DISC REVIEW
マ
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みきなつみ
とけたアイスの味は青かった
高校生シンガー・ソングライターとして、学生時代から音楽シーンの注目を集めてきたみきなつみ。その時々の心情を飾らない言葉でメロディに乗せてきた彼女が、20歳という"今"を詰め込んだ2ndミニ・アルバム『とけたアイスの味は青かった』を完成させた。もう子供ではないけど、大人にもなり切れない。そんな人生の一瞬の季節に、精一杯恋をして、健気に生きる女の子の息遣いが全7曲の中で瑞々しく表現されている。中でも地元埼玉の先輩バンド、リアクション ザ ブッタがアレンジと演奏を手掛けたリード曲「ボクらの叫び」は鮮烈。"どこまで行けるかは/未来が決めるんじゃない/自分で決めるのさ"という、歌わずにはいられないというような叫びに彼女の芯の強さを感じた。
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みきなつみ
きみとわたしとメロンソーダ
"未確認フェスティバル2015"ファイナリスト、2017年にはEggs年間1位アーティストに選ばれ、アメリカ最大の楽器の見本市"The 2018 NAMM Show"へのライヴ出演も果たすなど注目を集めている19歳の新鋭シンガー・ソングライター。弾き語りギター女子がまたひとり、という先入観を持っている方には「Dear」をオススメしたい。パーカッシヴなギターに乗せて絶妙なタイム感でラップ調に歌うこのテイストはメロウ・ヒップホップを思わせる。それも本人がラップ/ヒップホップを意図的に音楽性に持ち込もうとしているわけではなく、ごくナチュラル。それはBECK『Mellow Gold』以降に生まれた10代、20代には当たり前の音楽素養として身についているものなのかもしれない、とまで考えてしまった。
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魅起法則
is escape
要注目のオルタナティヴ・ガールズ・トリオがSEXY STONES RECORDSの新レーベル、FICK FILLYからフル・アルバムをひっさげいよいよ本格デビュー。オルタナと言うよりもむしろこれはポスト・パンク~ゴスだろう。いや、グルーヴィーとも言えるリズムに注目するなら、思いきってポジティヴ・パンク(80年代のUKシーンに咲いた徒花!)なんて言葉も使ってみたい。クールを装いながらも実は芯は熱い演奏とともに情念に満ちた言葉を紡ぎだす魔女系のヴォーカルは地下世界の住人である誇りを謳いあげながら時折、ポップに聴こえるところが今風なのか。ともあれ、他にはない個性。確固たる世界観が感じられる。この機会にぜひ注目を!因みに魅起法則と書いてミキノルムと読ませるバンド名には意味はないそうだ。
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ミスタニスタ
ストレンジャーの叫喚
京都発3ピース・バンド初の全国流通盤。タイトルのイメージとTrack.1「感性ありきの旋律線」の"こうしてやらんと君は此の歌を聴きやせんのやろう?"という歌い出しを聴くと、激しく言葉を投げかけてくるパンキッシュなバンドなのかと思いきや、アルバム全体を聴いてみると洒落たコード感による四つ打ちのダンス・ロックや文学的な歌詞が耳に残る。Track.3「ヘミングウェイの猫」の"大体"、"橙"、"怠惰"と韻を踏む遊び心のあるフレーズや、レゲエになったり転調したりと飽きさせないキャッチーなTrack.4「凡骨日和」など、曲ごとに楽しめる要素が盛り込まれた、1枚で現在の彼らがわかる作品となっている。
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ミソッカス
ダンシングモンスター
前作『深き森の迷路』は表題どおり、モヤモヤした感情を曝け出した作品だった。それから約5ヶ月という相変わらずのハイペースで届いた2ndフル・アルバム。今作は目の前の霧がパッと晴れ渡ったような抜けのいいサウンドに仕上がっている。表題曲は元電気グルーヴのCMJKをプロデュースに迎え、飛びっきりダンサブルな曲調で冒頭からテンションがアガる! 続く「名城線」も疾走感溢れるナンバーで、ライヴを意識したノリの良さを重視した曲調が多い。とはいえ、フル・アルバムならではの振れ幅も考慮した内容で、一筋縄ではいかないミソッカスらしさも満載だ。「青春の涙と流星群」はサビメロが素晴らしいし、大人っぽい雰囲気漂う「Tick Tack」など、後ろ髪を引かれる切なさもちゃんと盛り込まれている。
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ミソッカス
深き森の迷路
