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DISC REVIEW

Come on!!!

the telephones

Come on!!!

ライヴへの厳しい制限があった最中に会場限定CDを販売するなど、コロナ禍でも挑み続け"バカみたいに踊れる空間"を届けてきたテレフォンズの集大成的アルバムが完成。世の中のピリついたムードに反し、英語でのダラっとした会話から「Adventure Time」が始まると、次第に悩みや邪念は消え去り、ひたすら音楽に没頭しろと歌う「Feel bad」に後押しされ、気づけば何も考えずダンサブルなビートに身をゆだねている自分がいる。今までとはひと味違うサウンドがきらめく「Yellow Panda」やチャイナ感漂うクセの強い1曲「Whoa cha」など、中毒性抜群の楽曲が空っぽになった頭をぐるぐる回って離れない。息の詰まる日々から"Come on!!!"と誘い出し、非日常な世界へと導く渾身のダンス・ナンバー10曲。

ビボウロク

Lenny code fiction

ビボウロク

予定していたツアーが再三にわたり延期になるなど、コロナ禍で辛酸を嘗めてきたLenny code fictionだが、3年ぶりのリリースとなった6thシングル『ビボウロク』は、思うようにバンド活動が行えなかった期間も決して無駄ではなかったことを確信づける1枚だ。片桐 航(Vo/Gt)が自身の弱さと向き合ったことで生まれたという「ビボウロク」は、人生で貰った"優しさ"に励まされながら生きる心情を歌った温かくも力強さを感じさせるナンバー。c/wには反骨心と不屈の精神を滾らせるロック・チューン「Pretty Dirty」と、バンド第2章の始まりを告げる「TOKYO」が収録された。この3曲を通して聴いたとき誰もが"新生Lenny code fiction"の姿に胸を打たれることだろう。

from here to there

Ryu Matsuyama

from here to there

フジテレビのドラマ"オールドファッションカップケーキ"やCMタイアップ、ラジオなどでもその名が耳目に触れることが増えてきたRyu Matsuyamaの新作。Ryuが注目のSSW 優河と共に澄んだツインVoを響かせる「kid」、ラッパー BIMと"普通とは?"をテーマに、グルーヴ感充分に絡み合う「ordinary people」、2年ぶりにmabanua(Ovall)と共作し、洒脱且つ後半の展開も胸キュンなポップ・サウンドで包み込む「blue blur」など、今回もハイセンスなゲストが参加。「hands」ではShingo Suzuki(Ovall)が共同編曲し、"当たり前の生活"に照準を当てた詞を際立てるアレンジで聴かせる。けば立った私たちの気持ちを鎮め、浄化する、今多くの人に届く意味がある作品。

流転

SWANKY DOGS

流転

時の流れは止められず、人の気持ちも移ろうもので、無情に思えるほどに変わらないものなどない。だからこそ、まったく同じ日は訪れないし刹那の美しさも実感する。そしてそれでも永遠というものに憧れてしまう。結成15周年を迎えるSWANKY DOGSによる3年ぶりのフル・アルバム『流転』には、タイトル通りそんな日々の中での心の機微を描いた曲が揃っている。グッド・メロディとめまぐるしい毎日を必死で生きようとする直球のメッセージがライヴでも映えそうな「がらんどう」、"声になって 傍にいられたら"と体温の感じられる歌唱で届ける「こえ」、かっこつかない生活に寄り添う「ルチル」などを経て、作品を締めくくる「gift」のラストの一節まで聴き終えたとき、なんだか昨日よりも優しくなれる気がした。

自分にずっと恋して生きたい

輪廻

自分にずっと恋して生きたい

3ピース・ガールズ・バンド 輪廻が届ける1stミニ・アルバム『自分にずっと恋して生きたい』は、タイトル通り"自己肯定"をコンセプトに据えた作品となった。本作にはナルシシズムに浸るバンドマンを皮肉ったロック・ナンバー「バンドマンきらいかも」をはじめ、かわいらしくキャッチーなメロディに乗せた自分讃歌「あいらぶみー」、歪んだベースがダウナーな雰囲気を漂わせる「actor」、3人でヴォーカルを取ったファスト・チューン「走れ!リンネ」など全6曲を収録。全編を通して自己愛を歌っているが、その筆致は大胆でありつつ繊細でポジティヴ一辺倒ではない。自己肯定の大切さを説く一方で、周囲への劣等感や苛立ちもストレートに描写。メンバー全員が20歳という現在の輪廻にしか鳴らせないリアリティに圧倒される。

