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DISC REVIEW

勝手

ビレッジマンズストア

勝手

"名古屋が生んだ暴れ馬"ことビレッジマンズストアが、約3年ぶりとなる流通CDをリリースする。新体制で制作された新曲3曲に、「みちづれ」や「1P」、「ボーイズハッピーエンド」、「TV MUSIC SHOW」といったライヴでも定番となっている4曲を加えた全7曲を収録。情熱的でまっすぐな歌声と孤独にそっと寄り添う歌詞、激しさと華やかさが共存し、キラキラと突き刺すようなギター、毒々しく変態的なベースライン、タイト且つパワフルなドラムと、各メンバーの魅力を存分に感じられる1枚となっている。"村立"20周年を迎え、11月17日にはZepp Shinjuku (TOKYO)でのワンマンを控える彼等。歩みを止めることなく音を鳴らし続け、照らし出す未来にも要注目だ。

愛とヘイト

ビレッジマンズストア

愛とヘイト

ビレッジマンズストアにとって2枚目のフル・アルバムとなる『愛とヘイト』。今作は、歪んだギターと水野ギイの歌声に哀愁を感じる「ラブソングだった」というバラードで始まる。これまで発表してきたミニ・アルバムやフル・アルバムでは、作品を幕開ける曲というとアッパーなぶち上げナンバーが置かれていた印象があったため驚いたが、全12曲を通して聴くと、彼らがこの激動の時代でどういうことを考えていたのか、感じとることができる気がする。続く「猫騙し人攫い」からは、ビレッジマンズストア節とも言える多彩なロックンロールが並び、最後は「LOVE SONGS」に辿りつく。「ラブソングだった」にも出てくる言葉が「LOVE SONGS」では明るく聴こえるというところにも、注目して聴いてみてほしい。

アダルト/People Get Lady

ビレッジマンズストア

アダルト/People Get Lady

昨年"村立"15周年を迎えたビレッジマンズストアの2020年初リリースは、バンドが持つ好対照な表情を、リスナーにこれでもかと叩きつける両A面シングル。水野ギイのヴォーカルとシンプルなギター・サウンドから始まる「アダルト」は、素朴な質感の歌謡的な歌メロが印象的だが、別れの気配を纏った女性の心情を描いた歌詞を水野の剛強な歌声が彩ることによって、醸し出される独特の色気と包容力が切なく胸に迫る。一方、"ビレッジマンズストア節"とでも言うべきロックンロール・サウンドが鼓膜をつんざく「People Get Lady」の、言葉遊び的な歌詞には、どこまでも"音を楽しむ"バンドのスタンスが表れているようだ。止まるところを知らない"名古屋の暴れ馬"の今が惜しみなく爆発した濃厚な1枚。

YOURS

ビレッジマンズストア

YOURS

2012年に全国デビューし、様々な逆境と立ち向かいながらも活動を続けてきた"名古屋が生んだ暴れ馬"が、とうとう名刺代わりの1stフル・アルバムを完成させた。昨年10月からサポート・ギターを務めていた荒金祐太朗(Droog)が正式メンバーとして加入して初作品ということも影響してか、過去最高にフレッシュ且つエネルギッシュで爆発力があり、隅から隅まで気合が漲った音像を体感できる。昨年12月にリリースされた1stシングルから2曲、2ndミニ・アルバムに収録されているライヴ定番曲の再録、2017年1月に開催された名古屋DIAMOND HALLワンマンの来場者特典として配布された楽曲の再録など全10曲を収録。中でもラストを飾る「正しい夜明け」のドラマチックに展開するサウンドメイクはお見事だ。

TRAP

ビレッジマンズストア

TRAP

バンド初の全国流通シングルは、ギタリスト 加納靖識の脱退後、4人での再出発となる作品。そのタイトル曲「トラップ」は、歌い出した瞬間思わず英詞と聞き違えてしまったほどの巧みな言葉の乗せ方と水野ギイ(Vo)のテンションの高い歌唱に圧倒される。途中のテンポ・チェンジやサビに登場する"Mr.Lawrence"(映画"戦場のメリークリスマス")など、映画的なストーリーを連想させる展開が面白い。「最後の住人」は疾走感があるものの、必要以上に音を詰め込まずストレートで開放的な空気感の曲。効果的なコーラスがメロディのキャッチーさを一層際立たせており、正直こちらの方がリード向きでは? という気もする。「ザ・ワールド・イズ・マイン」は廃盤となった幻のデモ音源収録楽曲の再録。

