DISC REVIEW
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安藤裕子
Kongtong Recordings
きっちりしたコード進行や構成の上にメロディが乗るというより、先にメロディや言葉がありコラージュ的に完成していくような自由度の高さ、曲ごとに人格が変わるほど多彩なヴォーカル表現に新鮮な驚きが。ユニークな聴感ながら、軽快なピアノ・ポップからミュージカル風に進行する「All the little things」、ドラマ"うきわ ―友達以上、不倫未満―"OP曲でダンサブルな「ReadyReady」、アーバン・ソウルな「UtU」、ホーン・アレンジがロマ音楽風な「Babyface」、ピアノ・リフが効果的で、ある男性の誠実さと弱さを映し出す、本作中では異色な「僕を打つ雨」など感情、感覚の多様さはまさに"混沌"。"進撃の巨人"にインスパイアされた「Goodbye Halo」と「衝撃」アルバム版の連なりは圧巻。
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Made in Me.
Re:Habilis
横浜/町田発のバンド Made in Me.。ソングライティングを手掛け、歌や強力なラップでも表現する彦、詩的な語りから静寂を鮮やかに打ち破って瞬間的に聴く者の心を奪う声を持ったゆかり、HyperVideo2名義でビートメイカーやアレンジも手掛けるじゅんちゃい(Gt/Cho)、デザインなどヴィジュアル面も担うU sucg :):(Ba/Cho)、バンドの屋台骨でありRECエンジニアとしても音世界を広げるDAIKI(Dr)という5人の個性は、その音の中で自由気ままに跳ね回っている。日常と非日常を行き来するようなサウンドは、奇想天外でいてキャッチーさも忘れない。音楽への衝動や楽しむ心を思い出す、そんなバンドのスピリットが真ん中にあるミクスチャー・ロックは、アンセミックに響き渡る。
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kiki vivi lily
Tasty
これまでの活動の成果を踏まえ、そんなにポップに盛りつけずに、素材の良さ(=楽曲そのものの魅力)や気を張らない自然体を見せたかったという2ndフル・アルバム。その結果、荒田 洸(WONK/Dr)とMELRAWをサウンド・プロデューサーに迎えながら、ソウル・ミュージックとヒップホップをバックボーンに曲を作る彼女は今回、スウィートでポップなだけにとどまらないクールな魅力を手に入れた。さらに持ち前の尖った感性もぐっと前に出てきた印象も。プロデューサー/ギタリストのShin Sakiuraと初顔合わせとなる「Yum Yum」にはラッパーのIttoが参加。その他にもレゲエの「You Were Mine」他、初挑戦と言える曲が多めに収録されているところに変化を恐れずに求める姿勢が窺える。
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鈴木みのり
サイハテ
TVアニメ"マクロスΔ"のフレイア・ヴィオン役で声優としての活動をスタートし、同作内ユニット"ワルキューレ"ではエース・ヴォーカルとして活躍中の声優/シンガー 鈴木みのりの5thシングル。TVアニメ"海賊王女"エンディング・テーマの表題曲「サイハテ」は、これまでポップスを中心的に歌ってきた彼女にとって新機軸となるシリアスなロック・ナンバーだ。原作の世界観にフィットした歌詞ながらも、実はアニメのために書き下ろした曲ではないというあたりに、何か運命的なものを感じさせる。カップリングは、鈴木みのりが初めて作曲にも携わった「リナリア」。明るく活発な彼女のイメージをいい意味で壊す切ない失恋ソングは、新たな女性ファンを獲得するきっかけになりそうな予感を抱かせる。
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Siip
Siip
