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DISC REVIEW

T

Trouble Books & Mark Mcguire

TROUBLE BOOKS & Mark Mcguire

Trouble Books & Mark Mcguire

Mark Mcguireと、男女デュオのKeith FreundとLinda LejsovkaによるTROUBLE BOOKSのコラボレーション・アルバム。限定250枚のみのアナログという超限定でリリースされており、日本では入手困難だった作品にボーナス・トラックを1曲加えリリース。今作は真夏の蒸し暑い夜にリヴィングでのセッションによって作り上げられていったとのこと。TROUBLE BOOKSによる優しいギター・サウンド、男女のツイン・ヴォーカル、Mark Mcguireの暖かく柔らかな質感のエレクトロニクスが絡み合うアンビエントなベッド・ルーム・ソングが非常に心地良い。深い夏の夜にそっと寄り添う大人のポップ・ミュージック。

Overture

TRUE HONEY LAND

Overture

キャッチーなメロディをポップなサウンドに乗せる4人組バンド、TRUE HONEY LAND初の全国流通盤。"Overture"と付けたタイトルのとおり、バンドの始まりを告げるカラフルな1枚になった。男女混成メンバーによる豊かなコーラス・ワークを生かしたリード曲「青春賛歌」の他、周囲の雑音を振り払うように駆け抜けるソリッドなロック・ナンバー「takeview」、伝えたいことは言葉にしようと想いを込めたバラード曲「メッセージ」など、曲ごとに様々な表情を見せる。端正な曲作りから王道ポップスを目指すバンドの志向が窺えるが、夏月のクラシカルなピアノのフレーズや、ラウドロック好きというTaigaのやんちゃなベース・ラインが、バンドのはみ出した個性になっているのも面白い。

NEWTRAL

TRY TRY NIICHE

NEWTRAL

昨年夏に全国デビューしたTRY TRY NIICHEが初のフル・アルバムをリリース。これまで出してこなかった歌謡テイストの曲「溺れるなら青」(Track.2)をリード曲に選んでいることが象徴的だが、全体的にサウンド面における挑戦が目立つ。しかし彼らがもともと"新しいピアノ・ロック"で勝ち上がることを目的として結成されたバンドであることを考えれば、今回のような冒険作を作り上げたこと自体が核心的なのだ。そうして悩みあがきながらも挑み続け、進化を遂げていくこのバンドの姿は多くの人の内側に勇気を灯してくれることだろうし、"自分は自分、あなたはあなた"という前提を歌い続けてきたこのバンドなら、そのこともしっかり自覚できているはずだ。会心の1作!

FLOWERING

TRY TRY NIICHE

FLOWERING

キャッチーなメロディや引き出しの数の多さだってもちろん彼らの長所だが、きっとそれだけではない。音楽だけではすべてを変えられないと自覚し、自身の弱さも他者の弱さも理解できる誠実さこそがこのバンドの本質なのでは――ということを自ら証明してみせるような初の全国流通盤。心の内側と向き合い続けながら鳴らされた音楽にはきっと魔法が宿るはずだし、それに救われる人も少なくないはずだと私は思う。活動開始後、間もなくオーディションでグランプリを獲得、という傍から見たらシンデレラ・ストーリーのような来歴に辟易する人もいるかもしれないが、とにかくまずは聴いてみてほしい。闘うことも守ることも音楽の中で果たすと決めた意志の重さは、全6曲の音と言葉に滲み出ている。

CAMP

T.S.R.T.S

CAMP

2012年3月に活動を開始したばかりのT.S.R.T.Sが、早くもタワレコ限定1stミニ・アルバムをリリース。疾走感溢れるサビが印象的な「ヴェロニカ」を皮きりに、ライヴで聴いたら盛り上がること間違いなしのアップ・テンポのロック・ナンバーが次々と続く。時折入るコーラスが楽曲を華やかに彩り、沢山のアイディアが詰め込まれた密度の高い楽曲の数々に、これぞ始動したばかりのバンド特有の初期衝動、と思わずにやりとしてしまう。勿論、ただの力押しで終わるはずがない。「シュガーコーン」ではぐっとテンションを抑え、けれどもドラマティックにしっとりと歌い上げて魅せる。最後の「going in the sun」は、遊園地のメリーゴーランドのBGMのように楽しげでありながらどこか哀愁漂うサウンドで、楽しいアルバムを余韻たっぷりに締めくくっている。