正しい夜明け

ビレッジマンズストア

正しい夜明け

名古屋を拠点に活動する5人組バンドの3rdミニ・アルバム。数々のフェスやサーキット・イベントに出演して着実に全国区へと知名度を広げている印象があるだけに意外だが、2年半ぶりのリリースとなる。James Brownばりの声色でのシャウトから始まる1曲目「ビレッジマンズ」から全力疾走なロックンロールが続き、「スパナ」のドラマチックな旋律で前半のピークを迎えてからブルージーなギターのイントロで始まるミディアム・テンポの「盗人」へと進むあたりは、スタジオ・アルバムでありながら彼らの熱狂的なライヴを体験しているかのよう。その楽曲たちには瞬間瞬間を燃やし尽くすような切なさを感じさせる。

刃の上を君と行く

ビレッジマンズストア

刃の上を君と行く

2003年に結成された"名古屋の暴れ馬"こと5人組バンド、ビレッジマンズストアの2ndミニ・アルバム。いきなりビビらせて耳を傾けさせる冒頭の「最高の音出し」はズルい!スピーカーを突き破って出てきそうなヴォーカルとサウンドを一聴すると"一筆書き"的な直情型バンドに思いがちだが、曲名とは裏腹に甘いハミングが古い洋楽ポップスを思わせる「地獄のメロディ」、センチメンタルなロック・バラード風「ミラーボール」で聴かせる激しくも抒情的な歌と演奏はなかなかの芸達者ぶり。曲順そのままにステージに持ってこれそうなライヴ感で統一されているが、短めの曲で締めくくるラストはグズっていた子供が突然泣き止んで眠りだしたようで微笑ましい。激しさ故の可愛さすら感じさせる1枚。

3

ザ・ビートモーターズ

3

2009年4月にデビューして以来、60~70年代の洋楽ロックの影響を受けた日本語のロックという日本のロックにおける1つの伝統を受け継ぎながら、その馬鹿力的な表現によって、個性を際立たせてきた4人組、ザ・ビートモーターズ。彼らが2年ぶりに完成させた3作目のアルバムはオープニングを飾る「マリー」の2ビートの疾走感が新境地を思わせるものの、フォーキーな味わいをアピールしつつ、内なるデーモンを憐れむねちっこいブルース・ロックのTrack.5「サギ師」他、破壊力抜群のロック・ナンバーの数々を交えながら、これでもかとバンドの実力を見せつける。極めてシンプルなアルバム・タイトルは自信の表れ。ソウルフルなバラードのTrack.7「BIG HEADのBOYとACTIONするGIRL」が器の大きさを印象づける。

Gris Gris

ザ・ビートモーターズ

Gris Gris

実力派4ピース・ロック・バンド、ザ・ビートモーターズが待望の2ndフル・アルバム『Gris Gris』(グリグリ)を完成させた。今作は秋葉正志(Vo & Gt)の優しい歌声が響く幻想的な雰囲気から激しいバンド・サウンドへ急展開する「星に願いを」で痛快に幕を開け、その勢いのままロック好きのハートを一気に鷲掴みにするであろうリード曲「時代」へと繋げる。そして弾き語りスタイルで収録された「テルミーティーチャーブルース」では、彼らの真骨頂であるシンプルかつ骨太なロックンロールの魅力を存分に味わうことができるだろう。誰もが経験する日常生活のなかに溢れた些細な感情と懐かしい風景。その一つ一つを極上のメロディで綴った等身大のロック・アルバムだ。

The First Cut is The Sweetest

ザ・ビートモーターズ

The First Cut is The Sweetest

ザ・ビートモーターズ初となるフル・アルバムがリリース。"アイゴン"こと會田茂一プロデュースの「ちくちくちく」はギターがうねりをあげる攻めの曲ながらも、甘酸っぱい想いを含んだ歌詞にほっこり。Track.4「あのこにキッス」なんて、トリップしそうなサイケな雰囲気を醸し出している。骨太のロックを聴かせてくれたり、甘いメロディもあったり、バラエティ豊かな1枚。でも一貫しているのは、硬派な男たちがふと見せる切ない想いだったりを歌詞にのせ、ソウルフルな秋葉(Vo&Gt)の歌声が大爆発していること。収録曲は全13曲だけれど、14曲目からはライヴハウスにあるような、このままライヴに繋がっていくみたいな感覚に陥る、そんなアルバムだ。

