DISC REVIEW
-
B.O.L.T
POP
ももいろクローバーZや私立恵比寿中学が所属する"スターダストプラネット"の4人組アイドル、B.O.L.Tのメジャー・デビュー・アルバム。本作は、メロコア、パンクを始めとした生バンドによる本格ロック・サウンドが聴き応えたっぷりで、且つメロディをポップに仕上げることにより、タイトル通りにB.O.L.T流のポップを体現している1枚だ。同じ歌詞でも歌うメンバーによって意味が変わって聴こえてくるのは、年の離れたメンバー構成の賜物だろう。単曲配信が主流になりつつある時代に、アルバムを通して24時間を表現している点も意義深い。1枚を通して時間の流れを感じながら聴くも良し、今の時間帯に合った曲を聴くも良し。聴き方のバリエーションも楽しむことができる。
-
MAN WITH A MISSION
MAN WITH A "BEST" MISSION
結成10周年を記念した、メンバー選出によるベスト盤は、代表曲や、最新シングルから「Change the World」と「Rock Kingdom feat. 布袋寅泰」の全17曲を収録。2011年に発表されブレイクスルーのきっかけとなった「FLY AGAIN」や、ドラマ主題歌として広くリスナーを獲得した「Remember Me」、TAKUMA(10-FEET)をフィーチャーした「database」や中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)プロデュース曲「Hey Now」、その他ライヴでのキラーチューンが揃う。力のあるロック・バンドだと証明してきた10年。そして様々なジャンルを内包し、繊細さとダイナミズムを兼ね備えた王道たるロック・ミュージックを更新し続ける彼らの歩みが凝縮された1枚だ。
-
フラスコテーション
呼吸の景色
年間100本以上ものライヴを重ねる神戸の若手バンド フラスコテーションが、結成4年目にして1stアルバムをついにリリースする。新曲+過去曲の再録の全15曲からなる、約1時間のフル・ボリュームの本作。新曲は、佐藤摩実(Vo/Gt)の性格や意志がより表れるようになり、今まで以上に聴き手の感情に訴え掛けるものになっているし、過去作から今聴いてほしいものや思い入れの強いものを厳選したという楽曲たちは、バンドの世界観を強めている。さらには、佐藤以外の3人のメンバーがそれぞれ手掛けたナンバーも収録と、初アルバムにしてバンドの成長と今できる最大限をこれでもかとアピールする、気合充分の15曲が揃った。そんな前のめりな意気込みが表現された、こだわりのジャケ写にも注目してほしい。
-
いゔどっと
ニュアンス
昨年YouTubeに公開したオリジナル曲「余薫」、「累累」が合わせて90万再生を記録。歌い手としてのみならず、シンガー・ソングライターとしても注目を集めるいゔどっと初のフル・アルバムだ。儚くも熱い衝動を秘めた透明感のある歌声が、癒えることのない別れや、23歳の青年が抱く等身大の葛藤を丹念に歌い上げる。書き下ろし曲にはコレサワ、Sori Sawadaらによる切ないラヴ・ソングをはじめ、鋭利なメッセージを放つ100回嘔吐の「続く青」、syudouによる狂騒のロック・ナンバー「着火」などを収録。様々な色が溶け合う個性豊かな楽曲たちがいゔどっとの多面的な魅力を引き出す。珠玉は、自身が作詞作曲編曲を手掛けた「夜半の雨」。言葉にできない感情こそ音楽に昇華する、という彼の信念が滲む。
-
ぐるたみん
A~そんなふいんきで歌ってみた~
かつて発表していた"~そんなふいんきで歌ってみた~"シリーズを、2018年から再び定期的にリリースしているぐるたみん。再開後第5作目であり、コロナ禍の中で制作された本作には「脱法ロック」、「オートファジー」、「ラストリゾート」など、ボカロ・カバーを5曲収録している。中でも、彼の持ち味であるハイトーン・ヴォイスを炸裂させている「死ぬとき死ねばいい」は、激情的なサウンドと相性抜群。鬼気迫る勢いで聴き手に生きることを問い掛ける強烈な仕上がりになっている。また、ぐるたみん作詞作曲の「ライダーゴーグ」は、ヒリヒリとした空気をまとったロック・チューン。そこに乗せられた皮肉全開で世を憂う言葉たちに胸がすく人は多いはずだ。物理的にも精神的にも息苦しい日常から解放してくれる1枚。
