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DISC REVIEW

Best Selection Album of Victor Years

KEYTALK

Best Selection Album of Victor Years

2013年にメジャー・デビューしてからの、14枚のシングル表題曲+タイアップやライヴ人気曲からなる20曲に、怒濤の5年間の進化を感じるベスト・セレクション。首藤義勝、寺中友将のツイン・ヴォーカル、四つ打ち、目まぐるしい転調とどこかメランコリックなメロディは今でも独特だ。「MONSTER DANCE」、「桜花爛漫」など和テイストの振り切れっぷり、祭りというテーマを太いファンクに昇華した「MATSURI BAYASHI」あたりから、全体の屈強さもアップ。ストリングスとプリミティヴなビートと、EDM風味を融合させた「Summer Venus」に至っては、楽しいことを120パーセント体現するKEYTALKの真骨頂だ。完全生産盤にはライヴ映像も。フィジカルならではのお楽しみは見逃せない。

Coupling Selection Album of Victor Years

KEYTALK

Coupling Selection Album of Victor Years

ビクター時代のc/w集。人気曲「OSAKA SUNTAN」、寺中友将(Vo/Gt)の美メロ・メーカーぶりが発揮された「エンドロール」、ルーツであるthe band apart的なアレンジにニヤリとする「O型」、怒濤のブラストビートの「ナンバーブレイン」、小野武正(Gt/MC/Cho)、八木優樹(Dr/Cho)の共作で、めくるめく展開や早口のトーキングVoがユニークな「鏡花水月」、テクニックの高さを笑えるスクリーモ(!?)に昇華した「One side grilled meat」、レア・グルーヴ~ニュージャズ風の「wasted」、タフさが増した「SAMURAI REVOLUTION」、モンドなメロディが癖になる「誓い」など、高い作編曲能力と斜め上のセンスを満喫できる。

ID10+

志磨遼平

ID10+

毛皮のマリーズ時代を含め、メジャー・デビューから10周年となるドレスコーズ志磨遼平の、両バンド(現在ドレスコーズは志磨のひとりプロジェクト)のキャリアを跨いだベスト盤。千両役者かペテン師かカメレオンか、その多彩な音楽性やコンセプチュアルなセンスと豊かな表現力から、彼へのイメージはその時々で変わる。とはいえ、単に身のこなしの軽い奇天烈な才人かとなると、そうは割り切れない。色とりどりなパフォーマンスの真ん中を一筋貫く圧倒的シンボルとしての強さは、私とあなたを繋ぎ、まったく新しい世界へと導いてくれるポップの道そのもの。これは単なるベストではない。2020年4月現在、ここで多くは語らないが、今最も聴かれるべき作品だ。

hope

マカロニえんぴつ

hope

マカロニえんぴつにとって約2年半ぶりとなる待望のフル・アルバム。「レモンパイ」や「ブルーベリー・ナイツ」といった人気曲や、私立恵比寿中学に書き下ろした「愛のレンタル」のセルフ・カバー、TVドラマやCMなどのタイアップ・ソングも多数含む全14曲が収録され、ここ数年での飛躍的な活動の集大成とも言えるような作品に仕上がっている。また、日常で感じる幸せとため息を混ぜるように描いた「hope」や、"少年だった僕たちは/カネを知ってヒトになった"と、大人になって忘れてしまいそうな感情をハッと思い出させてくれる「ボーイズ・ミーツ・ワールド」などの新曲でももちろん、バンドの多様な音楽性と、とにかく魅了されてしまうそのグッド・メロディを存分に発揮。毎日聴きたい"マカロック"が詰まった1枚。

アダルト/People Get Lady

ビレッジマンズストア

アダルト/People Get Lady

昨年"村立"15周年を迎えたビレッジマンズストアの2020年初リリースは、バンドが持つ好対照な表情を、リスナーにこれでもかと叩きつける両A面シングル。水野ギイのヴォーカルとシンプルなギター・サウンドから始まる「アダルト」は、素朴な質感の歌謡的な歌メロが印象的だが、別れの気配を纏った女性の心情を描いた歌詞を水野の剛強な歌声が彩ることによって、醸し出される独特の色気と包容力が切なく胸に迫る。一方、"ビレッジマンズストア節"とでも言うべきロックンロール・サウンドが鼓膜をつんざく「People Get Lady」の、言葉遊び的な歌詞には、どこまでも"音を楽しむ"バンドのスタンスが表れているようだ。止まるところを知らない"名古屋の暴れ馬"の今が惜しみなく爆発した濃厚な1枚。