Rogue To Redemption

TUK SMITH & THE RESTLESS HEARTS

Rogue To Redemption

往年のロック・スターたちを彷彿させるピュア・ロック・スタイルで、レトロ・ロック・ファンの好感度百万点の新世代ロックンローラー、Tuk Smith。そんな彼が率いるTUK SMITH & THE RESTLESS HEARTSにとって2作目のアルバムである『Rogue To Redemption』は、懐かしさのあるクラシック・ロックとマニア心をくすぐるハード・ロックに、Tuk Smithのルーツでもある70'sパンクの力強さ、グラム・ロックのドラマ性、パワー・ポップのキャッチーさ等が合わさった胸が弾む内容だ。絶妙にカッコ付けたリリック・センスも、1周回って新鮮で面白い。この『Rogue To Redemption』を引っ提げての初来日公演も決まり、勢いに乗るバンドの充実ぶりが窺える1作となっている。

Ballad Of A Misspent Youth

TUK SMITH & THE RESTLESS HEARTS

Ballad Of A Misspent Youth

70年代のグラマラスなロックを継承した"遅れて来たロック・スター"ことTuk Smith率いるTUK SMITH & THE RESTLESS HEARTS。MÖTLEY CRÜEとDEF LEPPARDのツアー・オープニング・アクトに抜擢(コロナ禍で開催は実現せず)されるなど、結成当初から注目の実力派だ。男臭いハード・ロックではなく、青春してる爽やかさがあって、聴く人を選ばない。懐古主義的ノスタルジックな魅力だけでなく、エネルギッシュなロックの魅力に気づいたMÅNESKIN以降の若いロック・リスナーにもリーチするフレッシュなサウンドは、ライヴハウスでもスタジアムでも輝きそうな柔軟性がある。日本盤のレトロ萌えポイントは、なんと言っても懐かしい邦題("しくじった青春のバラッド")。盤で買う特別感があっていい。

Nikki Nack

TUNE-YARDS

Nikki Nack

この春はARCADE FIREのオープニング・アクトとしてUSツアーに帯同した、tUnE-yArDsことMerrill Garbus。カリフォルニアを拠点に活動をする彼女の面白さは、アーティスティックで実験性に富んだハイブリッドなサウンドを、カラフルで、子どもたちをもワクワクさせるようなリズミカルでハッピーな音楽へと昇華してしまうこと。トライバルなビートや、隙間のたっぷりとあるサウンド、多重性のあるコーラスを巧みに組み合わせながら、ダンサブルなハレのサウンドを生みだし、また変則ビートやポリリズムでチルアウトさせる。楽器は最小限、リズム、ビートのバリエーションで、これほど色のある世界が描けるものかと気づかされる。MVなどで窺える彼女のファンキーなキャラクター、そしてパワフルな歌もビートをポップに彩っている。

Whokill

TUNE-YARDS

Whokill

生っぽい打楽器の音がループしたかと思ったら、いきなりシンセが切れ込み高揚感が上がり、吹奏楽器が楽しげな雰囲気を演出し、女性ヴォーカルがハミングする......。オープニング・ナンバー「My Country」でいきなり驚かされたこのスタイルを、どう表現したらいいのだろうか。M.I.Aのトライバルな感覚や、民族音楽なども取り込んで音楽の新たな可能性を見せたBjorkなど、ダンサブルで革新性を持った音楽と通じるものをTUNE-YARDSからは感じる。それとともに強烈な印象を与えるのが、このソロ・プロジェクトの主宰者Merrill Garbusの声の力。高音から低音、打楽器のようなリズムを奏でる声から穏やかなウィスパー・ヴォイスまで使い分ける多彩なヴォーカル・ワーク。そして、「Powa」や「You Yes You」のソウルフルさ。実験的かつ、"魂"を熱くする力がこの音楽にはある。