素晴らしいね

ザ・ビートモーターズ

素晴らしいね

初めて聴いた時は、正直またかと思った。2回目には、何か引っかかった。3回目には、胸がざわついた。まんまと思うツボである。ザ・ビートモーターズという本気か冗談か分からない名前のこのバンド、音楽性としては、まさに王道と言えるロックンロールの系譜の上にいる。とても明快な音楽性なのだが、二人の物語のようで、自分のことしか歌っていないラヴ・ソングや、優しさの欠片もないのに優しい歌ばかりが並ぶこのアルバムを聴いていると、得体の知れないざわめきが湧き上がってくる。明確な疎外感と呆気に取られるほどの開き直りをこれでもかと言わんばかりの直球で投げつけてくるが、どういうわけか“これがロックンロールだ!”みたいな常套句だけで済ますこともできない。不思議な存在感を持ったバンドの登場だ。

軍団

ピアノガール

軍団

ピアノガールの音楽には、その名前からは想像できないほどのエネルギーとエモーションがぶっとく流れている。そしてその虚無感、鬱屈や焦燥、そして愛と憎しみを取り込んだあまりに人間らしい姿が投影された音像に胸を打たれる。eastern youthやbloodthirsty butchersを思わせるエモーショナルで凛としたTrack.2「砲台跡浜」、現在の音楽シーンに正面切って中指を立てるTrack.6「Nevermind」、"生きる"ということにひたすら向き合った末に歌われるTrack.7「Candy apple red sacrifice」など、ピアノガールの異質さを理解するには十分すぎる全13曲を収録。彼らの音楽には偽りや虚飾が一切ない。それゆえに気高く美しいのだ。

ホワイトクラブ

ピアノゾンビ

ホワイトクラブ

大王ホネヌキマン率いるピアノゾンビの新作『ホワイトクラブ』が届いた。見た目や名前からかなり遊んでいるバンドに見えがちだが、至極真っ当なロック・バンドなのである。そんな彼らの今作は、多様なジャンルを取り入れたやりたい放題、且つ、エンターテイメントな1枚。いきなり戦隊モノのアレを彷彿とさせる楽曲でスタートという、始めから羽目を外したジャブを打ってくる彼らのセンスに脱帽。Track.4「心臓の歌」では、一転して"世界平和ってナニ?""アベコベ/にされた価値を/心臓を金で買い戻せ"などと、現代社会を風刺したような楽曲。彼らの武器でもある言いたいことを他の言葉で隠すという歌詞遊びは秀逸だ。また、Track.7「せっせっせ」でも"世界平和"の言葉を叫んでいることからわかるように、今作はただひたすらに世界平和を願っている1枚に仕上がっている。

Chaotic Vibes Orchestra

ピエール中野

Chaotic Vibes Orchestra

凛として時雨のドラマー、ピエール中野のぶっ飛んだソロ・プロジェクトをまとめたミニ・アルバム。DJしながら曲に合わせてドラムを叩くという大技でフェスやイベントを賑わせてきたが、今作は20人のドラマーにシンガー、ORIGAによる壮大な曲から、インプロ・ユニット、カオティック・スピードキングの「SORA」(ゲストVo.KYONO)の初音源化、Perfumeの「チョコレイト・ディスコ」を大森靖子、ミト(クラムボン)、滝善充(9mm Parabellum Bullet)と人力カヴァー、音楽クリエイター牛尾憲輔(agraph)とのタッグによるエクスペリメンタルな曲に、下世話ネタ全開のDJユニット玉筋クールJ太郎という剛柔(?)取り揃った内容。自由だなこの人はと、関心したり嘆息したり、ピエール中野という人のカオスの一端を覗く感覚。

その幕が上がる時

ピロカルピン

その幕が上がる時

メジャーでの経験や自主レーベルの立ち上げなど、スキルをアップデートしたうえでのセルフ・プロデュース作品となった9thアルバム。スケール感のあるタイトル・チューン「その幕が上がる時」で聴けるまっすぐ遠くへ放たれる松木智恵子(Vo/Gt)の歌の強さ、透明且つ重みのあるイントロから90年代UKや広汎なギター・ロックの旨味が詰まった「雨の日の衝動」、一転してポップなイメージの「キューピッド」、マンチェスター/レイヴを想起させる16ビートが新鮮なラストの「夢十夜」など、多彩な楽曲が収録されている。また、ドラマ"偽装不倫"の原作者でもある漫画家 東村アキコらのポッドキャストのために書き下ろした先行シングル「人生計画」も、アルバムの中でいいフックになっている印象だ。

