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DISC REVIEW

ドラマのデー

daisansei

ドラマのデー

ベースにあるのは温かみのあるメロディ、ゆるりとした歌声。そこに重なるバンドの音は曲をポップにさせるが、基本一筋縄ではいかず、なかなか読めない。美しくも語りすぎない歌詞は、時におそろしいほど核心をつく。さらに突然ラップや朗読が始まる意外性、リード曲のテーマに合わせてカセットテープでリリースする遊び心も。次の瞬間何が飛び出すかわからない、異世界に連れ出されたみたいな楽しさと、ひたすらに誠実な筆致。両方を有する彼らの音楽からは、"大賛成"という単語に通ずる突き抜け具合、器の大きさを感じる。なお、本作は、本格始動から約1年半でリリースされる初のフル・アルバムで、今年は4ヶ月連続配信リリースもあった。アイディアが溢れている状況だけに次が楽しみだ。

STEAL!!

SPARK!!SOUND!!SHOW!!

STEAL!!

アニメ"アクダマドライブ"のOP曲、書き下ろしのニュー・シングル。推進力のあるビートと重低音、縦横無尽に飛び交う電子音が圧倒的な疾走感で駆け抜ける。スサシの真骨頂とも言えるデジタル・パンクがより洗練され、アニメとの相性の良さも感じさせる1曲。"悪"をテーマにしたアニメに寄り添い、歌詞には正義を強要する現代社会への疑問も滲ませた。カップリングには9月に配信リリースしたEP『スサ死 e.p.』収録の「ゆーれい」のリミックス「Yurei(stei remix)」を入れたほか、アートワークはPERIMETRON所属のクリエイティヴ・ユニット Margtが担当。あらゆるジャンルを蹂躙するだけでは飽き足らず、最先端のクリエイターと融合して、新たな"スサシの違和感"を提示する。

PARK

the circus

PARK

ライヴの定番曲と新たに書いた曲を収録した5人組ロック・バンドの2ndアルバム。自ら掲げる"気怠いダンスと焼き付くギター。唄うサイケデリック・ポップ。ロックンロールサーカス"は、まさに言い得て妙と思わせる一方で、ここに収められた全12曲を聴き込めば、R&Bからの影響が窺えるリズム・アプローチや、ガレージ・ロック由来の轟音の演奏等々、彼らの魅力はそれだけにとどまるものではないことがわかるはず。キーボード担当の女性メンバーが作詞作曲に加え、曲によりメイン・ヴォーカルも担当するなど、新たなことにも挑戦しながらバンドが持つポテンシャルがまんべんなく詰め込まれている。彼らのことを知りたければ、まずこれを聴けばいい。だからこその初の全国流通盤。

Four For Fourteen

polly

Four For Fourteen

自主レーベル"14HOUSE."設立後初のアルバム。シューゲイザーなどの影響を色濃く映す、浮遊感あるサウンドのイメージが強いバンドだが、一歩深く踏み込めばそこにあるのは、優しいだけではない音の濁流だ。カオティックなサイケ・サウンドから、恐怖を感じるほどのアンビエント的な音の奔流まで――脳髄に直接作用するようにじわじわと胸がざわめくが、クライマックスの「言葉は風船 (hope)」や「点と線」の、唱歌的なメロディと絹のように滑らかな越雲龍馬のヴォーカルには、まるで鎮魂歌のような途方もない優しさと郷愁が満ちている。「狂おしい (corruption)」、「刹那 (canon)」など既発楽曲のリアレンジ4曲も収録された、pollyというバンドの奥行きを存分に感じられる1枚。

10

tricot

10

前作から9ヶ月での発表となるメジャー2ndアルバム。次のtricotへという思いと、コロナ禍の制作でセッションでの曲作りがリモートになった手法の違いも重なって、新たな発想に勢い良く飛び込んだ作品だ。中嶋イッキュウ(Vo/Gt)、キダ モティフォ(Gt/Cho)、ヒロミ・ヒロヒロ(Ba/Cho)のヴォーカルでリズミカルに繋ぎグルーヴを生む「サマーナイトタウン」、パーカッションを多用したポリリズムと歌が誘う不可思議な時の歪みが心地いい「箱」、1フレーズの歌詞のループと爆発的に展開していくアンサンブルに引き寄せられる「あげない」、「體」のスリリングなインプロ感など、刺激的な曲が並ぶ。とはいえ奇を衒った色づけでない、どの展開も心を奪い癖になるキャッチーさ、ポップさに磨きが掛かっている。