-
杏沙子
ノーメイク、ストーリー
次世代ポップ・シンガー・ソングライター、杏沙子が"素顔"をテーマに自身がこれまで出していなかった部分を表現した意欲作。爽やかで明るくて衒いのない彼女だが、その裏にある繊細な想いや意志があぶり出され、今作を聴くとその存在を近くに感じることができる。揺れ動く傷んだ心を描く言葉選びが見事なリード曲「見る目ないなぁ」、大人の女性ならではの視点で恋のときめきを綴る「クレンジング」、強気なファンク・ナンバー「Look At Me!!」、諦めや怒りも孕んだクールな印象の「東京一時停止ボタン」、負の感情をポジティヴに変換する「ファーストフライト」と、収録曲それぞれで表現される豊かな表情がとても人間らしい。素顔を曝け出して様々な曲に挑戦したことで、より彼女の魅力が拡張していきそうだ。
-
Mrs. GREEN APPLE
5
日本のミレニアルズ~Z世代の不安と理想を映し出しつつ半歩先を走ってきたミセス、結成からの7年を集約。初期の高速BPM且つ情報量の多い「StaRt」や「Speaking」。人間としての成長がおおらかなサウンド・プロダクションに着地した「どこかで日は昇る」、音楽のエンターテイメント性を積載した「Love me, Love you」。ミセスがミセスたる所以とも言える、人の摂理や矛盾にフォーカスする「パブリック」と「アウフヘーベン」という一対の曲。さらに、生身の音を聴かせる新曲「アボイドノート」。初作品収録で今回再録した「スターダム」が冒頭を飾り、ラストにまったくの新曲「Theater」を配置したことにも注目。バンドという概念を更新し続けてきた、"フェーズ1"を凝縮した初ベストだ。
-
ゲスの極み乙女
ストリーミング、CD、レコード
"ここから新しいゲスの極み乙女。が始まります"。今作から「人生の針」を先行公開した際、川谷絵音(Vo/Gt)はこう宣言。そして、またも唸らせられるほど鮮烈な1枚が到着した。「私以外も私」、「キラーボールをもう一度」という代表曲をセルフ・オマージュした曲もだが、音の面ではロック然とした部分が減り、ストリングスを取り入れたり、曲ごとにジャズ、ヒップホップをフィーチャーしたりして、バンドを塗り替えている。それは複数のバンドを同時に動かす川谷ならではのギアの入れ方で、川谷、ほな・いこか(Dr)の歌の表現力、ベース・マエストロとでも言うべき休日課長の豊かなベース・ライン、そしてちゃんMARI(Key)のラップ(!)を含め、4人の音がより研ぎ澄まされたものに。聴き応えしかない。
-
GOOD ON THE REEL
手と手
GOOD ON THE REELがここにきてキャリアの最進化系を堂々と叩きつける改作。5人の手足だけで出せる音へのこだわりから、そこにある熱量を大切にしながらサウンドのイメージを拡張し、より高い次元で"景色の見える"サウンドの実現に向かった近年の流れが見事に結実した。エモーショナルなメロディと力強いバンド・サウンドに、シンセによるホワイト・ノイズを薄く乗せ夢見心地なエッセンスを少し。絶妙なサジ加減で"東京"を描き、新たなオリジナリティに目覚めたと言えるタイトル曲「手と手」に始まり、人と人との繋がりの大切さを歌った1枚。そこには昭和レトロな場末の酒場あり、広大な大地あり、豊かでユーモラスなサウンドスケープを手に入れたことで、持ち前のメロディと言葉がさらに躍動している。
-
あいみょん
裸の心
5月頭にshort movieが公開され、すでにおなじみの曲だが、耳からの情報だけで染み込んでくる感情も溢れんばかりのものがある。2017年に書かれ、何度かリリースの候補になっていたなか、今のタイミングでシングルでは初のバラードとして世に出た。誰かに恋するという心の状態は最も脆くも強くもあり、プロテクトされていない傷や飾っていない素顔のようでもある。歌謡曲的なピアノ・バラードでありつつ、どこかTHE BEATLESライクなサウンドのテクスチャーはプロデューサーのトオミヨウの得意とするところだろう。c/wは曖昧な関係を"会えば会うほどに/悲しくなって"けれど"身体冷やして待っています"という、切なくも強かでセンシュアルな楽曲。2曲ともこれまで以上に体温がヴィヴィッドに感じられる作品。
-
SUPER BEAVER
ハイライト / ひとりで生きていたならば
