DISC REVIEW
サ
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ぜんぶ君のせいだ。
AntiIyours
新メンバーふたりが加入して、再び5人体制となったぜん君。の第1弾シングル。「AntiIyours」では、5色のヴォーカルになったからこその、そして活動を重ねた今だからこその新たな試みで、これまでの曲ではあえて入れてなかったハーモニーやユニゾンのパートも導入した。これぞぜん君。という強さやキュートで、ポップでぶっ飛んだ目まぐるしさもあるが、その響きには新鮮さがあり、キャッチーに刺さるその深さもグッと増している鮮やかな曲だ。カップリング「唯君論。」は再録曲だが、こちらも成長を重ねた今のメンタリティが歌詞をアップデートさせ、細かなところが変化。5人での第1弾という大事な1枚での再録曲として、私と君(ぜん君。とファンである患い)とのかけがえのない濃密さを改めて聴かせている。
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ぜんぶ君のせいだ。
Natural Born Independent / ロマンスセクト
ぜん君。初の両A面シングル。「Natural Born Independent」は高揚感のある美メロが冴え、メンバー4人それぞれのヴォーカルがエモーショナルに乗るロック・チューンだ。右へ倣え的な空気にはそっぽを向いて、自分が選んだ道を行く、その強い意志を込めた1曲となった。「ロマンスセクト」は、ヘヴィなギター・リフと硬質のビートに歌が絡まりグルーヴする1曲で、こちらは"ぜん君。節"たるポップでファンシーで、且つ猛烈に熱い歌となっている。7thシングル『革鳴前夜』に続いて、加速するぜん君。がさらにアクセルを深く踏み込んでいく、エネルギーとなる2曲。ライヴでのパフォーマンスがタフになり、会場のキャパを着実に上げている今に相応しいファンファーレ的なシングルだ。
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ぜんぶ君のせいだ。
NEORDER NATION
前アルバムから1年経たずしてリリースとなる4thフル・アルバム。この間にも再録アルバムや2枚のシングルを発表し、全31公演にわたったロング・ツアーを完走、ぜん君。史上最大規模となる渋谷TSUTAYA O-EASTワンマンも即完で成功させた。約3年の中で最も加速を極めた活動で、個々人が歌やぜん君。へのモチベーションを上げ、グループとしての強さと個性をビルドアップしてきた。その成果やエネルギーを爆発させているのが今作だ。ぜん君。と言えば、捻くれた、遊び心満載のアトラクション的ポップも聴かせてくれたが、今回はバンド・サウンドでソリッドに、正統派のロック・チューンも真正面から表現している。サウンドにそれぞれのタフさがしっかりと乗った強力なパンチ力が痛快。目が離せない存在になっている。
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ぜんぶ君のせいだ。
トナリコレアラタ
昨年末のシングル『せきららららいおっと』に続く6枚目のシングルは、表題曲「トナリコレアラタ」を筆頭にポップなぜん君。節が全開。"君"を想うラヴ・ソングでも、これまではコンセプトである"病みかわいい"の病みが強めな、妄想をこじらせた重い女の子であることが多かったが、今回は恋する女の子のかわいらしさをまっすぐお届けする曲になった。相手のことがどれだけ好きかのめくるめくお花畑的世界でなく、自分が強く変わっていこうという決意を歌にしていて、より共感性も高い内容だ。c/wの「ヴぁいらるらびりんす」はオリエンタルなエレクトロ・チューン、「ROMANTICISM」はキュートなエレクトロ・ポップと、フレンドリーなサウンドでキャッチーさも抜群。次なるステップを見据えたシングルだ。
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ぜんぶ君のせいだ。
せきららららいおっと
前作『Egoistic Eat Issues』からわずか3ヶ月でのリリースとなるシングルは、メンバー脱退を経て4人となった彼女たちの"今"と"意志"を伝える。「せきららららいおっと」は、カラフルでポップな片(過多)想いソングであり、めまぐるしく押し寄せる感情と妄想をロックやEDMといった多展開のサウンドで表現し、グループのコンセプト"病みかわいい"を今一度思い起こさせる曲となった。「Unknown Carnival」では、4人の想いをまっすぐ突き刺すように歌う。ぜん君。と言えば高音でのシアトリカルなヴォーカルが特徴だが、この曲では低音が効いている。フラットなメロディで射抜くように歌われるのが新鮮だ。いろいろな困難はあったけれど、"笑え"と自らを鼓舞する歌が力強い。