EVER SICK

シナリオアート

EVER SICK

"持病"という意味の造語を冠した3年ぶりのフル・アルバム。この世界で生きづらさを抱える人、それをカモフラージュしつつ"普通に"生きる人を指すという。つまり、多くの人にとって感じるものがある作品なのではないだろうか。しかしながら、押しつけがましくはなく、むやみに刺々しいわけでもない。だからこそ、言葉にできない思いにそっと寄り添ってくれる。この3年の間に独立し、自由になったシナリオアートだからこそ描ける、パワフルにもシリアスにも振り切れる豊かな音像。そこに誠実に日々と向き合って生まれたであろう嘘偽りのない言葉が乗り、それをあくまでも平熱の歌声で届ける。曲順の妙も含め、聴き手の気持ちの整理を見守ってくれるような、音楽とリスナーへの愛情たっぷりの力作。

駆ける/標識の影・鉄塔の影

スカート

駆ける/標識の影・鉄塔の影

今年で活動10年目を迎える、澤部 渡によるソロ・プロジェクト、スカートの両A面シングル。サッポロビール"第96回箱根駅伝用オリジナルCM"テーマ・ソング「駆ける」と、テレビ東京系ドラマ25"絶メシロード"主題歌として書き下ろされた「標識の影・鉄塔の影」というダブル・タイアップ作品であるが、そんな事情を知らずとも思わず聴き入ってしまう求心力を確かに感じられる。「駆ける」のシンプルな構成だからこそ際立つサウンドのメリハリと展開の美しさ、サビへ流れる"泣きのメロディ"の巧みさもさることながら、コンパクトでかわいらしい印象の「標識の影・鉄塔の影」の歌詞に輝く、慈しみ深い情景描写には目を見張る。2曲それぞれに聴く者の日常に可憐な花を添えるような、静かなドラマチックさが満ちている。

LOBSTER

yonawo

LOBSTER

福岡発の新世代ネオ・ソウル・バンド、yonawo。川谷絵音(ゲスの極み乙女。/indigo la End etc.)にSNSで取り上げられ注目が集まった彼らの初全国流通盤が到着した。メロウなR&Bアンビエント・ミュージックでありながら、一方で「矜羯羅がる」を筆頭に物憂げで荒んだ日本語詞が耳に残るのが新鮮だ。即完の自主制作EPより「矜羯羅がる」、「ijo」、「しあわせ」をバンドで再録し、加えて、ホーンが入った、キメが心地よい人気曲「26時」、ロマンチックなサウンドの中の衝動的なフレーズがフックになる「Mademoiselle」、メジャー・デビュー配信シングル「ミルクチョコ」を収録。ライヴではまったく違うアレンジで演奏しているというので、それもぜひ体感してみたい。

瞬きもせずに

H△G

瞬きもせずに

フル・アルバムは『青色フィルム』以来約2年ぶり。収録曲は春夏秋冬の流れに沿って配置されていて、四季の光景や、それとともに移り変わる登場人物の心情が音や歌、詞を通じて丁寧に描かれている。風情ある表現を大切にしてきたH△Gの魅力を存分に堪能できる作品だ。特に印象深かったのは、2声の声質やミュートをかけた金管楽器の音色で儚さを演出する「夏のまぼろし feat.ま に こ」、クールな音像でありながらゴスペルに通ずる幸福感もある「青より蒼し」、アコースティック・ギターをフィーチャーした「夢の轍」。温かみや仄暗さを表現する術が増えたことにより、作品としての深みや、"あなたの弱さはあなただけの強さにもなり得る"というメッセージの説得力が増している。

RAINDROP

BLUEVINE

RAINDROP

生熊耕治(cune)、赤松芳朋(SOPHIA etc.)、AKI(Sadie/AXESSORY)という異なるフィールドで活動してきた3人によって結成されたバンドの1stミニ・アルバム。感傷的な空気が立ち込めた「RAINDROP」から、打って変わって爽快感のあるバンド・サウンドを高鳴らす「オワリノハジマリ」、幻惑的なギターを疾走させる「花弁とアガペー」に、強烈な変拍子に身も心もトリップさせられるダーティな「SHEEPLE」、ストリングスを組み込んだドラマチックな「BIRTHDAY」と、どれも歌を楽曲の中心に置きつつ、様々なサウンド・アプローチで魅せる5曲を収録した。聴き終えたあと作品に通底している"生きていくこと"というテーマが胸に深く、温かく残るものになっている。