Hyper Cracker

ASP

Hyper Cracker

BiSHらが所属するWACKの7人組グループ ASPがメジャー・デビュー。これまでパンクやガレージ・ロックを軸にしてきた彼女たちだが、本作の表題曲は、ハイパーポップを踏襲して新境地で魅せる楽曲だ。プロデューサー/DJのYohji Igarashiが楽曲プロデュース/サウンドメイクを務め、作詞作曲はODD Foot WorksのPecori(Rap)が担当し、新たなASP像を創造。心地よくグルーヴィなサウンドと、これまでの楽曲で培ってきたエモーショナルな歌唱の融合を個性として光らせた。オルタナティヴ・ロック調の「Why don't you KiLL me??」、再録曲「A Song of Punk 2022」で"らしさ"を失っていないことを提示しているのも好印象だ。次回作にも期待。

P.S. モノローグ

GOOD ON THE REEL

P.S. モノローグ

"P.S."(=追伸)、"モノローグ"(=独白)というタイトルが付けられた本作は、まさに心の内が綴られた手紙のようにメッセージ性の強い作品となった。日々生まれる気づきや悩みを投影した歌詞は、同じ時代を生きるひとりの人間の言葉としてリアルさをもって心に迫ってくる。一方サウンド面では、ロックからエレクトロ、シティ・ポップまで曲ごとにがらりと表情を変え、宇佐美友啓(Ba)が初めて作曲を手掛けた「ファンファーレ」や、アレンジ/ピアノ/ギターで杉本雄治(WEAVER/Pf/Vo)が参加した「同じ空の下で」など、新たなエッセンスも加わり、さらなる振り幅の広さを見せる。ここまでキャリアを重ねてもなお貪欲に進化を続ける姿勢を崩さず、バンド史上最もバラエティ豊かでチャレンジングなアルバムを完成させた。

啓蒙して、尋常に

そこに鳴る

啓蒙して、尋常に

歌えるドラマー、斎藤翔斗を正規メンバーに迎え、3声のコーラスを本格的に追求した6thミニ・アルバム。ラストを締めくくる表題曲、トップを飾る「暁を担う」をはじめ、これまで通り超絶テクニックに裏打ちされたエクストリーム・サウンドを鳴らしながら、ポップスとしてアピールする力が増した印象があるのは、メンバーによると、3声のコーラスによるところが大きいそうだ。その他、打ち込みのサウンドを使いながら、ダンサブルなビートや我流のラップにアプローチしたサウンドが斬新な「bad blood」を含む全6曲に、10周年アニバーサリー・ライヴの模様を収録したDVDをカップリング。さらなる飛躍に向かう新たな起点となる作品とメンバーたちは考えているようだ。

このままでいたい

挫・人間

このままでいたい

22年7月に脱退した夏目創太(Gt/Cho)が参加した最後の作品となったシングル。どんなに前向きな別れでも、その気持ちの奥底で誰しもが思い浮かべるひと言をタイトルにした表題曲は、ロマンチックでノスタルジックなポップ・ソングであることに加え、リスナーを笑わせる要素が一切ないという意味でも異色曲と言えそうだ。その一方でともに挫・人間流のディスコ・サウンドに乗せて、現代社会を斬るブラック・ユーモア満載の「人類終了のおしらせ」、モテない男のリビドーを歌った「B・S・S~ボクが先に好きだったのに~」は、まさに"最後のナゴムの遺伝子"と謳われる彼らの真骨頂。初回限定盤はそんな3曲に21年8月4日の渋谷CLUB QUATTROワンマン公演を完全収録したDVDをカップリング。

メタフィクション

Aland

メタフィクション

2021年7月にKOGA RECORDSからデビューした3ピース・バンド、Alandの2ndミニ・アルバム。1曲目の「危険は危ない」に早速驚かされることだろう。マス・ロックをバックグラウンドに持つバンドだけに、転調や変拍子は当たり前で、どの楽器も手数が多い。音それ自体だけでなくサビは2段構え、さらに最後にもう一盛り上がり設ける楽曲構成も含め、過剰に感じられるほど情報量が多い。止まったら死ぬマグロのように、自分たち自身に飽きてしまったら終わりなのだと言わんばかりに、熱量を発散するバンド・サウンド、音の洪水に打たれてみてほしい。そういった自身の衝動を大切にしつつも、一点突破に留まらないアプローチからバンドの可能性、次作以降の兆しが感じられる。