意味ありげな表題をつけた7曲入りミニ・アルバム。前作は"フォークロア=民族音楽"をコンセプトに掲げていたが、今作は"グランジ"というテーマで制作に挑んだようだ。たしかに救いがない歌詞はあるものの、過去最高にぶっちゃけた内容はミソッカスの人間味が曝け出されている。メンバーは暗いアルバムと評していたけれど、持ち前のポップ・センスとうまく混ざり合い、彼らにしか鳴らせない楽曲ばかりだ。アラビアン風味の「盗賊と賞金稼ぎ」、軽快なスカのリズムが心地いい「夏のイリュージョン」、大人のムード漂う「ブルーライトディスコ」と、キャラ立ち抜群の曲に引き込まれる。悩むことでいつか明るい希望が見えてくるのではないか、と問いかけるラスト曲「七色の迷路」は今作に一条の光を差している。
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ミソッカス
追撃のフォークロア
ミソッカスの進化と成長具合が止まらない。このメジャー1stアルバムを聴いて、ちょっと驚いた。今作は"フォークロア=民族音楽"をテーマに据え、たしかに作品全体からほんわか民族調のサウンドが漂ってくる。過去作と比べても、音数は増え、展開やアレンジも凝っている。にも関わらず、楽曲アプローチや演奏面で押し引きが明確になっているので、楽曲が持つキャッチーさは微塵も損なわれていない。つい口ずさみたくなるメロディ満載で、最後まで中だるみせずに聴かせる。DISC 2はセルフ・カバー集で、こちらもテンションの高い演奏がぎっちり詰め込まれている。突拍子のない展開や遊び心盛りだくさんのアレンジも最高。2枚通して聴いても、不思議と違和感がない。今作を聴けば、ライヴでさらに楽しめるだろう。
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ミソッカス
反逆の♭m7
メジャー1stシングル『ライジングレインボウ』を経て、遂に第2弾のミニ・アルバムがここに完成。鍵盤擁する5人組という特性を活かし、彼らの身体に沁み込んだ90年代の歌謡曲と未来チックなサウンドが溶け合う、懐かしくもフレッシュなサウンドは今作においても健在だ。本気と遊び心、かっこよさとダサさ、きっちり割り切れない絶妙なラインを突っ走る音楽性こそ、このバンドの真骨頂といえるだろう。口ずさみやすいメロディ、一度聴いたら忘れないインパクトがありつつ、耳に残り続ける楽曲の数々は素晴らしいのひと言だ。アッパーなノリの曲から、この季節にピッタリの大人びたジャジーな雰囲気のある「T.M.ハイテンション」までミソッカスらしさが濃縮された1枚に仕上がっている。中毒性の高い作品だ。
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ミソッカス
ゴールデンミソアワード EP
4曲入りの1st EPだが、中身は途轍もなく濃い。冒頭曲「愛しさと切なさと純情な感情」からダンス・ビートとメタルの要素を混ぜ合わせ、クスッと笑わせるコーラス・ワークもインパクト絶大で、異次元に突き抜けた歌謡ロック・サウンドが最高だ。「ハートビートオーバードライブ」もTrack.1に負けず、ノリのいい曲調でちょっぴり大人びたメロディ・ラインも癖になりそう。「Mr.D」は郷愁を刺激するメロと切ないコーラスが相まって、思わず口ずさみたくなる親密なポップ感に惹かれてしまう。最後はライヴ会場限定シングルを再録した「Cut the LIVESCAPE」はアップテンポの曲調で踊らずにはいられない。全曲に通底することだが、パロディもユーモアを胃袋に入れ、抜群のセンスでアウトプットする力量に平伏。
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ミソッカス
統一された混沌(カオス)
今年バンド名をひらがなのみそっかすからミソッカスに変え、TOWER RECORDS限定リリースだったシングル『シャイニングイリュージョン』がオリコンのインディーズ・チャート3位という好発進をした5人。ロック・アンセムから、ポルカにパンクに爽やかなエレクトロ・ポップ、ブラック・メタル、おセンチなバラード、哀愁たっぷりの歌謡曲などなど手当たり次第貪欲にジャンルを貪ったまさにカオスな内容だが、これを強引なくらいにまとめてしまうのが熱いヴォーカル。やりたい放題、歌いたい歌を歌いまくり暴れまくるような、傍若無人なオン・ステージっぷりで、ナシをアリに塗り替えていく。シニカルで、ひねくれているんだけれど、いや待てよ、こいつら本気か?と惑わせもするのだから、困ってしまう。まさに眩惑的な音楽集団。
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見田村千晴
Marking