フィラメント

ヤなことそっとミュート

フィラメント

"ヤナミュー"こと"ヤなことそっとミュート"のメジャー2ndシングル。表題曲は、人と人との繋がりを電球のフィラメントになぞらえた、まさに白熱電球の明かりのように温かみのあるロック・バラードに仕上がった。この曲で届けたい言葉、そして想いを乗せたエモーショナルで包み込むような歌声を、ヤナミューらしい歪んだロック・サウンドで足腰強く支えているような印象だ。c/wの「Passenger」は、曲が進行していくにつれて音数が増え、だんだんと力強さを増していく様が実にドラマチック。爽やかながらも、鬱屈とした空気を吹き飛ばすような力強さも感じさせる1曲だ。この2曲こそがコロナ禍によって"ヤなこと"だらけになってしまった現在の世界に対する、ヤナミューなりのアンサー・ソングなのだろう。

ピアニシモ・ハートビート

bookman

ピアニシモ・ハートビート

pianissimo="極めて弱く"を冠したタイトル。全編を通して感じられる、心臓の拍動を思わせる温かなリズム。そして、時に凛と、時に柔らかく響く木囃子の歌声が儚くも力強い命の物語を目の前に浮き上がらせる。浮遊感を湛えた1曲目「Pianissimo Heartbeat(inst)」から、バンドらしい疾走感あるナンバー「夜をかかえて」、「遅咲きの花」まで、バンド・サウンドに縛られない多彩な楽曲たちの根底に常にあるのは、生と死の循環、そしてそれに向けられるどこまでも優しいまなざしだ。器用に生きられなかろうと、暗闇の中に身を潜めていようと、弱々しくとも懸命に生きる命の物語を真摯に描く"bookman"の歌は、彼の歌を必要とする人々の心の叫びを丁寧に、確実に掬い上げてくれるはずだ。

2020

a flood of circle

2020

新型コロナの感染拡大による混沌とした社会に、"2020"と名付けたアルバムではあるが、コロナの影響を受けて作られたものではない。今作には、どんな時代であろうとも、社会や自分自身との戦いの中で、ファイティング・ポーズを崩さずに転がり続けてきたバンドのスタンスが地続きのまま表現されている。暗闇の中で、"それが一体なんだっつーんだよ?"と唾を吐く「2020 Blues」をはじめ、本能のままに牙を向けと鼓舞する「Beast Mode」といったバンドの真骨頂と言える熱い楽曲のほか、「天使の歌が聴こえる」といったローテンポの楽曲ではメロディの美しさも冴える全12曲。ラスト・ソング「火の鳥」に辿り着いたとき、暗闇の先に希望が見えた。強い生命力を宿したロックンロール・アルバム。

ぼっち3

カノエラナ

ぼっち3

これまでライヴ会場限定だった『ぼっち』シリーズが第3弾で全国流通盤になった。"ひとりぼっち"での最小限の制作で最大限曲の感情をブーストさせる今作は、彼女の魅力を知るのにぴったりだ。バンド・サウンドによるマジカルな作品も素敵だが、今作はアコースティックによるシンプルだが奥深いサウンドで、歌のドラマを赤裸々に浮かび上がらせている。言葉や音の遊びがふんだんな「コンクリィとジャンゴォ」や、歌声やコード感が情緒豊かな「my friend」、また過去の曲での物語を違う視点から覗き新たなドラマを描いた「あの子のダーリン」や、主人公の時の経過を描いた「サブドミナント」など、どの人物もリアルな鼓動を持ち、その光景がありありと浮かぶ。カノエ監督による脳内オムニバス劇といった内容だ。

Teddy Boy feat. TeddyLoid

The Biscats

Teddy Boy feat. TeddyLoid

日本のロカビリー・シーンのレジェンド、久米浩司(ex-BLACK CATS/MAGIC etc.)のDNAを受け継いだシンガー、Misaki擁する4人組の初EP。彼らが掲げる"ハイブリッド・ロカビリー"=現代に相応しい新しいロカビリーは、DJ/プロデューサーとして活躍中のTeddyLoidとのコラボによってさらなる進化を遂げている。王道ロカビリー「Teddy Boy」、ロックンロールの「Hot and Cool」共に、"feat. TeddyLoid"バージョンとエネルギッシュなバンド・バージョンを収録。聴き比べることで彼らがやりたいことがより明らかに。「magic hour」はオールディーズ風のバラード。スライド・ギターやベースのサスティンを交えた繊細なプレイも聴きどころだ。