ノームの世界

ピロカルピン

ノームの世界

音楽専門クラウドファンディング・サイト"muevo"にて目標150万円に対して176パーセントという高い達成率でファンディングを成功させて制作された8枚目のアルバムは、その期待に応えて見事な作品となった。冒頭を飾る「精霊の宴」から「朝」のイントロへと続くあたり、シンバルの音ひとつの響きからそのクオリティの高さを如実に感じることができるが、もちろん単に"音が良い"というだけではなく、くっきりとした輪郭を持ったひとつひとつの楽曲のメロディと空気感を活かした楽器の絶妙なアレンジ、アルバム・トータルの世界観が楽しめる。マイナーでドラマチックな曲が多く、どちらかといえば暗めの音像の中で異色にも聴こえる王道ポップ・ソング「グローイングローイン」のキャッチーさは一度聴いたら耳から離れない。

a new philosophy

ピロカルピン

a new philosophy

自主レーベル"miracle oasis music"を立ち上げたピロカルピンの、約2年ぶりのリリースとなる2ndフル・アルバム。前作に続き熟練のエンジニアたちと手を組み、妥協のない音作りを実現させた作品になった。オルタナやシューゲイザー的なサウンド・メイクと松木 千恵子の透明感のある歌声による幻想的なピロカルピンの普遍性はそのままに、これまで自ら作っていた様々な細やかな制約を解いたことで、表現すべてにおいて以前より広がりを見せている。アルバム・タイトルの"経験によって得られた人生哲学"という意味が持つように、それがあったうえでの心機一転感がとてもフレッシュだ。初回生産分にはハイレゾ音源のDLカードを封入。ピロカルピンの確固たるポリシーが隅々にまで通った意欲作である。

太陽と月のオアシス

ピロカルピン

太陽と月のオアシス

2012年5月にメジャー・デビューをし、精力的なリリースとライヴ活動を行っていたピロカルピン。バンドも今年結成10周年を迎える彼女たちが、キャリア史上初のフル・アルバムを完成させた。"明暗"をテーマに制作された同アルバムは、長編小説のようなボリュームだ。それは今までピロカルピンが積み上げてきたものの結晶体でもあるし、メジャー・デビュー以降の環境の変化が導き出した成長でもある。より結束が強まったバンドのアンサンブルは明瞭に響き、松木智恵子の透明感のある歌声がひとつひとつ刻む言葉は、零れ落ちるたびに新しい世界が生み出されるよう。最初から最後まで聴いた後に、なんだか心が軽くなり、新しい未来に向けて踏み出せる――そんな清々しさとエネルギーが溢る作品だ。

ロックスターと魔法のランプ

ピロカルピン

ロックスターと魔法のランプ

昨年メジャー・デビューを果たし、2枚のフル・アルバムをリリースと精力的に活動するバンド、ピロカルピンが1stシングルをリリース。タイトル・チューンの「ロックスターと魔法のランプ」をはじめ、収録された3曲はキャッチーかつノスタルジックに磨きがかかり、耽美的かつ幻想的なサウンドスケープを描いて唯一無二の音の世界へ誘ってくれる。イノセントなムードたっぷりのバラード「モノクロ」、ロマンチックなポップ・チューン「シャルル・ゴッホの星降る夜」、3曲で1作なのだと感じられるピロカルピンの魅力が封じ込められた愛すべき1枚だ。作品とリンクする可愛らしいジャケットにも注目いただきたい。

ROMANCE

ファジーロジック

ROMANCE

2007年の結成以来、神戸を拠点にライヴハウス・シーンで活動し続け、その人気を全国に広めつつある4人組ロック・バンド、ファジーロジック。彼らがポップをテーマに作り上げた4作目のミニ・アルバム。ポップなアプローチはニュー・ウェイヴ風味のパワー・ポップのTrack.2「夜を超えるミリオンスター」、彼ら流のディスコ・ナンバーと言えるTrack.3「サリー」、バラードのTrack.6「8月を指折り数える君と町で出逢える確率について」など、随所に表れているが、そのアプローチは同時にひとクセもふたクセもあるバンド・サウンドも際立たせている。今っぽさと懐かしさ、爽やかさと切なさといった相反する魅力が絶妙に溶け合う歌の裏で鳴っているトリッキーなサウンドにも耳を傾けるとより楽しめる。