"人間味とリアリティに溢れた歌詞を容赦のない強さで歌う"シンガー・ソングライター 見田村千晴。彼女が、1年9ヶ月ぶりのCD作品となるミニ・アルバムを完成させた。本作は先行公開された「記す」に顕著に表れているように、現代の未曾有の事態の中で感じた想いをストレートに綴った1枚。初めて全編ポエトリー・リーディングでアプローチしたこの曲は、赤裸々すぎる歌詞が痛いほど胸に刺さってくる。"東京都の感染者はまた今日も減らない"という一節は誰もが理解できる言葉ではあるが、ただそれだけの意味ではなく、何も変わらない日々や自分自身に対する憂鬱、焦燥感が込められているようにも感じる。そのほか、確固たる意志が窺える歌唱、心救われる優しい歌声もあり、懸命に生きる人にこそ響きそうな作品だ。
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密会と耳鳴り
美しい逆襲
関西シーンで話題の4人組ガールズ・バンド、密会と耳鳴りが初の全国流通盤『美しい逆襲』をリリース。"給料あげろ!有給増やせ!/残業さすな!人材増やせ!"。会社に勤めるOLたちの愚痴をひたすらぶちまけるリード曲「最低!気分屋!〇〇撲滅!」から幕を開ける今作は、非モテ系女子たちの心の叫びが全8曲に渡って舌鋒鋭く繰り広げられる。"顔面偏差値は下の下"とチャラい女子を酷評する「ブスビッチ」、没個性的なバンドマンを揶揄するような「ドッグレース」など、鹿子ちゃこ(Vo/Gt)による口が悪すぎる毒舌は痛快。リズム・チェンジや変拍子を駆使したライヴ映えするダンス・ロックを連発したあと、"最後はきっと必ず笑える"と歌うラスト・ナンバー「美しい逆襲」の切なさに痺れた。
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Jamie xx
In Colour
FKA TWIGSやSBTRKTなど先鋭的なアーティストを輩出しているXL Recordings傘下の人気レーベル"Young Turks"の急先鋒、THE XXのメンバー兼プロデューサーでもあるJamie xxのソロ・デビュー・アルバム。インディー・ロックとダンス・シーンをつなぐ存在として、ソロ・ワークとしてはこれまでにAlicia Keys、Rihannaらをプロデュース、リミキサーとしてAdele、RADIOHEADなどを手掛けてきた彼の注目の作品はイケイケなクラブ・サウンド「SeeSaw (featuring Romy)」、ミニマルな「Obvs」など個人的嗜好がうかがえる多彩なダンス・トラックの他、先行両A面シングル「Girl」「Sleep Sound」ももちろん収録。THE XXファンのみならずクラブ・カルチャーを愛するリスナー必聴のアルバム。
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美波
LOSE LOOSE Day
TVアニメ"うる星やつら"第1クールOPテーマへの参加などで注目を浴びるシンガー・ソングライター 美波が、1年8ヶ月ぶりとなるEP『LOSE LOOSE Day』をリリースする。本作には、Netflixにて配信中のアニメ"終末のワルキューレⅡ"の主題歌OPテーマ「ルードルーズダンス」や先行配信曲「グッドラッカー」などを含む全5曲をコンパイル。彼女の持ち味である力強い歌声とスリリングな楽曲の展開は本EPでも健在で、活動が活発化している今の彼女の勢いをも感じさせる。そして、なんといっても歌詞の随所に散りばめられた言葉遊びが面白く、ぜひ歌詞を見ながら楽しんでほしいところだ。また、初回限定盤 GREEN CHECK付属のラジオCDに収録される、声優の佐倉綾音との対談コーナーも必聴。
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ミナワ
まよいの森EP
京都を拠点に活動するバンドの約4年ぶりのリリースとなる新作。長谷川尚子(Vo/Pf)による、浮遊感がありながら歯切れのいいビートを持ったヴォーカルで歌われるメロディを、抜けのいいリズムと、空中ループのメンバーとしても活動する和田直樹(Gt)のアンビエントなギターが彩っている。疾走感のある演奏が心地よい表題曲「まよいの森」、新メンバーのあべつとむ(Ba)がアレンジの根本に関わっているという「suit」や、初めての英語詞による「sweet time」のエレクトロニカ寄りのアプローチなど、試行錯誤を繰り返しながら完成させたという楽曲のほか、電子音楽ユニット"木箱"がリミックスした代表曲「cue」も収録。新たにスタートを切ったバンドのプロローグ的なEPとなっている。
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TAKAKO MINEKAWA & DUSTIN WONG
Tropical Circle
