイショ ナイショ
一途でキュートな女の子の気持ちをポップでキャッチーな歌にする、愛知発の4人組ガールズ・バンド"ポタリ"が全曲一発録りで完成させたニュー・シングル『ナイショ ナイショ』。鈴木奈津美(Vo)が中心に手掛ける歌詞には、学生のころに誰もが体験したことのあるような"あるある"な恋愛シチュエーションが描かれていて、まるで女の子の心の声を聞いているような飾らない言葉遣いにも親近感が湧く。カップリングには、バンドにとっては久しぶりに恋愛をテーマにしたバラード曲「あいまい」のほか、オルタナティヴなバンド・アンサンブルを取り入れた「Escape」と「SOS」も収録。普段は表に出すことができない自分の弱い部分にもアプローチすることで、より人間味溢れる1枚に仕上がった。
-
-
ポタリ
君とアワー
"時計台の下はラッシュアワー"と、鈴木奈津美(Vo)が歌うフレーズを一度聴いたら耳から離れないポタリのニュー・シングル『君とアワー』。歌詞を書くときに思い描いたのは、地元・名古屋駅の時計台だったという。駅前の喧騒の中で離れ離れになった"君"に喩えて歌うのは、自分にとって大切なものを決して手離さないでというメッセージ。一見、ラヴ・ソングにもとれるが、そこには明確な意思が込められている。一方、Track.3「tell me」では、"好きなんだ 君のこと全部"と悶々としてみたり、Track.4「レディーGo!Go!」では"ドラマティックが欲しい!"と、ド直球に気持ちをぶつけたり、コロコロと表情を変える全4曲。ぜひ名古屋のおてんば娘たちに気持ちを惑わされてみてほしい。
-
-
ポップしなないで
DOKI
キャッチーなメロディと歌詞で聴き手の心を掴んで離さないポップしなないで。現行ポップスを高く再現したメジャー2ndフル・アルバム『DOKI』もまた中毒性が全開だ。疾走するリード曲「魔王様」の冒頭から一気に別世界へと惹き込まれ、TVアニメ"ニンジャラ"タイアップ曲「白昼きみとドロン」ではメロディの変化が放つ多彩な色合いに心躍らされる。言葉遊びが光る「Virtual Daydreamer」やダンサブルで癖になる「春よ続け」、物語の終盤を迎えるバラード「落chill」など自由自在に姿を変えるポップスが詰め込まれた本作。鬱屈する社会、退屈な現実世界から軽やかに逃避する11曲は、ピアノの繊細且つ大胆な旋律に乗って、今日を必死に生きる現代人との架け橋を結ぶ。ドキドキの止まらない、まるで白昼夢を見ているかのような40分間だ。
-
-
ポルカドットスティングレイ
一大事
ポルカドットスティングレイの新作はその名のとおりの"一大事"な作品となった。少女の切なげな気持ちを雫(Vo/Gt)の感性で捉えて形作った「少女のつづき」で感傷的な情景を描いたかと思えば、「パンドラボックス」では殴り掛かるようなギター・リフと叩きつけるようなドラム・プレイをガツンとぶつけてくる。アグレッシヴなイントロに雫の歌声が入ることでポルカの音に昇華していく様にも驚嘆。一方では表題曲「ICHIDAIJI」のように、独特且つキャッチーなメロディで、これぞポルカという代名詞的な曲も収録されている。ゲーム・クリエイターとしても活躍していた雫の遊び心たっぷりな曲展開はサプライズ感満載だ。聴いたあとに"なんたる一大事!"と思わずにはいられない1枚。
-
-
ポルカドットスティングレイ
全知全能
ポルカドットスティングレイのメジャー・デビュー・アルバムのタイトルは大胆不敵にも"全知全能"ときた。この振り切れ具合、内容に自信がなかったら絶対できないはず。今作は「テレキャスター・ストライプ」、「エレクトリック・パブリック」を始め、これまでMVが制作されてきた曲の再録とライヴで披露されている曲、書き下ろし新曲の全14曲が収録されており、いずれもが耳に残るキャッチーなものに。これまでの曲にあったヴォーカルやギターの引っ掛かりを抑えた爽やかなポップス「ショートショート」を含め、コラボ曲が4曲もある独占市場的な1枚だ。"全知全能"とはアートワーク、MVのシナリオ、ライヴの演出など、異様なほどの創作意欲ですべてを司る雫(Vo/Gt)自身を指しているのかも。
-
-
ポルカドットスティングレイ
大正義
昨年来、メディアを賑わしている話題のバンドが前作『骨抜きE.P.』に続いてリリースする1stミニ・アルバム。各プレイヤーの演奏力も高く、2015年に活動を開始したとは思えない絶妙なアンサンブルと瑞々しいビートによるキャッチーな楽曲が詰まっている。特にギターのエジマハルシは昨今の若手ギタリストには珍しく自己主張の強い弾きまくり方でじつに爽快。しかしなんといってもヴォーカル・ギター 雫の作る楽曲、声が彼らの魅力を決定づけている。すでに150万回以上再生されているリード・トラック「エレクトリック・パブリック」のMVを見てもわかるように、自らを確信的にバンドのアイコンとするプロデュース力には脱帽するしかない。ゲスト・ベーシストとして、ヒロミ・ヒロヒロ(tricot)、イガラシ(ヒトリエ)が参加しているのも聴きどころ。
LIVE INFO
- 2025.04.12
- 2025.04.13
- 2025.04.14
- 2025.04.15
- 2025.04.16
- 2025.04.17
- 2025.04.18
- 2025.04.19
- 2025.04.20
RELEASE INFO
- 2025.04.15
- 2025.04.16
- 2025.04.23
- 2025.04.25
- 2025.04.26
- 2025.05.14
- 2025.05.16
- 2025.06.18
- 2025.06.25
- 2025.07.08
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
ASP
Skream! 2024年09月号