インナージャーニー

インナージャーニー

インナージャーニー

自分の心情を率直に切り取り、時に情景に重ね合わせるカモシタサラの濁りのないまっすぐな歌を飾らず、かといって伴奏になることなくバンドの肉体性で推進する、インナージャーニーの1stアルバムが完成。大きなグルーヴのハチロクのリズムで、価値観の異なる人も認めて生きようとする「わかりあえたなら」での力強いスタート、アルバム・ミックスでグランジ感が増した「エンドロール」の自分だけは自分を肯定してあげたい気持ちのリアルさ、珍しく荒涼としたイメージのマイナー・コードで始まり、異国の少女から身近な存在まで、悲しみを抱えたまま自分であれと歌う「少女」、バンドの代表曲とも言える「グッバイ来世でまた会おう」、myeahnsの逸見亮太(Vo)の提供曲「とがるぺん」など、バンドの現在がわかる全10曲。

shave off

Aqilla

shave off

"ロック"という言葉だけでは到底言い表せない緻密な構成とアレンジ、独特なニュアンスによって展開される12曲――それでもこれだけまっすぐなロックに聴こえてしまうのは、彼女の覚悟や想いがすべての曲に刻まれているからなのだろう。デビューから2年の軌跡をつめ込んだ1stアルバムは、彼女のスタートとも言える1枚となった。どの曲もリード曲になり得るほどのポテンシャルを持ち、"shave off"(削ぎ落とす)というタイトル通り、ブラッシュアップされた彼女がその曲たちを行き来する。極限まで振り切った歌声には嘘偽りがなく、だからこそとても愛おしい。自信と覚悟がみなぎる今作には、Aqillaの本質そのものが表れた。恐れなくただひたすらに楽しむ様子も印象的。ここからまた彼女のロック人生が始まる。

SKELETON

Fusee

SKELETON

前作『Raft.』から約1年3ヶ月ぶり2作目のEP。オープニングで高らかに歌われるのは"あなたを照らす光となれ"という宣言。その後はスピード感あふれるサウンドに乗せて、他者の声に惑わされながらもがく人の心を歌った「voice」、人前で涙を見せられない人にさりげなく寄り添う爽やかなナンバー「空に泣く君」と続き、聴く人を孤独にさせまいというバンドの真摯な姿勢が垣間見える。各楽器の表現の幅も前作から広がった印象だ。想いを伝えられないまま終わった恋の歌であり、文学的な言葉選びが今作の中でも異色な「処暑」を経て、等身大の言葉で人生を捉えた「恋」で幕を閉じる今作。未来を目掛けてやや背伸びしている部分も含めて、結成4年目のバンドの"今"ならではの表現が詰まっている。

strange world's end

strange world's end

strange world's end

対世間だけなら、怒りのベクトルも外を向くだろうが、人間の矛盾や虚しさに誠実に対峙した音楽を聴くと、ジャンルを越えてあらゆる人に刺さる表現が立ち上がる。活動約16年にしてついにセルフ・タイトルの3rdアルバムとなった本作。ドラムのフルカワリュウイチが正式メンバーとしてレコーディングに参加したことで、3ピースの骨格は安定し、且つ3リズム以外にパーカッションやシンセ、シンセ・ストリングスなどを導入しても揺らがないトライアングルが組み上がった印象だ。「暴発」でサイレンのように聴こえるギターや、助けを求める"メーデー"のリフレインは苦しくもリアルだし、いわゆる誹謗中傷や冷笑系に対する徹底した断罪を歌う「逆エヴォリューション」の、震えるような怒りなど、目を背けられない全10曲。

INSTRUMENTALS-∞

UVERworld

INSTRUMENTALS-∞

たとえメイン武器を使えない状態だとしても、結局は戦術とチームワークと闘志で勝ってしまうヒーロー映画のように。UVERworldの音楽はTAKUYA∞の歌をぶっこ抜いたしても、目茶苦茶かっけーインスト曲として成立してしまうことがここで証明されたようだ。これまで発表されてきたものや、このアルバムのために新規インスト化したものを2枚組全33曲に編纂した今作は、コアファン向けのスペシャリテ。作業用BGMとしてもおすすめだが、結局は"真太郎(Dr)のキックが熾烈すぎる"、"信人(Ba)の音がこんな絡み方をしていたのか"、"彰の緻密なギター・フレーズがヤベぇ"、"克哉の弾くアコギの音が素晴らしい"、"誠果のサックスがエモくて最高"と作業に集中できない可能性も大!?

