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DISC REVIEW

Sweet Home

No Buses

Sweet Home

"フジロック"への出演も果たし注目を集めるNo Busesの3rdアルバムが到着した。かわいいテディベアが不気味な雰囲気を纏ったジャケットと、"Sweet Home"というタイトルが不穏に響き合う本作。UKロックの影響を色濃く反映する彼らの楽曲は、前作に比べダークでよりダウナーな印象に。デジタル・サウンドも取り入れ深みを増した音使い、起伏に富んだメロディにエモーショナルなヴォーカルと、その進化は一目瞭然だ。さらにラッパー BIMを迎えた「Daydream Believer」は、タイトなビートとスリリングなラップの掛け合いがヒリつく緊張感を生み、本作のいいアクセントになっている。表現を深化させ独自のサウンドを追求したことで、よりロック・バンドとしてタフになったNo Busesを堪能してほしい。

感情

w.o.d.

感情

自身4枚目のフル・アルバムとなる本作は、苛立ちや愉楽などの"感情"を3ピースの爆音に昇華した1枚。"馬鹿にしてよ"、"見下してよ"と衝動的な歌詞が際立つ1曲目「リビド」では、現代社会に一矢報いてやろうといった鋭利な音像で圧倒する。愚かさを笑い飛ばす「馬鹿と虎馬」、複雑なビートで反骨心を煽る「Dodamba」など、踊れる曲が連なるセクションも聴き応え抜群。迎えた終盤、ウクライナの国花を冠した「Sunflower」では、浮遊感に満ちたサウンドが忘れていた日常への感謝を蘇らせ、ラストの「オレンジ」で脳裏に浮かぶ橙色の空は、混沌とした時代で生きていく意義を再確認するきっかけをもたらしてくれる。とどのつまり"感情"が流れ着く先に広がるのは美しい世界なのだと、全10曲をもって証明しているかのようだ。

ROMANTICA

浪漫革命

ROMANTICA

ルーツの幅広さはもちろんのこと、そこから繰り広げる楽曲もロック、ファンク、ソウル、シティ・ポップとバリエーション豊かな浪漫革命の約2年ぶり、3枚目のアルバム。尽きることのない音楽への愛、そこに懸ける貪欲な探究心、それをただひたすらに楽しむ姿勢はそのままに、"ポップ"というところに焦点を合わせ、どこか振り切ったかのような印象を受ける今作。その中で一貫しているのはやはり"ロマン"で、どの曲にも彼らなりのロマンが溢れている。グルーヴィなリズムも、爽快なギターも、ドラマチックな歌詞も、「月9」での軽やかなラップも最高だ。ポッドキャスター、岡田康太とのコラボで話題を呼んだ「優しいウソで」も収録。変わらぬ無邪気さも逃さずに、とことん味わいつくしてほしい。

efforts

the paddles

efforts

大阪寝屋川発3ピース・バンドの3rdミニ・アルバム。ポジティヴ且つストレートなサウンドに乗せ、どうしようもない日々の感情を吐露する。自身と世界を冷静に見つめているからか、言葉は胸に迫るものがあり、柄須賀皇司の爽やかで耳心地のよい歌声がそれをまた助長するかのようだ。どんな状況でも、それがたとえ"不幸せ"な状況であったとしても、望みを求めさえすれば必ず希望へと繋がる。いつの間にか見つけづらくなってしまった大切なことをそっと教えてくれるかのような「不幸せ」から始まり、不安、焦燥、迷い、苛立ち、矛盾への葛藤は続く。そんな彼らが最後"君が思う幸せが僕の幸せ"(「好きな気持ち」)と歌うからこそ、それはとてもリアルで、美しく響く。小細工なしのど直球な1枚。

美しいあなた

S.O.H.B

美しいあなた

ベールに包まれた音楽ユニット、S.O.H.B(シーズンズオブハーベッドルーム)。透き通った特徴的な歌声が、リラックスしたムードを醸しながらも芯の強さを持ち、透明感漂うサウンドと美しい旋律に乗って心に刺さる。そんなS.O.H.Bによる初のEP『美しいあなた』には、"大切な人"をテーマにした4曲が収録された。忘れられない人への想いを綴った夕暮れ時に聴きたい1曲「オレンジ」、切なさが滲むまっすぐな片思いソング「夜明け前」、音数を絞ったデジタル・サウンドと英語詞が本作の中で異彩を放つ「Warm Night」、冬の白い吐息のような冷たさと浮遊感を纏い"孤独"や"命"を歌う「きらめき」。その季節、時間帯の空気感を閉じ込めた、情景が浮かぶサウンドと歌声が美しい、心の琴線に触れる1枚。

