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DISC REVIEW

BEST 2012-2019

ハルカトミユキ

BEST 2012-2019

初のベスト盤は、曲のテイストにより、比較的メジャー・キー、しかし前を向くなり答えを出すまでの葛藤が色濃いDisc-1"Honesty"と、マイナー・キー且つ慟哭が表現された曲が多めのDisc-2"Madness"という振り分けがなされている。新録は3曲。YouTubeで公開され未完だった「どうせ価値無き命なら」での、生きる意味がわからなくても生き方や命は他人に売り渡すなという強い意志や、ライヴで披露されていたものに加筆した「LIFE 2」での、ないものとあるもの――例えば"本当の居場所などない"、"まだ欲しいものがある"と真実を積み重ねていく表現、変わらない/変われない部分が浮き彫りになる「二十歳の僕らは澄みきっていた」のいずれもが、ふたりの肝と言えそうな作品であることが嬉しい。

Muvidat

Muvidat

Muvidat

ふたり組ではあるが、信頼の置ける音楽仲間と奏でた曲たちは、しなやかで鮮やかで、恐ろしく強靭なバンド・サウンド。"やりたいことを形にしていったらSHAKALABBITSの続きになった"と話すUqui(Vo)の言葉通りというか。やりたいことが詰まったカラフルな新曲に、シャカ時代に作った曲をブラッシュアップさせたというロック・ナンバー、盟友 REI MASTROGIOVANNIが書き下ろした心躍るスカもあって、鋭い嗅覚と抜群のセンスを駆使しつつ完成したアルバムは、実にフラットで潔い、一番憎たらしいやつです。全曲に貫かれたシャカを愛してくれた人への感謝。右往左往しつつ、見上げた月に手を伸ばして前だけを見て突っ走るMuvidatの姿。すべてが愛おしい。めちゃくちゃかっこいい。

Thanksラブレター

The Winking Owl

Thanksラブレター

ラウド/エモの側面であるダイナミックな音像や演奏スキルは残しつつ、世界的な潮流であるEDM以降のポップスもJ-POPのキャッチーな要素もThe Winking Owlのフィルターを通して表現した2ndフル・アルバム。仲間やリスナーへの感謝や愛を感じる表題曲で清々しくスタートし、新たなモードを代表するポップな「Try」や、ドラマ"歌舞伎町弁護人 凛花"主題歌としても話題の「NEW」、切なさを表現するLuizaの歌唱が映える「片想い」、イントロでR&B的なトラックメイキングのセンスが窺える「Confession」や、遅めのBPMで横ノリできそうな「君のままで」、EDM以降のポップス手法であるエレクトロやプリミティヴなビート感が新鮮な「Flame Of Life」まで曲の良さが光る。

透明になったあなたへ

ナードマグネット

透明になったあなたへ

"和製WEEZER"と言われ、それを自覚していたナードマグネットが新たなフェーズへ。BLINK-182やJIMMY EAT WORLDをオマージュし、BLACK KIDSのカバーにNIRVANAを混ぜ込み、UKのギター・バンドばりに12弦ギターを鳴らし、パワー・ポップの世界を押し広げ、そのポテンシャルを存分に示す。そして生活の中で孤独も不安も不満も葛藤もすべてぶちまけた言葉とメロディがドライヴし、あなたが透明になったとて、自分らしくいることの意義を照らし、"一生が青春"であることを実感させてくれる物語の世界へようこそ。この13曲に何を思ったのかぶつけ合うも良し、ひとりでこっそり楽しむも良し。いずれにせよ、ライヴハウスに足を運んでみてはいかがでしょうか。

Whitenoise e.p.

PELICAN FANCLUB

Whitenoise e.p.

1曲目の「ベートーヴェンのホワイトノイズ」を聴いた。これぞキラーチューン。19年を激震させる音とメロディが鳴っていた。前作『Boys just want to be culture』についてエンドウアンリ(Gt/Vo)は、自らのルーツを80年代や90年代のインディー・ミュージックにあるとしたうえで、そういった背景はもはや意識せずとも出ることだと言い、描きたい世界を感覚的に音にしていったと話してくれた。それに対して今作は"ホワイトノイズ"という、明確な音楽ジャンルである"シューゲイザー"と繋がる言葉をタイトルに。その意図は単なる"原点回帰"ではない。むしろまるで人間そのもののようなホワイトノイズの持つ幻想的な揺らぎとメロディが、熱の高いビートに乗って未来へと向かう作品である。

Ca Va?

ビッケブランカ

Ca Va?