ピグマリオン

UVERworld

ピグマリオン

情け容赦のない日々が連続する現世にあってこそ、我々に問われているのは向き合う相手を容赦し理解していくことができるのかどうか? という点なのかもしれない。人に嫌われがちな虫や、孤立する独裁者を例にあげつつ"そこに立たなきゃ分からない"、"悲しみも 痛みも 感じ方も 違うから"と、寛容の表情を漂わせながら歌うTAKUYA∞と、包容力を滲ませながら温かな音を綴る各メンバーたちは、表現者としての発信と提示をここに具現化していると言えよう。ちなみに、タイトルに冠されている言葉は古代ローマ文学に由来する教育心理学用語、ピグマリオン効果からとったものであるようだが、彼らがここに託したのは未来への願いであるに違いない。簡単ではないにせよ、愛が地球を救えばいいのに......ね。

United

ビッケブランカ

United

5周年イヤーを締めくくる全国ツアーを前にリリースとなるEP。4月に配信リリースされた「Changes」を始めとした全4曲が映画、ドラマのタイアップ曲となっており、愛や大切なものが様々なモーメントで描かれた。「This Kiss」は、「ポニーテイル」を思い起こさせる爽やかさがあり、またソウルタッチのポップ・チューンで高揚感満点の恋の瞬間風速を記録する。一方「魔法のアト」はメロウなピアノとファルセットがエモーショナルな歌のミニマルさで、街の香りや誰かの温度を鮮やかに描いた。新機軸となった「Changes」は聴き手それぞれの心を映す鏡のような曲だろう。親しみと新鮮さとを同時に味わう新曲たちに加え、ライヴ音源も加わった、EPだがボリュームのある内容になっている。

瞳へ落ちるよレコード

あいみょん

瞳へ落ちるよレコード

あいみょんにとって3rdフル・アルバム『おいしいパスタがあると聞いて』から約2年ぶり、4枚目となるフル・アルバム。本作にはNHK総合"あいみょん 18祭"テーマ・ソング「双葉」をはじめ、初恋に取り憑かれた主人公の心情を歌った「初恋が泣いている」、生音と打ち込みが抱き合うラヴ・バラード「ハート」、自身の足跡を斬新な切り口で再確認する「インタビュー」など、スタンダードでありながら表現者としての進化も感じる13曲が収められている。日本全国の18歳世代1,000人と共演した"18祭"を成功裏に収めたあいみょんは、現在自身最大規模となる全国ツアーを開催中。今だからこそ本作は多くの人々の人生に寄り添い、どんな喜怒哀楽も大きなハートで受け止めてくれるだろう。

Humor

めいちゃん

Humor

歌い手出身、YouTubeグループ"肉チョモランマ"でも活躍するめいちゃん。初の武道館ワンマンを控え勢いに乗る彼の新作には、初アニメ・タイアップ曲「ラナ」やTikTok人気曲「小悪魔だってかまわない!」、川谷絵音書き下ろし曲「ズルい幻」など、カラフルでサイケデリックなジャケット同様、色とりどりのヴィヴィッドな楽曲たちが詰め込まれた。少年っぽさの残るまっすぐな歌声に、突き抜けるハイトーン・ヴォイス、力強いがなり、圧巻のビブラート、透き通るファルセットと高い技術を巧みに繰り出す、華美なアレンジにも負けない歌唱力が見事だ。そんな派手な曲が並ぶなか、シンプルなアレンジでしっとりと聴かせる「帰り道」で締めくくるギャップに意表を突かれる。"ユーモア"溢れる収録映像や封入特典にも注目。

Grateful For

スカイピース

Grateful For

4月に初の武道館ワンマンを成功に収めたスカイピースによる約2年ぶりのアルバム。YouTube登録者数だけでなく、ライヴの現場の集客も増やした彼らの新作は"感謝"をタイトルに掲げた表題曲から、とことん聴き手へのメッセージに溢れている。また、音楽的には☆イニ☆(じん)が影響を受けたというFUNKY MONKEY BABYSに通ずる、ラップを織り交ぜた彼ららしいポップなナンバーはもちろん、音数を絞ったチルでスタイリッシュなヒップホップや、ピコピコサウンド、オートチューンを使用したスペーシーな曲など、"中高生に人気のYouTuberユニット"と聞いただけではイメージできないほど実に幅広い。ファンを飽きさせない、且つ新たなリスナーを獲得していくパワーのあるエンターテイナーぶりが窺える。