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DISC REVIEW

Memory

マルシィ

Memory

今春に行った初ワンマンのチケットは即完、Z世代の注目を集める3ピース マルシィのメジャー・デビュー作には、現在のバンドの代名詞と言える、フロントマン 吉田右京が綴る"恋の始まりから愛が終わるまで"の曲たちが揃った。奇をてらわずメロディと歌をまっすぐ大事にしたバンド・サウンドに素直な想いを乗せ、リスナーひとりひとりの淡い記憶を呼び起こしていく。曲によってはメンバーだけでなくJ-POPシーンを代表するアレンジャー陣も迎え、1stアルバムにして幅広いアプローチで存在感をアピールする。またCD限定ボーナス・トラックとして、地元福岡の先輩であるユアネスの古閑翔平(Gt/Prog)も編曲に参加した、ストリーミング1,500万回再生を超える代表曲「絵空」も収められている。

心拍数とラヴレター、それと優しさ

Cody・Lee(李)

心拍数とラヴレター、それと優しさ

高橋 響(Vo/Gt)が中学生の頃文集に綴った"僕はソニーからデビューします"という夢は現実となり、ついにメジャー・デビュー作がリリース。独特な表現のワードをポップに放つ「愛してますっ!」や、タイトルからは想像がつかないロマンチックで'80s感漂う「冷やしネギ蕎麦」、繊細なピアノと情熱的なギターが混ざりあう「honest」、アップテンポで駆け抜ける全肯定ソング「W.A.N.」、切なさが染みる冬のバラード「しろくならない」、街と日常を切り取った素朴さが心地よい「世田谷代田」など12曲が収録された。シティ・ポップからパンクまでを奏でるそのあまりの振り幅の広さに、まだまだ見せていない顔があるのではと期待してしまう。海外からも注目を集める彼らの、計り知れない可能性を感じる1枚。

CASTLE

Dios

CASTLE

かつて、ぼくのりりっくのぼうよみとして活動していたたなか(Vo)が、世界的ギタリストIchika Nito、ぼくりりを手掛けていたビートメイカー、ササノマリイ(Key)と組んだ新バンドの1stアルバム。R&Bを基調にした全12曲。ダイナミックなバンド・サウンドとエレクトロニックなトラックの融合、ノスタルジックなジャズを思わせる異色のダンス・ナンバーのTrack.2をはじめとする曲の振り幅、ヒリヒリとした歌詞――聴きどころはあまりにも多いが、一番はやはり、3人がそれぞれにフロントマンという自覚を持っているに違いないスリリングなアンサンブルだ。ヴォーカリストを楽器隊が支えるという固定観念は通用しない、言い換えるなら、強烈な個性が溶け合う奇跡のバランスという表現が相応しい。

LOST IN TOKYO

SOIL&"PIMP"SESSIONS

LOST IN TOKYO

ワールドワイドに活動するSOIL&"PIMP"SESSIONSの約2年半ぶりとなるオリジナル作品は、彼らを育んできた土壌でもある"東京"をテーマにしたコンセプト・アルバム。バンドにとって思い入れのある街の地名などをもじったタイトルのもとに展開されるインスト楽曲は、その地に足を踏み入れた者なら誰もが目に浮かぶであろう景色を想起させる説得力に満ちている。ゲストVoを迎えた楽曲も秀逸で、大都会の様々な表情を捉えたSKY-HIのリリックが刺さるTrack.3や、狂騒的なビートの上で向井秀徳(NUMBER GIRL/ZAZEN BOYS)が大仰に歌い上げるTrack.8と、強烈な存在感を放っている。今ではどこか縁遠いものになってしまった、喧騒も恋しくなるような作品だ。

トワイライト・ファズ

THIS IS JAPAN

トワイライト・ファズ

かすかな光やたそがれを意味する"トワイライト"と、最も原始的なギター・エフェクトとも言われる"ファズ"。その名の通り、衝動的な轟音の中で、切なさと共に胸が熱くなる美しいナンバーが届いた。ディスジャパ曲の中でもひと際ポップなメロディに、あえてこれまで以上に骨太な演奏を掛け合わせ、杉森ジャック(Vo/Gt)の無鉄砲なキャラクター剥き出しの詞を乗せた1曲は、アニメ"BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS"EDとしても支持を集めている。c/wには、セントチヒロ・チッチ(BiSH)のピュアでヒロイックな歌声と、杉森の荒々しいしゃがれ声の対照的なツインVoで化学反応を起こす「KARAGARA」も収録。新たな試みを経てひと回り大きくなったバンドを感じられる。