ダイアローグ / 触れたい 確かめたい

ASIAN KUNG-FU GENERATION

ダイアローグ / 触れたい 確かめたい

1年2ヶ月ぶりの新作は、両A面シングル。「ダイアローグ」も「触れたい 確かめたい」も、このコロナ禍による社会を映したような曲で、今改めて大事なものを突きつけられる感覚があるが、実は昨年行った欧州ツアーの際に、ロンドンでレコーディングをした曲だという。ダイアローグ=対話や、人や社会の礎になるものを童話のように、また詩的に描いた「ダイアローグ」。シンプルなメッセージが、細やかなディテールを含んだふくよかなギター・サウンドで織り成され、普遍的なダイナミズムを放つ。また「触れたい 確かめたい」では、塩塚モエカ(羊文学)がゲストVoで参加。後藤正文との歌のアンサンブルで、センチメンタルな記憶や残像を刺激する曲になった。またCD版のみリモート制作による「ネクスト」を収録。

Between the Black and Gray

MONOEYES

Between the Black and Gray

約3年ぶりとなる3rdアルバム。ヘヴィすぎず、だからと言って、決して軽いわけではなく、作為なんてひとつもない爽やかなメロディに、ただただ心が洗われつつ、全体の印象がビター・スウィートなのは3作目ならではの成熟なのか、新型コロナウイルス以降の気分の反映なのか。とまれ、そんななかでTrack.1のグランジィなリフやTrack.7のメランコリックなギター・ソロ、日本語で歌うTrack.11の芯の強さが鮮烈な印象を残している。前作に続いてScott Murphy(Ba/Cho)もTrack.4、Track.6、Track.8の3曲のソングライティングとヴォーカルを担当。細美武士(Vo/Gt)が作る歌とはまたひと味違う清涼感を作品に加えている。

ASOVIVA

フレデリック

ASOVIVA

今なお多くの制約を強いるコロナウイルスは、かえってフレデリックの闘争心に火を点けたのかもしれない。いち早くリモート制作の体制を整え、従来の音楽性を踏襲しながらもEDMに突き抜けた「されどBGM」を7月に先行配信。次いで、得意とする緻密な音遊びが光る「Wake Me Up」、ファンキーな中にポリティカルな主張も連想させる「正偽」、青春も熱狂も失ってしまった今夏に対して歌う「SENTIMENTAL SUMMER」の計4つの新曲をリモートで制作。そこには変わらず、むしろ凄みを増して滾る人間臭さがあり、且つそれらをまるっと包んでしまえるポップネスな力もある。どんな状況下でも、我らが"遊び場"を取り戻す日まで、音を鳴らすことをやめない。今作はそんな決意表明だ。

LEO-NiNE

LiSA

LEO-NiNE

アニメ"鬼滅の刃"OPテーマ「紅蓮華」や、シングル曲「unlasting」、「ADAMAS」、初ドラマ・タイアップ「愛錠」など収録のアルバム。ドラマチックな「愛錠」のようなバラードから、ライヴでバンドを率いるPABLO(PTP etc.)と共に作り上げる「play the world!」や、「cancellation」の硬質なロック・サウンド、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)とのメロディとサウンドの掛け合いがスリリングな「赤い罠(who loves it?)」など、幅広い内容だ。「わがままケット・シー」はBIGMAMAの金井政人(Vo/Gt)が作編曲を手掛け、アコギを基調に弦楽器や打ち込みのビートが絡み幻想的な音色を生む。クールに抑えた歌声が映える曲で、ヴォーカルの豊かな表現が味わえるのはアルバムならでは。

You need the Tank-top

ヤバイTシャツ屋さん

You need the Tank-top

挫折しても諦めない心が大事だと歌うモチーフに珪藻土マットを用いるソングライターは、世界中探してもきっとこやまたくや(Gt/Vo)しかいない。"さすがにふざけすぎでは!?"と思う歌詞が頻発しながらも、良質なメロディや堂々たるメロコアの音圧、時に哀愁を孕んだラップも飛び出すハイブリッド&ハイクオリティな楽曲の前では、もう大人しく笑わされるのがいい。それでいて、"とにかくみんな生きてほしい"という想いをストレートに歌った「寿命で死ぬまで」では、バンドの芯にある良識もきちんと窺え、彼らがお茶の間をも席巻している理由がわかる。手を替え品を替え、絶えずリスナーの予想の斜め上を急角度で突き抜け、否応なしに楽しませる。唯一無二のヤバT節が隅から隅まで行きわたった13曲。