固有の精神と肉体を持って生まれた人間が神の視座で表現物を作ることは無理だ。だがSiipには"どこの誰でもない生命体"になりきってでも発したい音と言葉があったのだろう。昨年のクリスマス・イヴに突如「Cuz I」を配信。この初アルバムでは人類創世を思わせるインストの最後に声の入った「saga」で幕を開け、地球に落ちてきた男のごとく、人間の感情の名前をアップデート、もしくはリセットしようとする。広義の意味ではポップ・ミュージックだが、ジャンルを限定されないために生音もエレクトロニクスも、ヴォーカルのミックスも歪な聴こえ方が意図されているようだ。偶像崇拝、悪しき父性、らしさの強要などが断罪されているが、一方で人間の美しさも諦めきれない。物事の見方が刷新される可能性を秘めた作品だ。
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KANA-BOON
Re:Pray
前作「HOPE」が暗闇に一筋の光を見いだしたばかりの第一声だとしたら、今回は"新たなる祈り"と題されているだけあり、一歩踏み出した決意表明だ。バンド・サウンドの生々しさで勝負しつつ、風を顔に受けて前進するような感覚をマンドリンの響きで繊細に表現してもいる新鮮味も。本当に曲に必要な音を選び抜いたサウンドスケープはまた始まるバンドの日々(3年ぶりのツアーも含め)への希望だ。カップリングにハード・エッジなサウンドと忌憚のないメッセージを込めた「右脳左脳」を収録する感じは、『シルエット』時の「ワカラズヤ」などを想起させるシングル定番スタイル。カラッとしたR&Rで"生きてたらいいことあるかも"と歌う「LIFE」も最強に泣けるし笑顔になれる。早くライヴで会いたい曲ばかりだ。
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cinema staff
海底より愛をこめて
ライヴを主軸に音楽活動という名の航海を続けてきた彼らは、突如猛威を振るった新型コロナウイルスにより、その船から大海へと投げ出された。そんな彼らが"海底"から放つ、暗闇の中に光を見いだす本アルバム。先の見えない深海でもがく1曲目「海底」から始まり、"想像力で地上へ"というテーマのもと愛という明かりを頼りに進んでいく。荒波のように激しく緊張感漂うナンバーから穏やかに広がる大海原のように雄大な曲まで、様々に表情を変え展開する挑戦的な楽曲群。そして夜明け前の丘の上で始まりを歌う「はじまりの場所」にたどり着く。コロナ禍をともに彷徨い苦しみながらも乗り越えてきたすべての人々を、素直な感情を吐露した歌詞と深みを増したサウンドで抱きしめる、愛に満ちた12曲。
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Base Ball Bear
DIARY KEY
結成20周年を迎えたBase Ball Bearの新作。この時代を深く見つめながら描かれた"人生讃歌集"だという今作だが、ここには小出祐介(Vo/Gt)の中にあるだろう様々な意図や想いを深読みせずにはいられない言葉たちが綴られている。また、近年突き詰めてきた3ピース・サウンドはさらに洗練されており、曲が複雑化したというよりは、ピュアな気持ちで生み出されたものがそのままソリッドに研ぎ澄まされて進化を遂げているような印象。長年のベボベファンは新しさと懐かしさを同時に感じる部分もあるのではないだろうか。作品をひもとく"鍵"となる1曲目の「DIARY KEY」、メンバー全員で作曲した「悪い夏」、valkneeとのコラボ曲など全11曲。一曲一曲を大切に聴きたいアルバムだ。
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GARNiDELiA
Duality Code
メンバーそれぞれのソロ活動を経て、待望の5thアルバムがついに完成。儚くてセンチメンタルなダンス・ナンバーから、ほっこりとするクリスマス・ソングまで、実に多彩な全12曲を収録。どれも聴き手の心に滑り込んでいく親しみやすさはありつつも、ハードで重厚感のあるサウンドと、再始動の幕開けに相応しい情熱迸る言葉を畳み掛ける「Live On!」や、"距離"から生まれた様々な想いを閉じ込めた「Uncertainty」など、ふたりの心境が色濃く表れた楽曲も。ユニットが掲げ続けているライヴ・タイトルを冠したtoku歌唱の「stellacage」、MARiAが自身の歌う理由を刻みつけた「Reason」と、自分たちの"場所"に関して歌った2曲で締めくくるのが、とにかくエモーショナルで熱い!