MOON

FOUR GET ME A NOTS

MOON

5月にリリースしたEP『SUN』に続く新作。キャッチーなメロコアが中心の前作に対して、今回はフォゲミの泣きのある歌心で畳み掛けるエモ、インディー・ロック、メロディック・チューンが揃う。ノイジーなギターとビートの疾走感と憂いを帯びたメロディ&ヴォーカルのコントラストが切なさのスピードを加速させる1曲目「Erase」から、未来を変えていく思いをまっすぐに刻んだ「Futures」、女性Vo/Gt 高橋智恵をメイン・ヴォーカルにした90年代USインディー・ロックの香り漂う「Dahlia」から、さらにポップでタイムレスなメロディとギター・サウンドが輝きを増していく「Happiness」への流れも最高だ。シンプルなバンド・アンサンブルで細やかに曲の表情を彩る、バンドの旨味を感じる。

ユアキャンバス

THE BOYS&GIRLS

ユアキャンバス

"こんなんじゃないんだってボーイズアンドガールズ"。そんな力強いファイティング・ポーズで幕を開ける本作。バンド自身を指しているようで、同時に"少年少女"すなわちリスナー全員を鼓舞する言葉とも取れるこのひと節に、"THE BOYS&GIRLS"というバンド名の妙が光る。好きな色で好きに描けばいいと、すべてを受け入れるまっさらなキャンバスのように"あなた"の色を全力で肯定する楽曲たち。随所に滲む"会いたい"というまっすぐで切実な想いにもグッとくる。自身の情けない過去や消えない後悔も曝け出し、それでも"間違いじゃない"と締めくくる本作は、涙が出るほど温かく、聴く者の弱さも惨めさもひっくるめて抱きしめてくれる。"この旅は終わらない"と歌うボイガルが、彼なりの色で描いていく未来に期待。

OUTLAST

ADAM at

OUTLAST

ピアノ・インスト・シーンで活躍するADAM atだが、洒落たムードや繊細さだけではなく、むしろ熱が滾っているのが本作の特徴だろう。オープニングに据えた表題曲を再生した瞬間に、そのラテン風味全開のピアノ、ギター、ベースのリフが容赦なく脳内を支配する。かと思えば静謐でドラマチックなピアノのメロディがその喧騒を一掃するなど、彼ならではの音像で新鮮に聴く者を惹きつけていく。さらに、UKからADAM atが敬愛するGrant Nicholas(FEEDER)や、旧友 FRONTIER BACKYARDが参加した楽曲もあり、作品に新たな彩りを加えている。活動10周年を迎え、確固たる自信を携え、より自由に自身のルーツと今やりたいことを融合、具現化した意欲作だ。

ひまわりコンテスト

ヤバイTシャツ屋さん

ひまわりコンテスト

ヤバT初の夏ソング「ちらばれ!サマーピーポー」をリード曲とした本作。どこか耳なじみのあるこのタイトルからしてヤバT節が炸裂しているが、やはり彼らに"アンチ陽キャ"ソングを作らせたら天下一品だ。夏に浮かれる人々を斜に見る歌詞もその語感の良さでポップに昇華され、シンセサイザーやブラスを取り入れたアレンジにより、歌詞とは裏腹な夏全開のアッパー・チューンに仕上がっているのが面白い。加えて、"たしかに"と唸ってしまうバンドマンあるあるから派生した「まじで2分で作った曲」や、"コンプラギリギリ"な遊びを題材にした「コンプライアンス」、まさにタイトル通りの誰もが歌える1曲「もももで歌うよどこまでも」、そして岡崎体育によるリード曲のリミックスを収録。朋友同士のおふざけ感満載なコラボにも注目だ。

愛彌々

MONGOL800×WANIMA

愛彌々

以前より親交があり、イベントなどでの共演もあったモンパチとWANIMA。昨年のラジオ番組でキヨサク(Ba/Vo)とKENTA(Vo/Ba)が対談した際の、"いつかコラボレーションしよう"が実現した。タイトル曲は両者のコラボ曲、その他互いが曲を提供し合った曲と、互いのカバー曲という全5曲で構成した濃密な1枚になった。言葉の向こう、音楽の向こうに誰かの顔が見える、フレンドリーな歌を届ける両者だけに「愛彌々」はポップで強力なサウンドで、またいつでもこの歌のもとに集まれるような明るく、おおらかなメロディが冴える曲となった。リスペクトとともに、こんな曲を歌ってほしい願望も込められたのだろう。提供をし合った曲では両者新しい面が垣間見える。発展的な1枚であるところにバンドの姿勢が窺える。

