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DISC REVIEW

C'mon You Know

Liam Gallagher

C'mon You Know

OASISで歴史的ライヴを行ったネブワースにて、ソロとして過去最大規模となる2デイズ公演を2022年6月3日、4日に控えている、Liam Gallagherの3作目となるアルバム。クラシック・ロックへのオマージュを下地にしながらもサウンドの幅をこれまで以上に広げた印象で、Dave Grohl(FOO FIGHTERS)とコライトし、彼もドラムで参加したオルタナ・チューンのTrack.7をはじめ、そっと背中を押すようなバラードのTrack.5、レゲエを取り込んだTrack.10、ブレイクビーツが軽快なTrack.11など、モダンな音像も絡めたバリエーション豊かな内容に。自然体でありながらロックンロール・スターの超然とした風格を感じさせる、ソロ・キャリアの存在感をさらに高める1枚だ。

Unlimited Love

RED HOT CHILI PEPPERS

Unlimited Love

6年ぶりの新作にして、2019年に復帰したJohn Frusciante(Gt)が約16年ぶりに制作へ参加したアルバム。17曲(+ボーナス・トラック)に及ぶ収録曲は、4人が再会の喜びを分かち合い、ああだこうだ言いながら放浪の旅を楽しんでいるような、互いへのリスペクトと愛に溢れたサウンドだ。10thアルバム『I'm With You』以来のコラボとなった長年のプロデューサー、Rick Rubinによる生々しい音像もメンバー同士の一体感を増強している。一聴してのキャッチーさは少ないかもしれないが、スムースに流れるトラックの中で随所にほとばしるケミストリーが、聴くたびに新たな発見をもたらしてくれる。紆余曲折を経てたどり着いた、今のレッチリをありのままに詰め込んだようなアルバムだ。

Mainstream Sellout

MACHINE GUN KELLY

Mainstream Sellout

自身初のロック・アルバムとなった前作『Tickets To My Downfall』で全米No.1を獲得し、ポップ・パンク・リヴァイヴァルを牽引する存在として注目を集めるMACHINE GUN KELLY。前作から2年足らずでリリースされた新作は、自らのテリトリーをいい意味でさらに節操なく広げた作品だ。ポップ・パンクを軸とした楽曲はもちろん、BRING ME THE HORIZONやWILLOWとコラボしたエモ・ソング、LIL WAYNEを迎えたトラップ・チューンなどバラエティ豊かで、MGKも渋みのある歌声から高速フロウまで自在な表現を聴かせる。批判に縮こまることなく、いいと思ったものを貫き通す潔さと、新たなメインストリームを築いていこうという気概が感じられる。

FutureNever

Daniel Johns

FutureNever

オーストラリアの人気オルタナティヴ・ロック・バンド、SILVERCHAIRのフロントマンとして知られるDaniel Johnsが2作目となるソロ・アルバムをリリース。全体的に、ソフト且つポップでありながら、どこか陰もあるサウンドがJohnsらしい。ロックにとらわれず、R&Bやシンセ・ポップなどのダンス・ミュージックにも手を伸ばした、境界線があいまいなファジーな世界観には、タイムレスな魅力がある。ピアノやストリングスに合わせ、自身の声帯さえ楽器のように自在に響かせるその表現力も、ソロになってさらに大きな武器となったのではないだろうか。早熟で評価され続けてきたDaniel Johnsが、キャリアを積んで名実共に熟してきたスキルを遺憾なく発揮した自由なアルバムだ。

Hits To The Head

FRANZ FERDINAND

Hits To The Head

ここ日本でも絶大な支持を得ているロック・バンド FRANZ FERDINANDが、キャリア初のベスト・アルバムをリリースした。ベスト盤というと、コアなファンからは軽視されがちだが、これは結成20年を越え、多くの世界的ヒット曲を持つ彼らの軌跡を次世代へと繋ぐ重要な作品だ。シンプルでノスタルジック、それでいて誰にもマネできない不思議な味のあるサウンド。誰でも一度は聴いたことのあるようなお馴染みのシングル曲や、ライヴを盛り上げた楽曲、ダンス・フロアやラジオでヘヴィ・ローテーションされてきた名曲の数々、そして"女の子が踊れるような音楽"を目指してきた彼らの、こだわりと普遍的なポップ・センスがアップデートされた新曲と、まさにすべてが詰まったアルバムになっている。

