Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

Skream! 公式X Skream! 公式YouTube Skream! 公式アプリ

DISC REVIEW

闇夜に烏、雪に鷺

LACCO TOWER

闇夜に烏、雪に鷺

コロナ禍の中、メジャー・デビュー5周年を迎えたLACCO TOWERが世に問う完全生産限定の3枚組(2CD+DVD)。メジャー移籍後の5年の軌跡を振り返りながら、その間、発表してきた曲の中から全22曲を厳選し、曲が持つカラーから11曲ずつ黒盤と白盤に収録した。TV アニメ"ドラゴンボール超"のエンディング主題歌だった「薄紅」をはじめ、白盤にはアンセミックな曲が多めに選ばれてはいるものの、黒と白だから単純に動と静、暗と明とならないところが、LACCO TOWERの魅力であり、彼らがテーマにしてきた人の心の恐ろしさ。ラウドロックとエモと昭和歌謡が絶妙に入り混じる、唯一無二のサウンドとともに味わいたい。DVDには黒盤、白盤に選ばれていない曲も含め、MVを16曲収録。

ことばとおんがく

SAKANAMON

ことばとおんがく

1曲目に収録されている「ことばとおんがく」のイントロで、いろは歌のコーラスが左右から交互に聴こえた瞬間に、このアルバムに仕込まれている様々な仕掛けへの期待が高まった。ネクライトーキーのもっさ(Vo/Gt)が参加する「かっぽじれーしょん」では、軽快なメロディと共に展開される聴き間違いをテーマにした会話風の歌詞が、まるでコントのようで、思わずくすっと笑ってしまう。レの音が鳴ったら文字が入れ替わる「レ点」や、いろは歌のアナグラムになっている「いろはうた」など、各曲に異なった言葉遊びが展開され、日本語の面白さや美しさを再認識できるアルバムとなっている。遊び心たっぷりに繰り広げられる彼らの言葉と音楽の世界を、ぜひ歌詞カードを片手に堪能してほしい。

MUSIC WARDROBE

FIVE NEW OLD

MUSIC WARDROBE

印象的なアルバム・タイトルの意味が、一聴すればわかる。「Hallelujah」、「Light Of Hope」など話題性抜群のタイアップ・ソングや、Masato(coldrain)をゲスト・ヴォーカルに迎えた「Chemical Heart」など、バリエーション豊かで大ボリュームの16曲からは、トリッキーなオルタナやスタイリッシュなシティ・ポップ、彼らの音を純粋に楽しめるインスト楽曲、はたまた泥臭く鋭利なロックンロールまで、ジャンルの壁にとらわれずすべて呑み込んでいくバンドの自由自在な柔軟さを感じられた。丹精込めて仕立て上げられたカラフルな楽曲たちは様々なシーンや感情にフィットしてくれて、ひとたび身に纏えば、目に映る世界までカラフルに変わりそう。

Rolling

Panorama Panama Town(ex-パノラマパナマタウン)

Rolling

岩渕想太(Vo/Gt)の喉の手術やメンバーの脱退を経て、3ピースとなり名前表記も改めたPanorama Panama Town。彼らは石毛 輝(the telephones/Yap!!!)プロデュースの新作で、フレッシュな気持ちでバンドの新生面を切り拓いたようだ。バンド自身の変化に加え、コロナ禍もあり転がり続けた期間、ずっと前向きな姿勢を示したかったであろうその意志を、ストレートで勇壮な「Sad Good Night」の力強い清々しさで、冒頭一発で示してみせるのが最高。アグレッシヴなライヴの熱狂を想起させる「氾濫」でも、まさに想いが横溢するような言葉と、後半の怒りをエネルギー源に走り出す如き展開に痺れる。そして、颯爽とした「SO YOUNG」で締めくくる頼もしさ。パノパナ第2章の眩い幕開けだ。

LIFE IS TOO LONG

w.o.d.

LIFE IS TOO LONG

リード曲「踊る阿呆に見る阿呆」はTHE WHOのPete Townshend(Gt/Vo)の名言を意識したような"踊れる"グランジ・ナンバーだったり、1曲目「Hi, hi, hi, there.」から地元の先輩ロックンロール・バンドの曲名が登場したり。臆面のなさが魅力のw.o.d.だが、先達への愛情が滲み出ているのもいい。だけど、そんなこと知らなくたって、単純に聴いてみれば"カッコいい!"とぶち抜かれる強さもあると思う。"通り過ぎた道の 正しさを祈った"と不安を孕んだ葛藤をぶつけた「relay」、アコギとキーボードが印象的な「あらしのよるに」は音的にも新境地。怒りや寂しさをなかったことにしたり、嘆いたりするのではなく、意味のあるものとして受け止め今を必死にサヴァイヴするリアルが息づく。