Small Town Talk

Turntable Films

Small Town Talk

ソングライターでフロントマンの井上陽介はGotchバンドのギタリストとして、そしてバンドそのものもくるりとの交流などを経て、リリースがない期間に耳目を集めるようになってきた感が。3年半以上ぶりの今作でも、アメリカのルーツ・ミュージックの部分は演奏のたしかさに感じることはあるけれど、全曲日本語になったことでより井上のヴォーカリストとしての心情の揺れに素直に寄り添える。作詞も例えば男女の別れのあとから始まる物語など、淡いがリアルな筆致も冴える。そして本作のキーは井上が敬愛するSandro Perriのミキシング、そして制作期間中によく聴いていたというCurtis Mayfieldの『There's No Place Like America Today』だろう。さらにバンドの存在感があらゆる層に届きそうな転機の1枚。

Yellow Yesterday

Turntable Films

Yellow Yesterday

井上陽介(Gt)を中心に京都で結成されたTurntable Films。2010年にsecond royalよりリリースされたデビュー・ミニ・アルバムから待望の1stフル・アルバムと言っていいだろう。一年かけて作られたという楽曲群はリズムよりもメロディにフォーカスが当てられより洗練され、とにかく音がいい。カントリーやフォークをベースにしながらも渋さは全くなく瑞々しくて軽やか。WILCOやBECK等に通ずる現代的なポップさを持ち合わせながらも、今作は「Animal’s Olives」等にあるようなサイケデリックでシューゲージングな新機軸も。今までの魅力と沢山のバリーエションと希望を詰め込んだような最高のアルバム。

Way More Than Expected

THE TURQUOISE

Way More Than Expected

流通盤としては前作から4年、会場限定リリースのEP 4枚を間に挟んで、THE TURQUOISEがついにリリースする1stフル・アルバムは、メンバーたちの豊富な経験に裏づけられた多彩な全13曲を収録。そのメンバーとはOCEANLANEの直江 慶(Vo/Gt)、つばきの小川博永(Ba)(両バンドともに活動休止中)、そして数々のバンドをサポートしてきた河野 瞬(Dr)。基本編成以外の楽器も使い、ギター・ロックの範疇に収まりきらないアレンジも取り入れ、EDM、インディー・フォーク、ファンク、レゲエといった幅広い音楽の要素を、THE TURQUOISE流に消化しながら世界観の広がりをアピールしている。そして、そこを貫いているのが美しいメロディ。改めて追求したという歌心がじわじわと沁みる1枚にもなっている。

GOOD BYE SULKY DAYS EP

THE TURQUOISE

GOOD BYE SULKY DAYS EP

活動休止中のOCEANLANEの直江慶(Vo/Gt)つばきの小川博永(Ba)数々のバンドやアーティストのサポートをしてきた河野瞬(Dr)で結成された3ピース・バンドの1stミニ・アルバム。Track.1の「Nowhere Boy」から今までの延長線上とは完全に異なる新鮮なロックの衝動を感じさせる、シンプルでありながらソリッドなロック・サウンドを展開している。映画BECKに提供した壮大なミドル・ナンバー「Looking Back」、そして直江のキャリアとしては初となる日本語詞の楽曲「終わりのない旅へ行こう」を収録。3ピースという最小限の構成から繰り広げられるダイナミックかつライヴ感溢れるサウンド。この“新人”バンドはただものじゃない。

The Sound Sounds.

TWEEDEES

The Sound Sounds.

Cymbalsでの活動以降、ソロ・プロジェクトや音楽プロデューサーとして活動してきた沖井礼二と、10代で女優として活動を始め、またシンガーとして作品リリースをしてきた清浦夏実による新ユニットの1stアルバム。透明感があって、チャイルディッシュな甘さも湛えた清浦夏実のヴォーカルが、洗練されたポップ・サウンドに詩的なアクセントをつける。Jimi Hendrix「Crosstown Traffic」の爆裂なカバーといった遊びもありつつ、オリジナル曲はさまざまな音楽愛、ポップ・カルチャーへの偏愛が散りばめられた洒落たサウンドで、耳に心地良く、且つ心ときめかせる仕掛けもふんだん。空気のようにそこにあって、しかし確信的にその時間を贅沢に彩る。ポップ職人として腕によりをかけて、時間に魔法をかけたアルバムだ。