Torpedo

FEEDER

Torpedo

UKのみならず日本でも高い人気を誇るFEEDERの、約2年半ぶり11作目となるオリジナル・アルバム。前作『Tallulah』では瑞々しいロック/ポップ路線を鳴らしていたが、コロナ禍以降に制作された楽曲を収めた本作では、重々しいディストーション・ギターが前面に打ち出されている。長尺曲のTrack.1を皮切りに、低重心なリフから美しくアンセミックに響き渡るコーラスへと展開し、ヘヴィネスと開放感の間を揺れ動く強力ナンバーを揃えた一方で、Grant Nicholasの歌声が映えるアコースティックな楽曲も収録。FEEDERらしいキャッチーさをしっかりと残しながら、初期から近年のスタイルをハイゲインでまとめ上げた本作は、最近ご無沙汰だというリスナーにこそおすすめしたい。

Spencer Gets It Lit

JON SPENCER & THE HITMAKERS

Spencer Gets It Lit

アグレッシヴでグルーヴィで革新的な、唯一無二のロックンロール・サウンドを鳴らし続けるJon Spencer。彼が2018年リリースのソロ作を経て、ついにJON SPENCER & THE HITMAKERSとして本格始動。THE JON SPENCER BLUES EXPLOSIONとはまた違った激しさ、そして初期衝動を感じるよりプリミティヴな、いい感じに汚しの効いたサウンドは、ただただカッコいいのひと言につきる。PUSSY GALOREでも一緒に活動していたBob Bert(Dr)に、QUASIのメンバーでもあるマルチ・プレイヤーのSam Coomesなど、実力と情熱を兼ね備えたメンバーとの化学反応もバッチリ。ライヴ感のあるヒリヒリしたサウンドは、ぜひ爆音で楽しみたいところだ。

Love Sux

Avril Lavigne

Love Sux

みんなこのAvril Lavigneを待っていたんでしょ? というような、パンク・ロック・プリンセスの帰還を高らかに告げる最高の1枚ができあがった。これぞ、まさに私たちのAvril! それにしても、相変わらずかわいくて本当にビックリ。昨年のポップ・パンク・ド直球なWILLOWとのコラボレーションも話題となった彼女だが、今作でもそのパワフルなスタイルは継続中。前作は、闘病からの復帰ということもあり、ロックにとらわれない表現力が光る作品ではあったが、やっぱりロック・ファッションに身を包んだAvrilが元気にステージを跳ね回る姿が見たかった。Z世代のY2K懐古ブームも盛り上がる今、2000年代ポップ・パンク・ブームの再燃もじわじわと広がってくる予感。

Oochya!

STEREOPHONICS

Oochya!

UKを代表するロック・バンドのひとつ、STEREOPHONICS。これまで作品ごとに様々な顔を見せてきた彼らだが、12作目のオリジナル・アルバムとなる今作は、そんな彼らのロックのすべてが盛り込まれていると言っていいかもしれない。初期のグランジ・テイストでスリリングなロックの片鱗が見えるアップテンポな楽曲、そして彼らの根底にあるブリット・ポップのグッド・メロディ、ロックンロール・リヴァイヴァルを経た英国ロックのスピリット、進化し続けてきたロック・シーンの中で揉まれ、身につけてきたタイムレスなポップ・センス。そのすべてがこの1枚に凝縮されている。デビュー・アルバムから25年、駆け抜けてきたSTEREOPHONICSというバンドの芯の強さを感じることができる作品だ。

The Kick

FOXES

The Kick

ZEDDとのコラボレーションでも知られる、UKのシンガー・ソングライター FOXESが、6年ぶり3枚目のアルバムをリリース。パンデミック下での制作ということで、リモートで行われたという今作は、ロックダウンの閉塞感をまったく感じさせない解放感に満ちたアルバムとなった。アッパーなビートが鼓動をリードし、爽やかで嫌味のないメロディが心に沁みる。喪失と失恋というテーマを描きつつも、悲壮感のないダンス・ポップは、心を浄化し、目を覚まさせてくれる。ヘッドフォンでじっくり聴くのもいいけれど、日常のどんなシーンにもフィットする楽曲の数々は、スピーカーで流せば、なんでもない日常が明るく輝いて見えること間違いなし。暗い世の中を明るいダンス・フロアに導くような良質なポップ・アルバム。