ゴッドソング

バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI

ゴッドソング

自主レーベル"NAKAYOSHI RECORDS"からの第1弾リリース。作家として参加したのは、田中秀和(MONACA)、朝日(ネクライトーキー/Gt)、ラブリーサマーちゃん、村カワ基成の4人。個性豊かな作家陣が名を連ねているが、どれもがバンもん!のカラーに染まっているのは、彼女たちの強力な個性と作家陣からの愛の賜物だろう。冒頭の歌い出しと歌詞から耳を持っていかれる「ゴッドソング」は中毒性抜群。カラフルな音世界は、バッド・ニュースばかりの昨今の空気を吹き飛ばすパワーを持っている。改めましての自己紹介ソング「6 RESPECT」はファンキーでゴキゲンだし、嫌なことを忘れて踊り狂いたくなる「時刻は真夜中、踊れ少年!」、甘く浮遊感の漂う「この世に君が生きてる限り」と良曲揃い。

僕はしあわせなのか?

ザ・コインロッカーズ

僕はしあわせなのか?

昨年、目標としてきたZepp Tokyoワンマン公演のソールド・アウトを惜しくも達成できず、38人→13人へと再編成して新たなスタートを切ったザ・コインロッカーズの2ndシングル。表題曲「僕はしあわせなのか?」は、軽快でフレッシュなバンド・サウンドに乗せた、切なく揺れる恋心が投影されたかのようなメロディ・ラインが聴き手の胸に響く1曲に。歌声に込めた感情をさらに増幅させるかのようなサビのコーラスも聴きどころだ。飾らない言葉で綴られた歌詞は、広く長くリスナーのもとへ届いていきそうで、早くも新生ザ・コインロッカーズの代表曲が誕生した予感。なお、本作では3形態でカップリング曲が異なり、それぞれで表題曲とは異なるバンドの表情を堪能することができる。

水生

CYNHN

水生

JOYSOUNDとDEARSTAGEの共同オーディションで選ばれたメンバーで結成した、5人組ヴォーカル・ユニット、CYNHNの7枚目のシングル。ユニット名の由来である"青"をコンセプトにこれまで作品を発表してきた彼女たちの今作の表題曲「水生」は、夜明け前の空が濃い青色に染まる時間帯"ブルーアワー"をテーマにした楽曲だ。高いヴォーカル力と表現力を持つ5人それぞれの個性が美しく混ざり合い、迷いながらもまっすぐな眼差しで前を向き進んでいく様を表現。また、キレのいいバンド・サウンドも聴きどころ。特に大音量で鳴っている躍動感溢れる色鮮やかなベース・スラップは、ロック・バンド好きにも刺さるだろう。c/wには、"少し休みたいな"と思ったときに聴きたいゆったりとしたナンバーが収録。

VOO DOO?

ドミコ

VOO DOO?

予期せぬ曲展開、サイケな音色、ファンクやヒップホップをルーツに感じる腰の据わったグルーヴといった、ドミコたらしめるあらゆる要素をさらに推し進めた3rdアルバム『Nice Body?』から、約1年を経てリリースとなったニュー・ミニ・アルバム『VOO DOO?』は、これまでの魅力もふんだんに感じさせながら、聴こえてくる変化が最も大きい作品となった。ライヴ・アレンジが大きく変わることでも知られるドミコの、まさにそのライヴを想起させるような音の重なりが生むサウンドスケープは、タイトルさながら、呪術的でもあり幻想的でもあり、何より演奏者の楽しむ様が見えるよう。となるとこれがライヴではどうなるのか。次は音の鳴る現場で会いましょう。

Invitations

ドラマストア

Invitations

遠くまで球を投げるにはいいフォームを体得する必要があり、肘の角度から目線に至るまで、初めはひとつひとつを気にしなければならない。しかし繰り返すうちに身体が覚え、いつしか意識せずともきれいに投げられるようになる。比喩表現になってしまったが、ドラマストアは今そういう意味で新たな段階に差し掛かりつつあるのでは。思考を重ねて積み上げてきたこれまでがあるからこそ、自分たちの感性を信じられるようになってきた。だから"ベタを疑う"という考えでやってきたにもかかわらず、あえてベタに踏み切った曲がある。今だからこその再録もある。幅広い曲調に挑んだ経験が、当初からの哲学を固くさせるものとして機能しているのも嬉しい。過去、現在、未来がここにひと繋ぎになっている。