微笑ノ国

FES☆TIVE

微笑ノ国

夏と言えばお祭り! お祭りと言えばFES☆TIVE! というわけで、"お祭り系アイドルユニット"FES☆TIVEの面目躍如となる2022年版サマー・チューンが到着した。表題曲のテーマは"微笑みの国"タイ。BPM200オーバーの高速ナンバーに乗せて"ガパオ ガパオ ガパオ ガパオ ガパオ"、"パッタ パッタ パッタ パッタ パッタイ"とタイ料理の名を元気に叫び続ける(最後はマッサマンカレーだそうです)楽曲は、深読みするだけ野暮で、ちっぽけな悩みなんて軽く吹き飛ばすポジティヴなパワーで溢れている。コロナ禍に入る前には現地でライヴをしてきただけあって、タイに対する愛や想いもしっかり込められている点も忘れてはならない。c/wでは形態ごとにそれぞれ違った表情を堪能できる。

さすらひ

PEDRO

さすらひ

BiSHのアユニ・Dによるソロ・バンド・プロジェクト、PEDROの活動休止前ラスト・ライヴ。本作は、前半でPEDROの"これまで"を辿るような楽曲が並び、後半には活動休止の発表後にリリースされたアルバム『後日改めて伺います』収録曲を全曲披露していくなかで、PEDROの"これから"を感じさせるという、実質的には2部制で構成されている。ツアーを回ったあとの公演だけあって、歌唱、演奏、3人のモードに至るまで、ロック・バンドとして万全のパフォーマンスで駆け抜ける2時間は見どころを挙げたらキリがないが、バンドとしていったんの区切りを迎えていくラスト3曲は格別。彼女がどんな想いでこの日を迎えたのかは、同時リリースされたドキュメント作品に描かれているので、そちらも併せてチェックしたい。

Document of PEDRO 2021 「LOVE FOR PEDRO」

PEDRO

Document of PEDRO 2021 「LOVE FOR PEDRO」

活動休止を迎えるまでの半年間を追ったドキュメンタリー作品。本作を視聴していると、このロック・バンドがスタッフ、ファン、そしてメンバー自身から、どれだけ大きな愛を貰って活動していたのかが伝わってきた。タイトルに"LOVE"を掲げたことにも納得だ。アユニ・Dが活休に対して、そしてファンに対して葛藤しつつ向き合い成長していく姿がツアーやオフショットを通して描かれており、PEDROは彼女にとっての青春なのだとつくづく感じさせる。だが、アユニ・Dの青春はまだ終わっていない。彼女は、田渕ひさ子(NUMBER GIRL/toddle)、毛利匠太と共に、PEDROを愛してくれた人に会うために戻ってくるはずだ。本作は、PEDROと"あなた"が笑顔で再会するその時を迎えるまでの、お守りのような存在。

Drop

AMEFURASSHI

Drop

ももいろクローバーZや私立恵比寿中学、B.O.L.Tらが所属する"スターダストプラネット"の4人組"アメフラっシ"が、表記を"AMEFURASSHI"に改めてアルバムを完成。近作で軸になりつつあるダンス・ミュージックやシティ・ポップを取り入れた楽曲たちは、彼女たちのガール・クラッシュな魅力で溢れている。そんな本作を一聴したら、きっとタイトル通りに彼女たちの魅力に"Drop"="落ちる"はず。「Blue」で新たにR&Bに挑戦したチャレンジ精神や、ここまで築き上げてきたスタイリッシュなイメージを破壊する「MOI」でアルバムを締める遊び心も好印象。どれをとってもハイクオリティで、徹頭徹尾隙がない秀作に仕上がった。2022年のアイドル・シーンにおける台風の目になる予感。

BIPOLAR

キタニタツヤ

BIPOLAR

タイトルの"BIPOLAR"は双極性を意味する。"消えてしまいたいと願う朝が/生きていてよかったと咽ぶ夜に塗り潰され"と歌う、オープニングの壮大なロック・バラード「振り子の上で」が象徴するように、今作は、日々の生活の中で激しく浮き沈みする人間の心の変化や、美しさと醜さ、希望と絶望という世界の二面性を対称的な曲構成で浮き彫りにする1枚だ。キタニタツヤの真骨頂となるファンキーなロック・ナンバー「PINK」や、初めてニュー・ウェイヴのアプローチを取り入れた「夜警」など、アルバムの新録曲にエッジを残しつつ、より歌を大切にした大衆的なポップ・ミュージックとして突き詰めたところに、キタニの覚悟を感じた。ドラマ主題歌に書き下ろした「プラネテス」は普遍性の高い名曲。