Night Call

YEARS & YEARS

Night Call

ヴォーカルのOlly Alexanderのソロ・プロジェクトとして再始動後初のオリジナル・アルバムで、すでにUKでは初登場1位を獲得。LGBTQ+のアイコン&アクティヴィストであり、80年代のゲイ・コミュニティを描いたドラマ"It's a Sin"が世界で話題になったことで、アーティストとしての存在感と自信がポップなチェンジ・メーカー的な作風に結実した印象だ。従来よりビートが前面に出たダンス・フロアへ誘われるパッシヴでエレガントなトラック、ジェンダーレスで透明感がありつつ、R&Bやソウルの温かさや力強さを兼ね備えたヴォーカルが無比。幸福感に満ちたダンス・チューンのTrack.2、電話の呼び出し音が効果的なTrack.3、ストリングスが美しいTrack.6、日本盤にはSIRUPのリミックスも。

Time Skiffs

ANIMAL COLLECTIVE

Time Skiffs

ANIMAL COLLECTIVEってこんなに聴きやすかったっけ。00年代後半のUSインディーを席捲したフォークとサイケの折衷ブーム、およびボルチモア結成のバンドが拠点としたブルックリン・シーンを代表する4人組の6年ぶりとなるアルバムは、そんな印象にちょっとびっくりだ。評価を勝ち得るなかで推し進めてきた実験的なアプローチではなく、フォークとサイケの折衷をメロディの心地よさとともに追求したところ、冒頭の印象に繋がったようだ。そこに絶妙な割合で入り交じるエスニックなサウンド、ラテンのリズム、ジャズ/フュージョンのエッセンスが彼ららしい。プログレ・サイケなTrack.3の宇宙的なサウンドとTrack.4の生々しいバンド・サウンドのコントラストもダイナミックだ。

As I Try Not To Fall Apart

WHITE LIES

As I Try Not To Fall Apart

UKのポスト・パンク/インディー・ポップ・バンドによる6thアルバム。全英チャートで1位を獲得したデビュー作『To Lose My Life ...』などに関わったEd Bullerや、WEEZERなどを手掛けるClaudius Mittendorferをプロデュースに迎えた本作は、キャリアを総括したような作品に。ファンキーなカッティングが踊るTrack.1や、80sの質感を持ったシンセがきらびやかに彩るTrack.2、ドラマチックなサビを奏でるTrack.4、壮大なサウンドスケープのTrack.9、抑制されたハンマー・ビートからエモーションを爆発させるTrack.10など、時にノイジーに時にソフトに感情を揺さぶる楽曲はまさに粒揃い。着実な深化を感じる1枚だ。

The Dream

ALT-J

The Dream

"BRIT Awards"など各賞を受賞してきたUKきってのインディー・バンドでありつつ、ストイックなまでに曲に込める要素をひとつひとつ庭を歩きながら集めるようなスタンスは不変。前作『Relaxer』から約4年半ぶりとなる本作では空間を大きくとりつつ親密さのあるTrack.3もあれば、ドローン・ライクでメランコリックなギターが印象的な導入から、マンチェ・ビートっぽい身体が揺れるセクションに展開するTrack.2もあるし、エレクトロニックな荒野を歩いているなかで上昇するシーケンスに翻弄されるTrack.5もあれば、ダブステップにゴスペル感が融合したTrack.4もある。インディー・ロックの芯の部分と『In Rainbows』期のRADIOHEADが同居したような世間に迎合しない試行が堪能できる。