Sukierae

TWEEDY

Sukierae

今年結成20周年を迎えたWILCOのフロントマン、Jeff Tweedyがサイド・プロジェクト"TWEEDY"として息子のSpencerとともに制作したデビュー・アルバム。今作にはTWEEDY親子だけでなく、元THE YOUNG FRESH FELLOWSのScott McCaugheyやLUCIUSのメンバーも参加。本家WILCOとそう変わらぬ作風だが、この布陣でしかなし得なかった親密且つ冒険心に満ちたサウンドを展開している。穏やかなトーンで統一されているものの、楽曲それぞれの個性も生き、バラエティに富んだアンサンブルや楽曲に深みとムードを与えるコーラス・ワークなど、シンプルでありながら聴きごたえのある作品に。往年のWILCOファンはもちろん、WILCOを知らないかたにも聴いて欲しい良作。

GLIMMER

the twenties

GLIMMER

新ベーシスト野菜くん加入後初の、前作から2年8ヶ月ぶりとなる今作までに、the twentiesは会場限定で2枚のシングルを発売しており、今作にもその中から「LET IT DIE」、「さらば青春の光よ」、「園の子」の新録バージョンが収録されている。アッパーな前半から、ミディアム、スローな曲が並ぶ後半へとガラリと色合いが変わり、その真ん中に位置するのが「園の子」。タカイリョウ(Vo/Gt)の体験を包み隠さず歌ったこの曲は、シンプル且つノスタルジックなサウンド、淡々としたラップ調のヴォーカルが、深く心に染みわたる。美しいバラード「にじのうた」、痛々しいくらいに"求める"悲しみが押し寄せてくる「2 0 1」などは、聴くたびに胸を打つ。バンドの持つ抒情性がクローズアップされた名盤。

MUSIC

the twenties

MUSIC

目まぐるしく鳴り響くエレクトロ・サウンドを武器に大分から上京してきた4人組、the twenties。"人力エレクトロ・ロック・バンド"とはどういうことだろう......と資料を読むと、アルバムを通して鳴っているエレクトロ・サウンドは全てギターによるものとのこと。人間の脈打つ魂によって成り立っている今作には、「R.E.D」のような彼らのアンセムになること間違いなしのアッパー・チューンや、タカイ リョウ(Vo/Gt)のユニークな歌詞が際立つファンキーな「keiki hAppy」など、血の通ったエレクトロ・サウンドでフロアを揺らす様子が容易に想像できる。そしてノイジーなギター・ソロが甘美なラストの「ロンリー」が感動的。全てを投げ捨てて踊っていたはずなのに、最後に深い余韻を残していく。

HELLO GOODBYE

the twenties

HELLO GOODBYE

九州は大分県にて結成された4ピース・オルタナティヴ・ロック・バンドの記念すべき1stミニ・アルバム。踊れるダンス・ロックをベースにしながらも、60年代サイケデリックから昨今のガレージ・ムーヴメントに至るまでの幅広いジャンルをバランスよく飲み込み、唯一無二のサウンドに昇華した末恐ろしいほどの可能性を感じ取ることができる。冒頭曲「fire」のサビの爆発力はライヴでのキラー・チューンになること間違いないだろうし「S.S.S」の爽やかなコーラスとキャッチーなメロディには安定感すら漂っている。歪んでいて不穏なサウンドが印象に残るも、新人とは思えないクオリティの高さで話題となること間違いなしの1枚。

Clancy

TWENTY ONE PILOTS

Clancy

オハイオ州を拠点に活動するグラミー賞受賞デュオ TWENTY ONE PILOTSが、約3年ぶりのニュー・アルバム『Clancy』をリリース。ポップスとしての聴き心地を担保しながらも、全体的にトーンが落ち着いた印象を受ける本作では、Tyler Joseph(Vo/Pf)の描く世界観が一段と芸術性を帯びている。不気味なシンセ・リフが主人公の脳内とリンクするようなTrack.1から始まり、意味深長な楽曲で構成された本作もまたサウンドとの親和性が高く、細部にまでこだわりが拡散。精緻なドラムに存在感を放つラップ、甘美なコーラスを軸にスケールが増幅する彼らの音楽には、商業的な成功にとらわれないオルタナティヴ精神が滲み出ている。壮大で綿密な物語を、一挙公開された、まるで映画のようなMVでも体感してほしい。