Exhibition

フィッシュライフ

Exhibition

数々のバンドを輩出した10代限定の夏フェス"閃光ライオット"で2013年にグランプリを獲得以降、若くして"自分たちらしさとは?"という問いと向き合い続けてきたが、ついにひとつの答えを見つけたようだ。多彩且つストレートなサウンドをもたらしたのは、高野勲によるサウンド・プロデュースの力だけではない。むしろ"自分たちができること"ではなく"自分たちがやりたいこと"を軸に音を鳴らすようになったメンバー自身の変化によるところが大きいのだ。プリミティヴな欲求を実現するために3人こぞって新たな引き出しを引っ張り出しているから、"原点にして新機軸"という温度感が実現したのだろう。だからこそここが本当のスタートラインだ。このまま突き進んでくれ。

STORY STORE

フィルフリーク

STORY STORE

ピアノとヴォーカルで始まり、すぐさま躍動感溢れるバンド・サウンドへとなだれ込む「ロクドロクブ」。この曲ができあがった瞬間このミニ・アルバムは産声を上げた。"4つの恋のはなし。"から始まったフィルフリークの8つの話は、どれもリアルで、凄まじい生命力を持っている。バンドの存在を確立させたという「スレチガイ」では、広瀬とうきとゆっこの交差する歌声が不安定な景色を見事に表し、胸を締めつける。「KOIがハジマル」ではポップに恋のドキドキを描き、最後は「NAMI」。ここに描かれるのは広瀬自身の話であり、そしてそれはバンドの話へと繋がっていく。ドラマチックで人間臭くて、不器用だけど何かをずっと信じていて、そんな正直すぎる彼らの8つのストーリーは、今現在の彼らのようにどれもが力強く輝いている。

Humanning

フィルフリーク

Humanning

"二面性"がテーマの2ndミニ・アルバム。二声の甘酸っぱさが際立つ「真夜中の交差点」、ポップで爽快な「Be Kind」と頭2曲はこのバンドらしさ全開だ。一方、広瀬とうき(Vo/Gt)が憧れの人に宛てた「1970」の生々しい筆致、オルタナ色の強い「道端日和」で"裏"を見せつつ、広瀬とゆっこ(Vo/Pf)の共作曲「ワンルームヒストリー」、転調を盛り込んだ「キャンディー」と、新しい側面を印象づけることも忘れない。聴き進めるほど深層へ踏み入れるような感覚になる。人の心の混沌を認める7曲を締めくくるのは、"朝が来て/夜を待つ/また朝が来て/夜を待つ"(「朝日を待つ」)のフレーズ。"そういうもんだから大丈夫"と言ってくれる優しさに心が軽くなる。

Reverse Youth

フィルフリーク

Reverse Youth

ショート・チューン「強くなれる」から、シンガロングが目に浮かぶ「サイドストーリー」、広瀬とうきとゆっこのハーモニーが絶妙な「ホワイトストロベリー」と、序盤から聴きごたえたっぷり。そして、沸点が訪れるのが「eisei」。ドラマチックな展開とエモーショナルな歌声、宇宙まで発想を飛ばすロマンチックな感性と"あなたが今泣いていても/青い空は綺麗だ/だから夢を魅るんだ"という絶対的な励ましにいざなう歌詞。すべてが一体となって、フィルフリークの魅力を伝える。さらに、題材の妙が光る「ラッキーカラー」、シンプルな「青い風船」から、ゆっこの歌が堪能できる「マジシャン」という後半の流れも心地いい。完成度の高いポップスに人間臭さを内包した、多くの人にとって必要なバンドになることを予感させる1枚だ。

ダブル・スタンダード

フィロソフィーのダンス

ダブル・スタンダード

表題曲はTVアニメ"魔法科高校の優等生"エンディング・テーマに起用。ストリングスを効かせた、都会的な情景が浮かぶ疾走感のあるダンス・サウンドに乗せて、恋愛の中で生まれる矛盾した感情を歌い上げる。カップリングには、管楽器がゴージャスに彩る情熱的な1曲「ウェイク・アップ・ダンス」、古き良き80sシティ・ポップが香る「サマー・イズ・オーバー」、さらに、韓国のプロデューサー/DJのNight Tempoが2ndシングル『カップラーメン・プログラム』収録曲のリミックスを手掛けた「テレフォニズム (Night Tempo Melting Groove Mix)」も収められた。本作でメジャー3枚目のシングルだが、相変わらず隙がない作品を生み出し続ける"フィロのス"には舌を巻く。