Fix Yourself, Not The World

THE WOMBATS

Fix Yourself, Not The World

世界を変えるには、まず自分から――そんなテーマを掲げた本作は、人と人を隔てる昨今の状況はもちろん、バンドにとって大きな挑戦となったリモートでの制作も反映されているのだろう。リヴァプール発の3人組による4年ぶりの新作は、きらびやかなギター・ポップを軸に、チルな雰囲気から壮大なコーラスへと移ろうTrack.5、明るい曲調ながら厭世的な歌詞が刺さるTrack.7、軽快なサウンドが心地いいTrack.11、マイブラを思わせるドリーミーなアウトロのTrack.12など実験的な要素も取り入れながら、"今"の雰囲気を遊び心溢れるキャッチーなサウンドで描いている。バンド初となるUKアルバム・チャート1位を獲得したのも頷ける、この時代を生きる人々にそっと寄り添うような作品だ。

Ghosts On Tape

BLOOD RED SHOES

Ghosts On Tape

UKブライトン出身の男女オルタナティヴ・ロック・デュオが、約3年ぶり6作目のアルバムを発表。前作『Get Tragic』ではシンセを導入し表現の幅を広げた彼らだが、本作でもその方向性を継承している。荒々しいビートにノイジーなディストーション・ギターのリフを乗せた、バンド本来のサウンドに加えて、ゴス/インダストリアルの影響も感じさせるシンセが退廃的な側面も演出し、ダークなサイケデリアを生み出している。Track.5、9のようにときに激しいシャウトも聴かせるSteven Ansellと、Track.7などで気だるく言葉を紡ぐLaura-Mary Carterという、異なる個性を発揮するヴォーカルも秀逸だ。タイトルどおり音に霊的存在を込めたかのような、緊張感の支配する1枚。

World I Understand

THE SHERLOCKS

World I Understand

UKシェフィールド出身の4人組インディー・ロック・バンド THE SHERLOCKSが、ニュー・アルバムをリリース。3枚目となる今作でも変わらず、見た目もサウンドも"これぞまさにUKのバンド"という教科書的なスタイルを貫いている(バンド名もコテコテでいいね(笑)!)。ブリットポップおじさん/おばさんたちが、"ほんと、こういうのでいいんだよ!"と、うんうん頷いちゃう感じ。一曲一曲がキャッチーで親しみやすく、90年代リスペクト的な、少しノスタルジックな響きもいい。捨て曲というか、地味な曲がひとつもなく、丁寧に作られている感じも好印象。奇をてらうでもなく、自分たちの好きなやり方でロックを追求する彼らが、本国でも愛されているのはすごく理解できる。

Armageddon

BETWEEN YOU & ME

Armageddon

ポップ・パンクの明るく爽やかなサウンドが前面に押し出されたBETWEEN YOU & MEの2ndアルバム。甘酸っぱい恋心や、SNS時代特有の虚栄心などをテーマに、自分、他人、世界と向き合う現代の若者らしい青さが楽曲の勢いを加速させるが、ラストを飾る「Armageddon」で、本アルバム、そして本楽曲のタイトルが"最終戦争"であることを思い出すことになる。ここまでの9曲とは対照的にゆったりとしたリズム、聴かせるギター・ソロが、現代社会の分断が導く"最終戦争"からの"終末"を見つめるこの曲の儚さ、切なさを引き立たせる。もしいつか"終末"が訪れるなら、この1枚を聴いて、人間関係や見栄に悩んでいたあのころを思い出すのも悪くないだろう。

Churches

LP(Laura Pergolizzi)

Churches

RihannaやChristina Aguileraなどへの曲提供でも知られるイタリア系のシンガー・ソング・ライターの6thアルバム。ストリーミングで20億回再生を超える彼女の魅力は、ティーンエイジャーのような甘さと繊細さを兼ね備えた耳に残る声と、一気に高音に駆け上がる圧倒的な歌唱力。エレクトロ・ポップな「Goodbye」もあれば、ピアノ・リフで押していくスタンダードなミディアム・ナンバー「Angels」、荘厳なストリングスとスパニッシュ・テイストの生ギターがドラマチックな、EDMをアップデートする「One Last Time」、フォークとオペラが融合したタイトル・チューンなど、凄まじい振り幅も渾身の祈りのごとき歌で束ねきる。ルックスとのギャップにも驚くこと必至。