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Little Parade
藍染めの週末
元Aqua Timezのヴォーカル、太志が立ち上げたプロジェクト Little Parade。今年1月に発表した初のCD作品から約10ヶ月で早くも2ndミニ・アルバムが到着。楽器隊が放つグルーヴや、アコギの音を押し出したアンサンブル、そして太志が響かせる伸びやかなロング・トーンが瑞々しい景色を描いていく「風の斬り方」や、シリアスでありながらも美しさを伴った「置き去りの鉛筆」、ジャズ・テイストで渋みのある「501 with oneself」など、様々なサウンドを繰り広げているが、耳心地のいいメロディと、日常の些細な場面やモヤモヤを掬い取り、気づきや彩りを与えていく言葉たちが、彼の音楽の核にあることを改めて知る全6曲。初の自伝エッセイ"ほんとうのこと"も同封。
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オレンジスパイニクラブ
アンメジャラブル
オール新曲で挑むメジャー1stフル・アルバム『アンメジャラブル』。温かく素朴なサウンドの1曲目「ガマズミ」から、エッジの効いたUKロック調の2曲目「退屈かも知れない」と早速そのギャップに驚かされる。スズキユウスケ(Vo/Gt)、スズキナオト(Gt/Cho)兄弟が曲ごとに作詞作曲を担当し、アルバムを通しても12曲それぞれが異なる表情を見せているが、同時にどの曲もオレスパ色に染まっている。そこに一貫性を持たせているのは、日常を映す歌詞と哀愁漂うメロディ、そして曲全体を包み込む柔らかな歌声だろう。時折見せるパンク・ロックな一面もまた彼ららしい。まさに"計り知れない"(=アンメジャラブル)音楽性の幅広さを示すとともに、"オレスパらしさ"を確立させるアルバムとなった。
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Omoinotake
EVERBLUE
OmoinotakeがTVアニメ"ブルーピリオド"のOP曲「EVERBLUE」を表題に据えたEPでついにメジャー・デビュー。アニメの主人公による"好きなことをやるって いつでも楽しいって意味じゃないよ"という言葉に自身を重ねて書き上げた表題曲は、夢や自分と向き合い、葛藤しながらも前を見据える"青い願い"を持つすべての人の胸を打つ楽曲に仕上がった。アレンジ、プロデュースは蔦谷好位置が担当。ダンサブルで希望に満ちた、青春の匂いを纏う清涼感のあるサウンドであると同時に、9年間バンドを続けてきた彼らの熱い意志も刻まれているように感じる。またEPには銀杏BOYZ「漂流教室」のカバーも収録され、全4曲で十分に彼らの音楽センスの素晴らしさを堪能することができる1枚となっている。
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Kroi
nerd
今年全国デビューを果たして以降勢いを加速中のKroiによる新EP。フル作含め今年3枚目のフィジカルというスピードにも驚きだが、さらに望外なのはそのクオリティの高さだ。本作も先行曲「Juden」から飛びっきりファンキーに腰から躍らせる。ぶりっぶりの関 将典のベース含めソロ・パートも盛り込むソウルフルな同曲だが、内田怜央のヴォーカルは繊細というのもユニーク。一方、全体としてはこれまでよりファンク以外の要素が強まり、新たなミクスチャー感を堪能できるように。益田英知(Dr)が作詞に参加したハイビートでスタイリッシュなロック・チューン「Rafflesia」や、ムーディに振り切った「WATAGUMO」など、新たな武器も携え、洗練された印象を与える。彼らを追ううえで重要作となりそうな1枚。
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宮下 遊
降伏論
タイアップ作品との"ハマる"出会いによって、ミュージシャンの持ち味が最大限に発揮されることがある。人気アニメ"プラチナエンド"のエンディング・テーマとなった宮下 遊の最新曲「降伏論」はまさにそういう1曲だ。作詞はhotaru、作曲はTom-H@ck、アレンジはKanadeYUKが担当。神や悪魔が登場するアニメの世界観からインスパイアされたゴシックなサウンド・アプローチに乗せて、"降伏"から"幸福"に転じる心境を宮下 遊のハイトーン・ヴォーカルが力強く歌い上げる。カップリングには、真骨頂とも言えるダーク・ファンタジーのような音像に乗せて狂気的なヴォーカルが乱高下するオリジナル曲「bystander」を収録。命の意味、本当の自分、正義の価値。宮下 遊の鋭い言葉が胸を刺す。
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YONA YONA WEEKENDERS
YONA YONA WEEKENDERS
全曲の作詞作曲を手掛ける磯野くん(Vo/Gt)を中心にもともと、それぞれにパンク系のバンドをやっていた4人が集まり結成。ノーマークの新人から注目のニューカマーに成長したYONA YONA WEEKENDERSがメジャー・レーベルからリリースする1stフル・アルバム。磯野くんの声質を生かすためにシティ・ポップ・ブームに共鳴しながら、ソウル、ファンク、ゴスペルの影響を取り入れたポップ・ソングを作り始めたところ、磯野くんをはじめ、メンバーのセンスが開花! のびしろと同時にそんなことを裏づける全10曲。ディスコ・ナンバーからバラードまで、自ら"ツマミになるグッドミュージック"と掲げる通り、主張しすぎないバンド・サウンドがすこぶる心地いい。ここからの成長も楽しみだ。