New Attitude

T-iD

New Attitude

俳優、声優、ラッパー、作詞家など様々なフィールドで活動し、2021年にはAcademic BANANAとのコラボ曲を発表した井出卓也(Takuya IDE)が、"T-iD"名義でリリースする初のEP。ヒップホップ/ラップとの出会いと信念を綴った「歌の神様」に始まり、日々の葛藤をポジティヴに昇華する「快晴」、アグレッシヴなビートでさらなる高みへ昇る決意を歌う「STAGE2 feat.KiDD」、荒々しく社会を斬る「Whatever」など、自身のスタイルを生々しくも等身大のリリックで表明した6曲を収録。固いライミングと鮮やかなフロウも手伝って、飾らないリアルな生き様をリスナーへとダイレクトに伝えている。名刺代わりに相応しく、この先にも期待の持てる1枚だ。

アポカリプス

チリヌルヲワカ

アポカリプス

黙示/啓示を意味する"アポカリプス"をタイトルに冠し、収録曲7曲のタイトルをすべて漢字1文字で統一するなど、コンセプチュアルな作品となったチリヌルヲワカの13thアルバム。現代の鬱屈とした空気感がそのままパッケージされた本作ではメランコリーな心情がありのまま描写され、ユウ(Gt/Vo)の詩的な言語感覚も遺憾なく発揮されている。"命"、"影"など人生で誰もが直面するシンプルな7文字を冠したことで、一見パーソナルに聴こえる言葉でも、最後には普遍性を持って響く。また本作では前作に続きエンジニアに南石聡巳を招聘。洗練されたプログレッシヴ・サウンドを前面に押し出し、人生の諦念を吐露したヘヴィな作品ではあるが、最終的には"光"に行き着くという彼らなりの救済もしっかり用意されている。

UP to ME

BiSH

UP to ME

BiSHの12ヶ月連続リリース第9弾シングル。表題曲「UP to ME」は、国立科学博物館 特別展"毒"のタイアップ・ソングということで、歪んだ歌とサウンドで毒をまき散らすような印象を受ける仕上がりに。もがき続け、足掻き続けながら前へ前へと進んでいく意志を感じさせる言葉の節々が、彼女たちがこれまで歩んできた道を想起させる。カップリングの「YOUTH」は、メンバーのセントチヒロ・チッチが作詞だけでなく作曲まで手掛けた王道のメロコア・ナンバー。"スピーカーの中生きている/僕等の命たち"という歌詞は、解散を控えた彼女たちが歌うからこそグッと来るものがある。チッチの中にある熱さ、優しさを、隣で一緒に歩いてきたメンバーがそれぞれの個性を発揮しつつ歌う様もエモーショナルだ。

戀愛大全

ドレスコーズ

戀愛大全

暑すぎてめまいが起きるような夏の光、それを映像的に見ているような感覚、ディストピアそのものの現実と別の位相で起きている様々なラヴ・ストーリーが、儚くも強く息づく全10曲。1曲目の「ナイトクロールライダー」では、アルバムのテーマを貫通するような、"この夏をどう生きるのか"が提示されている印象はあるが、MVも素晴らしい「聖者」はTHE SMITHSを思わせる美しいアルペジオとリバーブが、世界なんてどうでもいい、この恋だけが本当なのだという気持ちの鮮度を上げる。ドレスコーズ流シティ・ポップ再解釈と言えそうな「夏の調べ」も新鮮だし、ドリーム・ポップにトロピカルなビートが混ざり込んだ「ラストナイト」もとびきりスイートだ。架空の物語を創造するためのシンセ・サウンドも効果的すぎるほど幻惑する。

身体と心と音楽について

Half time Old

身体と心と音楽について

格段のスケールアップが頼もしい4thフル・アルバム。"成長"をテーマに鬼頭大晴(Vo/Gt)が書き進めていった曲の数々を、曲によってはアレンジャーも迎えつつ、メンバー全員でアレンジしていった結果、これまで以上に広がった曲の振り幅は、今回Half time Oldの4人が成し遂げた成長と考えるべきだろう。ホーンも鳴る「Night Walker」、2ビートも使った、畳み掛けるような演奏が痛快な「dB」、ロック・バラードの「Come Morning」というふうに、曲ごとに相応しいアレンジやサウンド・メイキングを追求しているから聴き応えは満点。「Night Walker」をはじめ、自家薬籠中のものにしたファンキーなサウンドは今後、バンドの新たな持ち味になっていきそうだ。