あさやけ

アンテナ

あさやけ

配信シングル「未来を待てない」、「花空」を含むANTENAの3rdミニ・アルバム『あさやけ』。インスト曲を経てオープニングを飾るのは"東京はやばいんです"のフレーズが癖になる「Jibunmakase」。夜から朝になるように、アーバンなサウンドは時間経過とともに温かみを増し、アコースティック・ギターやピアノの音色、バンドの有機的なアンサンブルも表出。開けたところへと向かっていく。歌詞には自分自身や身近にいる人を大切に思う気持ちが表れており、昨年から続くコロナ禍における渡辺 諒(Vo/Gt)の心情が色濃く落とし込まれている印象。夏場ぼーっとしている瞬間からふと始まる考え事、無常観までを滑らかに描いた「みんみん」のさりげないすごさにも注目したい。

the World

リーガルリリー

the World

とても大きなタイトルが冠されつつ、私たちが今息をしているこの場所が世界だと思わせてくれる自然な強さがある初のEP。多くのアーティストがテーマにする「東京」は、ナイジェリアの風もホタルイカが生息していた海も繋がっていることを実感させる歌詞に、感銘を受けつつ、朴訥とした前半から怒濤のシューゲイズ・サウンドへ転換していく構成も、歌詞が示唆する自然なこととリンクしており、それもまた見事だ。「地獄」と「天国」という対照的且つ遠大なテーマの曲も、コロナ禍で再発見した日常の中にある息苦しさと心地よさを表現した"近い"感覚の作品。また、カバーとして、彼女たちが中学生の頃に出会った敬愛するSEKAI NO OWARIの「天使と悪魔」を取り上げ、トータリティのある仕上がりに。

飛べないニケ

ロザリーナ

飛べないニケ

ロザリーナの約1年ぶり、2枚目のフル・アルバム。ドラマ"ナイルパーチの女子会"主題歌「涙の銀河」や、TeddyLoidプロデュースの「moon & sun」、昨年行われた無観客ワンマンに合わせて発表された「NEVERLAND」に加え、全編英語で歌われた「Full of lies」や彼女の訴えるような歌が胸に刺さる「Dream on」などの新曲7曲、全10曲が収録された。全体を通してドリーミーでリラックスしたムードが漂っている印象だが、ユーモラスな打ち込みのアレンジや、壮大なストリングスのアレンジなど、サウンドの幅は広い。その洗練されたトラックをより豊かにするのが中性的でスモーキーな、"忘れられない声"と呼ばれる彼女の歌声。目を閉じて聴きながら浮かび上がる物語に浸りたい。

EMPiRE BREAKS THROUGH the LiMiT LiVE

ExWHYZ(ex-EMPiRE)

EMPiRE BREAKS THROUGH the LiMiT LiVE

今年2021年1月4日に自身最大規模の東京国際フォーラムホールAにて開催されたワンマン・ライヴの映像作品。本公演の最大のポイントは、なんと言っても、持ち曲である全39曲をノンストップで駆け抜けるセットリストだろう。タイトル通り、まさに"BREAKS THROUGH the LiMiT"="限界突破"をして、現在進行形で殻を破っていく姿には胸が熱くなるし、フラフラになりながらも久しぶりにエージェント(※ファン)に会えた喜びを爆発させて笑顔を絶やさないあたりには、リスペクトさえ感じさせる。気迫のパフォーマンス、ダンス・ミュージックとロックの融合、スタイリッシュなステージ演出、現在地点のEMPiREをすべて詰め込んだファン必携の作品であり、入門編としても強く推奨したい1枚。

青春とバンドは、楽しくてメンドクサイ

ザ・コインロッカーズ

青春とバンドは、楽しくてメンドクサイ

"青春とバンドは、楽しくてメンドクサイ"、プロデューサーである秋元 康節が前面に出たように感じるタイトルだが、彼女たちがザ・コインロッカーズで送ってきた時間と本作を象徴する言い得て妙の言葉だ。リード曲「泣かせてくれないか?」は、昭和のフォーク・ソングのムードが香り立つ1曲。哀愁漂う歌唱とサウンドは、彼女たちのヒストリーとも重なってリアリティがあり、胸を締めつけられる。なお本作は13曲目が形態によって異なり、初回限定盤にはシリアスなバラード「永遠の記憶」、通常盤には"タイムカプセル"をテーマに時の経過を切なく歌うミドル・チューン「その日」を収録。明るい曲も、強気な曲も、切ない曲も入り混じる。あぁ......やっぱり"青春とバンドは、楽しくてメンドクサイ"。