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ぜんぶ君のせいだ。
新音
1stアルバム『やみかわIMRAD』、2ndアルバム『アニマあにむすPRDX』を再録した2枚組アルバム。この2作ともに現ラインナップとはメンバーが変わっていることもあり、またパフォーマンスやグループとしての意識も変化してきた今だからこその再録作品となった。歌割りやサウンドにも手が加わり、"単なる再録音"を超えたものになっているのは、最新アルバム『Egoistic EatIssues』で知った人も、ずっと追い掛けてきたリスナーも楽しめるところ。1,080円という良心価格も、新旧のファンに手に取ってもらいたいという思いから。結成からフルスロットルで突き進みながらも、メンバー交代など何度も壁にぶち当たりつつ、それでもスピードを緩めずに生傷を作って驀進するぜん君。が詰まった作品だ。
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ぜんぶ君のせいだ。
Egoistic Eat Issues
色とりどりのヴォーカルがシアトリカルな曲を引き立てる「独白園」でスタートする、3rdフル・アルバム。悲しみや後悔でズブズブのひとりぼっち感から、脳内が一気にお花畑化していく恋愛の暴走まで、激しい感情のアップダウンは相変わらずだが、そのドラマやシーンをより表情豊かに表現している作品だ。スピード感溢れる曲はさらにスリリングに、パワフルな曲はパンチ力を鍛え、猫の目のように展開していく曲は遊び心たっぷりでキャッチーに、繊細な曲は歌の機微を大事にと、曲を自分たちのものにする咀嚼度の高さが窺える。結成からメンバー交代があったり、今作のリリースを前に未来千代めねが喉の病気で脱退するなど困難はあるが、それも滋養に一歩一歩進む強さを増した。ぜん君。の軌跡が詰まっている。
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ぜんぶ君のせいだ。
わがまま新生Hominina
「わがまま新生Hominina」(Track.1)と、「ここにおいで with まれ・A・小町」(Track.2)、「飢えそなりてぃ」(Track.3)を収録した4thシングル。新メンバーふたりが加入し2作目のシングルだが、前作が新生ぜん君。の自己紹介だとすれば、今回はいきなりフルスロットルで突き抜けて、ポップにスパーク。コンセプトの、"病みかわいい"の"かわいい"の比重大きめ(厄介な"病み"っぷりもあり)で、派手なシンセ・サウンドで君への想いを炸裂させている。レーベルメイトのゆくえしれずつれづれのまれ・A・小町をゲストに迎えた「ここにおいで」の包容力ある曲も新鮮だが、続く「飢えそなりてぃ」のEDM感は驚きだ。内容的には、歌って踊るメジャーなグループを皮肉ったりしているとか、してないとか。やりたい放題なシングルだ。
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ぜんぶ君のせいだ。
Sophomore Sick Sacrifice
メンバー脱退があり、フレッシュなメンバー(咎憐无、未来千代めね)が加入した新体制での初シングル。2ndフル・アルバム『アニマあにむすPRDX』以降としても初のシングルで、サウンド的にも新たなトライや深化がある。タイトル曲は、モダンで、ダンス・ミュージック的なアレンジが施されたノイジーなギター・サウンドが流麗で美しい。五月雨式に5人のヴォーカルが乗っていくメロディが、たくさんの言葉と感情と、募るぼっち感と、とげとげとしたノイズと共に、どっと耳に流れ込んでくる曲だ。カップリングはソリッドなロック「ざふぁいふぁいそっ」と、扇情的なピアノがドラマを彩る「あおはる」。「あおはる」はこれまでのぜん君。の妄想力と、感情過多で暴走するパワーを踏襲。これはこれでなんだかホッとする。
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ぜんぶ君のせいだ。
アニマあにむすPRDX
今年1月に初の全国流通盤としてリリースされた1stアルバム『やみかわIMRAD』から1年未満で、2ndアルバムをリリースする"ぜんぶ君のせいだ。"。結成から約1年の間にも、メンバー加入や初期メンバーの脱退があったりと激動のときを過ごしつつ、精力的なライヴ活動で会場のサイズを広げながら突き進んでいる彼女たちの今を詰め込んだ今作。レーベルメイトであるインスト・バンド Gauche.の水谷和樹が作るハイパーにアップダウンするメロディと情報量たっぷりのポップ・サウンドや、syvaの作るヘヴィなロック・サウンド、そこに5人それぞれのキャラクターが波状攻撃のように歌を乗せて疾風怒濤の展開に。5人の個性が際立ってきたゆえ、グループとしての物語も加味された進化のアルバム。