結成15周年にしてメジャー再契約という大きな節目を迎えたSUPER BEAVERの最新シングルは、その活動の中で培われた、バンド自身の生命力の結晶のような輝きに満ちている。中でも「ハイライト」の、哀しみや苦しみを抱えてもなお湧き上がる生への渇望を描いた柳沢亮太(Gt)による歌詞は、生命の尊さを改めて意識せざるを得なくなってしまった今、奇跡的なほど胸に響く。素朴なギターとストリングスが渋谷龍太の歌声を朗々と浮き立たせる、映画"水上のフライト"主題歌となった「ひとりで生きていたならば」、そして旧メジャー時の楽曲のセルフ・カバーとなる「まわる、まわる」と併せて、彼らが奏で続けたひたむきな生への想いを存分に感じられる、最上級の生命讃歌だ。
-
go!go!vanillas
アメイジングレース
2018年末に交通事故に遭った長谷川プリティ敬祐(Ba)復帰後初となる待望の新作。表題曲は、希望に満ちた"4人で再び音を奏でる、歓びの人間讃歌"となっており、光を信じて困難を乗り越えたメンバーの強い絆、支えてくれた人々への感謝の気持ち、多大なる愛に溢れている。"音楽って楽しい"、そんな想いが凝縮されたようなキラキラと眩しいサウンドは、聴き手を笑顔に、ハッピーにしてくれるはず。そして、そんな新曲を今届けたいと考えるところにもバニラズらしさを感じる。改めて"おかえりなさい"だ。また、カップリングのサウナ・ダンス・チューン(!?)「TTNoW」、柳沢進太郎(Gt)が手掛け、ヴォーカルも担当した「ノットアローン」、「おはようカルチャー」のライヴ音源(完全限定生産盤のみ)も必聴。
-
Novelbright
WONDERLAND
2019年夏に行った路上ライヴ・ツアーがSNSで話題になり、2020年ブレイク・アーティストとして注目を浴びているNovelbrightの1stフル・アルバム。橋本環奈出演のゲーム・アプリ"放置少女"TVCMソングでもあるリード曲「夢花火」は、ピアノを軸にしたロマンチックなバラードで、竹中雄大の卓越した歌声が前面に押し出されている。本作を聴いて驚くのは、そのヴォーカルが単に美声というだけではなく、バラードから「君色ノート」のようなきらきらとしたポップ・ソング、ソリッドなバンド・サウンドが走り抜けるパワフルなナンバーまで、より幅広くなった楽曲を見事に引っ張り、そのどれもを磨き上げた表現で聴かせられること。バンドの力と存在感をシーンに印象づけるには充分な作品になった。
-
fox capture plan
Curtain Call feat.Yosh (Survive Said The Prophet)
fox capture planが、Survive Said The Prophetのヴォーカリスト Yoshを迎えたコラボ・シングルをリリースした。それぞれインスト・ジャズ、ラウドロックのシーンからジャンルの枠組みを越えた自由な活動を行ってきた両者だが、今作ではそんな彼らによるタッグはまさに必然だと思わせるほどの相性の良さを見せている。疾走感溢れるリズム・セクションにエモーショナルなピアノ/ストリングスが絡みつき、Yoshの切なくも力強い歌声が物語を紡いでいく表題曲は、互いの持ち味が存分に生かされた会心の出来。カップリングではサバプロの代表曲「Right and Left」をギターレスなジャズ・ロック・サウンドで再構築し、秀逸なアレンジを聴かせている。
-
never young beach
サイダーのように言葉が湧き上がる
多彩な楽器や女声なども効果的に配した『STORY』をリリースし、ホール・ツアー完遂後のネバヤンは今年、一転してまたグッと身近な印象のシングルを発表している。本作はその親しみやすさに加えて、お得意の夏曲。同名の劇場アニメ主題歌である「サイダーのように言葉が湧き上がる」は、優しく軽快なギターが印象的な、まさに"サイダー"のように、カラッとした暑さに爽快感と懐かしさを弾けさせる1曲だ。シンバルやベースの響きを最小限に抑えた粒立ちの良い4人の音からなり、映画に登場する"言葉を交わすこと"に億劫になっている少年少女を見守る、安部勇磨の温かい歌声を際立たせる。c/w「シティサイド・ラプソディ」は阿南智史(Gt)作曲で、彼らとしては新しい都会的なファンクがえも言われぬ余韻を残す。
-
tacica