LA LA RAINBOW

Miyuu

LA LA RAINBOW

オーガニックなサーフ・ロック・テイストに、印象的なエレクトロニック・サウンドなども導入し、映像喚起力が格段にアップした作品。音像やアレンジの深みは、プロデューサーにMichael Kanekoを迎えたことが功を奏している模様。ブレスが多めの歌唱が海辺のマジックアワーに合う「Love you in blue」、ピアノがジャジーでNorah Jonesを想起させる「yellow light tonight」、音像が"近い"「indigo night」、裏拍のリズムとホーンが海の匂いさえ想起させる「summer together」、ミニマムで屋内に場所を移したような「shine on you」など、聴感で場所を擬似体験できる。過ぎた恋や言えなかった言葉、会えない誰かの心の平和を祈る歌など、今に寄り添う歌詞もいい。

空集合

三浦隆一

空集合

空想委員会が活動休止をして2年、三浦隆一(Vo/Gt)のソロ・デビュー・アルバムが完成。もともとは昨年春の発売を予定していたが、コロナ禍や三浦の体調不良もあり、1年の時を経ての発売となる。Kenji Smith(Gt/ex-ウソツキ)、出口博之(Ba/モノブライト)、渡辺拓郎(Dr/藍坊主)といった盟友と作り上げたのは、三浦の心の内に触れる作品だ。ソロという新たな道を歩んでいく、そこでふと襲われる不安や正解を求める焦燥感は、自分の足元が不安になる出来事が多かった昨今の日常にも重なりそう。その音楽は、どうにもならない悩ましさを抱えながらも、一歩を踏み出す確かで軽やかな躍動がある。彼が自身に問い掛け、自分の声に耳を傾け続け聞こえてきたこの音楽は、誰かにとっての道しるべになりそうだ。

Moment

アポロノーム

Moment

大阪発の女性ツイン・ヴォーカル・バンド、アポロノームのミニ・アルバム。夢に向かって走る様子をキラキラと輝くポップなサウンドに乗せた「Glow」や、新生活を迎える人の背中を押す「信じて」など、卒業シーズンにぴったりな全7曲を収録している。「君へ」を聴いて友人との写真を見返したくなったり、アコギの弾き語り調で歌われた「恋する」で好きな人から連絡が来るだけでドキドキする感覚を思い出したりと、あらゆる青春がこの1枚に詰まっている。卒業には不安と期待が入り混じるものだが、美しさの中に力強さもある辻村アリサ(Vo)とおおにしれいあ(Vo/Gt)による歌声が、自分を信じる勇気をくれる。初の全国流通盤リリースとなった彼女たちもまた、ここから新たな1歩を踏み出すのだろう。

THE FIRST TASTE OF ME

DOLL PARTS

THE FIRST TASTE OF ME

Courtney Love(HOLE/Vo/Gt)や土屋アンナなどからの影響も窺えるヴィジュアル、妖艶で深みのある歌声を持つ紅一点 ARISAを擁する異端のニューカマー・バンド、DOLL PARTSの1stミニ・アルバムが完成。90年代テイストのロック・サウンドと、ノスタルジーを感じる昭和歌謡風のメロディを軸とした、バンド独自の世界観を存分に表現した1枚となった。うねるようなベース・ラインとタイトなドラム、艶めかしく危うさを纏ったARISAの紡ぐ詞と歌が聴き手を楽曲の世界に引きずり込む「ア.イ.ノ.カ.タ.チ」をはじめ、見え隠れする本能、孤独、憂い、渦巻く感情が吐き出される楽曲群が強烈な印象を残す。そこに差し込まれる「Anata」での優しく切ない歌唱のギャップもいい。

空に沈める

透明図鑑

空に沈める

アーティストのサポートや、クラシックのコンサートなど、キーボーディストとして幅広く活躍をする透明図鑑が、照井順政(siraph)との共作で完成させたソロ・アーティスト初作品となる"0th"シングル。本作には、変則的なリズムと継ぎはぎのような歌唱、楽器のように用いた吐息で個性が光る「毒煌々」、なんとも不気味なインタールード「まだらエラー」、無機質的で美しい音世界が広がる「誰も知らない」の3曲が収められている。本人いわく"感覚だけで書いた"という本作だが、そこには彼女がプレイヤーとして携わってきたクラシック、現代音楽、ポップス、ポスト・ロックなど、様々な音楽的エッセンスが自然と反映され、クオリティと独創性が非常に高い。夜をテーマにする1st作品が今から楽しみだ。

Autonomy

Kotone(天神子兎音)