FRAGILE

LAMP IN TERREN

FRAGILE

"FRAGILE"というタイトル通り、傷つきやすくなった心に丁寧に触れるような、音や言葉のひとつひとつに誠を尽くした全10曲を収録。距離を置いた生活をしなければならない今、中でもまず胸に飛び込んでくるのが「宇宙船六畳間号」。星が瞬くようにキラキラと光るサウンドと浮遊感で、部屋の中から宇宙を描くこの曲。"気持ちと想像で君の形に触れる"、"僕ら確かに繋がっている"の詞に彼らの粋な実らしさが滲む。また、クワイアのスケール感が彼らとしては新しい「EYE」、アコギ片手に松本 大(Vo/Gt)の日常と本音を歌にした「いつものこと」など音像の幅も見せながら、すべてを総括するように、そんな人や世界の危うさと共生していく決意を示す、繊細且つ芯のある表題曲で締める流れも美しい。

SOLITUDE

The Songbards

SOLITUDE

アメリカの詩人、エラ・ウィーラー・ウィルコックスの"貴方が笑えば、世界は貴方と共に笑う。貴方が泣くとき、貴方は一人で泣く。"("Solitude"より)から着想を得た今作は、これから始まる3部作の第1弾。"SOLITUDE=孤独"がテーマだが、このアルバムで歌われているのは決して絶望や悲嘆ではなく、誰もが心の片隅にそっと忍ばせている分量の寂しさや心細さと、その隣に静かに寄り添い、世界へ微笑みかけられるよう導いてくれる光だ。シンプルなグッド・メロディと、彼らが敬愛するTHE BEATLESを想起させる美しいコーラス・ワークも、まさに"隔てる心を優しく解かす"(「窓に射す光のように」)。まだベールに包まれた3部作プロジェクトの続きが待ち遠しくなる1枚。

FACE

the shes gone

FACE

the shes goneの1年ぶりとなるミニ・アルバム。今作には、どこか季節の巡りが感じられる色とりどりな5曲が収録されており、全曲で異なるサウンドスケープが鮮やかに描かれている。そして、なんと言っても彼らの強みでもあるメロディ・ワークが素晴らしい。不思議な温度感を持つ兼丸の歌声を乗せた"シズゴ節"とも言えそうなそのメロディは、聴き手の日常にスッと溶け込む唯一のものだろう。希望と不安の狭間でぐらついた気持ちに優しく触れる「春の中に」、飲みの席で感じる不甲斐なさを軽快なリズムの中で歌う「alcohol」、すれ違い沈んでいく想いの行先を綴る「Orange」。どれだけ季節が過ぎようと人それぞれ悩みや葛藤は絶えないけれど、今作はそんな心を少しだけ、楽にしてくれる気がする。

CRISP YELLOW

Half time Old

CRISP YELLOW

インディーズながら、au三太郎シリーズのCMソング「みんな自由だ」に抜擢され、お茶の間への知名度を飛躍的に広げたHalf time Old。前作から約1年ぶりにリリースされるミニ・アルバムは、"君は間違ってないよ"と背中を押す青春パンク「雛の歌」、心地よいグルーヴで揺れる「2020」、裏打ちのリズムを賑やかに刻んだロック・ナンバー「OverEats」など、これまで以上にバラエティ豊かに振り切った7曲が並んだ。そこに貫かれるのは、ヴォーカル 鬼頭大晴がこのコロナ時代に抱いたリアルな想いだ。中でも、七転び八起きの人生を肯定するフォーク・テイスト「達磨」が胸を打つ。理不尽を受け入れ、そこから何度でも立ち上がろうとするしなやかな希望の色は、今作全体に通底するメッセージだと思う。

ライトアップアンビバレンツ

ЯeaL

ライトアップアンビバレンツ

2017年に"銀魂"OPとなったシングル「カゲロウ」や、1stアルバム『19.』を発表してから3年。1stアルバムのツアー後3人体制となって、シングルのリリースやツアーを重ねながらバンドを強靭に叩き上げてきたЯeaL。待望の2ndアルバムはバンド・サウンドやアレンジが洗練された。もともとソングライター、Ryoko(Vo/Gt)による膨大な音の情報量を詰め込んだ曲を、爆発的なアンサンブルとハイパーな歌で駆け抜けていく痛快さが、"THE ЯeaL"というサウンドであり武器だったが、その魅力を削ぐことなくアレンジが整理され曲が鋭さと華やかさを増した。単純な引き算でなく、思いの質量はぐんと上がっている。バンド・サウンド、ギター・サウンドにこだわり磨き上げてきた賜物的な作品だ。