On This Planet

THEティバ

On This Planet

連作となった2枚のEPで印象づけた可能性を、バンド・サウンドにとらわれないという自由な発想で一気に開花させた1stフル・アルバム。THEティバのバックボーンであるローファイ感覚のインディー・ロックを軸に、ダークなフォーク/カントリー、アナログ・シンセを鳴らしたサイファイ・ポップ、アシッド・フォーキーな弾き語り、ポップ・パンク、アトモスフェリックなドリーム・ポップと変化をつけた全12曲は、一曲一曲、相応しい音色を追求していったサウンドメイキングも聴きどころ。それをふたりが楽しみながら作っている姿を思い浮かべながら、ぜひ聴いていただきたい。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文(Vo/Gt)がマスタリング・エンジニアとして参加したことも話題のひとつだ。

Break and Cross the Walls Ⅱ

MAN WITH A MISSION

Break and Cross the Walls Ⅱ

昨年の『Break and Cross the Walls Ⅰ』と連作となる今回。この2作で、"対立"や"衝突"から"融和"、"調和"へという普遍的とも言えるテーマを音楽で表現し、スケール感のあるハイブリッドなロック・サウンドで打ち鳴らした。世界や社会を映した大きなものとしても、またひとりの人間が成長、成熟していく過程でも響く、様々な場面でしっかりと地に足をつけて歩んでいくことやその実感を味わわせてくれる内容だ。布袋寅泰とのコラボによる「Rock Kingdom」や映画主題歌「More Than Words」、アニメ主題歌「Blaze」他タイアップ曲もあるが、一貫して底通するものがある。バンドのこのブレなさが、曲やサウンドの底力にもなっている。そのスピリットを形にしたアルバムだ。

root you

daisansei

root you

新体制初の新曲として2021年12月に配信リリースされた「ルートユー」を中心としたシングル。シンプルながらメンバーの顔が見えるアプローチにこだわったという温かいアンサンブルによるミディアム・ナンバーは、新生daisanseiを象徴する曲と言えるだろう。そんな「ルートユー」に加え、フルートやサックスの音色を取り入れたポップ・ソング「Yellow」、今回初収録の新曲「ビードロ」、「ルートユー」のリミックスと曲ごとに色は違うが、輝度や彩度を無理に上げようとせず、素朴だが良質なものを目指そうという姿勢が感じられるのは共通。ふわっと抑揚する音楽にひなたの道を散歩している感覚にさせられる今作が、懐かしの8cm CDでリリースされるのもしっくりくる。

それだけでいい

大原櫻子

それだけでいい

主演舞台に始まりピアノ、ヴァイオリンとの3人編成によるツアー"大原櫻子 Premium Concert 2022 「For You~あなたが作る櫻子Live~」"で2022年をスタートした大原櫻子。このツアーでも披露され、2022年第1弾シングルが今作だ。柔らかでジェントルな歌声で、"君"がいつでも素顔でいられる場所でありたいと語り掛ける表題曲は、ストリングスとピアノを中心に優しく紡ぎあげるバラードとなった。美しくも、日常に馴染むアレンジと歌心を大事にしており、そこに自身が書いた言葉が乗る。まだ不安な日々が続くからこそ、シンプルで大らかなスタンダードの趣がさえる。c/w曲「笑顔の種」はどこか「それだけでいい」と呼応するようで、ソウルを下地にしたサウンドに歌声がチアフルに響く。

陽はまた昇るから

緑黄色社会

陽はまた昇るから

公開中の"映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝"にリョクシャカが書き下ろした「陽はまた昇るから」は、時に感じる悲しさや寂しさなどを"それはイイことなんだよ"と、フレンドリーな目線に立ちそっと気づかせるように優しく包み込む1曲。"家族の明日"を守るために奮闘する映画のストーリーにも寄り添いつつ、作品にちなんだフレーズも盛り込まれている。そして、明るくポップに振り切った軽やかな表題曲に対し、カップリング「時のいたずら」は、鍵盤を押し出し、歌を聴かせるバンド・サウンドのミドル・チューンで、"歌うこと"をテーマに長屋晴子(Vo/Gt)が作詞作曲した1曲。大人になっていくことと物事には終わりがあることを描く、時間を強く意識した2曲で、かけがえのない"今"を輝かせる。