ファンキーなダンス・ミュージックであるが、そこにはビッケブランカのポップ・マジックが効いている「Ca Va?」。以前旅した初めての土地での気分がそのまま曲となったというこの曲は、未知の場所で起こる出来事や違和感をも貪欲に乗りこなすパワーがあり、スムーズにグルーヴを紡いでいるようで、ちょっとした歪なコード感を交えて不穏にも響かせたり、リズム・パターンや歌詞の言葉遊びで耳に引っ掛かりを残したり等々、仕掛けがふんだんにある。居心地が悪くもなんだか心惹かれるものが同居した不可思議さと、アグレッシヴにリフレインする"Cmon, Ca Va?"というフレーズがキャッチーで面白い。王道のバラードを紡ぐ一方で、その色に染まらない曲を軽々と描く変幻自在さがビッケブランカ節だ。

Time Machine

The Whoops

Time Machine

2枚のミニ・アルバムを経て、The Whoopsが3年ぶり2枚目のフル・アルバムをリリース。自己紹介的な意味合いの強い作品だった1stアルバム『FILM!!!』(2016年)に対し、本作はより振れ幅の大きい内容。THE STROKESやSUPERCAR、Enjoy Music Clubといった彼らのルーツ、今興味のある音楽のエッセンスがジャンルを問わず色濃く反映されているようだ。3年の間に演奏も洗練され、特に「行方」のアンサンブルには大きなスケールを感じる。宮田と森のツイン・ヴォーカル曲「Soda」、全編打ち込みの「踊れない僕ら」といった新しい試みも。曲同士の繋がりを彷彿とさせる言葉選びにも工夫が詰まっていて、想像力を掻き立てられる。

まっさら

KANA-BOON

まっさら

スタートの合図のような4カウントから走り出す8ビート。目の前が開けるような大きなコード・ワークが印象的なAメロ。シンガロングしたくなるサビ。それを支える重量感のあるベース・ライン。そのサウンドメイク自体が今の彼らの逞しさを実感させてくれる、デビュー5周年企画を締めくくるに相応しい新たな始まりの1曲だ。"独り"を前向きに捉え、普通の日常のやるせなさも認める強さを持つ。そのうえで繋がる助けになる音楽、それをKANA-BOONは作り始めたのだ。c/wの「FLYERS」はロックンロール・リバイバル的なセンスのリズムやリフの上を、言葉でリズムを作る谷口 鮪のヴォーカルが乗る小気味いい1曲。こちらもグッと太く生感のあるサウンドで、バンドの頼もしさが十二分に伝わる仕上がりだ。

七情舞

ペンギンラッシュ

七情舞

ニューオーリンズで生まれたパレード音楽であるセカンド・ライン。そのビートが持つ華やかさとは対極にある、冷ややかでしっとりとした鍵盤のマッチが生む心地よい違和感や、決定的な色気や強さを感じるメロディと声が放つ唯一の輝きに魅せられる。人との関わりで感じるノイズを包み隠さず吐き出した歌詞が刺さる。MVが公開された「悪の花」は、バンドの明るい未来を確信させるほどの個性と強さを持った曲だ。時代の流れに惑わされず、愚直に己と向き合うピュアな冒険心を迷うことなく発信するアクション。それは無数の情報に溢れ、もはや王道のセオリーも埋もれてしまう現代において、新たなポップの夜明けを切り拓く重要な鍵なのかもしれない。だとすれば、ペンギンラッシュこそ今最も聴くべきバンドだ。

EP

ROU

EP

独学でDTMの向こうに広がる無限の宇宙を知ったアーティストが、生演奏の世界へ。ソウルやファンク、AORにストレート・エッジなロック、60年代から現代の音楽までを、フラットな感覚でミックスしていく、ROUのデジタル・ネイティヴならではの柔軟なセンスと、仲間と共に音を奏でるバンドならではの原始的な熱の化学反応は、まさに今の時代だからこそのグルーヴに溢れている。そして、瑞々しくも力強い声と、歯に衣着せぬ飾らない言葉が乗ることで完成するこの『EP』という1枚の物語は、多くの人々が過多な情報の中で見失った自身の心を照らしてくれるような、現代に必要なポップ・ミュージックの在り方を示すものであると言えよう。

from NOVEL LAND

Halo at 四畳半

from NOVEL LAND

昨年10月のメジャー・デビューから8ヶ月。バンド最大キャパとなるマイナビBLITZ赤坂でのワンマン・ライヴも成功させたHalo at 四畳半の4thミニ・アルバム。出羽良彰がプロデュースを手掛けたリード曲「リビングデッド・スイマー」や、壮大且つ深遠な「メイライト」をはじめ、これまで以上に大胆にシンセや打ち込みのサウンドを導入した今作は、バンドの可能性を押し広げる意欲作になった。ハロらしく宇宙を連想するワードがあちこちに散りばめられた歌詞には、やがて燃え尽きる命の期限を想いながら、自らの運命を掴み取ろうという闘争心が滲む。ここ数作で獲得した緻密なサウンド・プロダクションが充実の季節を迎えつつ、同時に爆発した抑えようのない衝動がロック・バンドらしくていい。