aranami
結成15周年を迎えたtacicaによる2020年のリリース第1弾は、TVアニメ"波よ聞いてくれ"のOPテーマ「aranami」と、8月17日に開催予定の結成15周年記念公演のテーマ曲とも言える「象牙の塔」の2曲を収録。アンセミックなロック・ナンバーの前者は誰もが感じていることを改めて言葉にしたような、ある意味tacicaらしからぬストレートなメッセージが意表を突きながら、最後の最後に溜飲が下がるパンチラインはやはり彼らならでは。一方、ホーンも使ったオーケストラルなアレンジが魅力の後者は、歌い始めのパンチラインでいきなりリスナーの気持ちを掴む。節目に謳う、そして、未来に繋げるバンドとしての所信表明。タイトルを含め、15年の活動に裏打ちされたバンドの矜持が窺える。
-
ラックライフ
アオイハル
2020年3月で結成12周年を迎えたラックライフによる通算9枚目のシングル。カンロ"ボイスケアのど飴"キャンペーン・ソングである表題曲は、彼らの真骨頂とも言えるストレートで熱い言葉を紡いだ応援歌だ。思わず拳を上げて歌いたくなるような冒頭のシンガロング、青春の匂いが漂うドラマチックなギター・リフ、どこか懐かしさも感じられるメロディにガシッと心を掴まれる。"何度も立ち上がれ"と夢を追う人の背中を押す歌詞は、紆余曲折の道のりを歩んできた彼ら自身の思いも描かれているのではないかと思う。だからこそ説得力があり、胸に直接刺さるのだろう。カップリングの「image」、「あんたが大将」も聴き手を肯定してくれるナンバー。どんなときでも味方でいてくれるような心強い1枚だ。
-
POETASTER
Imagination World
今、こういう音楽を求めていた。オリジナル・メンバーの脱退を乗り越え、新メンバーを迎えたPOETASTER。彼らはこのニュー・ミニ・アルバムで、逆境を追い風に変えるという自信と、吹っ切れた強さを手に入れている。パワフルなクラップが響く1曲目「DANCE DANCE DANCE」の"いつか その傷に意味があること"、"僕が わからせてやる"という言葉、全身全霊のコーラスからその気概が滲み出ていて沁みる。情報が多すぎる現代を一緒に進む術を、説得力をもって高らかに歌い上げる表題曲「イマジネーションワールド」もいい。そんな自分たちの決意や信念と、音楽を聴いてくれる"君"のことだけを想った全7曲。音像も言葉も、ストレートだからこそ飛びっきりグッとくる。それが今一番味わえる1枚だ。
-
Dear Chambers
It's up to you
ゲリラ発表した自身主催のスタジオ・ライヴが手売りチケットのみで即日完売するなど、注目を集めるDear Chambersによる初のEP。1分未満のショート・チューン「Strikes Back」で勢いよく幕を開け、アップテンポでライヴ映え抜群な「ワンラスト・ラヴァー」、美しい夕焼けが脳裏に浮かぶ「青年時代」、夜を駆けていくようなスピード感の中に切なさが見え隠れする「幻に会えたなら」、至極のメロディに想いを凝縮したミディアム・バラード「本音」と、持ち味の疾走感溢れるサウンドと歌が引き立つグッド・メロディを詰め込んだ5曲が収録されている。そのままライヴのセットリストになりそうなラインナップでもあり、ライヴハウスの景色が自然と見えてくるのがいい。
-
PIGGS
HALLO PIGGS
元BiSのプー・ルイが会社を立ち上げ社長となり、プロデューサー兼メンバーとしてオーディションで選んだメンバーと共に始動したアイドル・グループ、PIGGS。その気になるデビュー・アルバムは、グラム・ロック、ニュー・ウェーヴ、オルタナティヴ的なバンド・サウンドを軸とした全12曲入り。メンバー5人の個性豊かな歌声、メランコリックで時にミステリアスな雰囲気を醸し出す歌詞、歌謡曲の色も見えるポップなメロディ、エレクトロニクスな音色が混ざり合い、レトロでありつつ新しさも感じられる。また、コロナ禍の最中での活動スタートとなり、お披露目ライヴも見送られるなかだが、リード曲「KICKS」のドライヴ感はまだ見ぬ白熱のステージの様子が浮かんでくるほど。ライヴへの期待も高まる。
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
ASP
Skream! 2024年09月号