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ぜんぶ君のせいだ。
僕喰賜君ノ全ヲ
情緒不安的気味に揺れ動く、ジェットコースター的な感情そのままに、くるくると展開するカラフルなロックを、引っ込み思案で、誇大妄想な、厄介な心の内をポップに響かせてしまうタイトル曲「僕喰賜君ノ全ヲ」。内省的な自分とそんな自分自身を客観視するシニカルさも持ったTrack.2「痛カルマバ○ス」。そして、アグレッシヴなビートと分厚いギター・サウンドで思春期から大人へと変わりゆく成長痛を歌うTrack.3「拝啓、おとなグラム」と、共に気持ちと想像ばかりが肥大していってしまうような、人生の青い時期が歌われる。この感情過多で、うーんと頭を抱える感じは、あるあるな状況なのではないだろうか。根っこに渦巻くものはヘヴィだけれども、それをとてもファンシーにラッピングして手渡してくれるのが、ぜんぶ君のせいだ。だ。
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エミ・マイヤーと永井聖一
エミ・マイヤーと永井聖一
日米で活躍するシンガー・ソングライター、エミ・マイヤーと、相対性理論のギタリストであり、それ以外にも様々な幅広い活動を行う永井聖一がユニットを結成。全編日本語詞のアルバムを完成させた。制作期間は約2年。作詞と作曲はそれぞれが書いたものもあれば2人の共作もあり、Track.6はたむらぱんが作詞で参加していたりと、シンガーとしてのエミをよりじっくりと解き放ったポップ・ミュージック集だ。肩肘張らないリラックスしたバンド・サウンドに、英語と日本語両方の感触を与えるエミのヴォーカル。永井のギターは曲の雰囲気にあわせて変幻自在にアプローチをするも、どの曲でも音の魅力を存分に引き出すシンプル且つ印象強いフレーズを奏でる。エミの新たな表情を見られる楽しみと同時に、永井のギタリストの才能に恐れ入った。
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やくしまるえつこ
X次元へようこそ/絶対ムッシュ制
昨年はソロで『RADIO ONSEN UTOPIA』、相対性理論で『TOWN AGE』と2枚のアルバムをリリースし、その存在感の大きさを示したやくしまるえつこ。本作は彼女の7枚目のソロ・シングル。「X次元へようこそ」は躍動感のある流麗なストリングスやムーディなブラスをフィーチャーした、肉体的で甘美な魅力を持ったシティ・ポップ風の楽曲で、"にゃんにゃんにゃんにゃにゃにゃん"と囁く彼女のヴォーカルは、"萌え"よりは"エロ"のほうがしっくりくる妖艶さを孕んでいる。「絶対ムッシュ制」はミニマムなバンド・サウンドの上を流れる煌びやかなシンセと、最後にバーストするギターが印象的なポップ・チューン。「X次元へようこそ」の編曲は菅野よう子が、全曲マスタリングはグラミー賞受賞の経歴も持つTed Jensenが担当している。
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相対性理論と大谷能生
乱暴と待機
相対性理論約半年振りのリリースは、同名映画『乱暴と待機』のサウンド・トラックを制作している大谷能生とタッグを組み制作したDVD 付きシングル。同映画の主題歌にもなっている表題曲「乱暴と待機」は懐かしさのある空間的なホーン・サウンドと、脱力感がありつつも緊張感を忘れないバンド・サウンドが抜群の浮遊感を醸し出している。その中でひとつひとつの言葉を淡々ながらに甘く歌うやくしまるえつこのヴォーカルが耳から離れない。映画の持つ世界を汲みながら独特の切り口で描かれる淡くほろ苦い恋愛観には、不思議な説得力がある。ポップでキュートな音の中に佇む、どこまでがリアルなのかどこまでがドラマなのか分からない謎めいた空気が小気味良い。カップリングには同映画の挿入歌やメイン・テーマなどを収録。
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ソウル・フラワー・ユニオン
キャンプ・パンゲア
2009年から2010年の怒涛のリリース・ラッシュの流れから、2年ぶりのオリジナル・アルバムの登場だ。まず何と言っても目立つのは全15曲というこの収録曲の多さ。中川曰くこれでも4曲ほど収録するのを止めたとのこと。シングル曲ををキッチリと収めつつもTrack.2の「ホップ・ステップ・肉離れ」やTrack.3の「ダンスは機会均等」など既にライヴで披露され、キラー・チューンにもなっている楽曲も多数入っている。60分を超える収録時間だが、最初から最後までさらりと聴けてしまう。しかし、一曲一曲に込められたメッセージ、エネルギーは様々な形で聴く者の心に突き刺さる。ソウル・フラワー・ユニオンの生き様を心に刻み込め!