Scaled And Icy

TWENTY ONE PILOTS

Scaled And Icy

"scaled back and isolated(規模縮小、隔離)"をもじったタイトルが付けられた3年ぶり最新作は、パンデミックの最中にメンバーふたりの遠距離制作で完成された。前作『Trench』はダークな要素も色濃かったが、今作は制作時の不安に満ちた世相への反動からか、ポジティヴでカラフルな雰囲気だ。瑞々しいピアノが心躍らせるTrack.1に始まり、ポップな中に衝動も覗かせるTrack.3、軽快なビートにあの頃の週末が恋しくなるTrack.5、ふたりの絆を爽快ながら切ないトラックで歌ったTrack.8、TOPらしいトラップ調のTrack.10と、古今のポップ・サウンドを昇華した普遍的な魅力を放つ楽曲は、人々の心に長きにわたって優しく寄り添うことだろう。

Trench

TWENTY ONE PILOTS

Trench

前作『Blurryface』収録曲「Stressed Out」でグラミー賞を受賞し、ONE OK ROCKのツアー・サポートや単独来日公演の開催など、日本でも高い人気を誇るオハイオ州コロンバス出身のデュオ、TWENTY ONE PILOTS。彼らの約3年ぶりの新作は、オルタナ・ロックからレゲエまであらゆるジャンルを咀嚼したサウンドをTyler Joseph(Vo/Pf)が変幻自在のヴォーカルで乗りこなす、まさに面目躍如な作品となった。分厚いベースと徐々に熱を帯びる展開がライヴ映えしそうな「Jumpsuit」、ピアノ・フレーズの上を高速フロウとJosh Dun(Dr/Vo)のフィルが跳ね回る「Neon Gravestones」、ニュー・ウェーヴ風シンセが開放的な「Bandito」と、多様な音楽性をポップにまとめ上げる手腕はさすが。意味深長な歌詞もぜひライナーノーツで味わってほしい。

Forget

TWIN SHADOW

Forget

ドミニカ共和国生まれ、ブルックリン在住のGeorge Lewis Jrによるソロ・プロジェクト。DEERHUNTERの大ヒットも記憶に新しい、現在飛ぶ鳥落とす勢いの4ADからのリリースということもあり、既に海外音楽メディアからは高い注目を集めている。下半身にぐいぐいきすぎないファンクネス、夢の中でミラー・ボールに照らされ踊っているような、眩しくもどこかぼやけている、キラキラとしたまどろみのサイケデリアが心地良い。ベルベットのガウンをまとったような、なめらかな肌触りのグルーヴが全身を包みこみ、音とメロディが脳内に絡みつき、鈍く反響し、陶酔させられる。そんな、脳内麻薬のごとき作用で、魔性の誘惑をされそうになるが、幻想的でありながらも、メロディがものすごくキャッチーなので、決してそのまま眠らせてはくれない。

Beacon

TWO DOOR CINEMA CLUB

Beacon

中毒性の高いメロと一言でダンス・ポップと片付けられないビザール感で、1stアルバム『Tourist History』を全世界で100万枚以上売り上げたTDCC、待望の2nd。プロデューサーにU2やBLOC PARTYを手がけたJacknife Leeを迎え、LAでレコーディングしたという外的要因は、アルバム後半に並ぶスケール感のある「Spring」「Pyramid」などに顕著。新鮮なところではTrack.1「Next Year」でのエレクトロ・ファンク、彼らが北アイルランド出身であることを思い起こさせる「Settle」あたりか。でもご安心を。いきなり大味になることなく、クセになるヴォーカルとそこに突っ込みを入れるようなセンス一発勝負のギターやシンセも健在。太く、しかもよく唄うようになったベースとともに一筋縄でいかないポップの強度を増している。

Kitsune Maison 10-The Fireworks

V.A.