It's All Smiles

NO ROME

It's All Smiles

フィリピン出身、THE 1975のMatthew Healy(Vo/Gt)に見いだされ現在はロンドンを拠点に活動するNO ROME。CHARLI XCXやA. G. Cookといった名だたるアーティストとのコラボで注目を集める彼の、初となるアルバムが本作だ。共同プロデュースにCHARLI XCX、BON IVERなどを手掛けるBJ BurtonやTHE 1975のGeorge Daniel(Dr)らを迎え、ノイズ・ギターが奏でるオルタナティヴからブレイクビーツによるエモ・ラップ、ベース・ミュージックの要素までシームレスに繋いだサウンドを展開。そこにNO ROMEの憂いを帯びながらもどこか温もりのある歌声が合わさって、センチメンタルながら心地よい世界に浸ることができる。

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Ed Sheeran

"ポケモン GO"との異例のコラボも話題のEd Sheeran。そんな彼の最新作は、"="というタイトルの示す通り、デビュー・アルバム『+』(2011年)から連なるシンボル・アルバム・シリーズの集大成ともなる作品だ。今作は、父となったことをはじめ、この間にプライベートで彼に起こった様々な出来事をテーマとしており、ポジティヴなメッセージと共に人生の美しさを感じられる楽曲が詰まっている。また、喜怒哀楽を表すような、「Shivers」や「Bad Habits」といったダンサブルで艶っぽい魅力のある楽曲もあれば、「First Times」のような涙腺を刺激するアコースティック・ナンバー、「Sandman」のようなかわいらしいポップ・ソングもあるのが面白い。

Acoustic Hymns Vol.1

Richard Ashcroft

Acoustic Hymns Vol.1

90年代を代表するロック・バンド、THE VERVEのフロントマンで、ソロでも活躍するRichard Ashcroftが自身のキャリアから12曲を選曲し、アコースティック・バージョンで収録した今作。コロナ禍でのロックダウン規制が緩和されたタイミングでミュージシャンの結束を取り戻すために始めたこのプロジェクト。曲ごとに最適なアレンジを目指したと思われ、名曲「Bittersweet Symphony」は原曲のストリングスの良さを残しつつ、グッと肩の力の抜けたプロダクション。ソロ・キャリアの最初のヒット「A Song For The Lovers」はオーケストレーションとのコラボが優雅だ。盟友、Liam Gallagherとの念願のデュエットが話題のTrack.4には温かさと熱さがこみ上げる。

I Don't Live Here Anymore

THE WAR ON DRUGS

I Don't Live Here Anymore

USインディー・ロック・シーンの実力派、THE WAR ON DRUGSの4年ぶり5作目のフル・アルバムとなる今作は、約3年という時間をかけてじっくりと楽曲を練り、ADELEの最新作も手掛けたShawn Everettを共同プロデューサーとして迎えて制作された。今作でも、ソングライティングの要を務めるフロントマン Adam Granducielのセンスが光る。派手さのないシンセ使いや、ゆったりとした時間の流れを感じさせるリズム・ライン、そしてAdam特有の力の抜けたヴォーカルも心地よい。そんなどこか懐かしくもあり、タイムレスな魅力を持ったサウンドメイキング、そして普遍的なメロディという、素朴だが奥深い様式美を感じる楽曲の数々は、聴く者を選ばず幅広く愛される作品となるだろう。

Let's Just Say The World Ended A Week From Now, What Would You Do?

HONNE

Let's Just Say The World Ended A Week From Now, What Would You Do?

ロンドン出身のエレクトロニック・アーバン・ソウルの名手の新作は長いタイトルが示す通り、ある仮定にもとづいたふたりの物語を軸に展開する。これまでマイナー・キーのメロウで洗練されたネオ・ソウル×エレクトロを持ち味にしてきた彼らが、グッと開かれたトーンのメロディやコードを多用。先行配信された88risingのNIKIをフィーチャーした「Coming Home」や、ブラスが印象的でアップリフティングなニュアンスすらある「Back On Top (Feat. GRIFF)」、デビュー作で2021年のブレイク・アーティストとなったArlo ParksとのTHE CARDIGANSを思わせるナンバー、Sam Smithらとの共作曲など、聴き心地の良さはそのままにポップスの強度を高めた名作。