BUD

sankara

BUD

洗練とオーガニックなグルーヴを感じるトラックの上に乗る、柔らかなRyoのヴォーカルと硬い韻を踏む乾いたTossのラップ。どちらかが欠けても成り立たない人間の感情表現を分担しているようで、クセになる。ヒップホップをバックボーンに持つsankaraだが、縦に跳ねるビート感の「Slipping」など、ジャンルに縛られないトラックがポップ・ミュージックとしての幅を拡張。サーフ・ミュージックやレゲエのムードもある「Trip」は、スケールの大きなライヴで聴きたいイメージだ。現代的なトラックメイキングの中にエヴァーグリーンなソウルやR&B、ジャズのテイストもあり、日常に溶け込む音楽性と、聴き流すにはリアルな心情が吐露されたリリックという、オリジナルなバランスで成立しているのも聴きどころ。


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elevatormusic

ギャーギャーズ

elevatormusic

結成時はこねくり回した難解な曲を作っていたそうだが、心機一転このミニ・アルバムでは新たなフェーズに突入している。楽曲は蛭田マサヤ(Vo/Gt)のキャッチーな歌メロを主軸に、3分前後にコンパクトにまとめられ、シンプルにしてひと癖あるサウンドは妙に耳に引っ掛かる。ロック、パンク、ニュー・ウェーヴなど多彩な曲調が揃っているけれど、匂い立つような人間味と口ずさみやすいポップなメロディがどの曲にも息づいているので、散らかった印象も皆無。ノリのいいアッパー・チューンからしっとり聴かせるバラード風の曲調まで、ギャーギャーズを形成するメンバーの泥臭い人柄がきっちりと刻印されている。どこかにいそうでどこにもいない強烈なオリジナリティが、全6曲にびっしりと張り巡らされている。

新呼吸

otter hangout

新呼吸

強烈な熱量と歌声"を持つ名古屋の3ピース・ガールズ・ロック・バンド、otter hangoutの全国流通盤は、これまでのバンド活動の中で生まれた、"自分自身に言い聞かせるだけでなく、誰かの背中を押して応援したい"というあやかす(Vo/Gt)の想いを込めた作品だ。リード曲「閃光」を筆頭に、明るく疾走感のある、爽やかでパワフルな直球ギター・ロック・ナンバーが多いなか、「秋雨」や「醒めないで、夜」ではクールでダークな一面や、捻くれた部分、歌詞とリンクした3人の丁寧なプレイも光り、まだまだこれは彼女たちの魅力の内の、氷山の一角に過ぎないのかもという期待を持ってしまうほど。ガールズ・ロック・バンド・シーンに乗り込んでくる彼女たちの今をいち早く体感できる。

太陽の居ぬ間に

チリヌルヲワカ

太陽の居ぬ間に

日々の生活に沈む感情の澱を詩的に昇華した歌詞と、ユウ(Gt/Vo)が紡ぎ出すメランコリックなメロディによるところが大きい"ヲワカ節"が、普遍の魅力を湛える一方で、改めてバンドや音楽に取り組む気持ちを自らに問い掛けているような言葉と、ダイナミックなリフで聴かせるガレージ・ロッキンなサウンドが魅力の10thアルバム。エスニックっぽい魅力もある「トライアングル」、サーフ・パンクな「因果関係」、サイケデリックなスロー・ナンバーの「太陽の居ぬ間に」など、それぞれに異なる魅力を持った全7曲は前作同様、エンジニアの南石聡巳と岡山にある彼のスタジオでレコーディングしている。ユウいわく"これまでで一番満足感がある"というアルバムは、ギターの歪みもエグい。

QUIZMASTER

NICO Touches the Walls

QUIZMASTER

[DISC 1]
作品全体のテーマに掲げた、人生の謎を追求したパーソナルな歌詞と歌としての魅力をたっぷりと味わえる全10曲。そのぶん、たしかにじっくりと聴かせる曲が多いものの、『TWISTER -EP-』、『OYSTER -EP-』の2枚を経て、ルーツに根ざしながら最新トレンドも見据えたアレンジ、アンサンブルはさらに自由になっているから、ブルージーでソウルフルなものから、ダンサブルでサイケデリックなものまで、バンド・サウンドという意味でも物足りなさはこれっぽっちもない。歌を際立たせるため音数を削ぎ落としたというバンド・サウンドからは、演奏している4人の姿が浮かび上がるようだ。しかも、10曲すべてが書き下ろしの新曲。まさにNICO Touches the Wallsの神髄が感じられる。