嶺川貴子にとって2000年に発表の『Maxi On』以来13年ぶりのアルバムは、ギタリスト・Dustin Wongとの共作。すべて2人のセルフ・プロデュースにより制作された本作は、細部にまでこだわりと温かさを感じれられるハートフルな1枚となっている。ミニマルな美しいDustinのギター、女性らしく透き通った嶺川の歌声に、キーボード、ドラム・マシンも交えたカラフルで精妙なアンサンブルは、どこまでもピュア。その穏やかなサウンドは、大自然の中で川のせせらぎを聞いたときに似た、思わず深呼吸したくなるような気持ち良さがある。5月26日にShibuya O-nestにてリリース・パーティーの開催も決定。安らぎのポップ・サウンドを、体感してみてはいかがだろうか。
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みのべありさ
Side Story
前作『Trouble』から約1年ぶり。和歌山発のSSW、みのべありさの1stミニ・アルバム。"Side Story"というタイトル通り、物語の主人公になれなかった脇役や悪役にスポットライトを当てた1枚だ。コンセプチュアルな作品にも感じるが、そこには、恋の終わりに"悪役はあたしでいい"と切なく歌い上げるラヴ・バラード「Villain」や、"嫌われても/誰かのヒーロー/真っ黒な悪 役を生きる"と、周りの視線を気にせずに我が道を行く宣言をする「Who am I」など、自分らしい生き方を模索する20代女子のリアルが詰まっている。これまでのポップ路線から一転して全体にロックな楽曲が目立つなか、不確かな明日を懸命に信じようとする弾き語り曲「believer」の切実さが沁みる。
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みのべありさ
Trouble
和歌山出身のシンガー・ソングライター、みのべありさの1stシングル。昨年11月に初の全国流通盤『Sensation』をリリースしてから約9ヶ月ぶりのリリースとなる。表題曲「Trouble」は、ライヴで盛り上がりたい! という想いで作り上げた新機軸のパーティー・ソング。Avril Lavigneの2007年の大ヒット曲「Girlfriend」にインスパイアされたサビの"Hey!Hey!"というフレーズがワクワク感をかき立てる。一方、カップリングにはセンチメンタルな夏の夜空を描く「You are star」を収録。何気ない毎日にトラブルを起こそうと歌うエール・ソングと、光を見失いそうな心の迷いを綴ったナンバー。対照的な2曲がみのべありさの秀逸なソングライティング力を浮き彫りにする充実の1枚だ。
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みのべありさ
Sensation
大阪を中心に活動する、和歌山出身のSSW、みのべありさ。今年は"Eggs presents FM802 MINAMI WHEEL 2017"に出演したほか、これまでにも精力的に作品をリリースしてきた彼女の初の全国流通盤アルバム。Avril Lavigneの影響が色濃く反映させた疾走感溢れるロック・ナンバー「センス」をはじめ、全編英語詞のメロディック・パンク「Shall we begin」、反抗期の自分と家族との関係をアコースティック・ギターの弾き語りで聴かせる「マイホーム」など、ポップでロックな楽曲たちがまるで12色の色えんぴつのようにカラフルな色合いを放つ。"あの子と違うのは ラッキーなんだ"。そんなふうに歌うリード曲「センス」が象徴するように、自分探しこそ彼女が歌を歌う理由そのものなのだ。
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みやかわくん
略奪
日本武道館公演の開催を発表し、ますます勢いに乗る男性ソロ・シンガー、みやかわくんの2ndシングル。表題曲「略奪」は、"「天才」辞職"としてアーティスト活動を終了した、ぼくのりりっくのぼうよみによる書き下ろしで、これまでの作品の表題曲で築き上げた爽やかなイメージから一転して、アダルトな雰囲気を醸し出す新境地を見せている。ジャジーなサウンドに乗せた艶のあるヴォーカルに、性別を問わず惚れ惚れしてしまうに違いない。c/wではノリの良さと心地よさが同居する「I AM A HERO」、切なさが溢れ出すような別れの1曲「サヨナラを言わなくちゃ」と、1枚の中でみやかわくんの様々な顔を見ることができる。"iTunes盤"限定の収録曲もあるのでフィジカルと併せてチェックしたい。
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宮川大聖
光/Sparkling Love