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ソウル・フラワー・ユニオン
死ぬまで生きろ!
ソウル・フラワー・ユニオンのマキシ・シングル。今回もライヴ・テイク6曲を含むハイ・ヴォリューム。表題曲「死ぬまで生きろ!」は、スティール・パンの響きも心地よいSFU流のカリビアン・ナンバー。トロピカル・ブルースに乗せて「路上」で生き、「路上」で歌い踊る喜びと覚悟を力強く歌いながら、聴く者の想像力や思い出が入り込む居場所を残した歌詞が素晴らしい。そして、それがあくまで軽やかで温かいダンス・ナンバーとして鳴らされているところこそ、SFUの真骨頂だ。浅川マキの追悼カヴァー「かもめ」そして、「殺人狂ルーレット」「アル・ファジュル」など勢いのあるライヴ・テイクも収録。「外交不能症」のメッセージは今こそ輝きを増す。「唄と踊りは法の外」にあることを理解し、行動するからこそ、彼らの歌は強い。
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底なしの青
ナミダの栞
旅立ちへの期待と不安とをないまぜにしたキラキラとした青い景色を描き、エモーショナルなメロディと疾走感のあるギター・サウンドで勢い良く放つ「征く」で幕を開けるミニ・アルバム。"底なしの青"というバンド名のままに、青春期ならではの心情を、憂いを帯びた下田陽太の歌声で綴るギター・ロックだが、そのサウンドはままならない気持ちを抱え突っ走るだけでないドラマに満ちている。ブリティッシュ・ロックのポップさや、またイマジネイティヴに思いを馳せていくスケール感のあるロック、時には渋いギター・リフが狼煙を上げる70年代ハード・ロックをヘヴィに奏でるなど、踏み入れたらずぶりと深い作品になった。今作が初の全国流通盤となった仙台発の4ピース。多彩な青の色彩を持つバンドだ。
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そこに鳴る
開眼証明
約4年ぶりとなるフル・アルバムは、カノン・ロック風の疾走感あるギター・リフが特徴的な「拝啓、黎明を知って」で幕を開ける。国内外問わず活動してきた彼らの歩みを表すような詞も印象深い本楽曲は、"開眼証明"というアルバム・タイトルへの期待感を見事に膨ませる。地を這うグルーヴと突き刺すギターが絡み合い、緻密なアンサンブルが展開する「in birth」など、そこに鳴るのテクニカル重厚サウンドが土台にありながら、初のアニメ・タイアップ曲「相聞詩」ではストリングスやピアノを取り入れていたりと、一辺倒ではないバンド・サウンドが発揮される本作。サビに向かって畳み掛ける切迫感は、ファンの期待と高揚する感情を連れていくかのよう。現状にとらわれず、さらなる高みを目指す彼らの闘争心が炸裂する1枚に思わず胸が躍る。
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そこに鳴る
相聞詩
『啓蒙して、尋常に』以来1年5ヶ月ぶりのリリースとなるフィジカルは、表題曲に加え、同曲の"TV Size"、"instrumental"、さらに新曲「綻んで爆ぜれば」の計4曲を収録。TVアニメ"魔女と野獣"のオープニング・テーマとして書き下ろした表題曲は、アクロバティックな超絶テクニックは控えめながら、ピアノとストリングスを使ったゴシック・ロマン的なアレンジが聴きどころ。それもまた、そこに鳴るの持ち味だろう。一方、「綻んで爆ぜれば」はそこに鳴るが本来持つロック・バンドとしての魅力をストレート且つ存分にアピール。その意味では、彼らが持つ振り幅を楽しめる1枚と言えそうだ。フル・バージョンとのアレンジの違いが作り手のこだわりを窺わせるという意味で、"TV Size"も聴き逃せない。
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そこに鳴る
啓蒙して、尋常に
歌えるドラマー、斎藤翔斗を正規メンバーに迎え、3声のコーラスを本格的に追求した6thミニ・アルバム。ラストを締めくくる表題曲、トップを飾る「暁を担う」をはじめ、これまで通り超絶テクニックに裏打ちされたエクストリーム・サウンドを鳴らしながら、ポップスとしてアピールする力が増した印象があるのは、メンバーによると、3声のコーラスによるところが大きいそうだ。その他、打ち込みのサウンドを使いながら、ダンサブルなビートや我流のラップにアプローチしたサウンドが斬新な「bad blood」を含む全6曲に、10周年アニバーサリー・ライヴの模様を収録したDVDをカップリング。さらなる飛躍に向かう新たな起点となる作品とメンバーたちは考えているようだ。