COLORS

LEEVELLES

COLORS

4人組ロック・バンド LEEVELLESの2ndアルバム。切れ味鋭い歌詞が光る激しいギター・ロック「killing me!~輪廻転生~」、ハイトーン・ヴォイスが爽やかに吹き抜ける「王様のメロディ」、柔らかな王道ミディアム・ロック・バラード「ふたり星」、浮遊感漂うデジタル・サウンドで構築された「呼応 (instrumental)」、流れるようなピアノが美しい「Milkyway」、疾走感溢れるシンセ・ポップ「無限未来」など、"COLORS"というタイトルに相応しい、とにかく多彩でジャンルレスな11曲が収録された。時にファンタジックで時にリアルな歌詞もまた、本作の彩りをより豊かにしている。ギター・ロックの枠にとらわれない攻めの姿勢で、新たな可能性、無限に広がる未来を切り開く進化系ロック・バンドに注目。

天性のドロドロE.P.

Grand chocol8(ex-chocol8 syndrome)

天性のドロドロE.P.

今年4月、Grand chocol8として新たなスタートを切った新生ちょこはちの記念すべき1st EP。タイトルが秀逸だ。ちょっとアンニュイなトラックに、取り柄も才能もない存在をただただ肯定するかのような歌詞が印象的。とかく自己嫌悪や罪悪感に苛まれがちな人間にとっては、かなりの度合で救われるであろう1曲だ。カップリングの「宵の星」は懐かしさが漂うサウンドに過去の青春を絡め、「郷愁」では現在進行形の青春から少し先の未来を描いた。過去、現在、未来という流れの中に今現在のちょこはちがしっかり表れていることを感じる。まったく別モノのバンドになったという言葉通り3人の新たな挑戦と、そこから得られた自信が凝縮されたかのような1枚。ここからどう進んでいくのかが非常に楽しみでもある。

革命前夜、

あれくん

革命前夜、

暗いニュースで溢れがちな今を生きるリスナーへ向け、ポジティヴをテーマに制作したEP。だが"前向きだけどまだどこか後ろ向きなあなたへ"というコメントも発表している通り、そのポジティヴさは手放しであっけらかんとしたものではなく、現実的な目線も孕んでいるところが肝であり、これまでもどこか不安な気持ちに寄り添ってきたあれくんならではの作品になっている。環境音を積極的に取り入れ、より生活に馴染む音像になった「diary」や、ストリングスでスケールを増した「いつか」は本作のためにリアレンジされたもの。ボカロP 水野あつとの共作曲「ゆびきり」では両者の武器を生かした温かなピアノ・ポップを響かせ、「ツナギアイ」では隙間のあるサウンドに乗せられたグルーヴ感のあるリリックがあれくんとしては新鮮だ。

嗜好性

YONA YONA WEEKENDERS

嗜好性

"思考"のグルーヴと打ち出された先行曲「考え中」や作品名"嗜好性"など、スマートなサウンドに日本語を乗せ冒頭からユーモアを感じさせるYONA YONAのEPだが、その「考え中」は、白か黒かで物事の決断や選択を迫られ迷いがちな私たちに、考えることも悪くないなと思わせてもくれた。さらに1989年生まれの彼らの等身大の好きがパッケージされた「1989's」、シャッフル・ビート・ポップ「Ice Cream Lovers」、蔡 忠浩(bonobos)との抜群のツインVo、ぽっと明かりを灯すような優しいリズム隊、丸みのあるギターが夜を煌めかせる「夜行性」と続き、まさに今前進しようとする瞬間を描いた推進力のあるダンス・チューン「月曜のダンス」で締める。至高のグッド・ミュージックに身を任せてみてほしい。

Dear

ES-TRUS

Dear

初の全国流通となった1stミニ・アルバム『True or False』から約2年半。2ndミニ・アルバムではライヴ仕様のラウドなサウンドを封印し、"この間に何があったの!?"と思わせるような、歌を重要視したサウンド作りに変貌した。しかし表現方法は変われど、kyoka(Vo)の圧倒的な歌唱力や独創的な歌詞の世界観は凄みを増すばかりで、よりバンドの個性や存在感を増した感のある今作。バラード曲「華向」で始まる5曲は、日々の生活に寄り添うような身近さと、"僕と君"の物語を1枚を通じて綴るような物語性があり、聴き手を選ばないポピュラリティと、"これは私の歌だ"と思わせる共感性を併せ持っている。ここから大きく飛躍していくであろう、ES-TRUSのターニング・ポイントとなる重要な1枚だと思う。