高校在学時代に"みやかわくん"としてTwitterやVineなどで話題となり、現在はZ世代を中心に圧倒的な支持を受けるSSW、宮川大聖の2023年初リリース作。今作は、"道に迷った時、この歌を聴いて欲しい。"と宮川が語る、聴き手を肯定してくれる道標のようなナンバー「光」と、"美酢ビューティービネッシュ"のタイアップ・ソングとして、Shin Sakiuraと共に書き下ろしたポップ・チューン「Sparkling Love」の両A面シングルだ。カップリングの新曲「SOS」は少しダークさを感じるが、底から這い上がろうとする想いが乗ったトラックに。リスナーの背中を押すことに振り切った宮川渾身の作詞が光る作品に仕上がった。また、Type-A、Type-Bにそれぞれ収録されている人気曲「略奪」と「Null」のアコースティック・バージョンにも注目。
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宮下 遊
白雨の下
ネット・シーンを中心に活動するマルチ・クリエイター 宮下 遊。シンガー、イラストレーターとして、また作詞作曲/編曲のほか、ミックス、マスタリング、またアニメーションMVの制作などの裏方として、その活動は多岐にわたる。今回リリースされる5thアルバムも、シンプルに"音楽"という箱に収まり切らない表現に誘われる、壮大な作品になっている。それを形作るべく、入口となる1曲目の、ばぶちゃん作詞作曲による「夜の積み木部屋」から、多彩なクリエイターが参加。皮肉やユーモアを交えつつ、死生観が覗く歌詞の世界も聴きどころで、自身が作詞作曲/編曲を手掛けた、様々な声色と曲調で物語を紡ぎながら"私 ここが死に場所だった"と締めくくる「白炎」は、物語に潜む本音が見えるようだ。
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宮下 遊
見つけた扉は
愛に飢えた妖(あやかし)、ピアノに寄生する生き物、操られるだけの屍、アンドロイドの虚無感。作品の中には、人ならざるものが人間のように、あるいは人間が人ならざるもののような比喩でこれでもかと描かれる。全10曲から浮かび上がるのは生きづらさに苦悩する悲痛な叫びだ。クリエイター陣にはTom-H@ck、SLAVE.V-V-R、瑛太五月、卯花ロク、Somari、ツミキら、インターネット・シーンで注目を集める気鋭の作家陣が名を連ねた。そういう意味で作り手はバラバラだが、徹底して退廃的な色が貫かれるのが宮下 遊らしい。唯一、本人が手掛けた「Ayka」はハイライト。透明な音像の中で"見つけた扉"の解釈を聴き手に委ねる。アルバム4枚目にして宮下 遊の世界観は混沌を極めた。
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宮下 遊
降伏論
タイアップ作品との"ハマる"出会いによって、ミュージシャンの持ち味が最大限に発揮されることがある。人気アニメ"プラチナエンド"のエンディング・テーマとなった宮下 遊の最新曲「降伏論」はまさにそういう1曲だ。作詞はhotaru、作曲はTom-H@ck、アレンジはKanadeYUKが担当。神や悪魔が登場するアニメの世界観からインスパイアされたゴシックなサウンド・アプローチに乗せて、"降伏"から"幸福"に転じる心境を宮下 遊のハイトーン・ヴォーカルが力強く歌い上げる。カップリングには、真骨頂とも言えるダーク・ファンタジーのような音像に乗せて狂気的なヴォーカルが乱高下するオリジナル曲「bystander」を収録。命の意味、本当の自分、正義の価値。宮下 遊の鋭い言葉が胸を刺す。
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宮下 遊
青に歩く
前作『紡ぎの樹』から約2年ぶりとなる、歌い手 宮下 遊のメジャー2ndアルバム。ダンサブルなサウンドに言葉遊びのメロディを乗せた「テレストテレス」(作詞作曲:かいりきベア)、予測不能に展開する軽やかなポップ・ミュージック「青年よ、疑問を抱け」(作詞作曲:てにをは)、オリエンタルな曲調に妖艶で刹那的な絶唱を聴かせる「舞台性ナニカ」(作詞作曲:きくお)など、5人のボカロPが"旅立ち"をテーマに提供した楽曲の中で、宮下が独自の世界観を作り上げていく。中でも、冷ややかなウィスパー・ヴォイスで紡ぐシューゲイザー「炎」は唯一無二。カバー曲は「アンノウン・マザーグース」や「ロキ」などの人気曲を収録し、インターネットが生んだ歌い手としての宮下 遊の自負も感じる1枚。
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ミラーボールズ
ネオンの森