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そこに鳴る
7 ultimate materials
"7 ultimate materials"はそこに鳴るが7週連続で「vermisst」、「VortEx」、「渇望の日」、「恣意的三分間」、「回帰」、「雨に消えて」、「brilliant city」の7曲をCDシングルとしてリリースする結成10周年記念企画だ。結成10年目にリリースした1stフル・アルバム『超越』の成熟から今一度、そこに鳴るらしさに回帰するという大きなテーマのもと、超絶テクニカルなサウンドを極限まで鳴らす一方で、歌モノとしての魅力をさらに磨きあげながら、曲ごとにバンドが持つ可能性を追求している。男女ツイン・ヴォーカルを軸にしながら、ハーモニー・ワークにさらに力を入れるという新たな挑戦も。それは7曲に共通する聴きどころとなっている。
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そこに鳴る
超越
破壊的な「Lament Moment」以下、そこに鳴るならではの魅力を全9曲約30分にぎゅっと凝縮した1stフル・アルバム。超絶テクニカル・サウンドと男女ヴォーカルの掛け合いという超個性を持つ歌モノのギター・ロックの可能性を、曲ごとに趣向を凝らしたアプローチで追求するという意味では、これまでの集大成とも言えるが、デビューから5年の活動で彼らが研ぎ澄ましてきた感性が、極めて鋭いものになっていることを感じ取りたい。そして、その感性が冒頭に書いた破壊的な方向にもポップな方向にも思いっきり振れることを! 聴き手を選ばないラヴ・ソングの「white for」はまさに後者の成果。女性ヴォーカルのバラードとしてJ-POPシーンでも勝負できるそのクオリティは、大きな聴きどころと言えるだろう。
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そこに鳴る
complicated system
これまで以上に男女ツイン・ヴォーカルのスタイルを前面に出しながら、さらなる可能性を追求した3曲を収録。イントロのギター・リフがちょっとフラメンコにも聴こえる表題曲、ベースがジャズっぽいウォーキング・フレーズを奏でる「枷の先で」、キャッチーなギター・リフが、曲が持つ哀愁を際立たせる「孤高」――どの曲も爆裂するそこに鳴るサウンドを、これでもかと鳴らしながら、新境地をアピールしている。通常盤にはライヴDVD付きの初回限定盤に収録されないボーナス・トラック2曲を追加。どちらも初期に制作された曲の新録だそうだが、シンプルなアレンジで疾走感を追求したオルタナ・ロックの「善略」、メタルの影響が窺える「迷い子」ともに、彼らの王道からちょっと外れる魅力が聴きどころになっている。
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そこに鳴る
一閃
メタル、プログレ、和メロ。これまでにそこに鳴るが示してきた方向性から、さらに一歩踏み込んだような今作。7曲というコンパクトなボリュームのミニ・アルバムながら、一曲一曲がものすごい情報量で、畳み掛けるように聴く者に訴え掛けてくるサウンドは、まるで嵐のようだ。きめ細やかでテクニカルなギター・プレイや、ときに激しく主張するベースの重みなど、ショーアップされた見せ方は、ライヴで培ってきた感覚によるものだろう。ゴリゴリに暴れ回る楽曲も、繊細なハーモニーを奏でる楽曲も、自分たちの内から湧き上がる感情が迸っている。シーンにその存在感を示してきた今だからこそ、リスナーを裏切らない突き詰め方で進化を見せつけたふたりには、まだ彼らにしか見えないその先があるのだろう。
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そこに鳴る
ゼロ
要素のひとつとして持っていたメタルに彼ららしいやり方でアプローチした前作から約1年3ヶ月というペースで、そこに鳴るが完成させた4作目のミニ・アルバム。前2作で新たなサウンドに挑んできた彼らは、ここでいかに作為なく本来のそこに鳴るらしさを表現するかに挑んでいるが、原点回帰とも言えるその挑戦が、そこに鳴るというバンドの新たな基準になったところに大きな意味がある。たぶん、ここから彼らは一心不乱に自分たちの進むべき道を邁進することだろう。「表裏一体」と「indelible time」の2曲では、緻密なアンサンブルと3ピースで演奏する超絶テクを誇っていた彼らが、同期を使ってピアノやストリングスの音色を加えているが、その自由度が今後の創作にどう影響するかも楽しみだ。
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そこに鳴る