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青虫
103号
楽器を持たないパンク・バンド BiSHのメンバー、そしてロック・バンド PEDROのフロントマンとしての顔を持つアユニ・Dが、また新たな表現の場に歩みだした。それがこの歌い手プロジェクト"青虫"だ。昨年末から名前を伏せて"歌ってみた"動画をアップしてきた彼女が、いよいよボカロP くじらのサウンド・プロデュースによるデビューEP『103号』をリリース。オープニングの「ケーキみたいだ」で、メロウなサウンドに寄り添ったアユニ・Dの新たな歌の表情を見せられて早速驚かされる。そのほか、落ち着きながらも自然と小さくリズムを刻んでしまうアーバンなナンバー「ゆぶね」など全4曲を収録。曲ごとに彼女の知られざる魅力を発見できる驚きと、全体的な聴感の心地よさがたまらない作品に仕上がった。
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BiS×ZOC
割礼GIRL/BEGGiNG
タワレコ渋谷店でダブル・ブッキングが発生し、急遽合同イベントを行ったBiSとZOCがスプリット・シングルをリリース。ZOCからは大森靖子がBiSへ、BiSサイドからはサウンド・プロデューサー 松隈ケンタとマネージャー 渡辺淳之介の黄金タッグがZOCへ楽曲を提供した。前者の「割礼GIRL」は、愛のあるディスを大森靖子節のメロディに乗せて歌い上げるBiSメンバーの歌唱が聴きどころ。後者の「BEGGiNG」は松隈ケンタらしいエモーショナルなロック・ナンバーで、ZOCメンバーの新たな魅力を引き出した。"もしWACKに入っていたら?"なんて想像しながら聴くと楽しいかも。さらにはお互いの代表曲に大胆なアレンジを施したカバーも収録。奇妙な縁から始まった、ワクワク、ゾクゾクする1枚だ。
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ニノミヤユイ
Dark seeks light / 散文的LIFE
初の両A面シングルの表題曲「Dark seeks light」は、TVアニメ"世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する"OP主題歌。グルーヴ重視で綴ったリリックや、ダークでクールなラップなど、自身が"限界突破した曲"と語る通りアーティストとしてのレベルアップを感じさせた。もうひとつのタイトル・トラック「散文的LIFE」は、TVアニメ"テスラノート"のEDテーマに起用。アニメの主人公 根来牡丹とニノミヤがリンクし、ネガティヴな感情をポップに昇華した一風変わった楽曲だ。3形態それぞれに異なるカップリングが収録され、両表題含めた全曲で作詞に関わっているが、中でも「不揃い」では初の作曲にも挑戦。今年20歳を迎え、さらに表現力を増し、スキルも身につけた彼女の次回作がすでに楽しみ。
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ExWHYZ(ex-EMPiRE)
BRiGHT FUTURE
ヘイトを撒き散らす四つ打ち高速チューン「I don't care」、ちょっと抜けているけど明るさがある、そんな憎めない人間性が出た「Hey!Hey!」、パリピ精神が顔を覗かせる「FLY! SiNG! CRY! TRY! SMiLE!」など、作詞者の個性が表れるカラフルな本作。その一方で「To continue」では"続けること"への決意を滲ませ、本作のタイトルと初MV曲でもある大切な1曲「アカルイミライ」にもリンクする「RiNG to the BRiGHT FUTURE」では、出会いと別れ、そしてその先を歌うシリアスな面も。音楽的には、ストリングスの効いたエモいロック・ナンバー「Chase your back」や、軽快なギター・リフから幕を開ける爽やかなポップス「Haggling」といったアルバムならではのジャンルの幅も持たせている多彩な作品だ。
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ORESAMA
CONTINEW WORLD
"CONTINUE=続く"と"NEW WORLD=新しい世界"が掛け合わせられた本作『CONTINEW WORLD』。DISC 1にはアニメ・タイアップ曲4作に加え、ポップでファンキーなディスコ・チューン「パラレルモーション」、スキャットが印象的な「Chewy Candy」、切ない夜を歌うバラード「夜行ノ雨」、ゴスペル調の「Moonlight」などバラエティに富んだ12曲が収録された。最後を締めくくる表題曲には、変わり続ける新しい世界を振り返らず進んでいくというコロナ禍にも通ずるポジティヴなメッセージが込められている。DISC 2では、YouTubeで公開されたセルフ・カバー企画"Dressup cover"シリーズが全曲CD化。新たなORESAMAワールドの扉を開く1枚だ。
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