名古屋発の男女デュオ、ミラーボールズの3rdアルバム。主要なボルトを一本抜いてしまったような、骨なしへろへろサイケデリック・ナンバーには、思わず力が抜けてしまう。第一印象は、ゆらゆら帝国が連想されたが、こちらは女性ヴォーカルだからだろうか、昭和歌謡臭漂うサイケデリックといったところ。そのとらえどころのない個性的なヴォーカルは、時には、3、4歳の子供の鼻歌のような、無垢で無防備な声であり、子供が母親にそうするように、足元にしがみついて離れない。また時には、80年代の娼婦のような小悪魔的色香をじわじわと放つ。「小さな恋のメロディ」のような可愛らしい歌詞かと思えば、妖しくどろっとした世界に誘惑されそうにもなる。結果、連想されるのは、ミュージシャンではなく、若かりし日の加賀まりこだったりする。
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みんなのこどもちゃん
ひとりごと
痛々しいほどのリアルなメッセージを、彼女たちは壁の形をしたかせを自らに掛けながら今日も歌い続けている。その異形なる姿のほうにまずは目を奪われがちではあるものの、ふたりが発信しているものの根底に横たわっているのは、心の中の闇や葛藤であり、世の中の不条理に対する疑問の数々だと言えよう。5月の「壁」を第1弾作品として始まった5ヶ月連続でのデジタル・リリース第2弾作品となるこの曲は、ほのか(Vo)が"よく思うこと"を題材に彼女自身が詞を書いている逸品で、歌の中ではしなもん(Vo)との生々しい掛け合いが展開されている点も興味深い。ちなみに、このあと第3弾として用意されているのは「死んだうた」だ。闇深き少女たちの発する反骨精神溢れる叫びには、わかりみしか感じない。
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ミームトーキョー
MEMETIC WORLD
今年3月にグループ初のZeppワンマン公演を成功させた6人組女性ユニット、ミームトーキョーから約1年ぶりとなるニューEP『MEMETIC WORLD』が届いた。本EPには、TRFが約30年前に発表した名曲「Overnight Sensation ~時代はあなたに委ねてる~」のカバーをはじめ、chelmicoらが手掛けたドープなトラックが中毒性抜群の「AGAIN AND AGAIN」、ボカロPのSTEAKA提供の楽曲「CUTE TURN」、二転三転する曲調がクセになる、メンバー全員が作詞作曲を務めた自己紹介ソング「MEME THE WORLD」など全6曲をコンパイル。"全てがリードとなり得る楽曲が1枚となったミームトーキョーが満載の作品"という触れ込み通り、EPだからこその高密度で一気に駆け抜ける1枚。
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向井太一
PURE
"生粋のシンガーとして生きていきたい"という願いが込められたタイトルのとおり、飾らない今の向井太一のモードが詰まった2ndアルバムが完成。TVアニメ"風が強く吹いている"のEDテーマとして書き下ろされた「リセット」や、コ・プロデューサーに高橋 海(LUCKY TAPES)を迎えたタイトル曲「Pure」、先行シングル「Crazy」など、これまでと少し違う印象を受けるアートワークと同様、彼の音楽性の幅広さや新たな一面を楽しむことができる全12曲入り。歌声とトラック、それぞれの主張が絶妙な塩梅で心地よく、自然と心に染みわたり、気づけば口ずさんでしまう。ボーナス・トラックには、「Answer」でタッグを組んだ蔦谷好位置がTV番組"関ジャム"で絶賛した「Siren」を収録。
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向井太一
SLOW DOWN
日本のソウル・ミュージック・シーンに新風を吹き込む存在となるだろう、シンガー・ソングライター 向井太一。ルーツ・レゲエやスカ、ブラック・ミュージックなど音楽に溢れた家で育ち、バンドでの活動も経て、よりフットワーク軽く自分の好きなサウンドやビートを追求しようと、ソロでの活動をスタートした。3月に発表したEP『POOL』が好評だが、続くEPの発売を前にTOWER RECORDS限定で今作をリリース。「SLOW DOWN」は、エッジーで無機質なビートを基軸とし、彼の音楽の原体験であるルーツ・レゲエの薫りも漂わせたトラックに、甘くスモーキーな歌声がゆったりと響き渡る。シンプルで歌の立つトラックでいて、エクスペリメンタルな攻めの姿勢もあるサウンド。気鋭のプロデューサーとの化学反応を楽しんでもいる。
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蟲ふるう夜に
スターシーカー