ドント・ストップ・ザ・ダンス

フィロソフィーのダンス

ドント・ストップ・ザ・ダンス

業界内外の音楽通をうならせてきたフィロソフィーのダンスが、ニュー・シングル『ドント・ストップ・ザ・ダンス』でいよいよメジャー・デビューを果たした。表題曲には、テレビ番組で彼女たちを評価する発言をしていたヒャダインが作詞で参加。メジャー・デビューという一大転機においてもまったく軸がぶれずに、彼女たちらしいアシッド・ジャズを鳴らしているあたりは、これまでやってきた音楽への確固たる自信の表れだろう。カップリングには、クール且つ大人な表情で魅せる「なんで?」と、明るく開けたサウンドのパーティー・チューン「オプティミスティック・ラブ」を収録。徹頭徹尾、とにかく隙のないシングルに仕上がった印象だ。新たなステージへと歩みだした彼女たちがお茶の間を踊らせる日も近い。

エクセルシオール

フィロソフィーのダンス

エクセルシオール

ファンク、R&Bといったブラック・ミュージックを取り入れたハイクオリティな曲と、アイドルらしからぬ衣装やメンバーの個性豊かな歌声が、シーンで異彩を放ち続けているフィロソフィーのダンスの3rdアルバム。本作は「イッツ・マイ・ターン」、「ライブ・ライフ」といったライヴのド定番曲が収録された入門編にピッタリな作品だが、シティ・ポップ感もある「スーパーヴィーニエンス」、ゴージャスな質感の「フリー・ユア・フェスタ」の初音源化、そして配信楽曲のフィジカル化と、ファンにとっても垂涎の1枚と言えるだろう。タイトルの"エクセルシオール"は、"常に向上し、前進し続け、さらなる高みを目指す"という意味だという。本作を世に送り出した彼女たちがどこまで登っていくのか、期待せずにはいられない。

ラブ・バリエーション with SCOOBIE DO/ヒューリスティック・シティ

フィロソフィーのダンス

ラブ・バリエーション with SCOOBIE DO/ヒューリスティック・シティ

哲学的な歌詞をブラック・ミュージックに乗せて歌う"フィロのス"ことフィロソフィーのダンスの両A面シングル。ライヴの定番曲「ラブ・バリエーション」をSCOOBIE DOとコラボしリアレンジした「ラブ・バリエーション with SCOOBIE DO」は、スクービーの演奏やコーラスによって、よりファンキーで熱量を増した曲に仕上がっており、スタイリッシュなオリジナル版と聴き比べても楽しい1曲だ。一方「ヒューリスティック・シティ」は、一聴すると男女の別れの歌のように聴こえるが、本人たちいわく平成の終わりを歌う曲だという。視点を変えて聴くとまったく違った曲に聴こえるというのが面白いし、彼女たちには珍しくサビでユニゾンが入るので、フィロのスの新しい一面も感じてほしい。

PS2015

ふぇのたす

PS2015

ファッションやアート界からも注目を集める3人組、ふぇのたすのメジャー・デビュー作。80'sのニュー・ウェーヴやテクノ・ポップ的サウンドに、紅一点みこのヴォーカルと日本語詞の織りなすキュートさを作るのは、ロックをバックグラウンドに持つ人間たちの鋭さと知性だ。野菜とサラダの違いを歌った楽曲や、ふぇのたすの頭文字の"ふ"をテーマにした楽曲など、一聴では軽く肩透かしを食らうようなものも含め、彼らの曲はすべていろんな深読みができる。それ故その渦にはまってしまうと抜け出せなくなるし、聴くたびに感じ方が変わってくる。とはいえあくまで表は全年齢対象のトップ・オブ・キャッチー&ユーモラス。恐ろしい中毒性。まだまだ隠し玉を持っていることをそこはかとなく匂わせるところもニクい。

Convenanza

Andrew Weatherall

Convenanza

アンダーグラウンド界の永遠のルーディーとか、UKテクノの不良番長とか、Andrew Weatherallを語るときに使われるキャッチフレーズは物騒なものが多いから、思わず身構えてしまう人もいるかもしれない。しかし、ソロ名義としては7年ぶりとなるこの新作に限って言えば、そんな評判は忘れて、彼の歌心にじっくりと聴き入ってみたらいいと思う。30年にもおよぶキャリアを持つイギリスのプロデューサー/DJ。ロック・ファンにはHAPPY MONDAYS、PRIMAL SCREAMのリミキサーとしても知られている。聴き方によっては懐かしいとも言えるポスト・パンク調のファンク/ディスコ・サウンドは、不穏に鳴るトランペットがジャジーなムードも演出。序盤の緊張感は曲が進むにつれ、ビタースウィートな味わいに変わる。