METALIN
前作『YAMINABE』以上に曲の幅が広がった3rdミニ・アルバム。リリースはドラマーの交代を挟んで、前作から11ヶ月ぶりとなる。これまでもメタルの要素を取り入れていた、そこに鳴るが真正面からメタルに取り組んだ表題曲Track.3、Track.4「family」が大きな聴きどころと言えるが、メタルのデフォルメとしても楽しめるという意味では、ともに彼ららしいものになっている。『YAMINABE』における試みを新たなスタンダードとして磨き上げたTrack.2「新世界より」、爽やかなギター・ロック・サウンドが新境地をアピールするTrack.7「sayonara blue」も聴きどころ。より力強いものになった男女ツイン・ヴォーカルのコンビネーションとともにバンドの前進を物語る。
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そこに鳴る
YAMINABE
最新モードも含め、彼らが持っている振り幅をアピールする全8曲が収録されているからこそ、このタイトル。メタル、プログレの影響も吸収したうえで和風のメロディが効いた哀愁ポップ・ナンバーを、アクロバティックに奏でる大阪の男女トリオ。前作発表後、Benthamと全国ツアーを行い、じわじわとその存在をシーンに知らしめてきた彼らが満を持してリリースするEP。あえて削ぎ落したストレートなサウンドと共にダンサブルなリズムを導入し、よりキャッチーに攻めたTrack.2「エメラルドグリーン」、Track.6「内緒にしててよ、醜い私のことを嫌っても」の2曲は、これまで以上に多くのリスナーから歓迎されそうだ。しかし、これは過渡期をとらえた作品にすぎない。本当の進化はここから始まりそうな予感。
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そこに鳴る
I'm NOT a pirolian
凛として時雨のコピーからスタートしてその後、オリジナルを作るようになった大阪の3人組。彼らが今、自分たちにできることをとことんやったうえで、どこからも声が掛からなかったらバンドをやめようという覚悟の上、完成させたミニ・アルバムでついに全国デビュー。アクロバティックな演奏、ギミックを駆使したミックスともに過剰さの追求を"面白がってもらってなんぼ"とメンバーたちは考えているようだが面白いというひと言だけでは表せないカタルシスがここにはある。それは過剰さの追求が何かを突破するものすごいパワーに繋がっているからだろう。和メロが印象的な「さらば浮世写し絵の如く」で聴かせる男女ツイン・ヴォーカルをもっと聴きたい他、聴きながら、もっと!もっと!と期待が膨らむ全5曲を収録。
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ソライアオ
[c]onceple
先月リリースされたライヴ会場販売の『con[c]eple』と併せて2ndミニ・アルバムズという位置づけ。電子音が散りばめられた「アイズ」、歌謡曲的な「ループ」など、アレンジ面での新たな挑戦も増えて表現の幅が広がった。とはいえ無理に背伸びをしたような印象がないのは、真っ直ぐなバンド・サウンドという自分たちの核をしっかりと真ん中に据えているからであろう。前作『[b]luest』を聴いて自分たちの鳴らすべき音を正しく理解して実行することができる稀有なバンドだと感じていただけに、現体制での初音源はどうなるのだろうと思っていたが、心配は無用だったようだ。決してブレず、同時に前進を止めない音楽たちに、ソライアオのたくましさを実感させられる。
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それ以染に
時代にレクイエム
関西を中心に注目を集めるトライバル・サイケデリック・ポップ・バンド、それ以染にの1stミニ・アルバム。肉体性の高いグルーヴィなサウンドと、アンダーグラウンドな匂いから溢れ出す中毒性あるメロディが彼らの魅力だろう。民族音楽や、プログレ、サイケデリック・ロック、USインディー・ギター・ポップを混ぜ合わせ、独自の感性で作り上げたサウンドは、新しさもありながらどこかノスタルジック。個性的と言えばそうだけど、楽曲それぞれがあらゆる音楽ファンに訴えかけうるフックを持っているところが、彼らのポテンシャルの高さだろう。ジャンル分け出来ない不気味さも含め、今作を聴いてライヴをすぐにでも観たいと思ったのは僕だけじゃないはずだ。
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篠塚将行
DEMO