Kitsune Maison 10-The Fireworks

名門Kitsuneの名盤コンピレーション『Kitsune Maison』シリーズ。その確かな選曲とウィットに富んだリミックスは他の追随を許さない。そして、なんと言っても、アーティスト集団でありながら、きちんと時代の風潮と自分たちの感性に折り合いをつける能力に魅力がある。アーティスティックな自分の趣向をリスナーの需要に合わせ、誰にでも門戸を開いた作品にするのは容易ではない。本作でも、いい意味で期待を裏切る構成で聴く者の耳を楽しませてくれる。TWO DOOR CINEMA CLUB「What You Know」も、ダンス・ロック全開のサウンドから、打ち込みに彩られ全く異なった様相を呈したサウンドへと再構築されている。現実を見据えることのできる稀有なアーティスト集団Kitsune。その羨むべき才能は、これからも楽曲の持つ未知の領域へ私たちを連れ出してくれることだろう。

Tourist History

TWO DOOR CINEMA CLUB

Tourist History

昨年12月に行われたBritish Anthemsでのライヴも好評を集めたTWO DOOR CINEMA CLUBがいよいよ1stアルバムをリリース。フランスの人気レーベルでもあるKitsuneが猛プッシュするこの3 ピースへの賞賛は、あのKanye Westがブログで紹介するなど後を絶たない。FRIENDLY FIRESのファンタスティックな部分を取り出してそこに疾走感溢れるバンド・サウンドを足したような感じと言ったら分かるだろうか。全曲3分前後で駆け抜ける今作の勢いはまさに今の彼らを象徴しているかのよう。ちなみにメンバー以外をシャットアウトし3人でのみ曲作りを行うとのこと。とにかくグット・メロディとトロピカル・サウンドが詰まった傑作。皆さん聴き逃し無く。

KITSUNE MAISON COMPILATION 8

V.A.

KITSUNE MAISON COMPILATION 8

KITSUNE MAISON、この間7が出たばかりなのに、もう8がリリースですか。相変わらずのスピード感。それだけ、面白いインディ・バンドが多いということなのか、それとも流行のサイクルがさらに加速しているということなのか。今回も、TWO DOOR CINEMA CLUBやDELPHICといった今が旬のアーティストから、THE DRUMS、MEMORY TAPESを始めとした、これからのアーティストをコンパイルした充実の内容。ディスコ・ポップからエレクトロ、インディ・ロックまで、ヴァラエティの豊富さとコンピとしての統一感を両立させているところはさすがの仕事。今の潮流をしっかりと追い続けているからこそ・・・と、言うよりは先導しようとしているからこそと言うべきか。

Moonshine (Acoustic)

Tyler Carter

Moonshine (Acoustic)

メタルコア・バンド、ISSUESのクリーン・ヴォーカルとして知られるTyler Carterが、2019年にリリースしたソロ・デビュー・アルバム『Moonshine』は、彼のR&Bシンガーという側面をフィーチャーした作品だった。本作ではそんな『Moonshine』の楽曲のアコースティック版と、新曲2曲を収録したEPとなっており、スムースで洗練された印象の原曲と比べ、より力強く、いい意味でラフな歌唱を披露していて、また新たなTylerのヴォーカリストとしての魅力が発見できる1枚に仕上がっている。カントリー調に生まれ変わったTrack.5、6などアレンジも秀逸で、自身のルーツだというFLEETWOOD MACの名曲をカバーしたTrack.3は会心の出来だ。

Central Market

TYONDAI BRAXTON

Central Market

THE BATTLES のリーダー、Tyondai Braxtonの新たなソロ・アルバムの機軸は、ずばりクラシック!残念ながら、僕にはクラシックについての教養がほとんどないので、このアルバムがクラシックという枠組の中でどうなのかは分からない。ただ、クラシックを彼のやり方で再構築する前半と、カオティックなビートと歌が入り乱れる不穏な後半まで、その隅々に彼の尋常ではない拘りが感じ取れる。そして、クラシックというと身構えてしまうが、ここで鳴る音は驚くほどにポップだ。前衛的過ぎる現代音楽はあまり理解できないが、緻密に計算された一音一音が豊かな表情を持つ音楽へと昇華されていく本作は素直に楽しめる。現代音楽やクラシックという枠を軽やかに取り払ってしまう、高貴でありながらポップなアルバムだ。