マジックモーメント

ふくろうず

マジックモーメント

ミニ・アルバム『テレフォン No.1』以来約1年ぶり、フル・アルバムとしてはメジャー・デビュー・アルバム『砂漠の流刑地』以来3年ぶりとなる新作。全編打ち込みでドラムを入れ、シンセ・ベースや効果音を入れるなど、これまでにないサウンド・メイクを試みた彼女たち。それゆえに無機質さとバンド感が同居した不思議なバランスが特徴的だ。これまで以上にすっきりとした音像に、ほんのりとひねくれた要素を匂わせる......という、ふくろうずが持つインテリジェンスな音楽的センスの高さが如実に表れる。明るさを前面に出した曲や、『砂漠の流刑地』以前に多く見られた心の内側に入り込む楽曲、ハイ・テンポからミディアム・バラードまで、より洗練された表情豊かなポップ・ソングたちが完成した。

FAB FIVE

フジファブリック

FAB FIVE

メジャー・デビュー15周年を前にハナレグミとのバンド"ハナレフジ"の活動や、大阪城ホールでのワンマンを控えたフジファブリック。今作は、山田孝之がヴォーカル参加したことでも話題になった「カンヌの休日 feat. 山田孝之」など、いずれもタイアップありきの楽曲のコンパイル集。だが、この約1年8ヶ月の間に彼らが新たにアプローチした音楽性を一望するにはマストなパッケージ。特に映画"ここは退屈迎えに来て"の主題歌「Water Lily Flower」で、山内総一郎(Vo/Gt)のアルペジオが作るドリーミーでフォギーなイメージと、生音のバンド・サウンドが醸すフォークロアな力強さが融合した音像は新鮮。加藤慎一(Ba)作の「1/365」のELVIS COSTELLO & THE ATTRACTIONS風の粋なR&Rなど深くて新しい"FAB"な5曲。

ポラリス

フジファブリック

ポラリス

2014年のメジャー・デビュー10周年、そして恋愛をテーマにしたコンセプト・ミニ・アルバム『BOYS』、『GIRLS』というひとつの区切りのあとにリリースされる今作。くるりやクラムボンらが独自に日本のポップ・ミュージックのクオリティを拡張してきたこととリンクするような、普遍性と先進性を感じる"大きな曲"が収録されている印象だ。金澤ダイスケが作詞作曲を手掛けた表題の「ポラリス」は、キーボードやストリングスなどが、疾走と共に揚力となってリスナーの気持ちを羽ばたかせる。アレンジによってここまで体感できるサウンドを実現したことが素晴らしい。カップリングの「PRAYER」は対照的にウォームなサウンドで、山内総一郎が腕を上げたペダル・スチールでまさに"祈り"を表現。バンドの幹の太さを感じる。

LIFE

フジファブリック

LIFE

メジャー・デビュー10周年を迎えたフジファブリック1年半ぶり、8枚目となるニュー・アルバム。先行シングル『LIFE』をアルバム・タイトルに冠している。10周年であり、志村正彦が急逝してから5年となる今年はメンバーはもちろん、ファンにとってもさまざまな想いが去来する年だろう。そんな想いが込められたのか、過去への記憶を辿るような静かなインスト曲「リバース」から始まるアルバムは、実直な言葉に満ちた記念碑的な作品。正直、バンドの中心人物を失っていながらここまで見事に"新生"することができているバンドをほかに知らないし、その音楽へ向かう揺るぎないパッションとメンバー間の強い結びつきには感動を覚える。

LIFE

フジファブリック

LIFE

デビュー10周年を迎える今年の記念すべき初シングルは、TVアニメ"銀の匙 Silver Spoon"のオープニング・テーマ。昨年のツアー"FAB STEP"ファイナル公演となったZepp Tokyoのライヴでアンコールとして既に披露されており、ファンにとっては待望のリリース。ギター・バンドのイメージが強いフジファブだが、イントロからBEN FOLDS FIVEの「Jackson Cannery」を連想させる軽快なピアノのリフがバンドを牽引し気分を盛り上げる。タイアップ用に書き下ろされた楽曲ということで、明るく瑞々しく躍動するサウンドが農業高校を舞台とした作品のイメージとリンクしているのはさすが。間奏で山内総一郎(Vo/Gt)が弾くカントリー調の速弾きフレーズ等、アンサンブルの妙で聴かせるバンドの魅力が凝縮されており、"グルーヴ"とはなんぞや?と教えてくれる1曲。