今年活動休止を発表したそれでも世界が続くならのヴォーカルでソングライターの篠塚将行の初ソロ・アルバム。彼のファンにはこんなことは馬の耳に念仏だろうけれど、篠塚という人は曲を作って歌わないとほんとに死んでしまうんじゃないかと、前向きな意味で思ってしまった。というのもここにある18曲はほとんどがアコギの弾き語りで、1テイク入魂の演奏と歌に彼自身が誰よりも息をしている実感があるに違いないからだ。苦しくて仕方ない人に"悲しみから立ち直らなくていい"、"君だけが君の友達さ"と歌い、時に怒りに任せて暴言を吐く。聴いていると自分も言葉を書いて歌えばいいんじゃないか? と思い始める。それが彼の狙いかもしれない。
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それでも世界が続くなら
死にたい彼女と流星群
他紙のインタビューで知ったことなのだが、彼らの独立はソングライターである篠塚将行の声帯手術のせいというより、機材車が大破し経済的に続行が難しいと判断したものの、彼以外のメンバーが存続のためにクラウドファンディングを発案したことにあったようだ。その際受け取ったファンからの存続を希望するメッセージが今作の動機なのだろう。相変わらず生きることは苦しいし困難なことではあるけれど、自分が作って鳴らす音楽を必要とする人がただ生きていてくれることが嬉しいという篠塚の独白は、100パーセント真実で、それを伝えるためにだけあるようなこのアルバムの純度は他の何ものにも変え難い。ファンでなくても"生きてるだけでいい"という言説が嘘くさく思えるとき、ここにひとつの根拠があることを思い出してほしい。
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それでも世界が続くなら
僕は君に会えない
ドラマーの脱退希望を受け音楽活動を一時中断したあと、4thミニ・アルバム『彼女はまだ音楽を辞めない』(2019年9月リリース)でリスタートしたそれでも世界が続くなら(それせか)。それに続く全8曲を収録した今作は、コロナ禍で閉塞感や苦境に対して多くの人が叫び声を上げるなかで、かき消されてしまう小さな声や諦めのため息、乾いた涙を流しシニカルに笑うしかないような人へと、真摯に語り掛ける。こうした世界になってもそれせかは、変わらない。気休めのような励ましで、あなたを"みんな"に押し込めることはしない。ただまっすぐに、あなたのことを歌う。定型のない、高まるセッションのように熱を帯びるアンサンブルと、そこに乗る言葉は鋭利だ。ただ、闇の濃さを知る人が描くそれは、とても温かくもある。
TOWERamazon
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それでも世界が続くなら
彼女はまだ音楽を辞めない
ドラマーが脱退し活動中止となった期間、ソングライター 篠塚将行(Vo/Gt)はバンドを辞めることも考えていたという。それでもまだ続けられると思える出会いがあり、メンバーである友達もこのバンドをやりたいと言ってくれて、自分ができることに思いを巡らせた。そして、自分にとっての音楽との付き合い方、音楽を通しての付き合い方を見つめながら、その心をあけすけに吐き出し、浮かび上がるグロテスクな感情の形や生々しく尖った言葉をそのままここにぶつけている。キャッチーさで惹くとか、共感や馴れ合いとかもなく、ただ誰かの痛みや苦しみ、不甲斐なさといったものと共振するような、ささやかでいて強いそれせかの歌が揃った。自分でしかできないことをもう一度突き詰める、淡々とした"続き"の作品だ。
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それでも世界が続くなら
それでも世界が続くなら
9月の活動中止を前にしたミニ・アルバム。今作は活動中止前から制作に向かっていたもので、今を盤に封じ込めたいというくらい、バンドとしていい状況や体感があり、それが自然に曲となり音となった。必然的にセルフ・タイトルとなったアルバムだ。活動中止は本人たちも青天の霹靂で、シナリオどおりにはいかないバンドや人間のリアルも痛感させられる。そして作品は、とても素晴らしい。篠塚将行(Vo/Gt)が語る"マイノリティの僕には歌われなかった歌、大衆音楽"と、いつからか刀を鞘に収めてしまい形骸化した愛すべきロック、あるいは音楽産業へのカウンターとして、バンドの本質、姿勢を音と歌にした。何か立派な言葉よりも、この音、この叫び、この軋みが誰かの居場所になればいい。そんな想いがある。
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それでも世界が続くなら
僕は音楽で殴り返したい