[DISC 2 (Bonus Disc)]
"NICO盤"の全10曲をアコースティックにアレンジした"ACO盤"。これまで彼らがリリースしてきたその他の"ACO盤"同様、アコースティック編成で焼き直した曲はひとつもない。むしろ遊び心、バンド・サウンドにとらわれない自由度という意味では、"ACO盤"に軍配が上がるか。UKロックっぽいダンス・ロックをアイリッシュ・フォーキーにアレンジした「MIDNIGHT BLACK HOLE?」、アーバンなバラードがボサノヴァに変わった「別腹?」。その2曲を例に挙げるだけでも"ACO盤"の面白さは伝わるはず。NICO Touches the Wallsのルーツ・ミュージックに対する愛着や造詣の深さを知ることができるところも、"ACO盤"の聴きどころだ。

イエロウ・イン・ザ・シティ

EARNIE FROGs

イエロウ・イン・ザ・シティ

これまで王道ロックからシティ・ポップ、ダンス・ミュージック、レゲエなど、様々な作風を自分たちの血肉として取り込んできたEARNIE FROGs。前作『キャラクター』から1年ぶりに完成させた『イエロウ・イン・ザ・シティ』は、メンバーのルーツにもあるアダルトなポップ・ミュージックの手法を取り入れ、歌詞やアートワークに一貫性を持たせたコンセプチュアルな1枚になった。やるせなさを呑み込みながら"それでも"立ち上がってゆく「stand up crowd」や、内に秘めた孤独をひたすら吐き出す「SHELTER」など、収録されるのは悲喜こもごもの人間賛歌。皮肉ではなく、日本人の生き様を誇る意味合いで"イエロウ"をタイトルに掲げたところに、このバンドが今作に懸ける本気を見た。

アダハダエイリアン

シナリオアート

アダハダエイリアン

今のシナリオアートのチャレンジングな部分が曲構成にも現れた2曲(「アダハダエイリアン」と「オンリーヒーロー」)、「ホワイトレインコートマン」にも似た、バンドにもファンにとってもこれぞシナリオアートな「アカシアホーム」という、3曲が現状報告の意味も担っている独立後初のシングル。ポスト・ロックと物語的な楽曲の両面を感じさせる構成の多彩さが自由で、6分近い大曲「アダハダエイリアン」。ロックンロール・リヴァイヴァル調でありつつ、ベースはドラマチックという彼ららしさが加味された「オンリーヒーロー」。柔らかなハヤシコウスケのヴォーカル表現や透明感のあるギター・サウンドが、まさに"ホーム感"満載の「アカシアホーム」。驚きと安心感の両方を封じ込め、バンドの状況の良さを伝える好盤。

Birth

SNARE COVER

Birth

まずは"劇場版総集編 メイドインアビス【後編】放浪する黄昏"のED「reBirth」のセルフ・カバー「Birth」で、造語によるイマジネーションが拡張されるヴォーカルを堪能してほしい。高音域と低音域を自由に行き来する歌唱は性別を意識させないもので、シリアスなテーマの「戦火のシンガー」や、スケールの大きな「朝焼け」などでも大げさに聴こえない。また、FINLANDSの塩入冬湖(Vo/Gt)をコーラスに迎えた「サイクル」は、声で作るレイヤーが美しく心地よい。ミニマルに削ぎ落としたトラックは、現行のR&Bやエレクトロニックな音楽が好きなリスナーにも自然に受け入れられることだろう。しかし軸にあるのは斎藤 洸の天性の声。器楽的でありつつ懐かしさも感じるその魅力を堪能したい。

more humor

パスピエ

more humor

パスピエというバンドの探求心は結成10年を越えてなお尽きない。『&DNA』からは約2年半ぶり、ドラマーの脱退を乗り越えて、新たなバンドのあり方を模索してきたパスピエの新体制後初となる5thアルバム。ダウナーなオルタナティヴR&Bに、包容力のあるメロディを乗せたリード曲「ONE」をはじめ、今作は、エレクトロなアプローチと生のバンド・アレンジとが、溶け合うように融合した革新的な1枚になった。"良し悪し見極めながらどこまでも繋いで行こう"と優しく手を差し伸べる「始まりはいつも」のように、大胡田なつき(Vo)が紡ぐ言葉にはこれまで以上の訴求力があるが、一方で数え歌のような「BTB」やまさかの1文字だけのタイトルの1曲「だ」など、パスピエならではのユーモアも健在。