VOYAGER

フジファブリック

VOYAGER

『つり球』のオープニング・テーマ「徒然モノクローム」、『宇宙兄弟』のオープニング・テーマ「small Word」など、3人体制になって以降のシングル表題曲4曲全てが収録されたフジファブリックの7thアルバム。ポップなメロディ・ラインに力強いギター・サウンド。ライヴで聴いたら間違いなく一緒に歌いたくなる、まさにパワー・ポップど真ん中。更に、シンセサイザーの音を何重にも絡めながらもピアノ等のクラシックな音色も取り入れる複雑な音の構成は、長年ファンに愛された彼らの真骨頂だろう。前へ前へと突き進んでいくようなアップ・テンポでポジティヴな楽曲の数々。リスナーが息をつく間もない程ぎっちりと詰め込まれた今作は、3人体制になり、ひたすら前向きに突き進んできた彼らの姿をそのまま表している。

Keep On Music

二人目のジャイアン

Keep On Music

これは全世代がライヴで盛り上がれる音楽! と思ったらなんとすでに7枚目のアルバム。ホーンやパーカッションも擁する7人組の大所帯バンドの基調は、ファンク/ダンス・ミュージックだ。リード曲「Hello Hello Hello」でもその厚いアンサンブルを発揮しているが、肝は突き抜けるカラッとしたMasaのヴォーカルだろう。渋目のジャズ・ファンクやレア・グルーヴィなバラード、"肉フェス"出演の際に書き下ろした"お肉食べたい"と銘打たれたディスコ・チューンもあるし、盟友 FUNKISTとのラテン・テイストの「ヒットチャートを駆け上がれ」もある。日常的なMasaの歌詞も相まって、グルーヴに身を任せるだけで、普通の毎日をちょっと明るく痛快なものにしてくれる全9曲。

CLUTCH GIRL

浮遊スル猫

CLUTCH GIRL

"もっと女子に響く音楽を作りたい"という動機から生まれたこの3rdミニ・アルバムは、これまでの作品の中で最もポップ。それは各メンバーの個性を活かしたアプローチも影響しているからかもしれない。ロックに攻めた前作に比べると各楽器のフレーズがキャッチー且つシンプル。ギターの音色も以前よりパターンが増えており、より繊細な表現が生まれ、インパクトもあり効果的に響く。加えてサブ・ヴォーカルのやがわいちるがこれまでよりも多くメイン・パートを歌っており、さはらとやがわ、両極端の声質を持つ女子たちによるツイン・ヴォーカルが非常にカラフルだ。精力的なライヴ活動で培ってきた彼女たちのスキルがあって実現したサウンド・メイク。このバンドは作品を完成させるごとに着実に進歩している。

梦を解く

浮遊スル猫

梦を解く

前作『フカシンリョウイキ』から約1年4ヶ月。その間の充実と意識の変化を存分に感じさせる快作が完成した。ダークな匂いの中に漂うポップ感を、アグレッシヴかつエモーショナルに昇華するのが彼女たちのカラーのひとつだが、今回はその世界を大きくこじ開けている。3ピース・バンドとしての表現方法はもちろん、効果的にシンセやピアノ、弦楽が取り入れられたサウンドやアンサンブルなど、バリエーション豊かな楽曲群をものにするキャパシティの広さは、3人の高まる意識そのものと言っていい。各パートのフレーズも細部まで趣向が凝らされ、一音一音に気迫が漲る。情感豊かなさはらのヴォーカルとそれをバックアップするやがわいちるのあどけない歌声のハーモニーもグレード・アップ。今後のさらなる飛躍が期待される。

フカシンリョウイキ

浮遊スル猫

フカシンリョウイキ

さはら(Vo/Gt)、やがわいちる(Ba/Vo)、おみ(Dr)の女性3人によるバンド、浮遊スル猫。結成から2年、ライヴ中心に活動をしてきた3人が初のミニ・アルバムを完成させた。ソリッドな3ピース・サウンドにのるのは、エモーショナルなさはらのヴォーカルと、チャイルディッシュなやがわいちるのヴォーカルの不思議なハーモニー。跳ねるビートでグラマラスでエキゾチックな80'Sポップ風のダンサブル・サウンドを聴かせたかと思うと、気だるく鬱々とした感情を音にぶつけギター・サウンドをバーストさせ、叫びをあげる。名刺代わりということで、多面的なサウンドになっている。メロディ・ラインは正統派。でもそれに対してのコーラスや、バンド・アンサンブルは積極的に攻めている。どんどん面白くなっていきそうな予感がする。