Autonomy

昨年、『PUNISHMENT』でメジャー・デビューを果たした神様系VTuber、Kotone(天神子兎音)の2ndシングル。表題曲は鋭利なシンセが高速で駆け抜けるデジタル・ハードコアなトラックにのせて、Kotoneの凛としたヴォーカルが自身の存在証明を問い掛ける。c/wの「今回の騒動につきまして。」は、ネット上の過激行動が炎上したことによる謝罪をテーマにしたこのご時世らしいナンバー。リズム隊に堀江晶太(Ba/PENGUIN RESEARCH)とゆーまお(Dr/ヒトリエ)が参加し、テクニカルなプレイが炸裂するダンサブルなロック・ナンバーに、こぶしの効いた歌唱が映える。楽曲ごとに表情を変え、どんなジャンルも乗りこなすKotoneのロックでパワフルな一面がフィーチャーされた1枚。

Q.E.D.mono

ぜんぶ君のせいだ。

Q.E.D.mono

新メンバーが加入し、7人体制での47都道府県ツアー中に発売となった現体制での再録アルバム。「WORLD END CRISIS」でスタートし、感情の激流に今にも心が崩壊しそうな危うさから、もう一度力を取り戻していく「革鳴前夜」へと続く。「メスゲノムフェノメノン」、「オルタナティブメランコリー」、「キミ君シンドロームX」、「せきららららいおっと」など、妄想たっぷりでつんのめっているのはこれぞぜん君。の不器用で、それでいてキャッチーな曲も並んでいる。捻くれてしまう自分へのアンセム「When you 2 WANT」があれば、ひとりの痛みを知るからこその強さも「MONOLOGUE」で歌える。カラフルな7人の声色が寄り添い、せめぎ合って成立する、ぜん君。の全方位がパッケージされた作品だ。

FLASH

FINLANDS

FLASH

コロナ禍の影響もあり、延期になっていた新作が約2年ぶりに到着。その間の塩入冬湖(Vo/Gt)ソロの表現も、2021年にオルタナティヴ・ギター・ロック・バンドであることの必然も、通底していることを実感する作品だ。この特異な時世を音楽に持ち込みたくないという気持ちと、偶然にせよコロナ以前から書いていた「まどか」(配信とは別Ver.で収録)から連なる、当たり前に続いていた日常や理想の唐突な断絶に対する怒りと弔いにも似た感情。逆に恒常的に彼女が抱えている"自分"を構成している要素と他者との関わりへの熱望と懐疑。音楽的には速めのハチロクの「HOW」、巨大なグルーヴを巻き起こす「ナイトハイ」、ヒップホップ・テイストもある「ランデヴー」、和なコード進行がダークな「Balk」など新たな側面も。

エーテルの正体

神はサイコロを振らない

エーテルの正体

2021年第1弾フィジカル・シングルは全4曲中3曲がタイアップの書き下ろし。その事実が注目度の高さを物語る。懐かしい景色を描くミディアム・テンポ「未来永劫」(アニメ"ワールドトリガー"EDテーマ)、アッパーなライヴ・アンセム「クロノグラフ彗星」(ドラマ"星になりたかった君と"主題歌)、エレクトロなダンス・ナンバー「1on1」(ドラマ"ヒミツのアイちゃん"主題歌)に加え、伊澤一葉(東京事変/the HIATUS etc.)をプロデュースに迎えた「夜永唄」のアフター・ストーリー「プラトニック・ラブ」と、すべて異なるサウンド・アプローチに挑戦した濃厚な1枚。メジャー以降タイアップが増えたが、全曲に自身の偽りない感情を歌に込める、柳田周作(Vo)のブレないソングライティングの姿勢もいい。

ポニーテイル

ビッケブランカ

ポニーテイル

表題曲「ポニーテイル」は、編曲にいきものがかりやポルノグラフィティのプロデュースや、多くのJ-POPヒット曲のアレンジを手掛ける本間昭光を迎えた。最も力を入れていた音像部分をあえて他者に委ね、新たな輝きを纏った仕上がりになったが、一方でビッケブランカの音楽が持つ普遍性が際立つ曲にもなっている。"ポニーテイル"という定番的な言葉や、そのイメージをモチーフに、良質なJ-POPのど真ん中を行った曲に従来のファンは驚くだろう。今回は、毒はなしか? と意表を突かれつつも、瞬間的にシーンや心情を変化させるコード運びの妙、抑制されたメロディ・ラインに滲む歌心や、限られた言葉の行間にある余韻など、細やかな遊びや洗練に心惹かれる。春が訪れると共に蘇るような、マジカルな仕掛けが随所にある1曲だ。