ソングライターの篠塚将行(Vo/Gt)はこのベスト盤について、自分にベストな人生があったのか、冠するなら"ワースト"ではないか、とインタビューで語っていた。それでも世界が続くならの音楽は、いじめ、疎外感、絶望など、憔悴して暗い淵を覗き込んでしまう魔の時をも綴り、それでも生に執着して反撃の狼煙を上げる、そんな様々な瞬間を、生々しく、時に優しく、音と言葉に刻み込んできた。泣き叫ぶように、また言葉をポツポツと置くように歌い、心模様と比例して軋みを上げるヘヴィなアンサンブルで放たれる音楽は、誰かの苦しみや叫びと共振して、その人の武器や支えになった。今作はそのひとつの歴史であり、まだそれが終わりでないことも告げる作品になっている。届くべきところに届いてほしい音楽だ。
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それでも世界が続くなら
消える世界と十日間
1曲目「人間の屑」から、曲ができた順番に収録されたドキュメント的なフル・アルバム。今作もまた一発録音で、4人がかき鳴らす音、呼吸、それらが絡み合いせめぎ合って生む音像を盤に閉じ込めた。緊張感のある咆哮や物思いの温度感を表現していくエフェクティヴなギターやベース、心の動きとシンクロするドラムなど、サウンドにはいわゆるJ-POP的なキャッチーさも優しい言葉もない。そういったところから零れてしまう、もっとワクワクを探している人や、あるいは今ある毎日とうまくフィットできない人と、うまく繋がってほしい音楽だ。このバンドの心と言えるものにより意識的となって、力強く刻印していったアルバム。独りの痛みも闇も安らぎも知るからこその音楽やロックに、出会ってみてほしい。
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それでも世界が続くなら
消える世界のイヴ/アダムの林檎
2016年9月に2ndミニ・アルバム『52Hzの鯨』をリリースしたバンド、それでも世界が続くならの新作はTOWER RECORDS限定シングル。両A面となっており、それぞれ、個の存在、そこにある生の輝きを歌う。生きたいと戦いながらも、もう疲労困憊で、ノーガートで立ち尽くすしかない人がいる。そんなか弱き人の心を、彼らは音楽に映す。Track.1の"あなたより苦しんでる人がいる"という正論は、なぐさめの顔をした暴力的な言葉となりうることを、"生きて 生きてみたいの"というつぶやきに託した。余計な説明がないぶん痛切で、でもきっと誰かにとっては差し伸べられた手のひらになるんだろう。重厚なドラムときしみをあげるギターによるオルタナティヴなサウンドで、深く深く刺す。届くべき人に、確実に届いてほしい曲だ。
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それでも世界が続くなら
52Hzの鯨
2011年に結成し、ライヴハウスを根城にリアルな感情を歌にして放ち、ロック・バンドとして生きるスピリットをそのアンサンブルで刻み込んでいくバンド、それでも世界が続くなら。ベルウッド・レコード内のレーベル"ROCKBELL records"へと籍を移してリリースとなるこのミニ・アルバムも、そうした彼らの生き様や今のそのままの姿を焼きつけたような作品となった。他者とわかり合うことの難しさ、それでもコミュニケーションを図ろうと傷ついたり傷つけたり、自棄になったり、皮肉も込めたり、どれも生傷が癒えないままの状態でパッケージされている。ソングライター篠塚将行(Vo/Gt)が、自らの体験や心の内を覗き続けて記したまっすぐな言葉は、聴く人によってあたたかく、心強く響く。或いはきりきりと痛みが走るかもしれない。
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それでも世界が続くなら
狐と葡萄
"それせか"のTOWER RECORDS限定ワンコイン・シングル。Track.1は、篠塚将行(Vo/Gt)が子供のころ、イジメに遭っていた同級生を守ろうとしたことで自分が被害者になったことに起因しつつ、そのときは言えなかった"懺悔の歌"なのだという。これ以上ないほどシンプルで疾走する8ビートに乗せて歌われる思いは、守るとか助けるというより"話がしたかった"ということ。そして後悔にとらわれながらも生きたいという今の思いだ。カップリングのTrack.2は正しいことをしても許されない世の中と、傷つけてしまっても許してくれる身近な対象というコントラストにギクリとさせられるし、Track.3では自己満足を思い知らされた瞬間を思い出させるような表現が続く。ナイーヴと言ってしまえばそれまでだが、彼らはその芯を磨き続ける。
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