SINGALONG

緑黄色社会

SINGALONG

映画やドラマ、アニメを彩った「想い人」、「sabotage」、「Shout Baby」収録のメジャー1stアルバム。ミドル・バラードや、ドラマチックにボリュームを上げていく極上のポップスの印象も強いが、アルバムではそれが彼らの一面にしか過ぎないことがわかる。ファンキーに身体を揺らして高鳴るホーンと共に歌う、幸福感溢れる曲から、低温の波にたゆたい、さまようエレクトロ・チューン、疾走感のあるギター・ロック、美しいアンビエント曲や、レコーディングの遊びが冴える曲など、溢れんばかりの音楽愛を炸裂させている。そして、すべてに共通するのは長屋晴子のエモーショナルな歌であり、それを最大限輝かせる3人のエネルギーだ。その激しくも楽しいぶつかり合いが"SINGALONG"を生む。

JUGEM

嘘とカメレオン

JUGEM

息つく暇もないほどスリリングな展開で魅せる、これぞ嘘とカメレオン流高速ミクスチャー「さらばウォルポール」に始まり、ARCTIC MONKEYS「Brianstorm」を彷彿とさせるリフとビートが炸裂する「0」、オーセンティックなポップスに急接近した「タイムラプス」、90年代のオルタナティヴ・ロックやラップ・メタルの風を感じる「秒針」、BPM130から強引に200台にまで持っていく「リトル・ジャーニー」など、ユーモアとセンスが爆発したキラーチューンが満載。"You can choose fake or truth..."で締めるチャム(.△)(Vo)の歌詞もまた、いつにも増して豊かで核心を突く強さもより磨かれた、キャリア史上最高到達点と言っていいアルバムだ。

True or False

ES-TRUS

True or False

本物志向のリスナーを唸らせるラウドロック・サウンドという枠組みの中に様々な音楽のエッセンスを凝縮するという意味で、このバンドの魅力を物語るのは、間奏がジャズになるリアレンジ版の「NOT HATCH」、仮タイトルが"激しいバラード"だったという「媚愛」、ヒップホップとラテンのテイストも含む「暁-akatsuki-」の3曲か。紅一点シンガーを擁する名古屋の5人組が結成から4年。満を持してリリースする初の全国流通盤は、ライヴの定番曲に新曲も加えた、これまでとこれからを繋げる全7曲を収録。マイナスの感情を歌うことが多かった彼らが爽やかさとシンプルさという新境地を打ち出したバラード「君がいて」をリード曲に選んだのは、彼らがすでに、ここから始まる新たなキャリアを見据えているからだ。

ハミングバード

BLUE ENCOUNT

ハミングバード

ブルエン初のデジタル・シングルはアニメ"あひるの空"4月クールのオープニング・テーマとしてもお馴染みの1曲。重厚さや荘厳さを纏った先端のサウンド・プロダクションで高みに到達した前2作「バッドパラドックス」と「ポラリス」から一転、青春感やバンドを始めた頃のようなイノセントなニュアンスと音像がむしろ新鮮な楽曲に。アニメのストーリーともリンクする、選んだ道が必ずしも自分にとって優位ではない事実と、そんなことにお構いなしに夢に飛び込んだ自分の勇気を並行して描くリアリティ。自分が選んだことに対する確信と、実現のプロセスにおいて積み重ねてきた事柄――大袈裟に鼓舞するわけでもなく、自然と聴き手を肯定する温かな強さ。それがアレンジやミックスにも結実したことも新章を示している。

衝動人間倶楽部

PEDRO

衝動人間倶楽部

"衝動的に動いてる人間"へ憧れを抱くようになったというアユニ・Dが"衝動"をテーマに制作した1st EPには、前作『THUMB SUCKER』で確立したガレージ・サウンド感は残しつつも、表情の異なる4曲が収められた。全曲リード曲だけあって粒ぞろいだが、あえてひとつ挙げるとしたら、冒頭で衝動に任せたように音を鳴らしまくるノイズ・パートが感情を高ぶらせる「WORLD IS PAIN」は珠玉の1曲。これまでは意識的にパワー・ワードを入れていた歌詞が、本作ではより伝えることを意識してストレートな表現になっていることにも注目だ。PEDROとしては3作品目となる本作。キャリアを重ねるごとにロック・スターとして覚醒していくようなアユニ・DとPEDROの可能性が、なんとも末恐ろしい。