アコースティック・ギターをつま弾く優しい音色と、ヴォーカル蟻の柔らかな歌声で作品はスタートする。徐々にドラムやベース、鍵盤が入ったバンド・アンサンブルとなり、疾走していく。景色が動き出すような音が、風を切っていくのが気持ちがいい。どちらかといえば、抱えきれない苦しみや葛藤、生傷の絶えないような毎日を音や歌に変えてきたバンドだったけれど、今作では自分の闇もひっくるめて、進むための燃料にしていく。その肯定感が包容力になって、バンド・サウンドも蟻の歌も躍動している。押し付けるような明るさではなくて、そばでにっこりとほほ笑んでいるような雰囲気がうまく音になっているように思う。「同じ空を見上げてた featuring GOMESS」は初のフィーチャリング曲で、今回の作品にぴったりの内容。
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蟲ふるう夜に
わたしが愛すべきわたしへ
BiSや中川翔子といったアイドルの作品を手掛けるサウンド・プロデューサー、松隈ケンタとのタッグで、新しい扉を開き続けるバンド、蟲ふるう夜に。これまでの内省的で、対・世界、対・自我といった、もやもやとくすぶり続ける心の痛みを鋭いバンド・サウンドにのせて叫んでいた作品よりも、ぐっと開放的なアルバムになった。タイトル通り、まず自分自身を愛する、受け入れていくことから始まった今作は、その過程で起こる葛藤や息苦しさ、いびつな心の動きも丁寧に掬いあげながら、煌めくような、ポップなサウンドにぶつけている。開放的で、色味のある世界観となったけれど、聴き手との一対一による、繊細なコミュニケーションでありたいというバンドの願いは変わらずにある。手渡しの優しさや強さが大事にされた作品。
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武藤昭平 with ウエノコウジ
'S Wonderful
勝手にしやがれのリーダー武藤昭平(Vo/Gt)とthe HIATUSなどで活躍するウエノコウジ (Ba)によるアコースティック・ユニットが、約1年5ヶ月ぶりとなる2ndフル・アルバムをリリース。力強くかき鳴らすギターと様々なグルーヴを表現してみせるベースがスパニッシュでリズミカル且つ妖艶なサウンドを生み出し、そこへ絡むハスキーで熱量の高いヴォーカルがたまらない。決して音数は多くないのにロックをも凌駕するクールな激しさで満ちた楽曲に心は高揚させられっ放しである。なかでもStingの名曲「Englishman In New York」のカバーは新たな魅力を与えつつも彼らのオリジナルへの敬意も感じ取れる珠玉のナンバー。この暑い夏の最高のBGMになること間違いなし。
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武藤昭平 with ウエノコウジ
マリアッチ・パンクス
ジャズ・パンク・バンド勝手にしやがれの武藤昭平(Vo/Dr)とウエノコウジによる1stアルバム。武藤のガッド・ギターと、ウエノのアコースティック・ベースが奏でるスパニッシュやメキシカン・タッチの楽曲は、アダルティな渋い色気が迸る。どの曲も目を閉じれば異国にワープしてしまうような強烈なダイナミックさ。ソウルフルでハード・ボイルドなだけではなくお茶目な面も兼ね揃える武藤のヴォーカルにも思わずニヤついてしまう。アコースティックなのにここまでパンクなアルバムがこれまであっただろうか。THE CLASHの「London Calling」や「ゴッドファーザー~愛のテーマ」と言ったカヴァー曲も収録された、かっこいい大人ふたりの遊び心に溢れた全11曲。お酒のお供にもバッチリです。
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ムノーノ=モーゼス
オカルトタイムズ
2015年結成の神戸の3人組、ムノーノ=モーゼスが初の全国流通盤となる2ndミニ・アルバムをリリース。はっぴいえんど以降の日本語ロックの流れを受け継いでいるようにも、昨今のシティ・ポップに共鳴しているようにも思える全5曲が収録されている。飄々としているようで、実はじわっと染みる歌心もさることながら、一番の聴きどころはエレキ・ギターの醍醐味をたっぷり味わわせるギター2本のアンサンブル。ファンキーになったり、サイケになったり、サーフになったり、ブルージーになったりしながら、とにかく鳴りが心地いいギターを聴いていると、ガレージ・ロック・リバイバルも通過しているようにも思えるが、どれにもぴたっとハマらない面白さがある。思わずずっこけるようなバンド名の由来も、いい感じだ。
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群咲
お先☆真っ眩