中吉

私立恵比寿中学

中吉

メジャー・デビュー10周年を記念するアルバムが完成。ファン投票をベースにメンバー/スタッフで構成したCD1では、メジャー・デビュー曲「仮契約のシンデレラ」から始まり、メンバーの変遷も含めた10年の軌跡を振り返りながら、いかにエビ中の幅が広がっていったのかを改めて感じることができる。CD2は、2022年の新曲4曲や、リレコーディング曲、新たに制作された「エビ中出席番号の歌 その3」などが収録され、最新のエビ中を表現。さらに初回生産限定盤には、CD3として約80分にわたる「エビ中 中吉ノンストップミックス by DJ和」、Blu-rayにはエビ中10年の歴史を綴ったドキュメント・ムービーが収録された。エビ中をたっぷり詰め込んだ、エビざんまいな作品だ。

獣

モノノケノノモ

メンバー内に作詞作曲ができるバンドマン兼ボカロPがふたり在籍するという、特殊且つ強力な布陣で構成されたモノノケノノモの1stアルバム。YM(Vo/Gt)、梨本うい(Ba)の個性が存分に発揮された曲は、メロディのキャッチーさや3ピースのシンプルなバンド・サウンドも痛快で、バンドの魅力や面白さが一発で伝わる。こだわりのリフや歌詞からは、"ゆる~く楽しくやってます"というバンド・スタイルの奥にある、"本当に表現したいこと"も見え隠れし、言葉にできない君への想いを綴った「ラブソングが響いている」にグッときたし、このバンドの本質が見えた気がした。苛立ちや葛藤を歌詞に綴り、情けなく惨めで無様な自分を受け入れ、吐き出したときに見える仄かな光や希望まで表現しきれているところも素晴らしい。

詩になる

HERE

詩になる

"うたになる"でも"歌になる"でもなく言葉に重きを置いた"詩になる"。人生において抗えない場面に直面したとき目の前にあったのは生も死も含めて"心"が通じ合えているかどうか。森羅万象の中で表現に向き合った尾形回帰(Vo)の本気作。前アルバムで強固となったサウンドも絶頂を極め、武田将幸と三橋隼人のギターの音色も華やかで艶が増している。Track.2はインビシブルマンズデスベッド時代の盟友、西井慶太をアレンジャーに迎えた軽快なロック・チューン。スカ調のビートが刻まれるところが興味深い。Track.3は壱(Support Ba)、角谷正史(Support Dr/→SCHOOL←)が転調を繰り返す複雑な曲を支えておりライヴでの重要曲になる予感。新境地と対峙したバンドの希望を感じる全4曲。

ザ・クロマニヨンズ ツアー SIX KICKS ROCK&ROLL

ザ・クロマニヨンズ

ザ・クロマニヨンズ ツアー SIX KICKS ROCK&ROLL

6ヶ月連続でシングルをリリース、その全曲を収録したアルバムを引っ提げ2年ぶりの全国ツアーを行ったザ・クロマニヨンズ。そんなコロナ禍を駆け抜けた一大プロジェクト"SIX KICKS ROCK&ROLL"を締めくくるツアーの模様を収めた映像作品が到着した。音源同様多くは語らず魂をぶつけるロック・スターと、それに応えるように力強く拳を突き上げるオーディエンス。声は出せずとも心で対話しているのが伝わってくる臨場感たっぷりの映像は、こんな状況にも屈せず、バンドとファンによって貫かれた"ロックンロールのあるべき姿"を映す。垣間見えるメンバーのお茶目な姿にも注目。そしてDISC2にはシングル曲6作のミュージック・ビデオが収録された。コラージュ、アニメーション、CGと初の試みも多く、こちらも見応えは十分だ。

TIGHTROPE

9mm Parabellum Bullet

TIGHTROPE

前作から約3年ぶり、9作目となるフル・アルバム。ヘヴィなサウンドでガツンと攻める「Hourglass」に始まり、お祭り感のある「One More Time」に続いて、疾走感と爽やかなメロディに彩られた「All We Need Is Summer Day」と、アルバム冒頭からグイグイ引き込むキラー・チューンで畳み掛ける。9mm独特の、歌謡曲的な響きと和のテイスト、そして緊張感がバシバシ伝わる重厚なバンド・アンサンブルがきれいに交わって、アルバム全体で体感10分弱。THE ALFEEもビックリな暑苦しいメロディとコテコテのメタル、そこにオリエンタルなリフ、激しく手数の多いドラムと、情報量がとにかく多い。多様な活動や音楽表現に挑んできた彼らだからこそできた、説得力のあるアルバム。