群咲にとって初の全国流通となる2ndミニ・アルバム。グルーヴィなサウンドで身体を強く揺さぶってくる「ただ、灰に塗れる」に始まり、耳にこびりついて離れなくなる強烈なリフレインを擁した、超アッパーな「一般ピポピポ」、自身の経験をもとに怒りの感情を殴り書いた「模造生活」に近しい雰囲気がありつつも、時折飛び出す痛烈な言葉を荒々しくも艶のある声で歌うダンサブルな「他問他答」など、全6曲を収録。どの楽曲にも、日常生活で感じる息苦しさが通底しているところは、なんともこのユニットらしいところだが、柔らかな歌声とハーモニーで"はじまり"を綴ったスロウ・ナンバー「いつかさよならのためのうた」は、応援歌のようにも響く形になっていて、また新たな表情を見せる楽曲に仕上がった。
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群咲
模造生活
声優の木村千咲と作曲家のラムシーニによるユニット、群咲の4thシングル。木村の実体験がもとになって生まれたという「模造生活」は、これまでの比較的内省的な印象を与えるサウンドではなく、強烈なまでの怒りをぶちまけ、自分は自分の思うように生きていくと宣言する刺々しさもあるアッパー・チューンだ。そんなメッセージは、"今日も映えない、明日こそ映えたい私たちへ"というユニットが掲げているテーマ通り、日頃押し殺している感情を肯定し、鼓舞してくれる力強さも。カップリングの「君が嫌い」は、ど直球なまでのセンチメンタルなラヴ・ソングで、こちらでも新たなベクトルを提示。ユニットとして新たな1歩を踏み出したことを強く感じさせる1枚になっている。
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めいちゃん
Humor
歌い手出身、YouTubeグループ"肉チョモランマ"でも活躍するめいちゃん。初の武道館ワンマンを控え勢いに乗る彼の新作には、初アニメ・タイアップ曲「ラナ」やTikTok人気曲「小悪魔だってかまわない!」、川谷絵音書き下ろし曲「ズルい幻」など、カラフルでサイケデリックなジャケット同様、色とりどりのヴィヴィッドな楽曲たちが詰め込まれた。少年っぽさの残るまっすぐな歌声に、突き抜けるハイトーン・ヴォイス、力強いがなり、圧巻のビブラート、透き通るファルセットと高い技術を巧みに繰り出す、華美なアレンジにも負けない歌唱力が見事だ。そんな派手な曲が並ぶなか、シンプルなアレンジでしっとりと聴かせる「帰り道」で締めくくるギャップに意表を突かれる。"ユーモア"溢れる収録映像や封入特典にも注目。
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め組
七変化
約2年ぶりのパッケージ作品は、4枚目となるミニ・アルバム。キャッチーなワードを盛り込みながら、憤りをポジティヴに爆発させる「咲きたい」や、力強いバンド・サウンドで瑞々しさを放ちつつも、どこか寂しげな「さたやみ」、ストリングスと跳ねるビートが胸を締めつける「ストレージ」など、日常の様々な場面から生まれてきた決して明るくはない感情が綴られた楽曲たちがずらりと並んでいる。また、ダンサブルなエレクトロ・ミュージックの意匠を施しつつも、歌詞の内容はかなり重苦しい「(I am)キッチンドリンカーズハイ」のような、バンドにとってトライな部分もありつつ、それらをラスト・ナンバーの「It's a 大愛万国博覧会」できっちり回収していくようなドラマチックな流れが見事。
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め組
LOVE
昨年、新キーボーディストに久佐賀 麗を迎えため組のニュー・ミニ・アルバム。これまでも彼らの楽曲には愛が深く通底していたが、今回はタイトルにも"LOVE"を掲げ、バンドのアイデンティティを強く表明するような1枚になった。緻密に音を重ねた賑やかなバンド・サウンドだけではなく、電子ピアノの柔らかな音色を軸にムーディに聴かせる「愛し、愛され」や、打ち込みを取り入れたミニマムなアレンジで仕上げた「REC」などは、間違いなくバンドの新機軸。ウクレレの調べがトロピカルな南国の気分を呼び起こす「切ない」は、"せつないはキリがない"という菅原達也(Vo/Gt)のユニークな着眼点が面白い。珠玉は2020年にリリースされた配信曲の再録「YOLO(2022ver.)」。大きな愛が胸を打つ。
LIVE INFO
- 2025.04.04
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RELEASE INFO
- 2025.04.09
- 2025.04.15
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- 2025.04.23
- 2025.04.25
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- 2025.05.14
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